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恋姫†英雄譚 双龍伝 第2話

DASHさん

この作品は、真・恋姫†無双の二次創作です。
キャラの殆どは恋姫†英雄譚から登場します。
オリキャラ等はインスパイア等を利用して出すつもりです。
ハッキリ言って北郷一刀が大幅強化されている物なので受け入れられない方はブラウザバック推奨です。
色々ぶち込み過ぎてカオスな物語になっていますが暖かい目で読んで頂ければ幸いです。

続きを表示

2017-02-20 23:45:46 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2019   閲覧ユーザー数:1896

一姫と桃香が仲間同士になって少し経った頃、風鈴は突然こんな事を言い出した。

 

「そうだ!! 久しぶりに桃香ちゃんに会ったのだからお母様にも会わないとね。」

 

「え”っ!? 先生、母に“今”から会うのはちょっと・・・・」

 

風鈴が桃香の母親に会おうと提案したら桃香本人はバツの悪い顔をしており、一姫はその顔を見てすぐに察した。

 

「(多分、“今”会うとマズい状況なのかな?)」

 

「今、母はちょっと用事があって不在でして・・・・」

 

「大丈夫だよ♪ 待っているから。」

 

「え”っ!? でっ、でも・・・・」

 

「あ~、桃香。何か後ろめたい事があるのなら正直に話した方が後々良いと思うよ。」

 

「ちょっ!? 一姫様!?」

 

「“隠したまま”だとロクな目しか遭わないからさ・・・・」

 

一姫本人は己の経験からの発言で桃香に正直に言う様に説得する。

北郷兄妹はスパルタな祖父母関係で隠し事や後ろめたい事等で酷い目に遭ってばかりで隠し事はあんまりしたくない主義なのだ。

一姫は桃香に対して本当の事を話す様に説得している最中、風鈴がある事に気付いた。

 

「あれ? そう言えば桃香ちゃん。」

 

「はっハイ!? 何でしょうか!!」

 

「持ってきている荷物の中に『靖王伝家』が無いみたいだけどどうしたの?」

 

「ぐっ!? そっ、それは・・・・」

 

「風鈴、怒らないから正直に言って欲しいな。」

 

「えっと、その・・・・・」

 

「(この反応、ひょっとして・・・・)」

 

このやり取りを見て一姫はオチがわかってしまった。

 

「・・・・ました。」

 

「何? よく聞こえなかったけど・・・・」

 

「騙されて盗まれちゃいました!!」

 

「あらら・・・・」

 

「やっぱりか・・・・」

 

桃香は泣きそうな顔して正直に話し、一姫と風鈴は呆れながらその答えを聞いたのだった。

 

 

恋姫†英雄譚 双龍伝 第2話 一姫、桃花村を訪れるのこと

 

 

3人は寺子屋から一度桃香の実家へ行き、それからある村へと向かっていた。

桃香から聞いた話をまとめるとこうだ。

彼女が筵を売りに行っていた道中、ある男が桃香の剣について興味を持ち質問してきた。

それに対して桃香はその剣についてと自分の先祖の事を正直に話した所、男は桃香から剣を騙し盗ってしまったのだ。

その後、意気消沈で自家に戻った桃香だが剣を盗まれた事が母親にバレてしまい川へ突き落されてしまったのだ。

それからも母親がその一件を思い出す度、桃香を川へと突き落とすものだから身が持たなくなってきた。

それを聞いた風鈴は教え子たち等の人脈を頼りに周辺の噂を集める事にした。

聞いた話、桃香と同じ『劉備』の名を使った者がある村で義勇軍を率いていると言う情報を得た。

一姫は桃香の実家で母親に『必ず桃香の剣を取り戻す』事を約束し、その村へと行く事になった。

 

「一姫様、先生・・・・私の為に本当にゴメンなさい。」

 

「別に良いよ。仲間が困っているんだから助けるのは当然の事だよ。」

 

「一姫ちゃんの言う通りだね。可愛い教え子が困っているもの。」

 

凹み続ける桃香に対して励ます2人。一姫は話題を変えようとこれから向かう村についての話をする。

 

「それにしてもこれから行く村の名前が『桃花村』って言うだね。」

 

「風鈴が聞いた話だと、春になると綺麗な桃の花が咲き誇る素晴らしい村らしいね。」

 

「私も噂で聞いた事があります。毎年春になると花見が盛んに行われているらしいですよ。」

 

「桃の花で花見か・・・・私の所は桜の花だからちょっと新鮮な気分で花見が出来そうだよ。」

 

「一姫様が居た天の世界にもそう言う場所があるんですか?」

 

「うん、私の世界では春の花と言えば桜だからね。」

 

「そうなんですか~」

 

「でも、そんな綺麗な所で人を騙している悪いヤツが居るって言うんだから早く懲らしめないとね。」

 

一姫はそう言うと掌を握りこぶしで合わせて気合を入れた。それを見た風鈴は感心する。

 

「やっぱり兄妹なんだね。瞳に一刀君と同じ炎を宿しているよ。」

 

「そうなんですか? 先生。」

 

「うん♪ 一刀君も賊退治をしようとした時も一姫ちゃんと同じ瞳を持っていたからね。」

 

「そう言うと一姫様のお兄さんも良い人なんだろうな。」

 

風鈴は一刀の事を懐かしみ、桃香はそんな一刀を想像して想いを馳せていた。

そうしていると桃花村の門が見えてくる。

 

「あっ、あれが桃花村みたいですね。」

 

「村に入る前に桃香に1つ提案があるんだけど・・・・」

 

「何でしょうか?」

 

「桃香が村に居る間は『劉備』って名前は使わない方が良いと思うの。」

 

「なるほどね。そうすれば村人たちに余計な混乱をしなくて済むかもしれないわ。」

 

「だったらどうしよう。」

 

「あっ、そうだ!! お母様が使っていた『阿備』をそのまま使っちゃおう!!」

 

「ハハハ、そうですね・・・・」

 

風鈴はノリノリだが桃香は幼児扱いされるのを嫌がる子どもの様に若干凹んでいた。

さあ、いざ村へ入ろうとしたら小さな影が3人の前に突然現れた!!

 

「ニャー!!」

 

「うわああああっ!?」

 

突然現れた小さな影は赤髪で虎の髪飾りをしている少女で何と豚に乗ってここに現れたのだ。

それに驚く桃香は尻もちをついてしまう。赤髪の少女は心配したのか桃香に近づく。

 

「にゃ~? 大丈夫なのか?」

 

「アイタタタ・・・・うん、大丈夫だよ。」

 

「ホラ桃香、お尻に砂埃がついてるよ。君は桃花村の子かな?」

 

「そうなのだ!! 鈴々はね。村の義勇軍で闘っている張飛なのだ!!」

 

「へぇ~、張飛ちゃんか・・・・って!? 『張飛』!? 貴女が張翼徳なの!?」

 

「うにゃ? お姉ちゃん、名乗っていないのに鈴々の字を知っているのだ?」

 

「えっ!? ああ!! 噂で聞いた事があるのよ!! 君の事・・・・」

 

「おお!! と言う事は鈴々は有名になったって事なのか~。」

 

「へぇ~、張飛ちゃんって言うんだね。私はりゅ・・・・じゃなかった阿備って言うの!! よろしくね!!」

 

「風鈴は阿備ちゃんの先生をしている盧植って言うの、よろしくね。」

 

「私は北郷・・・・北郷一姫って言うの、よろしく。」

 

桃香と風鈴は明るい雰囲気で自己紹介するのだが一姫は内心驚きっぱなしである。

 

「(張飛と言えば劉備の義兄弟の1人で豪傑中の豪傑じゃない!! その張飛がこんな小さい子だなんて・・・・)」

 

張飛を見ながら動揺を隠そうとする一姫、張飛は一姫に見られ続けているのに気づく。

 

「にゃ~、そんなにジロジロ見られると恥ずかしいのだ~/////」

 

「ああ!! ゴメンね。噂通りで強そうだな~って思っていたから。」

 

「そうなのだ!! 鈴々はと~っても強いのだ~!!」

 

「アハハ(さっきは思わず演義の字で言っちゃったけど合っていて良かったわ。正史だと字は『益徳(えきとく)』だから・・・・)」

 

そう、張飛の字は正史と演義では違っている。演義では『翼徳(よくとく)』で正史では『益徳(えきとく)』なのだ。

もしも間違っていたら面倒事になるのは確実だったと失敗を恥じた一姫だった。

だが、ここに張飛が居ると言う事はある可能性が生まれたのだ。

 

「(ここに張飛が居るって事は関羽も居る可能性は十分にあるわね。下手したら桃園の誓いが既に終わっている可能性も・・・・)」

 

最悪の事態を考えてしまう一姫、その様子を見た風鈴は一姫に小声で話す。

 

「一姫ちゃん、今は難しい事を考えずに周りに合わせてね。」

 

「あっ、ハイ!! すみません!!」

 

こうして再び失敗を恥じる一姫だった。

一同は桃花村に入るが張飛が「桃花村を案内するのだ!!」と言って案内役になってくれた。

案内されながら3人は張飛にどうして桃花村にやってきたのか事情を話す。

 

「うにゃ~・・・・阿備お姉ちゃんの剣を盗んだヤツがこの村に居るのか~。」

 

「そうなの。騙された私も悪いかもしれないけど、どうしても剣を返してほしくてこの村に来たんだよ。」

 

「義勇軍のおかげで平和で安全なこの村を隠れ蓑にする人が実際に居るのも事実だしね。」

 

「それは置いといて、張飛ちゃんたち義勇軍は他にどんな人が居るのかな? 風鈴気になってね。」

 

「鈴々の他にも、愛紗とか・・・・」

 

「それ真名だよね? 真名だとわからないから私たちにもわかる様に教えてほしいな。」

 

「そうだったのだ!! 関羽とか、大将の劉備って言うヤツも・・・・」

 

劉備の名前を聞いて3人は確信した。桃香の名を使った男は確実にここに居て義勇軍を指揮していたのだと。

そして一姫は未来では軍神と呼ばれる関羽もこの村に居る事を知り、様々な事態に対してのシュミレートをしていたが

それと同時に劉備の名前を出した張飛にある疑問を浮かんだ。

 

「張飛ちゃん、大将さんの事を“ヤツ”呼ばわりしているみたいだけど仲が悪いの?」

 

「・・・・・・・・。」

 

一姫の質問に黙ってしまう張飛、地雷を踏んでしまったのかと慌て始める一姫。

 

「ごっゴメン。聞いちゃいけない質問だったのかな?」

 

「気に入んないヤツなのだ。」

 

「えっ? 気に入んない?」

 

「気に入んないヤツなのだ!! 戦いの時は後ろの方に居続ける臆病者だし、賊から取り返した物を全部独り占めしたり!!」

 

村のど真ん中だと言うのに大将の悪口を言い出す張飛。桃香と風鈴は慌てているが一姫は冷静だった。

 

「アイツが最初に言った事は全然しないし、義勇軍の仲間たちも大将に問い詰めても返事がないから不満がいっぱいなのだ!!」

 

「(少なくとも張飛ちゃんと義勇軍の一部は偽劉備に対して不信感を持っているって事ね。)」

 

「愛紗もアイツに対してどうも様子が変なのだ・・・・」

 

「多分、関羽さんの事かな? 変ってどう変なのかな?」

 

「愛紗はアイツを守る様な事ばっかりでおかしくなっちゃったのだ。それで鈴々はどうしたら良いかわからなくて・・・・」

 

「そっか・・・・色々大変な事が義勇軍では起こっているのね。」

 

「先生、どう見ます?」

 

「そうね、張飛ちゃん。不満を持っている義勇軍の人はどれくらい居るの?」

 

「わからないけど大体陣内は悪口ばっかり言っている人が多いのだ。それを愛紗が怒っているのがよく見かける光景なのだ。」

 

「と言う事は半数を既に超えているって事か・・・・」

 

「このままだと義勇軍は内部崩壊を起こしても不思議じゃない状況ね。」

 

風鈴の言葉に張飛はゾッとした表情になり風鈴に質問する。

 

「このままだったらどうなるのだ?」

 

「恐らくだけど反乱を起こす事になるわ。最悪、関羽さんもただでは済まないかもしれない。」

 

風鈴がそう言うと張飛が顔色を変えて飛び出そうとするが、すぐに一姫が張飛を止める。

 

「離すのだ!! このままじゃあ・・・・」

 

「落ち着きなさい張飛ちゃん!!」

 

一姫の言葉を聞いた張飛は母親から叱られる子どもの様に驚いてはシュンっとしてしまった。

そのまま一姫は張飛に語りかける。

 

「張飛ちゃん、“今”行動するのは非常に不味いの。余計な混乱を起こして状況が更に悪化しかねないわ。」

 

「じゃっじゃあ、どうするのだ?」

 

「そうね・・・・」

 

そう言って一姫は考えて張飛に自分と桃香が何者であるかを明かした上で意見を出した。

 

 

少しばかり時が経ち、所変わって義勇軍の拠点。建物の中で美しい黒髪を持った少女がため息を吐いていた。

 

「はぁ~・・・・私はどうしたら良いのだろう?」

 

名は関羽、字は雲長。義勇軍武将の1人である。

 

「(劉備殿に進言した所で聞くとは思えない。だからと言ってこのまま義勇兵たちを止めても怒りは収まらない。)」

 

関羽は義妹である張飛と共に旅を続けていたのだが

その道中、この義勇軍と出会い大将である劉備の思想に共感しそのまま将として活動する事になった。

だがここで行動を共にしてみた所、劉備は正義を唱えるのは口先ばかりで結果として義勇兵から不信感が募る始末。

その中に義妹である張飛も含まれているのだから余計に頭が痛く感じているのだ。

 

「(そう言えば噂で「『黒龍の御使い』が通った場所はより良い所になりつつある。」と聞いたがやはり管路の占いは本当なのだろうか?)」

 

管路が流したとされる占い『天の御使い』の噂は関羽の耳にも入っていて、もし居てくれたらと思う有様だった。

そんな中、突然扉が開いて義勇軍の兵士が現れた。

 

「関羽様!!」

 

「どうした?」

 

「張飛様から我が義勇軍への志願者がいらっしゃるとの知らせを受けたのですが・・・・」

 

「そうか、すぐに行く。」

 

関羽は気持ちを切り替えて一番広い部屋へと向かう。

その部屋は武将たちが食事を摂ったり会議など行う為に使用されていた部屋である。

関羽が部屋に着いた時には1人の男が既にその場に居た。

 

「おお、関羽殿!! 君も張飛殿の知らせを聞いたのか。」

 

「ええ、どの様な人物が来るかまではわかりませんが・・・・」

 

「まあ良い。我が義勇軍の戦力が増強され強くなれば名が更に上がると言うものだな!!」

 

彼はそう言うが関羽は内心困り果てている。そんな状況下で部屋の扉が勢いよく開き、そこへ張飛が現れた。

 

「遅くなったのだ!!」

 

「こら鈴々!! もう少し静かに扉を開ける事ができないのか?」

 

「うにゃ~、忘れていたのだ。」

 

「まあまあ、関羽殿。それより張飛殿、志願者は一体どんな者なんだ?」

 

「それは一目見たらわかるのだ!! お~い、入って良いのだ~!!」

 

張飛の言葉に一姫たち3人が部屋へと入る、その時だった。

 

「い”っ!?」

 

男が桃香の顔を見た瞬間、驚愕し慌て始めていたのだ。一姫は桃香と風鈴に小声で確認を取る。

 

「桃香、あの男で間違いない?」

 

「ハイ!! 間違いありません!!」

 

「風鈴さんは・・・・」

 

「うん、あの男の腰に付けている剣は間違いなく桃香ちゃんの剣だよ。」

 

確認が全て終わったら桃香が凄みを持った笑顔で男にこう挨拶する。

 

「初めまして劉備さん。私の名は『劉備』、字は『玄徳』と申します。」

 

「んなっ!? 『劉備』!?」

 

桃香の名を聞いた関羽は思わず耳を疑った。何故なら劉備が2人居る事になっているからだ。

慌てていた男は我に返ったのか関羽に指示を出す。

 

「関羽殿!! あの女をひっ捕らえてくれ!! 私の名を利用する偽者だ!!」

 

「えっ!? しかし・・・・」

 

「良いからやれ!! これは命令だ!!」

 

偽劉備がそう言うと部屋の窓から逃げ出す。それを追いかけようとする3人だが・・・・

 

「すまぬがここを通すわけには・・・・」

 

「2人はそのままあの男を追いかけて!!」

 

関羽が立ち塞がってしまうが一姫が蒼蘭を抜いて関羽を攻撃する。

それに対して関羽は偃月刀で防御したが動きを止められ、2人が偽劉備を追いかけてしまう。

何とか一姫を押し返して2人を追いかけようとするものの、一姫はすぐに関羽に立ち塞がった。

 

「私の邪魔をするか!!」

 

「そりゃあね。この村と義勇軍を一大事から助ける為に行動しているんだから。」

 

「“助ける”? 貴様たちがやろうとしていることは・・・・」

 

「関羽さんに聞くよ。貴女は何故あんな男に従うの?」

 

「何?」

 

「鈴々・・・・いや、張飛ちゃんから聞いたよ。貴女が今の義勇軍の事で悩んでいるって。」

 

「貴様、鈴々の真名を・・・・」

 

「あの子に認められたからこうして呼んでいるんだよ。話を戻すけどあの男がやっている行いは本当に人の為になっているの?」

 

「そっ、それは・・・・」

 

「義勇兵の人たちが不信感を募らせる行いをしているのに、あの男はそれを無視した上で自分の地位の事しか考えていない。

 それって本当に人の為に行動しているって言えるの?」

 

そう言われると関羽は何も言えなくなってしまった。

当然である。一姫が言った事は全て事実で関羽自身が悩んでいる内容全てであったからだ。

パニック状態になる関羽だが、一姫は関羽を味方に引き込む最後の行動に出た。

 

「申し遅れたわね。私の名は・・・・」

 

一姫がそう言うと『白龍ノ光玉』に手を添えて1つのアクションを起こした。

 

「『白龍、装甲!!』」

 

「くっ!? 何だこの光は!!」

 

関羽は一姫から発する光に思わず目を細めた。そして細めた目で辛うじて見えたものがあった。

 

「(あれは・・・・龍!? それも白き龍があの方の周りを飛んで光を与えているのか!?)」

 

関羽が見たものは白龍が一姫の周りを飛び光の粒子を与え続ける様子だった。

関羽から見たら神々しく、美しく見えただろう。現状を忘れるほど彼女はその様子を見惚れていたのだ。

光が収まると『龍装形態』となった一姫がそこに居て、自らの名を関羽に言った。

 

「私は北郷・・・・北郷一姫。天からこの地に降臨した『白龍の御使い』よ。」

 

「あああ・・・・」

 

そう言って一姫は関羽を落ち着かせるように彼女の手を添えた。

 

 

「はあはあはあ・・・・」

 

偽劉備は追っ手から走って逃げ続けていて息切れを起こしていた。

村からかなり離れた所で逃げ切ったと確信したのか、足を止めて乱れた息を整えようとする。

 

「はぁはぁ、ここまで来れば『大丈夫と思うのか?』っ!? 張飛殿・・・・」

 

偽劉備の目の前には張飛が立ち塞がっていた。

張飛は村周辺はよく自宅の庭の様に遊んでいた為、地理を知り尽くしており先回りするのは簡単だったのだ。

そんな張飛を見て偽劉備はこう言った。

 

「張飛殿!! さっきはなんて事をしてくれたんだ!!」

 

「はぁはぁ・・・・“なんて事”ってどんな事でしょうか?」

 

「やっと追いつきましたね。風鈴、運動不足だから走るのは堪えます。」

 

「うげぇ!? お前たちは・・・・」

 

偽劉備の後ろから追いかけていた桃香と風鈴が追いついて偽劉備の状況が悪化する。

桃香は最終警告を出すように偽劉備を説得する。

 

「お願いですから私の剣を返してください!! そうすれば全部許しますから!!」

 

「何を言ってんだ!! この剣は俺の物だ!! 貴様の物ではない!!」

 

桃香の説得も虚しく頑なに返そうとしない偽劉備。すると風鈴は彼を見て悲しそうにこう答えた。

 

「貴方の目からは嫌悪感しか感じないわ。欲望に忠実で『全てを自分の物にしなければ気が済まない。』そんな目が貴方には宿っているわ。」

 

「それが何なんだ!! 人が欲を求めるのは当然の事じゃないか!!」

 

開き直りかどうかはわからないが、偽劉備は己の欲望を肯定する様に風鈴に答える。

 

「これまで行動したのは全て俺が出世し支配する為に過ぎないんだ!! 俺の為に使えない駒など必要ない!!」

 

「そんな・・・・じゃあ、鈴々ちゃんが言っていた貴方の理想は・・・・」

 

「全て俺の野望を果たす為の虚言なのさ!!」

 

桃香の問いにそう答えた偽劉備。桃香はそれを聞いて絶望を見た様に膝を落とす。

この様な惨い行いをする男を見て涙を流したのだ。風鈴はそんな桃香の肩を支える。

 

「話は終わりだ!! 貴様等を殺して裏切者共も始末してやる!!」

 

そう言うと偽劉備は桃香の剣を引き抜いて2人に近づいて来る。

近づこうとしたその時、横から2人の声が聞こえた。

 

「へぇ~・・・・御大層な野望だね。どう思う? 関羽さん。」

 

「私の目は今まで曇っていたようだな。私の目を覚まさせた事を感謝します御使い様。」

 

「愛紗!! それにお姉ちゃんも!!」

 

「んなっ!? 関羽殿!? その小娘を始末していたんじゃあ・・・・それにここに来るのが速過ぎる!!」

 

「『瞬動術』って言う高速移動を使ったの。ここに来るまで5秒もかからなかったわ。」

 

「鈴々の氣を辿っただけでなく、私を抱えてここまで来たのだ。」

 

『瞬動術』とは別名『縮地(しゅくち)』と呼ばれる移動方法で仙術や武術の一種とされている。

用途は間合いを一瞬で詰めたり、一瞬で遠くまで移動する高速移動なのだ。

 

「しかし、この様な術を使いになるとは御使い様は仙人の類ですか?」

 

「いやいや仙人じゃないよ。それにこれは“術”と言うより“技”かな? 氣を制御できる人で修練さえ行えば誰だって出来るよ。」

 

「一姫様!! いつからそこに?」

 

「う~んとね、桃香たちが偽者に追いついてすぐかな? だから私たちはコイツが言った事を全部聞いていたよ。」

 

一姫が考えた作戦はこうだ。

自分たち3人を張飛を通じて志願者として拠点に招き入れた上で偽劉備と対面する。

そいつが桃香から剣を奪った男と同一人物なら桃香が偽劉備を逃げ出すように仕向ける。

逃げだしたら桃香と風鈴はすぐに追いかけて張飛は逃げ道を予測し先回りすると言う物。

唯一の欠点があるとすれば関羽が偽劉備を逃がそうとするだろうがそこは一姫が抑え役になる事で2人を確実に追いかけさせたのだ。

最後に一姫が関羽を説得し、偽劉備が居る場所へ向かった結果がこの状況であり、全ては一姫の作戦通りだったのだ。

焦り出す偽劉備だが、何か思いついたのかすぐ余裕を持ってこう言う。

 

「フン!! 始末する数が増えただけの事!! お前たちもまとめて・・・・」

 

「アンタ、バカァ? 誰が私たち“2人だけ”と言ったのよ?」

 

「えっ?」

 

偽劉備が疑問符を出すように言うと鈴々の後ろから怒り心頭の義勇兵の皆さんがズラリと並んでいたのだ。

 

「んなっ!? お前たちまで・・・・」

 

「さっき言ったのは私たち“2人”じゃなくてそこに居る“全員”を含めて言ったんだけどね。」

 

一姫の作戦の補足するなら張飛は1人で先回りしたのではなく、義勇兵を引き連れていたと言う点をここに明記しておこう。

その為、当然先程言っていた偽劉備の言葉もバッチリ聞いていた為、彼等がいつ殺そうと駆け出してもおかしくはない。

一姫はそんな義勇兵に対して『待て』と手で指示を出して覇気を出しながら偽劉備にゆっくりと近づく。

その間、偽劉備は一姫の覇気で体が恐怖で震え続けて動けなかった。

零距離まで近づいた一姫は偽劉備が持っていた桃香の剣を素早い動きで鞘ごと奪い返した。

 

「あっ!? 貴様!! 返せ!!」

 

「下劣なアンタにこんな物は必要ない。」

 

剣を奪われた偽劉備は取り戻そうとするが、一姫の怒気を孕んだ言葉で完全に腰を抜かしていた。

そのまま一姫は偽劉備に対して言葉を続ける。

 

「義勇軍を駒扱いにして騙しただけに飽き足らず、私の仲間を・・・・女の子を泣かせた罪はデカいわよ。」

 

「(ガタガタブルブルガクガク・・・・)」

 

「そんなアンタに必要な物はね。」

 

そう言いだすと一姫の龍氣が右拳に集中し、最大まで溜まったのか光り輝きだしていた。

そのままの一姫は偽劉備にアッパーを叩き込みやすいように構えた。

 

「鉄拳制裁よ!!(ドガンッ!!!!)」

 

「ギャ~~~~!!!!!!(キランッ)」

 

一姫が偽劉備にアッパーを叩き込んだら、偽劉備は叫びながら星になるまで勢いよくブッ飛ばされた。

星になった偽劉備を見た一姫は剣を持って桃香の元へと行く。

 

「ハイ、桃香。大切な剣を取り戻したわ。」

 

「あっ、ありがとうございます!!」

 

「一姫ちゃん、何だか怒り足りないみたいだけど大丈夫?」

 

「風鈴さん、正直あと1万発くらい叩き込まないと気が済まないんだけどね。周りが怖がるから・・・・」

 

「えっ? あっ!!」

 

一姫の発言に桃香は周りを見るとその場に居る義勇軍全員の顔が引きつっていた。

勿論、張飛と関羽も同様に顔を引きつっていた。

場の空気を何とかしようと一姫はこの一件を明るく終わらせようとする。

 

「まあ、桃花村や義勇軍は無事だった訳だし、終わり良ければ総て『報告します!!』うわっ!? 何!?」

 

その場に突然ボロボロになった義勇兵が来て何かを報告しようとした。

その姿は明らかに戦いに巻き込まれた様な傷が沢山ついており、ただ事ではない事がよくわかる。

関羽がボロボロになった義勇兵に問いかける。

 

「何があった!?」

 

「関羽様!! 賊の大軍が村へ近づいております!! 過去に討伐した賊たちが集結したものと思われます!!」

 

その言葉を聞いた一同が緊張状態になるが、関羽はそのまま義勇軍全体に指示を出す。

 

「総員!! すぐに迎撃準備しろ!! 鈴々!!」

 

「わかっているのだ!! みんなこの村を守るのだ!!」

 

「よし、貴女たちは急いで避難を・・・・」

 

「待ってください!! 私も戦います!!」

 

「桃香ちゃん!?」

 

桃香の発言に風鈴は驚くが桃香はそんな風鈴を無視して発言を続ける。

 

「私は一度関わった義勇軍の人たちを見捨てる事は出来ません!! 私にも出来る事があるならそれをやるだけです!!」

 

「桃香ちゃん、貴女に戦いは・・・・一姫ちゃんも桃香ちゃんを止めて!!」

 

「無理ですよ、風鈴さん。」

 

「どうして!?」

 

「桃香の目を見てください。覚悟を決めています。ああなったら梃子でも動きません。」

 

一姫の言う通りだった。桃香は一度関わったら最後まで関わり抜く覚悟を決めていた。

それを見た風鈴は複雑な心境になっていた。そんな風鈴を見て一姫はこう言う。

 

「それに戦うのは桃香1人ではありません。私だって居ますから。」

 

「でも一姫ちゃん、貴女は人を・・・・」

 

「ええ、殺めた事はないですし、殺めるのは怖いですよ。でも仲間やこの村の人たちの笑顔を失う事の方がもっと怖いんです!!」

 

一姫がそう言うと拳を“ギリギリ”と鳴るくらい握りしめていた。

その様子を見た風鈴はかつて彼女の兄の姿を思い出したのと同時に安心感を得ていた。

一姫はそのまま風鈴に言い続ける。

 

「それに私が本当に『天の御使い』ならば義勇軍に『敗北』の二文字はありませんよ。」

 

「『天の加護は我等にあり』・・・・だね。こうなったら風鈴も知略で手伝うよ。」

 

風鈴がそう言うと一姫は人懐っこい笑顔をした。

その様子を見た桃香、関羽、張飛は希望を見つけた様に明るい笑顔を出していた。

関羽はこれを好機と感じたのか義勇兵に指示を出す。

 

「すまぬが義勇軍全体にこう伝えてくれ。『天の御使い・・・・白龍の御使いがここにあり、天の加護は我等にあり』とな!!」

 

「はっ!!」

 

義勇兵がそう言うと急いで拠点に居る義勇軍全体に関羽の言葉を伝えに行き、張飛は3人にこう言った。

 

「お姉ちゃんたちも戦ってくれるのか?」

 

「うん!! 私たちも賊からこの村を守り抜く為に戦うよ!!」

 

桃香がそう言ってすぐに準備を進める。彼女たちの最初の戦いが始まるのだ。

今回のあとがきの様なもの

 

ようやく愛紗と鈴々が登場と初陣までの流れまで出来ました。

一姫と桃香の初陣までの流れはかなり考えましたが文字にするのは難しかったです。

ここに登場している偽劉備ですが、アニメで登場したヤツと同じと思えば良いです。本編よりも下種になってますが・・・・

筆者の文才がないかもですが暖かい目で閲覧して頂けると幸いです。

では次回を待て!!


 
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