Eternal Blaze 2nd Volume
Auther ティアナ・ランスター
「高町なのは一等空尉が先ほど、遺失物管理法違反の容疑で逮捕されました」
淡々とした口調でティアナに向かって告げたのは、モニター画面に映る女性アナウン
サーだった。
今、フェイトのオフィスにある時計は18時を少し過ぎたあたりを指している。モニター
画面では夕方のニュースが軒並み始まった時間だったが、どの局も話題のトップは、なの
はの事件一色になっていた。
「はぁ~」
フェイトのオフィスに溜息が響き渡る。
ティアナは、ホテル・アグスタから帰還したあと、休む暇もなく、この部屋に戻ってき
ていた。やらなければいけないこと、そして考えなければいけないことが山積みで、何か
ら手をつけて良いのかよく分らない。
ただでさえあんな事があった後だというのに、帰りのヘリの中ではミラノから一枚の紙
を渡されていた。ティアナがヘリにのる前、ジャロックの手伝いをするよう言われたミラ
ノが必死で涙を堪えているような悲しげな表情をして、ティアナに渡したのがなんだかと
ても印象的だった。
そんな悲しみを象徴するかのような書類を、ティアナは半ば呆然としながらも受け取
り、それ以来ずっと手に持っていたため、紙は汗でよれよれになっていた。そんな、ただ
の紙切れ一枚だというのにティアナにとってやたらとそれが重く感じられていた。
なぜなら、そこに書いている文章は、ティアナにとって触れているだけでみぞおちのあ
たりがキューッと締め付けられそうになることが書いてあったからだった。
そんな手に持っている紙を見ていると、モニターからは女性アナウンサーがニュースの
続きを読み始めていた。
「高町容疑者は、本日16時頃、ホテル・アグスタのオークション会場倉庫付近で爆発事
件を引き起こし、高エネルギー結晶体であるロストロギアを盗み出した疑いです。警察は、
高町容疑者の過去5件による高エネルギー結晶体消失事件との関連性があると見て余罪を
追及する方針です」
「嘘だッ!」
おもわず叫んだ。
ティアナは、ここまで聞くと出来ることならモニターのスイッチを消して、部屋へと戻
り、温かいシャワーを浴びてから、ふかふかのベッドで、ふて寝を決め込みたいと思った
が、ここで逃げ帰っては、自分の想い描いている未来とは違う結果になりかねない。その
衝動をぐっと我慢した。
「ここで、高町容疑者を逮捕したアリダー・ジャロック提督による記者会見が始まる模様
です。高町容疑者逮捕の真相がここで明らかにされるようです」
モニターの中では、颯爽とジャロックが登場すると共にフラッシュがたかれ、報道陣が
彼の周りをとり囲んだのがモニターから分った。
そんなジャロックの顔は、フェイトや他のみんなとは裏腹に、今まで見せたことがない
ような、笑みをうかべている。
「静粛に」
ジャロックは突然、大きく目を見開いて報道陣を一喝すると、ザワザワしていた辺りの
空気がピンと張り詰めるのが画面越しから伝わった。
あたりにいた報道陣が威圧感に圧され一斉に静まりかえったのを確認すると、ジャロッ
クはコホンと咳払いを一つして勝ち誇ったかのように語り始めたのだった。
「本日、16時8分、時空管理法に定めるロストロギアの不正使用、および暴走行為、な
らびに高エネルギー結晶体の窃盗、捜査官の誘拐拉致監禁の容疑で、高町なのは一等空尉
を逮捕した」
そこまでジャロックが語ると、たくさんのフラッシュの閃光と共にカメラのシャッター
音の嵐が、あたりに飛び交った。
そんな、シャッター音を皮切りに、報道陣からジャロックに向けて質問の嵐が投げかけ
られる。
「何か証拠はあるんですか?」
「高町容疑者の犯行動機はなんでしょうか?」
「高町容疑者の様子はいかがですか?」
「静粛に!」
ジャロックは、次々に浴びせかけられる質問に、少々面倒くさいといった怠惰な面持ち
で、報道陣達に静かにするよう促した。
「何らかの既得損益があったと言うことでしょうか?」
「静粛に!」
突然、モニター画面がニュース番組の女性キャスターへと変る。記者会見の現場が荒れ
ているのか、カメラ映像はスタジオへと戻り、女性キャスターは深刻そうな顔をしてこち
らを見つめていた。
「エースオブエース、誰もが認める無敵のエースとまで称された高町容疑者ですが、一体
どうしてこのようなことになったでしょうか? この時間は番組を変更してお伝えしたい
と思います。アニメ銀魂は次週の放送となりますのでご了承ください。では一旦CMの後、
記者会見の模様をお伝えします」
「はぁ~」
ティアナは、報道番組がCMに入ると、さらにまた重い溜息をついた。フェイトだって
ティアナだって、なのはがジャロックに逮捕されるところをむざむざ黙って、見ていたわ
けではなかった。
なのはさんがそんなことをするはずがない!とティアナは何度もジャロックの前で訴え
た。機動六課の時、彼女の教導訓練を受けたことを伝え、無実を訴えても身内贔屓と罵ら
れただけだった。挙げ句の果てには、執務官補の分際で提督に意見をするとは何事だと怒
鳴られた。その言葉に、おもわずカッとなりジャロックに平手打ちをだしそうになったが、
その途端、フェイトに腕を押さえられ手をギュッと握られた。
ティアナはそこで我に返った。第一、なのはが何もしていないという証拠をジャロック
に提示することが出来なかったのだ。
フェイトもまた、ジャロックに意見をしていたようだったが、ジャロックは証拠が揃っ
ているの一点張りだった。異論があれば法廷で争う。とまで言われていた。
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2009年8月16日開催の「コミックマーケット76」新刊小説「Eternal Blaze 2nd Volume」からの抜粋です。
タイトル:
魔法少女リリカルなのはStrikerS小説本
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