No.892289

命一家9話~はじめてのこくはく~

初音軍さん

小さな男の子の勇気を出して告白したちょっとしたお話。
これに限らず報われないのわかっていてがんばる男子は可愛いと思う。
片想いのままでもいいし、大きくなって別の好きな人ができてもいい。
その場合はできれば相手は男の子で!*><*()

2017-02-07 22:30:42 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:460   閲覧ユーザー数:460

命一家9話~はじめてのこくはく

 

【みき】

 

 前に見つけた神社は今はすっかり私の遊ぶ場所になっていた。

神社に住んでる神様も私を見て喜んで迎えてくれた。

 

「みきちゃんいらっしゃい。珍しいね、一人で来るなんて」

「儚ちゃんはお母さんたちと買い物行ってるし、優くんは…」

 

「ん、どしたの?」

「私のママとおでかけしてる」

 

「それはまた、もっと珍しいわね。

…ははぁ、その男の子に気遣ってここに来たわけだ」

 

 神様はピンときたと指を立てながらそう言って私は驚いた。

 

「何でわかるの?」

「だって神様だもん!」

 

「神様ってすごいね!」

 

 人の心を読めるのかな。すごいな~って思って目を輝かせながら神様の手を握ると

神様は一瞬だけ私と目を外してボソッと何か言った後に笑顔でまた私の方に向いた。

それからしばらくの間二人で遊ぶことにしたのだった。

 

 

***

 

【命】

 

 どうしよう…。

 

 今目の前にはみきの友達の男の子。優くんがいるのだけど…。

普段あまり会話しないのと合う趣味がないせいか上手く話しができないで

妙な沈黙が続いた。

 

 そもそも…なんでこの子と二人きりでいるんだろうという疑問が今更ながら

頭に浮かんでいた。

 

 みきに追い出されるように外に出てから二人でどことなく一言二言話しながら

歩いていた。幸いに財布は持っているからどこか喫茶店に入るのもいいかもしれなかった。

 

「優くん、どこかお店入りますか?」

「は、はい…」

 

 外に出てから最初の内は私と話がしたいと積極的に言っていたから

歩きながら公園や他の店を巡っていたけれど、優くんは黙ったきりだ。

だから話しやすいように喫茶店にでも入ってリラックスしながら話ししようかと

私は思っていた。

 

 入ったお店は少しおしゃれな内装になっていて、メニューにあるパフェが

けっこう美味しかったのを覚えている。以前萌黄と一緒に入って食べさせあったっけ。

思い出しながら優くんの分も注文すると。

 

「あ、あの…悪いです…」

「甘いの苦手でした?」

 

「い、いえ…好きですけど」

「だったら良いじゃないですか。遠慮しないでください」

 

 年の割に大人しい雰囲気が出ている男の子に何の話をしようか探っていると

やはりこれしか思いつかなかった。

 

「みきと仲良くしてますか?」

「はい、いつも仲良くしています」

 

「そう…」

 

 終わった…。次はどうしようかと思ってるとパフェが目の前に運ばれて

それを見た私は萌黄とのことを再び思い出しながら口元を緩ませる。

すると、優くんは緊張した声のまま勇気を振り絞った感じで聞いてきた。

 

「あの、命さんは今幸せですか?」

「幸せですね。好きな人と一緒になれて娘もできたし、沢山の家族に囲まれてますし」

 

「でも女の人同士なんですよね…」

 

 言った本人が辛そうな顔しながらそういう風に話してくる。

偏見みたいな言い回しだとわかっていながらも聞かずにはいられなかったのだろう。

心を痛めるような表情をしているだけでもその子の優しさは伝わってくる。

 

「そうね…。でも好きになった相手がそうだっただけだから変ではないですよね」

 

 だから私もきちんと向かい合って話さないといけなかった。

好きになったから恋をした。普通に男女の関係と同じことをしている。

私のしていることはただそれだけなのだ…と。

私に言われて優くんは頷きながら納得していた。

 

「ぼくは…命さんのことが好きなんです」

「うん…」

 

 一緒になることは諦めてる感じの言い方をしていた。

どこか切なくて胸が締め付けられるような、そんな思いをしているのだろう。

 

「無理なことはわかってます。ぼくが大人になっても不可能だってことは…」

「うん…」

 

 私はちゃんとこの子の言葉を聞いて頷くことしかできなかった。

 

「でも好きでいさせてください…片想いでもいいので」

「…はい」

 

 私はスプーンを取ってパフェの果物とクリームの部分を掬い取って俯いている

優くんに向けて「あーん」って言って向けた。

 

 「?」のマークを浮かべていそうな顔をしている優くんは私に言われるがままに

口を開けてスプーンを咥えて中のものを食べた。

 

「ちゃんと言えたご褒美」

「あ、ありがとう…」

 

 その後の言葉は詰まり、声を押し殺すようにして涙を流していた。

色々な感情を含めた表情をしていた彼の頭を撫でながらこの子のことを愛おしく感じた。

そう…マナカちゃんに対するものと同じような、そんな感情に似ていた。

 

 

**

 

【みき】

 

 神様と昔ながらの遊びをして時間も遅くなっていたから家に帰ると

ママ達も帰ってきていた。優くんの目は赤くなっていたけど、少しだけスッキリした

顔をしていた。

 

 そして優くんは私の傍まで来てこう言った。

 

「ありがとう」

「うん」

 

 前まで言葉にもやもやしていた感じが残っていたけど、今は苦しそうにしながらも

今までになかった晴れた感じがあって、私は安心した。

 

「ねぇ、優くん。今度儚ちゃんと一緒にあそぼうよ」

「うん、いいよ」

 

 二人で見合って笑顔で話しかけあって、これでいつも通りに。

それから命ママに呼ばれて二人で向かった。用意された暖かいココアを飲みながら

オヤツを食べて優くんママが迎えに来るまでの間、みんなでゲームをして

楽しい時間を過ごしたのだった。

 

続く。

 


 
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