【陽子】
高校生でいられる時間が残り少なくなってきた時期。
私は突然綾に呼び出されて告白をされてしまった。
本当に突然だった。いや…前々からそういうサインを出していたのを
私が気づきたくなかったのかもしれない。
私が答えに躊躇をしていると綾は顔を真っ赤にして走って逃げてしまった。
「綾…!」
呼び止めようと声をあげるが、彼女はその声が届かない所まで行っていた。
それから私は自宅に戻ってから深呼吸をして、電話をかけた。
こういう時は直接相手の声が聞きたかったからな。
私の答えはもちろん…。
***
それから数日、緊張の面持ちでいる綾と私が綾の部屋にいた。
「晴れて恋人となったことだし…。なぁ、恋人って何するもんなんだ?」
「し、知らないわよ!」
「知らないのかよ!」
そういう風になりたいと思っていたから何かあるのかと思っていたけど
いつも通りの雰囲気で少し緊張していた私の気持ちは少し解れてきた。
しかし…。
「何で綾はそんなに緊張してるんだよ。自分の部屋だろ」
「状況が変わって二人きりで緊張しないわけないでしょ!」
「じゃあ、前の関係の方がよかった?」
「そ、それは嫌…!」
それを聞いて安心した私は笑顔を浮かべて綾の頭を撫でた。
これくらいは大丈夫だろうと思ったらすぐに顔を赤くして
ぷるぷる震えていた。
こういう綾も可愛いけれど、何かやりづらいな…。
いつもの気軽な雰囲気を求めていると綾から話しかけてきた。
「べ、勉強しましょうか!」
「うん、そうだな…」
まぁ、その内慣れてくるだろうと思い。綾の正面に座って
二人で勉強を始めた。
二人の関係が進んだところで頭が良くなるわけじゃなし。
私はある問題で詰まっていると綾がいつもの様子で教えてきた。
綾が教えてくれると自然と頭に入ってくるような気がする。
…抜けるのも早いけど。
「わかった?」
「たぶん」
そういえばこういう時間は前と同じような気持ちだ。
勉強は嫌だけど、何だか二人でいると落ち着くような…。
心が温かくなるような感じがするんだ。
でも今はちょっと違うな…。なんだろ。いつもより胸の辺りが
うずうずして熱くなっていってるような気がした。
「なぁ、綾…」
「なによ…」
「その…キス…とかしてみないか…?」
「は!?」
綾の反応と同じくらい私も自分で驚くくらいのことを言った気がする。
綾を見てると頭がポーッとして自然と口から出てしまったのだ。
「あ、いや…。冗談だけど」
「あ…そう…」
言葉を慌てて取り消すと明らかにがっかりする綾。
そんな顔を見てしまったら取り消せないだろ。取り消す気もないけど。
「それも冗談!何かもやもやして集中できないんだよ。
だから綾と何かすれば…はかどるようになるかなって思っただけ」
「それがキスなの?」
「そうだよ、悪かったな~」
綾が少しずつ緊張が解けていたのか私の熱くなってる顔を
見て吹き出しそうな反応をしながら小さく笑っていた。
多分…いつもこんな感じに私は綾のことを見ていたんだろうなって
気づいた。恥ずかしいけど、決して嫌だと思わないこの感じ。
居心地がいいけど、ちょっと心がくすぐったい感じ。
悪くないよ…。
***
私たちは綾のベッドに移動して顔を近づけてみる。
近づくのはいいけれど、途中から間に壁でもあるかのように
それ以上は近づけなくなる。
私も緊張しているのだろうか。綾の方は待っていて目なんか閉じてて
自分から行こうという気配を感じられなかった。
「綾」
「なによ」
「二人でせーので行くぞ…!」
「え、何で私も!?」
「いいから、せーの」
私の言葉につられて綾も掛け声に合わせて顔を動かすと。
ゴチンッ!
互いの口が思ったより強くぶつかって歯が当たったとこが
痛くて二人は一旦離れてベッドの上で悶えていた。
「ふふふ…」
「あはは…」
でも不思議とそれがきっかけで二人の間に笑いがこぼれて
今まであった緊張のほとんどがなくなっていた。
「なんだよ、今の!」
「陽子が言ったからでしょ!」
「あぁ、痛かった~」
それからもう一度互いに目を合わせて今度は普通に…。
普通に唇を重ねることができた。
チュッ…クチュッ…。
綾の髪が顔にかかり、綾の香りを感じながら
その柔らかくて温かくて艶やかで少し湿った綾の唇から離れられなかった。
チュッ…チュパッ…。
時折漏れる綾の切なそうな声が色っぽくてもっと聞きたくなる。
「んん…。よーこぉ…」
「綾…可愛いよ」
柄でもないような言葉が自然と出てくるくらいに今の私は綾を
求めていた。どうしようもないくらい綾のことが大好きだ。
どこまでも、いつまででもできそうなくらい私たちは続けた。
時間すらも感じられなくなるくらいに…。
まるで全てが溶け込んで二人が一つになってしまう錯覚があるくらい…。
熱くて溶けてしまいそうなほど熱くて…幸せだった。
**
「ほら、陽子。早くしないと遅刻するわよ!」
「ふぁ~い…」
綾の声で目を覚ました私は叩き起こされて綾が用意してくれた朝食を食べる。
あれから私と綾は同じ大学に通いながらアパートの一部屋をシェアしている。
あれをきっかけに一気に距離が近づいて、いつもの雰囲気の中で
確かに私達を結びつける何かが生まれた。
「いやぁ、懐かしい夢を見たよ」
「何よ…」
「綾と初めてキスしたときのこと」
「なっ…!いいから早く食べちゃいなさい!」
「へいへーい」
綾の初々しさは今でも健在だ。でもあの初めての感覚はもう味わえないかもな。
だけどそれでいいんだと思う。これから二人であの感覚を超えられるような
ものを探していけばいいんだとそう思っているから。
「綾…」
「何よ…」
「大好きだよ」
「何をいきなり…!?」
「綾は?」
「い、言わなくてもわかるでしょ」
「言ってくれないとわかんないなー」
「だ…!あ、愛してるわよ!!」
「・・・!」
綾はこうやって時々私を驚かせる一言を飛ばしてくることがある。
真っ赤になっていつも一生懸命で、恥ずかしがりやなのに
必死に伝えてこようとするのが本当に愛おしい。
私は綾を抱きしめて軽く頬に口付けをした後、軽く仕度をして…。
「じゃあ、行ってくるよ」
そう言って私は外に出た。
本当はずっと綾とまったりしていたい気分だったけど。
自分で取った講義はちゃんと出て勉強しないとな。
そう思いながら私は歩き出す。
ずっと二人でいられるために頑張るんだ。
お終い。
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気付いたらちょっと時間の流れがバラバラになってしまってて読み辛いかも;;
二人のイチャイチャっぷりを楽しんでもらえたら幸いです><♪
書く時、陽子の喋り方とか行動が少し難しくて大変でしたw