No.890767 真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第十五話2017-01-28 15:19:32 投稿 / 全14ページ 総閲覧数:4720 閲覧ユーザー数:3452 |
~洛陽にて~
「ちぃちゃん、人和ちゃん!!」
「「天和姉さん!!」」
久々に再会を果たした三姉妹はしっかりと抱き合い、その喜びに浸っていたのであったが…。
「あの…再会出来て嬉しいのは大いに分かるのですが、一応場所とかをわきまえていただける
と有り難いのですけど…」
此処が玉座の間である事をすっかり忘れており、月のその言葉で我に返った三人は慌てて礼
を取る。
「ところで、華琳さんは此処に来ていて大丈夫なのですか?一応、まだ敵同士ですよね?」
「大丈夫、留守は部下にしっかりと任せて来たから」
そして、曹操もちゃっかりと来ていたりする。
曹操から荀彧・公達を経た形で送られた寝返りの提案の了承の返事を月が送った僅か数日後、
張角の身柄を送り届ける名目で曹操も洛陽に入って来ていたのである。
(当然、これは連合側には秘密事項であり、表向きには曹操は体調不良にて奥で休息中という
事になっている。連合側も周瑜が不在、諸葛亮が謹慎という状況で、その嘘を見破るだけの
人材がいない為、まかり通っていたりするのだが)
「さて…月。こうして張角を送り届けたわけだし、分かっているわよね?」
「はい、華琳さんの領土及び官職については安堵する事を約束します…それ以上はこれからの
お働き次第という事になりますが」
「ふふ、なら成立ね。それで、私はどう動けば良いの?」
「そうですね…とりあえず報告にあった袁紹が用意したという火薬の処理をお願いしても良い
ですか?」
「それは既に手配済だから安心すると良いわ」
その頃、連合の陣にて。
「何がありましたのです!?今、尋常でない程の音がしましたのは!?」
「れ、麗羽様…火薬が、用意した火薬が…」
「なっ…何て事ですの!?」
袁紹の眼に映ったのは、翌日に迫った壁を破壊する作戦を遂行する為に用意した火薬が爆発
する様であった。
「早く、早くあの火を消しなさい!!」
「ダメです、あそこに近付くのは不可能です!!怪我どころでは済みません!!」
「な…何故、何故このような事に…」
袁紹達は次々と爆発を起こして燃え上がる炎を成す術も無く見ている事しか出来なかったの
であった。
・・・・・・・
二日後。
「ごめんなさい、麗羽…まさか私の部下がそんな子供でもしないような不始末を仕出かすなん
て…詫びた程度ではどうしようもないのでしょうけど」
曹操は神妙な顔つきで袁紹達に謝罪していた。というのも、実は爆発を起こしたその日に火
薬の番をしていたのは曹操の命を受けていた夏侯惇であり、爆発の原因があろう事か彼女が
火薬の横で暖を取ると為にたき火を起こし、そこから飛んだ火の粉が火薬に移ったからであ
ったからだ。
(ちなみに普通の人であればしないであろうその行為は『夏侯惇だから』という理由で何故か
誰にも怪しまれてはいなかったりする)
「とんでもない失態でしてよ、華琳さん…詫びる暇があるのでしたら、そのお馬鹿な家臣の首
を今すぐ此処に持ってきなさい!!」
「今は彼女も怪我を負って意識不明だから…意識が戻り次第、連れて来て自害させるから少し
待ってもらって良いかしら?」
「…良いでしょう、約束ですわよ。その者の意識が戻り次第此処に連れて来なさい。この私自
らがその馬鹿の首を斬りおとして差し上げますわ」
~曹操の陣にて~
「どう、春蘭の様子は?」
「はい、元々頑丈な姉者ですから、怪我から来る発熱は引いたようですが…」
「まさか飛んで来た破片でこうなってしまうとはねぇ…だから火を起こしたらすぐに逃げろっ
て言っておいたのに」
「…うわ言のように言ってましたが、華琳様に言われた通りにやってうまくいった事が嬉しか
ったようです。それで逃げるのが遅れたのではないかと…」
曹操と夏侯淵がそう話しているその前で意識を失ったまま横たわっているのは夏侯惇であっ
た。そして彼女の左眼には眼帯がかけられている。どうやら火薬が爆発した際にそれが入っ
ていた樽の破片がそこに刺さったらしく、彼女の左眼は完全に潰れてしまっていたのである。
「任務を終えて無事に戻って来て初めて成功って言いたいのだけどね…やっぱり秋蘭に頼むべ
きだったかしら?」
「そのお言葉は嬉しいですが…私が同じような事をしたらさすがに袁紹に怪しまれるのではな
いかと」
「そうよね~、だから春蘭に命じたんだけど…この結果がこれじゃあね」
曹操はそう言ってため息をつく。
「ところで袁紹は何と?」
「許してほしければ、春蘭の首を持って来いって…でも、今は意識不明だから、意識が戻った
ら連れて来て自害させるって約束してきたわ」
「なっ…華琳様のお言葉とはいえ、それはあまりにも…」
「落ち着きなさい、誰が自害なんてさせるものですか」
「それではどうするのです?」
「それはね…」
その次の日。
「袁紹様、大変です!曹操様の陣で異変が!!」
「今度は何事ですの!?」
・・・・・・・
~曹操の陣にて~
「姉者!いい加減にしろ!!袁紹様が用意した火薬を台無しにした上に、今度は責任放棄など
さすがに華琳様もお怒りだぞ!!」
「うるさい、だからそんな物は今から軍功をあげて帳消しにしてやると言っておるのだ、そこ
で黙って見ていろ!!」
自分の手勢を引き連れて虎牢関へ攻め入ろうとする夏侯惇を夏侯淵が止めようとしていたの
だが、何時もなら妹の言う事に大人しく従う夏侯惇がまったくその言葉に耳を貸さないどこ
ろか派手に言い争いまでしていたのであった。
「如何に姉者とはいえ勝手な行動は許さん!!それが華琳様にまでご迷惑をかける事になるの
が分からんとは言わせんぞ!!」
「黙れ、だからあの忌々しい壁と関を突破してそれを全て帳消しにしてやると言っておる!!
ええい、そこをどけ!!」
夏侯淵は必死に止めようとするが、夏侯惇はそれを振り切るかのように進軍を始めてしまう。
さすがの夏侯淵も大勢の人間の進軍を止める事は出来ず、それを見送る事しか出来なかった
のであったのだが…。
「秋蘭、何を呆けているの!春蘭のやっている事は軍令違反よ!!これ以上、麗羽の前で恥を
かくわけにはいかないのは分かっているでしょう!?」
「…分かりました、姉者を討ちます!」
夏侯淵はそう言うと、自分も手勢を引き連れて夏侯惇を追っていったのであった。
「私達も追うわよ!…というわけで、自分のお馬鹿な部下の失態は自分の手で償うと麗羽に伝
えなさい。良いわね?」
曹操は駆け付けて来た袁紹軍の兵士にそう言うと、自らも残りの軍を率いて後を追っていっ
たのである。
・・・・・・・
~袁紹の陣にて~
「…何という、本当にお馬鹿さんな人なのですね」
報告を聞いた袁紹は呆れ顔でそう呟く。
「あのぉ、我々は如何すれば…」
「華琳さんが自分でけじめをつけると仰っているのなら大丈夫でしょう、馬鹿な部下の首を持
って戻って来るまでお昼寝でもさせてもらいますわ」
・・・・・・・
~劉備の陣にて~
「朱里ちゃん、曹操さんの所の夏侯惇さんが!」
未だ檻車の中で謹慎中の諸葛亮の所に鳳統がやって来て一連の話をしていた。
「…そう、遂に曹操さんは見限ったんだ」
「そうだよ、あの曹操さんが腹心の夏侯惇さんを見限ったって…『雛里ちゃん、本当に分から
ないの?』…えっ?だから、曹操さんが夏侯惇さんw『ちゃんと一から考えて。そう、夏侯
惇さんが火薬を爆発させた辺りから』…火薬?火薬をって…まさか!?」
「これでもう連合に勝ち目は…いえ、もはや連合ですら無いですね。劉備様、あなたはどうす
るのですか?」
諸葛亮はそう呟いて空を見上げていた。
~孫策の陣にて~
「雪蓮!」
「冥琳、戻って来たわね!さあ、反撃よ!今度こそ虎牢関を…『大馬鹿者が!!これだけの犠
牲を出しておいて何が反撃だ!!』…そ、それは…でも、兵は冥琳が新たに連れて来てくれ
たんでしょう?それで…『いい加減、頭を冷やせ!!幾ら兵を揃えた所であれがそう簡単に
突破出来ない事位分かっているはずだ!!』…うっ」
孫堅の遺体を建業に運び、予備兵力の中から二千の兵を連れて帰還して来た周瑜は孫策に会
うなりそう一喝していた。
「それはそうと、何やら騒がしいようだが何かあったのか?」
「ああ、曹操の所の夏侯惇が色々やらかしたみたいよ」
・・・孫策、説明中・・・
「なっ…まさか、皆それをみすみすそのままにしているのか!?何故曹操だけに行かせた!?」
「曹操が自分で何とかするって言ってるわけだし、良いじゃないの?何をそんなに驚くのよ?」
孫策から話を聞いた周瑜は驚愕に包まれるが、孫策はあっけらかんとそう答えていた。
「雪蓮、本気で言ってるのか…炎蓮様の死に呆けてお得意の勘も鈍ったのか!?」
「幾ら冥琳でもそれは言い過ぎ…『ならばもう少しよく考えろ!夏侯惇が火薬を台無しにした
辺りからだ!!』…何言ってるのよ、確かに折角の火薬を台無しにするなんて馬鹿な事をと
は思ったけど…『あの曹操がそんな分かり易い過失などするわけないだろうが!』…確かに
そう言われてみれば…って、まさか!?」
周瑜にそこまで言われ、初めて孫策は事の重大さに気付く。
「それじゃ、まさか曹操は…くっ、やられた『そもそもこれだけ人がいて誰も気付かない方が
おかしい!』…ごめんなさい」
(やはり雪蓮に何を言われようとも私が此処を離れるべきではなかったか…しかし、曹操まで
がこうなるとは…もはや連合に勝ち目などお世辞にも存在しないと見るべきか)
周瑜はそう考えながら、忌々し気に顔を歪めていたのであった。
そして再び袁紹の陣にて。
「さあ、そろそろ華琳さんがあのお馬鹿な家臣の首を持ってやってくる頃ですわね」
「袁紹様に申し上げます!!」
「華琳さんが戻って参りましたわね。すぐに此処まで通しt『違います!そ、曹操軍がそのま
ま虎牢関の中に入っていってしまいました!!』…どういう事ですの?華琳さんが虎牢関を
突破したという事d『違います!董卓軍の旗印と共に曹操軍の旗印も虎牢関に…曹操軍が寝
返りです!!』…なっ、何ですってぇ~!?」
袁紹の素っ頓狂な叫び声が響き渡っていたのであった。
・・・・・・・
~虎牢関にて~
「華琳さん、お疲れ様でした」
寝返って虎牢関に駆け込んで来た曹操を月が出迎える。
「あら、月。わざわざ出迎えてくれたわけ?」
「はい、華琳さんがこちらの味方に付いてくれたおかげで、彼我戦力差はほぼ拮抗するまでに
なったわけですから我々としては最大限の出迎えをと」
「ふふ、そう言われるのは悪い気分じゃないわ…ところで、北郷は此処にいるの?」
「今は私室で休憩中です…そういえば、そもそも華琳さんは一刀さんにご執心でしたね」
「あら、今はもう味方なんだから問題無いでしょう?それに私以上に彼に会いたがっている娘
もいてね…これ以上我慢させていたら爆発しそうなのよ。出来れば会う許可とか貰いたいの
だけど?」
~一刀の部屋にて~
「師匠~~~~~~~!!会いたかったでぇ~~~~~~~!!」
そう言いながら、いきなり俺の部屋に飛び込んで来たのは…李典さん!?何故、彼女が此処
にいるんだ?
「今日から私達もこっち側って事だから。よろしくね、北郷」
その後ろから曹操さんも顔を出して理由を告げていた…なるほど、これは戦が終わるのも早
まりそうだな。
「ところで李典さん『師匠』ってどういう事?」
「どうかウチを弟子にしてください!!味方となったからには、師匠のその技術、一から十ま
できっちりと学ばさせてほしいんです!!」
「こっちの味方するって言ってからずっとこの調子でね…どうかしら?彼女の腕については私
が保証するわ…たまに爆発とかさせるけどね。それとちゃんと月の許可は貰ってるから」
たまに爆発って…まあ、俺もじいちゃんの所で修行してた頃には電気回路とかショートさせ
て危うく小火騒ぎなんて事もあったけど。それにしても…。
「う~~~む、弟子ねぇ…正直、俺もまだ修行中の身だから弟子というのはねぇ…まあ、助手
って事で良ければ」
「それでもええです!よろしゅうお願いします!ウチの事は遠慮のう『真桜』って呼んでくだ
さい!!」
「ああ、よろしく…真桜。俺の事は一刀で良いよ」
「いえいえ、こちらはこれから学ばせてもらう身、あくまでも師匠って呼ばせてもらいます!」
「ああ、そう…まあ、よろしく」
こうして李典さん…真桜が押しかけ弟子というか助手になった。なかなか騒がしくなりそう
だな…あれ?
「ねぇ、曹操さん」
「私の事も『華琳』で良いわ。その代りあなたの事も『一刀』って呼ぶから」
「えっ…まあ、そっちが良いならそれで…それじゃ、華琳」
「何かしら、一刀?」
「華琳達が味方になったって事は…荀彧さんもいるんだよね?」
「ええ、今頃は荀攸と鉢合わせになっているんじゃないかしら?」
華琳はそう言ってそれはそれは嬉しそうに笑っていた…どうやら確信犯的な感じだな、これ
は。荀彧さんもなかなか大変だな…公達はあまり気にもしなさそうだが。
・・・・・・・
その頃、一刀の懸念が当たったわけでもないのだろうが…。
「まさかお前と味方同士になる日が来るなんてな…人生何が起きるか分からん」
「ふん!私だってあんたなんかと一緒なんて嫌よ!いい、あくまでも華琳様の御命令だから力
を貸してるだけなんだから、勘違いしてるんじゃないわよ!」
「あっ、そう」
「何よその態度!私が力を貸すって言ってるのに!!」
「別に…俺が頼んだわけでもねぇし」
「むき~~~~~~っ!!」
顔をあわすなり、二人はそんな感じであった。
「大丈夫かいな、あの二人…折角、向こうにもめ事を起こさせたちゅうのに、こっちでも同じ
ような事やってたら意味無しやで」
「あいつは口ではああ言っているが、意外に心根は悪くは無いからその点は安心してくれ」
そんな二人の様子を心配そうに見ている霞に夏侯淵はそう言っていたのであった。
そして次の日、連合の陣にて。
一応、連合に与している諸侯は集合しているのだが…その顔は一様に暗さを感じさせるもの
であった。ちなみにまだ袁紹と袁術は現れていない。
「白蓮ちゃん…」
「ああ、まさか曹操がな…私らでもそうなんだから、麗羽は一体どうなっているのやら…」
劉備と公孫賛はそう言いながらため息をついていた。
「でも、曹操さんも何も董卓なんかの味方にならなくたって…絶対、董卓が何かしたんだよ!
人質を取ったとか…そうだ、絶対そうに決まってる。じゃなかったら、曹操さんが私達を裏
切る理由なんて…やっぱり董卓は悪逆非道な人なんだ…」
「お、おい、桃香…あまり変な想像はするな。こんな時こそ冷静にだな…」
そして何やら怪しげな事を言い始めた劉備に、公孫賛はひき気味になりながらもそう声をか
けていたのであった。
・・・・・・・
~袁紹の陣にて~
「麗羽様、美羽様、もう他の人達は集合してますよ~。お二人は行かなくて良いんすか~?」
既に他の諸侯は集合しているのにもかかわらず、一向に動こうとしない袁紹と袁術に文醜は
そう声をかけていたのだが…。
「…何故、何故なのです?何故、華琳さんがこの私を裏切って董卓の所へなど…同じ私塾で机を
並べた仲だったというのに…」
「麗羽姉様はさっきからこの調子じゃのぉ、七乃」
「仕方ありません、麗羽様のそれはそれは数少ないお友達のような存在の中のお一人だった曹
操様がまさかあんな行動を取るなんて、誰も想像出来なかったわけですし」
「仕方ないのぉ、妾だけでも先に行くか」
「それはダメですよ、お嬢様。兵のほとんどを失った我々は麗羽様のおまけのようにくっつい
ていて初めて存在意義を発揮出来るのですから。美羽様だけで行っても空気みたいな存在に
なって誰にも相手にされないだけですけど、それでも大丈夫ですか?」
「それは嫌じゃ!」
「なら此処は大人しく麗羽様が出て来るのを待ちましょう」
袁紹は落ち込んだまま出て来ず、袁術と張勲は袁紹に声をかけるわけでもなくただ待ってい
るだけであった。
・・・・・・・
二刻後。
「…おい、麗羽。皆が集まってからどれだけ経ったと思ってるんだ。総大将のお前がそんな調
子でこれからどう戦おうというんだ?」
「…総大将だからこそ色々と考える事があるのですわ」
ようやく現れた袁紹を公孫賛がたしなめるように言うと、袁紹は暗い表情のままそう言葉を
返す。それを見た他の諸侯も一様に表情を暗くしていたのだが…。
「それでは何か良い策が浮かんだという事ですね!?」
何故か劉備だけが一人ハイテンションな状態であった。
「劉備さん…随分とお元気なのですわね」
「こんな時だからこそ、暗い顔をしていたらダメだと思うんです!!ただ前を向いて進むのみ
ですよ!!」
「…桃香、大丈夫か!?何かおかしいぞ、お前」
そのテンションの高さに公孫賛も少々ひき気味になる。
「…そうですわね!劉備さんの言う通りですわ!!今こそ明るく前を向いて進む時ですわね!」
そして何故か袁紹はそれにつられて自分もテンションを高める。
「お、おい、二人とも落ち着け…今はそんな精神論を話している場合じゃないだろう」
「何を言ってるの、白蓮ちゃん!!こういう時だからこそ、まずは皆の士気を高める必要があ
るんじゃない!!」
「そうですわ、劉備さんの言う通り!!軍の士気を高めるには、まずは何をさておき総大将で
ある私が元気を出す事、続いて兵を率いる皆様が元気を出す事ですわ!!」
もはや公孫賛の言葉に耳を貸す雰囲気すら見せなくなった二人は何やら勝手に盛り上がり始
めていた。それを見ていた各諸侯達はというと…。
『袁紹の檄文なんぞを信じてこんな所に来たのが間違いだったようだ』
『何にしろ、今の状況で虎牢関を突破出来る方策など百年経っても出ては来るまい…ここいら
辺りが潮時か』
『今の内であれば相国閣下からの処罰も多少は軽くなるかもしれないしな』
もはや付いていけないとばかりにさらに勝手な盛り上がりを見せる袁紹と劉備を一瞥すると、
皆勝手にその場を去っていってしまったのであった。それを見た公孫賛はどうすれば良いか
右往左往するばかりで結局何をせず、ただそこにいるだけであった。ちなみに…。
「七乃、勝手に帰ってしまって良いのか?」
「ええ、お嬢様の事は七乃が責任持ってお守りしますからご安心を。とりあえず、南陽に戻っ
たらすぐに残った兵をまとめて相国様の所に駆け付けましょう」
「麗羽はどうするのじゃ?」
「あの方なら放っておいても死にはしないでしょうから無問題です」
袁術は張勲に言われるがまま南陽に帰っていったのであった。
次の日。
「…どういう事ですの!?何故、桃香さんと白蓮さん以外いないのです!?」
ようやく事態に気付いた袁紹はそう金切り声をあげていたが、もはやそれは後の祭り状態で
あった…そもそも、気付きもしない事自体おかしいような気もするのであるが。
(ちなみに袁紹と劉備は前日の意気投合で真名を交換したようだ)
「そんな…皆、曹操みたいに董卓側に寝返るっていうの?そんな、おかしいよ!!洛陽の人達
を救おうって誰も思わないの!?ねえ、白蓮ちゃん、絶対おかしいよね!?麗羽さんが一番
皆の事を考えているよね!?」
劉備もそう言いながら公孫賛に詰め寄るが…。
(はぁ、失敗したかなぁ…桃香や麗羽を放っておけないって思って残ったけど、誰がどう見て
も完全に状況は詰んでるよな…でも、今更抜けるなんてどう考えても無理だよなぁ)
もはや公孫賛も心の中で半ばさじを投げている状態であった。そこに…。
「遅くなったわね」
そう言って入って来たのは孫策であった。
「遅いですわよ、孫策さん!もしかしたら孫家までもいなくなったのかと…『ええ、兵のほと
んどは撤退したわ』…な、何ですってぇ!それはどういう事ですの!?」
「孫家の方針としては撤退に決まったの…でも私は母様の仇を討つまで帰らない、だから此処
に残った。ただそれだけよ」
「それだけって、それでは孫家の兵力は…」
「とりあえず私と一緒にいるのは二百位ね」
孫策のその言葉を聞いた袁紹の顔は青ざめていた。
「何だこれ…それじゃ、今此処にいる中で万を超える兵を持っているのは私と桃香だけじゃな
いか。これで一体どうやって戦にするっていうんだ?」
公孫賛は半ば絶望的にそう呟いていたのであった。
続く。
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
大分遅くなりましたが、2017年一発目の投稿です。
とりあえず今回は、遂に寝返った曹操と残りの連合の
面々の苦悩的な所をお送りしました。
っていうか、もう連合これ以上戦線を維持するの無理
だとは思うのですが…後はプライドだけを抱えての大
暴走劇という感じになるかもしれません。
とりあえず次回は連合(の残骸)による虎牢関攻撃の
再開からです…どうなる事やら。
それでは次回、第十六話にてお会いいたしましょう。
追伸 今回は話の展開上、あまり出番がありません
でしたが、次回は一刀の出番は多くあります
ので。
そして遂に揃った三姉妹の活躍もある…かも?
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お待たせしました!
膠着状態となった連合との戦。
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