No.887897

戦国†恋姫 混沌伝 1-1

第一章『戦乱』

明けましておめでとうございます
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2017-01-08 21:17:20 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:878   閲覧ユーザー数:860

二つ目の流星が落ちて既に2日が過ぎ、気絶して倒れていた信助を保護して安藤守就の屋敷に運び入れたが信助は目を覚ましていなかった。

 

「全く、日向叔母様も物好きなかたですね」

 

今日は非番であった詩乃は大垣城の城下町にやってきて町の様子を見ていた。

 

国主代理である斎藤龍興が今の美濃を動かしているわけでやはりと町には以前とは異なって活気がなくそのことを目にしている詩乃も嘆きながら、2日前に屋敷へと入れた信助を未だによく思ってなかった。

 

「確かに、かの者が身につけている服や持っていた物を見れば一目瞭然…ですが目覚めていないのでどのようなかたかは、未だに分からない…」

 

信助はこの美濃にとって…もっと言えば日向と詩乃にとって有益な存在なのか、それを詩乃は今分かっている証拠だけで検分する。

 

「恐らく、かの者は流星と共に、この美濃に降り立った天人、天からの贈り物と世に知らしめれば、自ずとこの美濃は有名になりますが…今の現状では天からの贈り物を自称し国で傍若無人を行う暗愚と悪名がとどろきそうです」

 

このことはあくまで内密に龍興などには知らせてはいけないと詩乃は思いながら城下を一通りまわると、日向と詩乃の住まう屋敷へと帰ってきた。

 

因みに、家主の安藤守就は今現在大垣城で城勤務で屋敷には居なかった。

 

「さてと、部屋に戻り、書物でも拝見しましょうか」

 

そう思って屋敷の外庭の廊下を歩き詩乃は自身の部屋に行こうと足を運んでいると詩乃の部屋とは違う部屋の前で足を止める。

 

「……」

 

無言で部屋の襖をじっと見る詩乃。

 

この部屋には運んできた信助が眠っており、詩乃は信助のことを考えていたのだ。 

「…とりあえず、様子だけでも見ましょうか」

 

そう詩乃は襖に手を掛けてゆっくりと襖を開けると…

 

「……」  

 

そこに居たのは死んでいるように眠りに落ちている信助ではなく。

 

身体を起こし、何か深く考えている信助の姿であった。

 

その顔は何か深刻な顔をして、気分も優れない様子であった。

 

「あ…」

 

信助が起きていることに詩乃は声を漏らす。

 

元々どうせ、目覚めていないだろうと決めつけていた詩乃は信助が目覚めていたことで思考が一時的に停止して固まってしまった。

 

「え!?」

 

そして詩乃の漏らした声に反応したのか少し驚いた表情で詩乃のいる方向に振り向き驚いた顔で詩乃と目と目が合うのであった。

 

 

詩乃と信助が目が合う少し前信助の眠る部屋で信助の瞼が少し動く。

 

「うっ!」

 

そう、ぼそっと呟くと少しずつ瞼を開けて信助は部屋の天井を視界にとらえる。

 

「俺は…いったい」

 

倒れたところは山中のはずだと信助は覚えている記憶を呼び起こしていく。

 

「俺、山賊に追われて…最終的には追いつかれて…それで…!」

 

頭の中で記憶の道筋を辿っていく信助はそしてあのことも思い出す。

 

あのとき、信助は目をつぶっていたがはっきりとわかる。

 

放たれた銃弾そしてその直後飛び散るように信助の顔に何かが付着した。

 

目をつぶっていても信助は付着していたのが何だったのか直ぐに分かってしまう

 

(俺は…俺はなんてことを!)

 

撃った…人を殺めたと後悔という自責の念に囚われ、信助は頭を抱える。

 

あの場合、現代でも正当防衛となり得るかもしれないが信助にとってはそんなことどうでもよいことであった。

 

人を殺めたその事実だけが信助の心えぐるのように突き刺さる。

 

(…何がどうなってるんだよ!)

 

何故自分がこんな理不尽な酷い目にあわなければならないと開き直るように心の中で苛立ちを覚える。

 

(…それに俺はどうしてこんな昔みたいな家の中にいるんだ、そもそも、あの場所さえ何も情報は…) 

 

信助は自身に降り注ぐ理不尽な出来事を脳裏に置き今自分が置かれている状況について手をつけていくが信助一人ではなにひとつわからなかった。

 

そんな信助は現状や今後のことなどのことを考えるものの何一つ答えというものがなく深刻な顔つきに変わる。

 

(俺は…俺はどうすれば…)

 

そう信助は心の中で自分はこの後どうすべきか…誰もいない中、誰にも聞こえないその問に答える者はもちろんのこと誰もいない。

 

「あ…」

 

答えではないが信助ではない誰かの声が聞こえる。

 

「え!?」

 

信助もその声に反応するように声が聞こえる方向に顔を向けるとそこには白を強調した服を身に纏い、瞳は前髪で見えないが、容姿からして美少女と呼べる人が信助を見て驚いて固まって信助を見ている。

 

そして振り向いた信助はその女の子詩乃と目線が合うのであった。

 

目と目があい終始無言の時が進む中先に口を切り出したのは詩乃からであった。

 

「目を覚まされたのですね」

 

「え?、あ、はい」

 

詩乃は信助が目を覚ましたことを口にすると信助は少々戸惑いながらも返事を返した。

 

信助はこの子はこの家の人であろうと考えていくつか訪ねようと口を開いて話しかける。

 

「あの…ここって何処なんでしょうか?」

 

日本式の屋敷から見て日本の何処かであろうとふんだ信助はできる限りの言葉遣いで詩乃にたずねると直ぐに返事は帰ってきた。

 

「ここは我等、斎藤家が美濃の国、美濃国の西に位置する大垣城の城主であらせられる安藤守就様のお屋敷です」 

 

詩乃はわかりやすく返答したのだが、ここから未来からきた信助にとってはちんぷんかんぷんで全くわからなかった。

 

「美濃国?大垣城?安藤守就って…」

 

この時代の人間ならこの情報でも分かることであったが何一つ聞き覚えのない信助は首をかしげた。

 

「そのご様子ではどれも聞き覚えのないご様子…では名前を、まさか、名前までも覚えがないということはないでしょう」

 

「名前は…高橋信助」

 

「高橋信助ですか…」

 

(高橋といえば九州の大友家重鎮、高橋鑑種殿の一門というのが一番可能性が高いでしょうか)

 

(ですが、何故九州から遠く離れたこの美濃に来たのかどちらにしても情報を少しでも引き出さなければ)

 

信助が大友家の草であっても本当に行き倒れであっても彼に関する情報を引き出そうと詩乃はさらに訪ねる。

 

「その服、見たこともない、代物ですがそれは南蛮の物ですか?」 

 

信助が着ている学生服、詩乃はそんなもの生まれてから初めて見る物のためにそれについて訪ねるがこの問には裏があった。

 

信助が来ている学生服は見たところ、上質なもので作られていることは詩乃は一目で見抜き、平民では買うことは出来ないから、詩乃は信助をただ者ではないと考え、そして見たこともない服だったために日ノ本の外南蛮から持ち込まれたもので信助は南蛮に大きな繋がりがあるのではないかと頭の中で推測した。

 

(もし、南蛮からの物ならば彼はやはり高橋鑑種殿の身内という可能性は高くなりましょう、そうでなかったとしても平民ではないと断言できます)

 

 

そんなことを詩乃は頭の中で考えていると信助は詩乃がいっていることに不思議に思ったのか彼にとっては当たり前のことを口にする。

 

「学生服が珍しい?いやこれ…そんなに珍しくないだろ?」

 

今の現状をあまり飲み込めてない信助は淡々と口を動かして喋るが詩乃にとってはあまりにも予想外な回答だったために思わず取り乱す。

 

「珍しく…ない!?もしや、大友家では南蛮の流通が盛んで民達にも南蛮の代物が入手できると言うことですか!?」

 

(お、落ち着くのです詩乃、信助殿がそうおっしゃいましたが、信助殿の身分を踏まえてのこと、決して、あのような代物が簡単に手に入らないでしょう)

 

信助の軽くいった話に信じられないと慌てる詩乃。

 

慌てる詩乃に信助は首をかしげながらも聞きたかったことを詩乃から聞く。

 

「そういえば、俺の名前はいったけど君の名前は聞いてなかった」

 

「あ、そうですね…私のことは詩乃とお呼びください」

 

信助は詩乃の名前を聞きそびれていたことに思い出し詩乃に名前を訪ね、それに答えるように詩乃は通称である詩乃と名前を信助に教えた。

 

「ありがとう、詩乃」

 

名前を教えてもらってお礼をいう信助に詩乃は名前を教えただけなのにお礼を言われたことにキョトンとあっけにとられた。

 

「そうだ、俺、家に帰らないといけないんだ、詩乃悪いんだけど、ここが何県なのか教えてくれないかな?地元の埼玉に帰らないといけないんだ」

 

そしてまた先程と同じ質問の時間になり、信助は埼玉に帰りたいのだがもちろん埼玉などまだ存在を知らない詩乃は首をかしげた。

 

「先程も申し上げましたがここは美濃の国、そして信助殿が仰ったさいたま?という国も地名も存じ上げませんが」

 

 

ここで豆知識であるが埼玉県という名称が登場したのは1871年11月14日のことであり約310年先に誕生する埼玉など知るはずもなかった。

 

「何故か知りませんが信助殿と話すとどうも話がかみ合いません…」

 

詩乃は信助との会話のかみ合いなさに頭を使って原因を考えているとふと頭の中にあることが思い上がる。

 

(いえまさか、そんなことが…言えば馬鹿にしているようなものですが…確認を取るためです。致し方なし)

 

「信助殿、恐れ多いこと重々承知でおたずねします。」

 

「は、はい」

 

言葉遣いがさらに礼儀正しく無かったことに戸惑いを見せながら返答した信助、確認を取った詩乃は思い切ってその問を信助に投げかける。

「今、西暦が何年であるか信助殿は知ってらっしゃいますよね?」

 

「え?西暦?」

 

「はい、馬鹿にしているのは重々承知の上ですがお答えください」

 

「今の西暦だろ?そんなの簡単だ、今は西暦…」

 

そう信助が西暦を口にするのを固唾をのんで見つめる詩乃、これで白黒はっきりするかもしれないと半信半疑での詩乃の問いは

 

「2017年だろ?」

 

(やはり…そういうことでしたか…)

 

予想通りの結果になった。

 

 

「詩乃?」

 

「漸く、信助殿との噛み合わない理由が明確になりました」

 

「え?西暦を言っただけで?」 

 

まだ理解ができていない信助に対して詩乃は真実を明らかにした。

 

「今の西暦は1559年信助殿の先程仰った西暦だと458年という差異があります。」

 

 

 


 
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