No.887195 = 九番目の熾天使・外伝 蒼の章 = 「エンカウント オブ セブンス・D」Blazさん 2017-01-04 19:34:11 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:851 閲覧ユーザー数:680 |
―――気が付くと。知らない空が広がっていた。
重くなった目蓋を開く。安眠の重圧に飲まれていた僕の体は、ふと軽くなる。
「―――あれ。ここって…」
まだ意識がはっきりしていないからか、目を開けた瞬間に広がる世界に全くといっていいほど、理解ができなかった。安眠。睡眠をしていた僕は、確かベッドに横になっていた筈だ。
なのに、どうして僕は空を天井にしているのだろう。
いや。それよりも
「………ここ…部屋じゃない?」
睡眠から目覚めて一分足らず。意識が覚醒し、頭の回転がようやく本調子になってきた僕は首を持ちあげると、そのまま上半身を上げて周りを見回した。
記憶が確かなら、僕は忘年会の後に自室で爆睡していた筈。なのに、ここは部屋ではないどころか、自分の知っている町ですら、場所ですらなかった。
「………え?」
全くもって意味不明な状況に僕は目を丸くする。口を半開きにして、周囲の景色に呆気に取られていた僕は、未だ自分がどういう状況下に居るのかさえも判別できなかった。
これが、僕こと、旅団ナンバーズ「ディアーリーズ」の新年最初の目覚めだった。
= 九番目の熾天使・外伝 蒼の章 = 「エンカウント オブ セブンス・D」
結論から言うと。ディアーリーズの目覚めは、全くもって理解できない状況だった。
新年一発目。その目覚めは、誰にも説明できないような意味不明なもの。説明しろと言われても、誰もが口ごもってしまうかのような状態。
目が覚めて、顔を上げると冷たい風の中に晒されて、コンクリートの地面の上に寝転がっていた。しかも、ご丁寧に服は普段着のままで。
さて。これをどこからどう手を付けていけばいいだろうか。状態、状況、周囲、環境、そして過去の出来事と最後の記憶。
兎も角、彼にとってこの奇妙奇天烈な状況は、かつてないほどに理解しがたく、そして把握すらもできない。誰でもこんな状態になれば頭が混乱するだろうが、既に似たことを数回ほど経験している彼にとっては、一般とは違った反応があった。
取りあえず。ここは外で、自分はいつの間にかここで寝ていたんだな、と。
「…なんでこんな所で寝てたんだろ」
体を起こして辺りをぐるりと見回す。眠気が覚めたので頭が回り始めた彼は、状況と自分の状態を確認する。まずは自分が五体満足かも確かめなければならない。この手の出来事では必ずと言っていいほど、自分の身ないし周りに何かしらの変化があるのだ。
「いつつ…コンクリの上だったから背中が痛いなぁ…」
ざらざらとしたコンクリの上に居てよく眠れたなと、数時間前までの寝ていた自分に驚くディアは、軽くズボンや上着をはたいてホコリを散らす。
服装はジーパンとグレーの上着。眼鏡をかけているが、それが寝ている間に割れなかったようで、いつも使っている状態のまま。特に変化や不審な点はない。
「………。」
立ち上がって手を握っては開く。若干手が痛いのは寝ていた場所のせいだろう。所々に妙な痛さもあるが、それも同じで小石があったからだ。それ以外、たいした変化も違和感も変化もない。
ひとまず、体の状態と動きを確認して、たいした問題もないと分かるとホッと一息つく。どうやら体に異常はないらしい。
「体に異常はなし、服も別に怪しいものでもない…か」
身体にたいした問題はなかったという事実に安心したディアーリーズ。しかし、その安心が不動のものになるにはまだ早い。体に異常がないと分かっただけで、まだ周りの状況すら把握しきれていないのだ。
「で、問題は…」
そもそも、どうして自分がこんな場所に居るということ、それこそディアーリーズが最も気になっていた疑問であり問題だ。というのも、彼が居る場所はコンクリートがある時点で舗装された道であることは確かだ。が、問題はそこではなく、その道路の周り、所せましと並んでいる街並みに問題があった。
崩れた壁、積み上げられた瓦礫、壊れた窓や電柱、そして建物。
ありとあらゆるものが壊され、崩され、破壊されつくした街並み。
彼は、そんな廃墟の中にぽつりと立っていた。
「………どこだろ。ミッド…じゃないよね?」
以前、並行世界のミッドに訪れたことはあったが、あの時とは街並みと静寂さに違いがある。
静寂さは、狩りをするために獣たちが様子を窺っているというもの。だが、この町にはそういった視線や気配や、痕跡がない。文字通りのゴーストタウンだ。
そして街並みは、ミッドとは決定的に違っていた。ミッドことミッドチルダの街並みは魔法と科学が入り交じっており、先進的ではあるがどこか衰退さがあった。魔法という神秘と力を科学で制御したという人間の傲慢さ、というべきだろう。
しかし町はいたって普通、いやよく見かける街並みで建築学によって効率的に建設されたビルや店が立ち並んでいた。いずれも廃墟になっているが、その風景はよく見かける親近感があった。
「なら、ここは…」
ふと破壊された電柱に目を向けたディアーリーズ。そこには剥がされた張り紙公国の他にも見慣れた緑のものがあった。ここがどこで、何丁目かという住所が記された表示板。それが偶然にも彼の目に留まり、無意識に足が電柱に向かい動いた。
「電柱がアレなら…ここは日本なの…か………」
歩んだ足が止まる。小走りをしていた足は彼の目にとまった「それ」を見て脱力したように勢いを失っていく。それが事実なのかと、これが本当のことなのかと、彼は目の前の現実を疑った。目をこすり、頭を振るい、そして自分の意識を疑った。
「―――東京…!?」
東京新宿区。そこには確かにそう書かれていた。
日本の大都市、首都であり経済の中心地。誰もが憧れるだろう都会の地。
それが
「けど…この惨状は一体…」
あの大都市が、どうしてここまで破壊されてしまったのか。なぜこんな風になってしまっているのか。どうして東京が滅ぼされたか。生き残った人は居るのだろうか。
他の人、仲間はどうなっているか。
一体、この町で何が起こっているのか。
その全てを探り、知ろうとした次の瞬間
静かな世界は崩される
「―――――――――!!!!」
「ッ………!?」
激しい轟音が彼の背から鳴り響く。それは幾つもの音が重なり、雑音にも似た破壊だけのものだった。建物の一部が砕かれる破壊音、コンクリート素材が地面に落ちる衝撃、そして、その中に響くひとつの巨体。
「ど…ドラ…!?」
黒い巨体は三階建ての建物と並び、小さな手には三本の爪、そしてそれと同じように白い牙が口からは曝け出されている。鋭い目はしっかりと小さな彼の目と合わせられ、真っ向から食らいつくすといった意思表示を、言葉を通わせずにも理解させる。
見た目はT-レックスのような姿をしているが、ディアーリーズにはそれが恐竜の類にはとても思えない。その姿は、むしろドラゴンに近いからだ。
「東京に…!? まさかコイツが…」
突如現れた黒いドラゴン、その目はディアーリーズを捉えている。巨大な目だから多少はそれているのではないかと思えるが、直感的に捉えていると、見ているというのが分かってしまう。気配、視線、そして殺気が間違いなく自分に向けられているのだ。
それだけで、ヤツは間違いなく自分を食べる気だという確信が持てた。
ズシッと音を立てて一歩、足を地面につける。姿勢が安定し、次の行動の体勢が整ったドラゴンは鋭い爪を立てて突きつけてくる。あの短い手が自分を貫こうと襲い掛かる。
「ッ………!」
だが、相手が悪かったな。と言うかのように貫かれる獲物は落ち着いていた。
これから刺されるというのに、貫かれるというのに、彼は慌てることも怯えることも、絶望する事もしない。唯々目の前の光景を見てタイミングを計っているかのように、その身を構えていた。
なにせ、今からドラゴンが相手をするのは今までのとは違う、ただの人間ではないのだ。
彼は異能を持つ特別な者。仮面ライダーというものになり、様々な力も扱える旅団の一人ディアーリーズである―――――ハズだった。
「………えっ」
刹那。ディアーリーズはタイミングを計って地面を勢いよく蹴り、バックステップで後ろへと下がる。彼の立っていた場所は鋭い爪が地面を抉り、白い刃は傷一つなく貫いた。手の長さはあまりないというのに、その爪で攻撃するという事には流石の彼も内心では驚いていた。先入観故の見落としだ。そのせいで襲われた人も、虚を突かれただろうと。
しかし、彼のその爪への関心は地面にもう一度足をつけたと同時に消え去る。それは一時の関心と驚きで、些末事にも変わりはなかったのだ。
彼にとって、重要なのがもう一つ。それは同時に問題でもあった。
「ベルトが…!?」
彼がいつも持ち歩いているものがない。仮面ライダーに変身するための物。戦うためのアイテムの数々。さらには武器やデバイスに至るまで。ドラゴンが現れる前に確かめていた筈だが、彼はそれをすっかりと忘れていた。
何かが足りないという欠落と忘却で、それが今やっと分かった瞬間だ。
彼は今、完全な文字通りの丸腰なのだ。
「デバイスも…刀もない…!?」
いったいどうしてなのかと考えたいところだが、それを目の前のドラゴンが許してくれるわけがない。一撃で終わる筈だった狩りが、余計な手間を増やすハメになってしまったのだ。
簡単に食われない獲物に苛立ったドラゴンは、爪を地面から抜くと、そのまま身を屈める。今度は爪ではなく、更に鋭く大量の牙をもって直接食らいつきにきたのだ。
「チッ…!!」
丸腰の状態に今更に気が付いたディアーリーズは舌打ちをする。確かに武器や返信ベルトなどはないが、戦えないわけではない。自分の武器がなにひとつない事に対しての悪態だが、彼にはまだ戦う術は残っている。武器がなくても、彼には魔術…いや、魔法がある。
「ドラゴン相手には…!」
高火力の攻撃が常道だと、ディアーリーズは右手に魔力を集める。神話の生物であるドラゴンに対しては、並みの攻撃や火力では意味がないのは当然のことだ。恐らく、今の状態でそんな生半可な攻撃をすれば確実にドラゴンに食われる。であれば、最初から手加減なしの攻撃をするしかない。
「これで燃えて…!!」
技は炎の剣「燃え盛る紅蓮の炎剣」。魔力で作り出した炎の大剣で相手を切り裂く一撃の魔法だ。その一撃を直接、口の中に叩き込めばどうなるか。
確実にドラゴンの口の中は声にならない叫びと炎が吐き出されるだろう。
―――炎が叩き込まれれば、だが。
「………!?」
咄嗟に地面を蹴り、今度は後ろではなく彼から見て左に回避する。無意識に近い反射の反応で動いた体は、考えと結論が出る前に動き生存本能に従って攻撃を回避する。
空を切り、鉄のように硬い牙が閉じられると、空気だけを食らいついたドラゴンは苛立ったように逃げる彼の姿を捉えた。
何故、ただの餌がここまで逃げられると。
どうして、自分の魔法までも使えなくなっているのかと。
魔力すら集まらない現実にディアーリーズは自分の手と力と、その感覚を疑う。
いつもの様に、手に魔力を集めて攻撃するだけの簡単な手順のハズ。そして、それを相手に食らわせればいいだけのハズなのに。攻撃以前に、彼の手には魔力すら集まらない。感覚的に行っていた筈なのに、それがただの手遊びであるかのように何も起こらないのだ。
「どういう…!?」
「――――――――!!」
その瞬間、ディアーリーズは完全な丸腰になってしまい、今まで持っていた力を全て失ってしまった。魔法すらも発動しないという事態に戸惑う事しかできない。ただでさえデバイスの類でさえもないというのに、魔力の類すらも消え失せてしまったのでは戦い様がない。
だが、まだ完全に諦めたわけでもない。避けることだけでも、逃げることだけでもまだできる。
生き残るすべはまだ残っている。
「くそっ…!」
未だ自分を捕食することを諦めようとしないドラゴンの目に、ディアーリーズの頭の中は僅かに白くなる。まだ体は動き、頭は回るが、現状の絶望さに言葉もでない、信じたくもなかった。辛うじて生存本能と、残された自意識によって体は動いているが、次第に打つ手が無くなってくると彼の思考も段々と逃げと諦めに傾倒していくだろう。
その前に、彼はこの場から逃げるしかない。
「なんで…!?」
「――――――――――!!」
刹那、ドラゴンが再び咆哮する。今度は逃がさないという意思表示なのか、先ほどよりも力強く、そしてその威圧で獲物の足を止めようとしている。こんなことでディアーリーズは足を止めることはないのだが、正直今は足を止めて自分の体のことを知りたいと思っていた。
一体どうして何もできなくなっているのか、と。
(武器もない、魔法もダメ。残るは自分の体だけ…!? 格闘戦は出来るけど…コイツ相手には分が悪いか…!)
流石にここで立ち向かうのは
「クッ……流石に僕も、ここで死ぬ気はない…!」
地を踏みしめ、足を構えるディアーリーズはそれでも抵抗せんとドラゴンと目を合わせる。
捕食者として絶対の地位と自信を持っているだろうという、その考え。それを少しでも狂わせるために、彼は抵抗をする。
獲物が食事に抗おうとしている姿に、ドラゴンの目は僅かに細くなる。未だ抵抗の意思を見せている彼の姿に腹を立てたのだろう。食べる存在と食べられる存在。本来それだけの関係だというのに、今はその法則が乱れている。食べようとしても、その
「――――――――!!!」
再度放たれた咆哮は、彼から聞いても苛立ちが分かる。逃げる彼に相当腹が立っているのだろう。本来ただ食べられるだけの獲物が、ここまで逃げているのだ。人からすれば、目の前にある料理が意思をもって逃げ出しているのと同じで、苛立つのも無理はないと同情も思ってしまう。
しかし相手はドラゴンだ。下手なことを僅かでもすれば確実に食われる。特に今のような丸腰だと細心の注意を払わねば、あの爪か牙の餌食になる。その点は彼がしっかりと相手の武器と動きを視界にとらえていれば問題はないが、問題はドラゴンはそれ以外にどんな攻撃をしてくるかだ。
(あの爪と牙だけで…終わる筈はないよな)
ドラゴンと言えばブレスを吐いて来るという一般的な考えがあるが、目の前にいるドラゴンはそれをしてこない。一概にドラゴンがブレスをするというのは、ある意味間違いだ。個体によっては吐く存在も居れば吐かないヤツだっている。
「………相手の出方を窺うしかないな」
相手の動きを読むため、手口を知るためにディアーリーズは瞬きもせずに黒い巨体を睨み続ける。
「―――――――!!」
そして。ドラゴンは再びその巨体を動かし、彼へと襲い掛かる。巨体に似合った重い足ふみを一歩ずつ、静かな振動を響かせる。
鈍い動きだが、その一歩の振動で逃げる者も腰を引かせるだろう。
今度は爪か、それとも牙か。はたまた。
迫りくるドラゴンを睨み、ディアーリーズは地面を蹴った。
「――――――ストップですよ」
次の瞬間。彼の耳に誰かの声が聞こえてくる。
その声を聞いた瞬間、足は僅かだが動きが緩み脱力したかのように歩みを止めようとしかけた。が、辛うじて意識がもたせ、彼の足は再び前に進む。
その瞬間に聞こえた声に、反応したディアーリーズは立ち向かう事にだけ向けていた意識を、ドラゴンの股の向こう側に目と意識を向けた。
「生体ハッキングシステム始動。対Dシステムによる、ドラゴンの全神経ハッキングを開始」
ドラゴンの動きが停まる。目の前に居る獲物と十分な間合いが取れたことからの接近戦の攻撃を行おうと、鋭く大きな爪を振り上げたが、声が聞こえて来たと同時に腕が振り下ろせなくなった。自分から止めたのではない。誰かが腕を握って制止しているかのように、腕がぴたりと動かなくなってしまったのだ。
「神経を始め、全筋肉の掌握を確認。骨格を把握、掌握開始」
腕が動かないのであれば足をと、鱗に覆われた太い足を振り上げようとするが、これも同じく動かない。四肢はドラゴンが気付かぬ間に完全に動きを止めてしまった。
否、止められたのだ。自分からではない、外部の誰かが。
「骨格の掌握を確認。対象の全行動停止。神経の制圧による自由意志の拘束を確認」
だが、一体誰が。どうやって。
未だ分からないこの事態に戸惑うことしかできないドラゴン。動けない苛立ちからの怒りの咆哮を上げようにも顎も口すらも、縛られたように微動すらできなくなっていた。
「対象の全行動能力の制圧を確認。―――ハッキング完了です」
完全に動きを止められたドラゴンは硬直した状態で突っ立っていることしかできなくなってしまう。その間に、獲物であるディアーリーズは立ち向かうこともせずに、そのままドラゴンの股の間をすりぬけて背へと出た。
その向こう側に立っていた人物、ドラゴンを
「――――――まさか」
「おや。そんなに驚きですか? 私がこうして生きていることが」
驚きかと言われればそうだが、理由は違う。ただ彼の行動が、彼の存在がディアーリーズにとっては衝撃の一言に集約されていたのだ。まるで自分の置かれている状況全てが馬鹿馬鹿しく思えてしまう状態と立ち振る舞い。白衣をなびかせ、片手には浮いた投影式のキーボードがある。
恐らく、そのキーボードによってドラゴンを止めたのだろう。
「…いえ。私が居ること。そして、目の前のドラゴンを手玉にしていることが、ですよね?」
まるで思考を読んでいるかのような言い方。それは的を得ていて、確かにディアーリーズはふらつく足取りの中でそう思っていた。
それを全て一言にまとめると
「…なんで、貴方が?」
「………さぁ? なぜでしょうか」
その一言を軽くあしらい、旅団メンバーの一人であり最凶のマッドサイエンティストである竜神丸は立っていた。
「―――お久しぶりですね。ディアーリーズ」
「………え。そんなに経ってますっけ?」
「こちらではね。かれこれ一か月は」
微動もしない立ち方で質問に答える竜神丸。彼が一か月というのだから、自分もそれだけ記憶が飛んでいるか曖昧かなのだろう。
が、それ以前にディアーリーズは今の状況について色々と聞きたいことがあった。
ドラゴンのこと。そして、自分の力のこと。あと、些細なことだが竜神丸の服装と武器と。
「………取りあえず、この場合はどうしたら?」
「さぁ? あ。餌になります?」
「絶対にお断りします」
「絶対」を強調した言い方で即答するディアーリーズにクスクスと笑う。よく見れば、彼の姿はどこかいつもと違っていたが、改めて落ち着いてみると服装がかなり違っていた。
彼のアイデンティティと言うべきものであり、特徴でもある白衣。それは何時ものと同じだか、中に着込んでいるのは軍人のような白い制服。腰や肩のあたりには何やらポーチなどが下げられている。
そして、腰には銀色のバレルが長いリボルバーが二挺。恐らく自衛用だろう。だが、竜神丸の能力からすれば、銃自体は要らないもののハズだ。それがどうして彼が持っているのか。
「…まぁ…見た目については後でいいか…兎も角、今は…!」
「力が出ない、使えない理由ですよね。わかってますよ」
なにせ。と言った竜神丸はピンと指を一本立てる。そして。
「私も使えなくなってますから」
と。ディアーリーズにとって、衝撃の爆弾発言を投下した。
「……………は!?」
刹那。バキン、と何かガラス類が壊されるかのような音がディアーリーズの背から響く。反射的に振り向くと、硬直していた筈のドラゴンが動き出し首だけを彼らの居る方へと向けていた。その目は先ほどよりも充血になっており、かなり苛立っていた。
「なっ!?」
「ああ。忘れてましたね」
「え、そんな呑気に!?」
「いやぁ、貴方と話していたらハッキングの制御をすっかりと忘れてましたからね。仕方ありません」
「仕方ないって…!」
「まぁまぁ。あとは
黒いドラゴンが竜神丸の手から離れて怒りの目を向ける。もう情けも余裕すらもない。ただ食らいつくすのみ。残す考えは何もない。ただもう我慢ならないので力でねじ伏せ、食らうだけ。
なのに、竜神丸はそれをあざ笑うかのように余裕な態度を保っていた。
「さて。こっちの仕込みは終わりましたので。あとはご推移に」
「え。終わりって…」
「私の役割がですよ」
「せめてもう少し止めて下さいよ!?」
「必要ありません。時間は十分に稼ぎましたからね
―――あとは、貴方たちが片してくださいね。Blazさん。げんぶさん」
なにせ。彼らが裏に回るだけの時間稼ぎは十分に果たせたのだ。
あとは彼ら二人による、ドラゴンの捌きが行われるだろう。
全てを計画していたその行いに、ディアーリーズは唯々言葉を失うだけだった。
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暇なんで作りました。
タイトルは作中にも出ます。
で。ひとつ。
今回登場する旅団メンバーは身体能力を除いて、能力は全部ありません。
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