「おーい、カミュ!」
小さな赤髪の少年を、金髪の癖毛の少年が呼んだ。
「…何?」
あからさまに不機嫌そうなカミュ。
そんなことを意にも介していないように、金髪の少年は息をきらせながら、走ってきた。
「何って、おいていくことないだろ?」
「私に用事はない」
まだ声変わりをしてない少年の、冷たいとも取れる声音。
「好きなんだら、一緒にいたいんだ」
そう、悪びれもなく言い放つ少年を、見ようともせずカミュは歩きだす。
「まてよ!」
また彼はあわてて追いかける。
「・・ついてくるな」
立ち止まったカミュはそれだけを言った。
カミュはいらいらする理由が、ミロのせいだと思っていた。
毎日のように纏わりつかれ、朝といわず夜といわず、生活を脅かしてくる。
ただでさえ、頼れる人間は若干14才のサガとアイオロスのみ。
あとは見知らぬ子供だけ。
自分がどこの出身であるかくらいしかわからぬ身の上。
これで安穏としていられるミロが、たぶん嫌いだった。
はあ…
ため息が漏れる。
質素な夕食を終え、片づけをする。
また、くるだろう、彼は。
「カミュ!星がきれいだぜ?見に行こう!」
突然開かれる扉。
案の定、ミロが扉から飛び込んできた。
「なあ、いこうぜ!」
いつも強引。
「いやだといっても、連れていくのだろう?」
「いやじゃないだろ?」
そう、いつも切り返される。
また、ため息が漏れた。
いつかは邪魔だといってやらねばらない。
それが彼ためだし、自分のためだ。
そう思いながら、ミロのあとに続く。
どんどんミロは歩いていく。
あまり遠くまでいくことは、修行の身である自分たちにはいけないこと。
「…こんなとこまできたら・・」
「いや、ここだよ。ここがきれいなんだ!」
ミロはそういうと、少し高くなった岩の上に座った。
しぶしぶ従うカミュ。
「きれいだろ?こんなに星がきれいに見える!見せてやりたかったんだ、カミュに」
にこっと微笑むミロから顔をそむけ、カミュは空を見上げた。
まさしく満天の夜空。
星が、きれいだった。
自分の守護すべき星座が、なにより目に飛びこんできた。
いや、ひきつけられた。
ミロはその様子をじっと見た。
「すごいだろ?」
見上げて感動しているカミュに声をかける。
「…聖闘士、ならないなんていうなよな…」
「え…」
カミュの瞳が、初めて正面からミロを捕らえた。
「…なんとなく、そう感じたんだ。いやみたいだなって。どうしてかはわからないけど、そう思ったんだ」
ミロのまっすぐな瞳はカミュとその後ろの星座を見つめた。
「俺だって考えたさ」
「…」
「だけど、これは俺にしか出来ないことだと思ったから、いや、今は俺がやりたいと思ってるんだ」
「…どうしてそう思った?」
小さな呟き。
ミロはにかっと破顔した。
「カミュに会えたから。カミュと一緒に聖闘士になって肩を並べたいだ!」
「…ミロ」
「だからさ、一緒にがんばろうぜ!俺はカミュを守れるような男になる!」
そんなばかばかしい言葉に思わず笑みが漏れた。
ああ、そうか、自分がどうかしていた。
運命だから、やらなきゃいけないからと、自分をごまかしてきたからね何もかもいやだったんだ。
れそよりも、ミロのようにやれることをやろうとする姿勢、それがうらやましく、楽しそうだったのが、きっと認めたくなくて嫌いだったんた。
「でも、カミュががんばっている姿をみて、俺も負けられないなって思ったんだ」
邪気のないミロの笑顔。
その笑顔を向けられて、カミュは違うため息をついた。
すっきりした・・自分だけじゃなかった・・
「・・負けない、ミロなんかには…」
そういって、いたずらっぽく笑ったのだった。
end
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★矢ミロカミュ