No.88607

【★矢】幼き日

たけさん

★矢ミロカミュ

2009-08-07 21:49:57 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1212   閲覧ユーザー数:1192

「おーい、カミュ!」

小さな赤髪の少年を、金髪の癖毛の少年が呼んだ。

「…何?」

あからさまに不機嫌そうなカミュ。

そんなことを意にも介していないように、金髪の少年は息をきらせながら、走ってきた。

「何って、おいていくことないだろ?」

「私に用事はない」

まだ声変わりをしてない少年の、冷たいとも取れる声音。

「好きなんだら、一緒にいたいんだ」

そう、悪びれもなく言い放つ少年を、見ようともせずカミュは歩きだす。

「まてよ!」

また彼はあわてて追いかける。

「・・ついてくるな」

立ち止まったカミュはそれだけを言った。

カミュはいらいらする理由が、ミロのせいだと思っていた。

毎日のように纏わりつかれ、朝といわず夜といわず、生活を脅かしてくる。

ただでさえ、頼れる人間は若干14才のサガとアイオロスのみ。

あとは見知らぬ子供だけ。

自分がどこの出身であるかくらいしかわからぬ身の上。

これで安穏としていられるミロが、たぶん嫌いだった。

はあ…

ため息が漏れる。

質素な夕食を終え、片づけをする。

また、くるだろう、彼は。

「カミュ!星がきれいだぜ?見に行こう!」

突然開かれる扉。

案の定、ミロが扉から飛び込んできた。

「なあ、いこうぜ!」

いつも強引。

「いやだといっても、連れていくのだろう?」

「いやじゃないだろ?」

そう、いつも切り返される。

また、ため息が漏れた。

いつかは邪魔だといってやらねばらない。

それが彼ためだし、自分のためだ。

そう思いながら、ミロのあとに続く。

どんどんミロは歩いていく。

あまり遠くまでいくことは、修行の身である自分たちにはいけないこと。

「…こんなとこまできたら・・」

「いや、ここだよ。ここがきれいなんだ!」

ミロはそういうと、少し高くなった岩の上に座った。

しぶしぶ従うカミュ。

「きれいだろ?こんなに星がきれいに見える!見せてやりたかったんだ、カミュに」

にこっと微笑むミロから顔をそむけ、カミュは空を見上げた。

まさしく満天の夜空。

星が、きれいだった。

自分の守護すべき星座が、なにより目に飛びこんできた。

いや、ひきつけられた。

ミロはその様子をじっと見た。

「すごいだろ?」

見上げて感動しているカミュに声をかける。

「…聖闘士、ならないなんていうなよな…」

「え…」

カミュの瞳が、初めて正面からミロを捕らえた。

「…なんとなく、そう感じたんだ。いやみたいだなって。どうしてかはわからないけど、そう思ったんだ」

ミロのまっすぐな瞳はカミュとその後ろの星座を見つめた。

「俺だって考えたさ」

「…」

「だけど、これは俺にしか出来ないことだと思ったから、いや、今は俺がやりたいと思ってるんだ」

「…どうしてそう思った?」

小さな呟き。

ミロはにかっと破顔した。

「カミュに会えたから。カミュと一緒に聖闘士になって肩を並べたいだ!」

「…ミロ」

「だからさ、一緒にがんばろうぜ!俺はカミュを守れるような男になる!」

そんなばかばかしい言葉に思わず笑みが漏れた。

ああ、そうか、自分がどうかしていた。

運命だから、やらなきゃいけないからと、自分をごまかしてきたからね何もかもいやだったんだ。

れそよりも、ミロのようにやれることをやろうとする姿勢、それがうらやましく、楽しそうだったのが、きっと認めたくなくて嫌いだったんた。

「でも、カミュががんばっている姿をみて、俺も負けられないなって思ったんだ」

邪気のないミロの笑顔。

その笑顔を向けられて、カミュは違うため息をついた。

すっきりした・・自分だけじゃなかった・・

「・・負けない、ミロなんかには…」

そういって、いたずらっぽく笑ったのだった。

 

end


 
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