No.879983

艦隊 真・恋姫無双 120話目

いたさん

今回は長いです。 一刀を起こすつもりが……次回へ持ち越しに。

2016-11-20 00:59:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1272   閲覧ユーザー数:1078

 

【 待ち合わせ の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

??「……………………」

 

赤城「ううぅ…………待ってたのに、待ってたのにぃ……遅かったじゃないですか!! 桂花さん相手にするのは、もう勘弁して下さい!」

 

??「…………大丈夫、これくらい赤城さんなら鎧袖一触よ。 心配なんていらないわ」

 

ーー

 

桂花「アンタまで……こうして来るなんてね。 いつの間に赤城と手を結んだの? そんな積極的に動いた様子もないのに…………」

 

??「……………汁粉……分けて貰った。 お腹……空いていたから……」

 

赤城「だって……だって! 私が食べようとすると、可愛い顔を寄せて物欲しそうに、つぶらな瞳で汁粉と私の顔を交互に見るんですよっ!? 半分分けてあげないと、完全に私が悪者じゃないですかぁ!?!?」

 

桂花「…………………うん、聞いて悪かったわよ。 だから、血涙を流しながら私に訴えないで。 気持ちは判るから………」

 

ねね「コ、コラァ──ッ!! 二人して何を無視してしやがるんですかぁ! 此処にも陳公台という恋殿専属の軍師が居るのですぞ!!」ガァー!

 

ーーー

 

赤城と桂花は、自分達の前に現れた女達と出会う。 

 

赤城が待ち構えていた人物は、この『三人』だったのだ。 ちなみに、前作で覗き見していたのが加賀で、近付いたのは恋である。 

 

『??』にしたけど、何人とは明確にしていませんので、あしからず。

 

───えっ、『ねね』は何処に居たのかって? 

 

多分、二人に隠れて見えなかったんじゃないかな。 

 

だって、お子さま体型だから──── 

 

ーー

 

ねね「恋殿ぉ! この馬鹿作者は、ねねに対して非礼を働きましたぞ! 少し御待ち頂ければ、『ちんきゅうきりもみ反転きっく』を食らわせてやれます! そうなれば、地獄の苦しみで七転八倒すること間違いないでしょ!!」

 

恋「………ダメ。 話が……進まなくなる……」ムシャムシャ

 

ねね「さ、流石……恋殿ぉぉぉ! 慈悲深い配慮……ねねは感激致しました!」

 

ーー

 

──あ、危なかった。

 

念の為に袖の下を通したのが……功を奏したようで。 

 

まあ、作者の事は兎も角、話を進めましょうか。

 

ーー

 

桂花「これは………どういう事?」

 

加賀「………鳳翔からの指示よ。 貴女が……提督と……その……」

 

恋「………ご主人様……桂花が起こす。 恋……見張り……する」

 

桂花「──はっ? 言っている事が……よく判らないわよ。 私に何を……」

 

赤城「桂花さん……私が貴女を連れて来たのは、力添えして貰いたかったからなんです。 提督を、北郷一刀を……目覚めさせて貰いたい為に…………」

 

桂花「ア、アンタ達が言ってた…………目覚めの接吻っ!?」

 

ーー

 

加賀、赤城、恋の三名が語る内容に、身体が固まる桂花。 

 

だが、この話は、艦娘側から提案が先程あったのだが、華琳からの横槍が入り、そのまま流されている状態。 

 

今も、『艦娘側が漢王朝を崩壊に導く謀を考えている』と難癖を付けて、追及しているところであり、この騒ぎで一刀を目覚めさせる件には、未だに実行を起こせずにいたのだ。

 

その提案が、急に浮上し実現を強硬に押し付けてきたので、さすがの桂花も驚愕する。 幾ら事前に知っていたとしても、心構えが出来ていないのだ。

 

だが、驚く事は他にもあり───

 

ーー

 

恋「…………桂花………」

 

桂花「───な、何よっ!?」

 

恋「接吻する時………舌……入れる?」

 

桂花「 !?Σ (((゜□゜;)))) 」

 

ねね「(れ、恋殿ぉおおおっ!?!?)」

 

赤城「か、かか、加賀さんっ! 今の言葉を聞きましたぁ!? な、なんて………う、羨まし……い事を!!!」

 

加賀「………………」

 

赤城「あ、あれ………加賀さん……?」

 

加賀「…………あぁ……いえ。 何でもない、何でもないわ……赤城さん」

 

赤城「加賀さん……声掛けている場所………私のお腹です……」

 

ーー

 

桂花と恋のやり取りに衝撃が走る!

 

恋から思いもよらぬ話が出て、その方法を具体的に思い浮かべた桂花の顔が、音を立てて真っ赤になり、両手で左右の頬を押さえてイヤイヤと首を振る。 

 

ねねは声無き雄叫びを上げ、赤城と加賀が少なからずダメージを受けた。

 

 

 

────少し落ち着いた後で四名が、付近に注意して白い幕に囲まれた中に入って行く。 恋以外、顔を真っ赤に染まながら───

 

 

◆◇◆

 

【 北風 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

華琳は、打たれた頬の痛みにも気にせず、鳳翔を睨み付けるが、鳳翔は平然としている。 顔は微笑を浮かべるが、目は笑ってなどいなかった。

 

ーー

 

鳳翔「これで、頭が少し……冷えましたか?」

 

華琳「どういう……こと!? 幾ら天の御遣いとはいえ、一定の地位ある者に対する行いじゃないわ! だけど……ふふふ……貴女の心証は、これで更に悪くなったわ。 この事も含め、一刀に伝えれば───」

 

鳳翔「いい加減になさいっ!!」

 

華琳「────!?」

 

ーー

 

華琳の言葉に鳳翔が一喝し、その語ろうとした次の文句を封じる。 

 

その姿は、かの鎮守府で愛された居酒屋の女将の顔ではなく、今は過ぎ去りし昭和のオカンを彷彿とさせた。

 

ーー

 

鳳翔「心証が悪くなる? それは、こちらの台詞ですっ!」

 

華琳「────!?!?(な、何なの!? 抗えない! 怖くて……身体が反応……出来ない! 戦場の空気とは全然違い、懐かしくも安心感はあるのに……この異様な罪の意識、罪悪感が込み上げてくる──)」

 

鳳翔「先程から聞いて入れば何ですか! 人の話を聞かない、憶測で人を疑う、感情に振り回されて当たり散らす! 全く、いい歳をして恥ずかしくないんですかっ!?」

 

華琳「だけど、そ、それは……今、話した通り───」

 

鳳翔「何度でも言わせて貰いますが、貴女が話した内容は憶測、つまり自分の都合のいい作り話ですよ? それを、あの聡明な提督に、鬼の首を取ったような事を伝えれば……どうなると思ってるんですかっ?」 

 

華琳「だから……証拠を提示すれば………『証拠?』──ひっ!?」

 

ーー

 

華琳が反論しようと、覇気を纏い言葉に乗せて発言するが、鳳翔の絶対零度に近い冷たい一言が発しられると、呆気なく霧散し身体が縮こまる。

 

鳳翔の眼光炯々とした視線が華琳に向けられ、思わず頭を垂れる華琳を射抜く。 華琳は、まるで蛇に睨まれた蛙の如く、または、母親に叱られる幼子のようにも似ている。 どちらにしても、少しも身動きする事が出来ない!

 

ーー

 

鳳翔「証拠という物は人証と物証があり、それがあればこそ、提督は事態を重く見て私達を隔離するなりするでしょう。 しかし、そのどちらも貴女に渡る事はありません! 何故なら──私達は罪など犯していないからです!」

 

華琳「そ、そんな訳ぇ──『お黙りなさい!』──っ!!」

 

鳳翔「──貴女からの理由は既に聞きました。 ならば、今度は私の反論を述べさせて貰うのが筋。 貴女は黙って吟味していなさい! それから、反論があるなら、じっくり聞きましょう。 ───全ては、それからです!」

 

華琳「…………………はい」

 

ーー

 

鳳翔は、華琳の神妙たる態度に満足して語り出す。

 

余談だが、艦娘側も恋姫側も鳳翔の豹変した態度に、怯えぬ者は居なかった。

 

特に西涼の馬一族は、何かを思い出したのか……震えが暫く止まらなかったそうである。 

 

 

◆◇◆

 

【 忘れらた存在 の件 】

 

〖  ?? にて 〗

 

───桂花や鳳翔が動き出した頃

 

ーー

 

一刀「……………ふう~」ズズゥ~

 

北郷一刀「やっぱり、此処だと……ゆったりとできる……」

 

一刀「ああ………お茶が美味い……」

 

ーー

 

北郷一刀の仮想空間では、擬似的に作られた田舎の農村の風景を眺め、大きな屋敷の縁側で、茶を飲みながら寛ぐ、男二人の姿があった。

 

時は夕暮れ、空には親子だと思われる烏が、三羽、四羽と列を作って山に向かう。 どこか遠くからは、牛の鳴き声らしく動物の声が聞こえる。

 

ーー

 

北郷一刀「こういう景色を造り出す俺って、やっぱり日本人だな………そんな当たり前の事を……しみじみ思うんですよ。 べ、別に華琳達との生活が嫌だったからとかじゃなく、何て言うか………帰巣本能?」

 

一刀「………そうですね。 私から言わせて貰えば、日本人の憧憬と言うか、故郷への哀愁と言うか………」

 

北郷一刀「おおっ!? やっぱり、軍人の俺が言うと言葉の重みが違う!」

 

一刀「とんでもない! そういう風にしか学ばざる得なかった……それだけですよ。 本当は、もっと広く深く学べば……的確な言葉で紡げたと思うのですが………今の私には、これが限界です」

 

北郷一刀「いやいや──それで十分、十分だから!!」

 

一刀「しかし、横に居るのが私では無く、あの世界で貴方を慕う者達が居れば、私よりも的確な、別の言葉を掛けてくれると思いますが………」

 

北郷一刀「そうだな……横に居るのが華琳や桂花だったら、ただの勉強不足と辛辣に言われるな………うん。 次いでに、後方から桃香や月に慰められて……最後に思春から嫌味を言われる。 ははは………懐かしいな………」

 

一刀「…………………」

 

ーー

 

縁側に坐りながら、仲良く話をする二人。 

 

環境、年齢と後天的要素は違えど、先天的要素は同じ人物。 あれから心を通じ合わせるのには、それほど時間が掛からなかった。

 

ーー

 

一刀「ああ………久しぶりにゆっくり出来ました。 近頃、忙しくて身体を休める暇がなかったものですから。 北郷さんには……何と御礼を言えば……」

 

北郷一刀「…………だから、そう改まる必要なんて……」

 

一刀「ええ、ですから『様』は止めて『さん』にしました。 もう、これ以上の譲歩は絶対にしませんよ? 貴方が私より先なんですから、敬うのは当然なんです。 ────海軍精神の矜恃に懸けても!」

 

北郷一刀「…………まるで、愛紗だな。 そこまで言うなら、曲げる事なんか無いだろう……わかった、認めるよ。 ただし……俺も貴方の事を今度から『提督』と呼ばせて貰うから。 それとも『司令官』の方が良いかな?」

 

一刀「ちょっ──」

 

北郷一刀「海軍精神の矜恃に懸けるのなら、呼称も海軍の階級にしなければ意味が無いと思うよ? それに、俺が先駆者なら上に従うのが理。 軍人なら指揮系統を明確にすべき──だったよね、一刀『提督』?」

 

一刀「──そ、その通り……」

 

北郷一刀「まあまあ、そんな怖い顔しないでよ。 俺だって風や稟、冥琳や穏達に兵法を教え込まれたんだから、これくらいは、ね。 『人の愛すべき所を攻めよ』……孫子、だったかな? その教えに従っただけだから」ニヤッ

 

一刀「───くっ! 海軍の矜恃が、まさか逆手に取られるなんて………」

 

北郷一刀「(駄目だな。 目の前で俺自身が『くっ殺』と似た台詞を言われても………萌えの要素がまるで無いわ………)」

 

ーー

 

そんな、どうでもいい話を頭に浮かべる北郷一刀であった。

 

 

◆◇◆

 

【 鳳翔の理由 の件 】

 

〖 都城内 予備室 にて 〗

 

鳳翔は、華琳達を相手に説明する。

 

ーー

 

鳳翔「貴女方の申し分、実によく判りました。 私達が官吏の方々の間で何かしらの密約を交わしたではないかという疑い、それと同時に何らかの理由で倒れ伏した官吏の行動。 それが私達の仕業……と見ていると?」

 

華琳「………異論は無いわ」

 

冥琳「確かに間違いない。 だが、貴女達は我ら孫呉へ力添えしていただいた金剛殿の仲間。 都合良すぎるようだが、私としては貴殿を味方と信じたい。 蓮華様ならば、迷う事なく貴女達を信じると賛同されると思うが……」

 

詠「ボクとしては、当事者の意見を聞きたいのよ。 もし、これが冤罪なら、ボクはアンタ達の味方として付く。 一方的に決め付けられたて、罪を擦りつけられるのを見るのは、もう御免だわ!」

 

鳳翔「………宜しいようですね。 では、御説明しましょうか」

 

ーー

 

鳳翔の目の前には、正座した三人が座る。 

 

真ん中に華琳、右に冥琳、左に詠と並び、華琳だけ二人より一歩分、前に出ていた。 別の言い方をすれば、それだけ鳳翔に近いと言う事。 華琳の顔は緊張と恐怖で青褪め、身体も固く強張る。 

 

──ポフッ

 

華琳の頭の上に小さく温かい物が乗り、ゆっくりと撫でる。 その温かさが華琳の心に緩やかに緊張感を解してくれた。

 

ーー

 

華琳「───えっ?」

 

鳳翔「御説教は先程の話で終わりですよ。 今度は普通の説明ですから、よく聞いて下さいね」

 

華琳「……………」

 

ーー

 

華琳の緊張を解くと、鳳翔は話を語りだした。

 

 

★☆★

 

 

あの時、私達は提督と皆さんの宴席へ間に合わせるよう調理の真っ最中。 食材を切り分け、煮込む物、焼く物と調理したり、粉物を混ぜ合わせて揚げたり、炒めたり、蒸したりと準備をしていました。 

 

すると、厨房の外に官吏が訪れたと、私に伝えられたのです。

 

ーー

 

 

『ほ、鳳翔さん……お客さ……えっ? きゃあ──っ!?』

 

『むふぅ~! やっぱ、潮のが一番揉みがいがあるわ~』

 

『や、やだぁ! こんなとこでぇ──』

 

『あ、鳳翔さん! 来客だよ! 服も一緒、顔も一緒だから、あれはモブキャラだよ、モブキャラ! あぁ……でも、重要っぽい話をするからサブキャラ扱いかな~? うぅ~ん、そんな事より癒されるわぁ………これぇ~』

 

『あ、あぁん! やだぁ、やだぁよ! は、早く離してぇ………』

 

『───アンタ達、何やってんのよっ!?』

 

『おっ? 曙、キタコレ (σ≧▽≦)σ』

 

『人を指差さないの! まったく、朧が漣を探していたから呼びに来たのに……なに馬鹿やってんのよっ!?』

 

『あ、曙ちゃ~んっ!!』ウワ~ン 

 

『あぁ~っ! もうっ! 潮が泣き出されると仕事にならないじゃない! 七駆協同料理の最終仕上げ、潮の手に掛かってるのにっ!!』 

 

『だって~ご主人様に手料理を食べて貰うんだって、張り切ってる潮を見ていたら、つい手がワキワキしちゃって。 はっ! これは、まさか……Shit!?』

 

『…………嫉妬とShitを掛けたかも、多分。 だけど、漣は待たせ過ぎ。 早く手伝いに来てくれないと、ウサギの丸焼きが追加されるけど?』

 

『そ、それは勘弁して、朧お代官様ぁ~! 漣、真面目! 超ぅ真面目なんだからぁぁぁ!!』ドタドタドタドタッ!

 

『………ほぉら、潮も早く泣き止みなさい! あのクソ提督が潮の料理、腹を空かしたノラ犬みたいに待っているんだから!』

 

『ご、ごめんね……曙ちゃん』

 

『ふん! ………は、早く持っていて上げないと……料理が冷えて……不味くなっちゃうじゃない。 潮が……あんなに頑張ったのに………』

 

『────うんっ!!』

 

 

ーー

 

来訪を聞いた私は、厨房の入り口に行くと官服を来た男が数十人、青い顔して苦しそうに坐り込んでいました。 

 

ただ、その方達……全員官服は下級文官仕様の物ですが、眼光は鋭く、文官より武官と思われる服からでも判る逞しい体躯。 顔は動かさず、目だけを左右上下に気を配り、周囲を警戒をする用心深さ。 

 

『何かある』………そう私を警戒させるのに十分な雰囲気を纏う方達でした。

 

ーー

 

『こ、ここは………大将軍閣下に味方する御遣い様が……いらっしゃると聞いた………のだが……』 

 

『……………貴方は?』

 

『わ、我らは───』

 

ーー

 

その方達は、何進大将軍の指揮下に居た親衛隊だと……名乗りました。 

 

しかし、私と話す度に彼の息は荒くなり、顔に疲労が色濃く浮かび、一見して只事ではない様子を私に伝えてくれます。 

 

慌てて近辺に居た子へ水を持って来るよう頼み、皆さんの様子を再度確認すると、自分の目の前に居る官吏と同じ状態なのが判りました。

 

もう、こうなると料理どころの話ではありません。 調理に関わっている者以外が手を離し、急いで水を飲ませる為に奔走(ほんそう)する事に。

 

その騒ぎが終わり、一息ついた時に話されたのが………その状態『極度の空腹』だったのです。

 

★☆★

 

 

鳳翔はそう話すと、静かに溜息をついた。

 

その時の官吏の様子を思いだして哀れに思ったのか、前日から続く火急の件に疲れを覚えたのか、それは判らない。

 

だが、話の内容は思って以上に深刻だという予測だけは、誰もが思い浮かべたのである。

 

 

 

◆◇◆

 

【 続 理由 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

皆が押し黙る中、詠は苦笑しながら鳳翔へ声を掛ける。

 

ーー

 

詠「それって……この宴席を行う為に食糧不足になった……って笑えない話じゃないのよねぇ?」

 

鳳翔「今回の宴席は、提督独案で開かれた物。 洛陽で保管されている食糧は一切使用しておりません。 遠く益州の地、我が鎮守府に保管されていた物を取り寄せた物。 使用した物は、器具と燃料、水、調味料だけです」

 

詠「……………成る程ね。 材料は自分達から出した方が得策。 無闇に『借り』を作ると、その借りを何倍にも増して請求するのが、現王朝の考えだもの。 それに、此処だと手に入らない物もあったんでしょ?」

 

鳳翔「その通りです。 それに民からの税を私達が一時とは言え、私的な理由で借りるのは、提督の矜恃に反しますので………」

 

詠「……………何が別人よ。 前と全然……変わらないじゃない……」

 

ーー

 

鳳翔の言葉に詠は渋々と頷き、一刀の寝ている場所をチラリと見る。 

 

詠とは別に鳳翔の言葉を吟味していた冥琳は、形の良い顎に手を当て少し考えた後、とある件を思い出して語った。

 

ーー

 

冥琳「すると、この様な状態を招いたのは───何皇后の一件、か?」

 

鳳翔「……………どうして、そう思われます?」

 

冥琳「そもそも、大将軍の臣下なれば食糧難になる訳がない。 大将軍の地位は三公より上、食糧の融通も滞る事なく支給される筈。 そんな地位を持つ方を揺るがす事態が発生したのは、何皇后の件しかあり得ない」

 

詠「それに、陛下との信頼も厚く仕事も有能。 それに部下から信頼も厚いって聞いていたけど、その様な事があるのなら間違いなさそうね。 これじゃ、罷免される理由は一つしかないじゃないの?」

 

華琳「…………………」

 

ーー

 

冥琳の言葉に詠が更なる言葉を付け加え、華琳が無言のままで鳳翔を見る。 

 

鳳翔は「理解が早くて助かります」と苦笑して、続きを説明した。

 

ーー

 

鳳翔「………この数日前に極官達の間で、何皇后は罪状により皇后位を廃位され庶人に落とす事に決定されたそうですよ。 『内密の話』と断りを入れられつつも教えて頂きました。 親衛隊の隊長である『呉匡』様より………」

 

冥琳「すると、縁者が庶民に落とされれば、大将軍──いや、何進殿は元の庶民に戻られる。 いや、実質的には追放処分扱い、か?」 

 

詠「………じゃあ、厨房に集まったきた親衛隊って……既に配置転換が終わって………」

 

鳳翔「臣下の多くは太尉の管轄になりましたが、中には良しとしない者も居ました。 その者達が大将軍失脚を反対して、三公に直訴したのですが逆に怒りを買い、無給扱いで数日間に渡り働かされたそうです」

 

冥琳「無給……だと? 武官は生命を懸けて忠を尽くす官吏だ。 生命の代わりに高い給付は日銭で支払われるが、誰もが貯蓄などを考えなどしない。 死ねば終わり、酒や女、賭け事で散財しまうのにかっ!?」

 

鳳翔「………………」コクリ

 

詠「無給……って。 だけど、城内で仕事しているんでしょ? それなら食事の提供ぐらい、洛陽ならされているんじゃないの!?」

 

鳳翔「提供はあったそうです。 ただ、それが文官並みの食事量しか出されなかったそうで。 そのため、空腹で反抗心が薄れつつも打つ手が無かったと」

 

詠「親衛隊なら大将軍の降格を聞けば、反抗するのは間違いないわ。 それを金と食を制して動きを封じ込め、降格処分を迅速に実行させるなんて………」

 

冥琳「………………権力を握り、策を弄する……か」

 

鳳翔「呉匡様が…………『大将軍をお守り出来なかった』と、悔しそうに男泣きしておいででした」

 

ーー

 

鳳翔の話に、冥琳と詠は顔を見合わせて、何とも言えない表情を浮かべせる。 

確かに、自分達の与り知らない所で、何進降格が進んでいた事は寝耳に水の話である。 何皇后の一件を利用し政敵である何進を陥れ、自分の権力掌握を図る王允の手腕は恐るべき所があった。 

 

───だが、それだけではない。 

 

ーー

 

鳳翔「……ですが、安心して下さい。 親衛隊の皆さんには、此方で料理をお渡しして満足いくまで召し上がって貰いましたので」

 

冥琳「…………すると、この料理から分けて……いや、飢餓で苦しむ者にとって、ここの料理は胃に負担が掛かる。 何か別の負担が少なく柔らかい物を。 だが、羹では長く煮詰めればならぬし、羹用の食材も大量に………」

 

鳳翔「天の国では、小麦粉で団子を作り、味付けした汁に浸して煮詰める料理があります。 固さを調節し、軽く茹でれば……」

 

詠「そ、それって──汁粉の!?」

 

鳳翔「ええ……甘い汁粉とは違い、此方は塩辛い味付けになりますね。 基本は、団子と汁の旨味ですので、後は好みの具合いです」

 

冥琳「……………この調理方法を使えば、飢えに苦しむ民達を救える! しかし、これは……何か秘奥の料理とか………」

 

鳳翔「私達は規制する気はありませんよ? ご自由に作って頂いて構いません。 寧ろ、大いに広めて頂ければ、此方も助かりますので。 汁粉も同様、これらの調理方法を皆さんへ御伝えしますので、是非お試し下されば……」

 

冥琳「も、申し訳ない……! 皆を代表して御礼を申し上げる!」

 

詠「………あ、ありがとう。 月も……絶対喜ぶわ!」

 

鳳翔「これは当然の事ですよ。 此方こそ皆さんには御世話になりましたから。 それに、この料理『水団(すいとん)』は簡単ですが、美味しいですよ? 親衛隊の皆さんも気に入って下さり、食倒れまでされた程です!」

 

「「 ……………………… 」」

 

ーー

 

二人は破顔一笑して喜んだが、鳳翔の最期の言葉で思い付いた。

 

接触して来た文官、倒れた理由。 

 

これは、思春や明命の報告待ち。 

 

しかし、鳳翔の話も真実味があるし『呉匡』の名も聞いた事がある。 猪突猛進の武官で、何進を『姐御』と慕う臣下だと。  

 

問題は、汁粉と水団の情報提供。

 

これを無償贈与するというのだ。 しかも、誰構わず広めて欲しいと。

 

つまり、これは──

 

華琳達の推測の一部が、物の見事に崩れたと理解したからだった。 

 

 

◆◇◆

 

【 太陽 の件 】

 

 

沈黙する冥琳達を心配して、鳳翔が声を掛ける。

 

ーー

 

鳳翔「どうか……なされましたか?」

 

冥琳「い、いや………少し思案をしていただけで………」

 

詠「そうよ! 水団とか汁粉とか………その凄い料理教えて貰って、どうしようかな………って考えていただけよ!」

 

ーー

 

冥琳は鳳翔の心配している顔を窺い、小さく溜息を吐いた。

 

これを後に裏付けを確認すれば、どちらが正しいか直ぐに判るのだが、可能性としては鳳翔の話の方が遥かに高い。 

 

何故ならば、彼女達が嘘を言う必要が無い。 既に心服している益州は勿論、この洛陽でも様々な人智を超えた実力を見せ付けたのだ。 だから、表だって反抗すれば、僅か一刻の内に領地が灰燼と化すだろう。

 

だから、王朝支配は勿論──大陸支配など簡単なのだ。

 

されど、彼女達の主は北郷一刀。 前の『北郷一刀』とは違うと言えど、その本質は変わらないと、今まで彼の行動で確信に至っている。 だから、命を大事にする彼が、そんな悲しい真似をさせる筈が無いと………容易に浮かんだ。

 

それに彼を慕う艦娘の姿は、国に残る王の妹達や自分の仲間達に重なる。 実に判りやすくて微笑ましい。 素直に好意をぶつける、その態度を羨ましく思える程に。 

 

だからこそ、彼女達の本質も自分達と同じだと……信じられた。

 

そんな彼女達が、もし華琳の言う事を行ったとすれば、北郷一刀が失望落胆するのは確実。 そんな事になったら……彼女達が受ける衝撃は致命傷だ。

 

正に、死んでも死にきれない心境だと思う。

 

───あの赤壁で、一刀と蓮華に看取られた自分と同じように!

 

 

『───逝くな、冥琳っ!!』

 

『冥琳、しっかりしてぇ───』

 

『孫、呉と………れ、蓮華様達を──たの………』ガクッ

 

『冥琳───っ!!』

 

 

 

思い浮かべるは、赤壁で自分が倒れた時に見せた涙を流し悔しげに歪む顔。 

 

逝く間近の身である冥琳に見せたくは無かったと思うが、それだけ哀しませたと思うと胸が痛くなる。 勝利は確信していたが、その後に続く未来に自分が居ないのが辛く、北郷の側を離れるのが寂しかったのだから。

 

───冥琳が、前の世で体験した出来事を思い出していた時、声が挙がる。

 

慌てて我に返ると、そんな重苦しい空気の中で意見を述べる者が居たのだ。

 

ーー

 

華琳「まだ……大事な話があるわ。 話しても構わない?」 

 

鳳翔「是非、お聞かせ下さい。 私も反論あれば述べさせて頂きますので」

 

ーー

 

鳳翔の発言を聞いた筈の華琳が口を開き、鳳翔に許可を求めている。

 

華琳の推測では、汁粉の情報、極官達の接触が要だったのだが、それも大きく崩れた。 接触の件は続報に委ねるしかないが、汁粉は秘密裏に極官に流すと思われたのが、まさかの全面開示。 しかも、鳳翔自身から話すのだ。

 

これでは、華琳の推測は成り立たないのに、それでも鳳翔に挑む姿は変わらない。 ───後ろに居る冥琳と詠に緊張感が走る!

 

しかし、そんな態度を見せる華琳にも、鳳翔は謙虚に受け入れる。 鷹揚に話す鳳翔だが、反抗の口約束も交わすのも忘れない。 

 

そんな虚々実々の駆け引きの中で、許可を得た華琳が口を挟む。

 

ーー

 

華琳「まず、言いたいのは──大将軍の地位は本来だと非常設扱い。 権力闘争で数代前から外戚が着任してるから、殆ど常設扱いになっているけど」

 

詠「それは……外戚じゃなくなれば、大将軍の地位を取り上げるのは容易ってこと? それは極官だって理解しているわよ。 なんたって、権力争いに生涯掛けている漢王朝内の元老達なんだから。 そんな判りきった事を──」

 

華琳「これは確認よ。 必要な………ね?」

 

冥琳「すると、大将軍の地位は──」

 

鳳翔「はい、軍事権を三公の一つ『太尉』へ移すと。 しかし、何進様も多大の功績があったという事で、雑号将軍位を新たに授けられ、王朝に残留して頂くと伺っています。 ───司徒『王允』様の意向と」

 

華琳「…………………」

 

詠「だけど、太尉と言えば……軍務を司る正式な職よね。 でも、数代に渡り大将軍が管理していた仕事、全部丸投げされて太尉で処理なんてできるの?」

 

冥琳「変わるのは組織の名と司る者さ。 人も仕事も変わらない。 しかし、対応する頭が違えば、対応は天と地ほども違う結果になるだろうがな」 

 

ーー

 

華琳が挟んだ言葉により、更なる情報が開示された。 それを華琳は聞きながら嗤い、鳳翔に再度問う。

 

そして、何進から大将軍位を『外す』──意外な人物の名を挙げる。

 

ーー

 

華琳「それでも………この配置転換は大きな意味を持つわ」

 

冥琳「………何進殿の地位を降格させ大将軍位を空席にして、元の三公主体の政に戻す企みだろう。 それくらいの謀、私や詠も既に気付いていたが? それに、何進殿と御遣い方と懇意にしていた事は判るが、それが何故?」

 

華琳「これを喜んで居るのは、極官達だけじゃない。 いいえ、極官も操られていたの。 元大将軍と貴女達……御遣いが、そう仕向けた結果なのよ!」

 

詠「ちょっと! 幾ら何でも考えが強引過ぎるわ!?」 

 

華琳「残念だけど、辻褄も合うわ。 自分の地位を奪わせる算段を取らせ、相手に満足感を与え何進は庶民と落ちる。 人は何進の凋落振りに驚くでしょうけど、逆に言えば漢王朝と言う枷が外れ自由に動ける存在になった」

 

鳳翔「……………………それは、提督や私達が……何進様を仲間に引き入れる為に、此処で宴席を開催したと。 貴女は仰りたいのですか?」

 

華琳「まさか、貴女の事でしょ? どちらも本命、私達を労う事も何進を引き入れる事も大事と考えていたのでしょうに………」 

 

冥琳「いい加減にしろ、華琳! 国を挙げても及ばぬ程の宴席を、北郷達が苦心して開いてくれたのだぞ!? それを、その様な言い方を──!!」

 

華琳「相手が大物ならば、餌も極上に合わせて行わなければ成果など出ないわ! 司徒『王允』を動かし、私達を手懐けるには、これくらいの費用がなければ、靡きなどしない! 心なんて、心なんて──動かないわよ!」

 

ーー

 

華琳は声高だかに説明する。  

 

『大将軍の地位簒奪は──艦娘達と何進の共謀』と断じたのだ。 

 

これには、流石に冥琳と詠が止めた。 

 

何故なら、二人は何進の正体を知っている。

 

何進は──『 深海棲艦 空母水鬼 』である事を。 

 

大体、そんな面倒な事をしなくても、実力で離れる事も出来るのだ。 それに、味方すると一刀に話をしていたものの、相手は艦娘達と敵対する存在。 その者達が仲良く手を取り合うなど……考えもできない。

 

───事実、昨夜に交戦したばかりであるのだ!

 

だが、この件を知る者は、于吉より知らされていた冥琳、その冥琳より伝えられた詠。 そして、冥琳が打ち明けた信用できる数人の仲間だけ。

 

もちろん──華琳は知らない。 

 

知るわけが無い。

 

だから───華琳は何進にも牙を向く。 

 

ーー

 

華琳「貴女に聞きたいわ。 元大将軍……何進は……今、どうしているの?」

 

鳳翔「私達には何も………」

 

華琳「ふん、あの城内で一刀達が元執金吾『楊奉』と争った時、『あの女』は一刀に味方、いいえ、真名まで預けたのよ? それが、どんなに重要な意味だか判るの!?」 

 

鳳翔「………………」

 

ーー

 

『あの女』──現大将軍に就く何進を部屋の中とはいえ、城内で叫ぶ者は……そう多くは居ない。 

 

例えば───漢王朝を実質的に牛耳る、王允ぐらいでだあろう。

 

普段の華琳なら使い分けするのだが、今の華琳の感情は荒ぶっていたのだ。

 

ーー

 

華琳「それが、どの様な意味か貴女に理解できる? 大陸の者なら一瞬で理解できるのに、他国の者に理解できないでしょう!? 私達が真名に込める想いの強さも、真名を預ける信頼の深さを!!」 

 

冥琳「おい、華琳! それは言い過ぎだぞ!!」

 

詠「アンタ、いったい何考えているのっ!!」

 

ーー

 

大将軍何進……内密には降格する予定だが、それでも何進を『あの女』呼ばわりする華琳。 鳳翔に叩かれても、華琳の嫉妬は高まるばかり。

 

仲間である二人は、華琳の暴言を止めようと声を掛けて手を伸ばすが、それを振りきり鳳翔に絡む。 まるで、今まで満たされなかった一刀への想いを、八つ当り気味に鳳翔へぶつけるかの如く。

 

ーー

 

華琳「────私は! 私は……ねぇ! 一刀を………二度と天の国へ……帰したくない!! あの月夜の別れの様に………自分の心を閉ざし……痛みに耐えて……愛した彼を心配させないよう見送った……わ……」

 

鳳翔「………………………」

 

華琳「あんな辛い別れは──嫌なの!! 嫌なんだからぁぁぁぁぁっ!!!」 

冥琳「……………………」

 

詠「……………華琳……」

 

ーー

 

珍しく華琳が顔を涙でぐちゃぐちゃにして、鳳翔に訴える。 

 

桂花を一度は許し和解をしていた華琳だが、その心の底に潜む『寂しがり屋の女の子』は、満足していなかった。 

 

星が煌めき満月が大きく浮かぶ夜空に、万感の想いを懐(いだ)きつつ別れた少年と少女。 少年は残した少女を想いながら虚空に消え去り、少女は気丈にも少年を最期まで見送り、後に泣き崩れた。

 

少女は、仲間達に少年の最期を語り………共に待ち続けた。 無論、自分達の仕事を疎かにせず、更に発展するように働き続けたのだ。 

 

『次は逢える』

 

『次の次は逢えるわ』

 

『次の次の次は………逢える』

 

少女は空を見上げては呟いた。 

 

消えた少年と逢える日を……少女と……主である少女を支える猫耳の少女、同じ臣下である彼女達と共に待ち続けたのだ。 

 

晴れの日、雨の日、雪の日……春夏秋冬……一年、二年……十年、二十年……それ以上の月日が、少女と彼女達を通り過ぎて行く。 

 

彼女達も……一人倒れ、二人倒れ……残った者に後を託して……去っていた。

 

最期まで待ち続けた二人が死を迎え、更に生まれ変わって………ようやく逢う事ができた───『北郷一刀』なのだ。 

 

長い間の我慢は、既に限界を迎えていたと云えよう。 『曹孟徳』という抑え込んでいた蓋を弾き飛ばして、表に出てくる程に。

 

このまま『寂しがり屋の少女』が動けば、少なからず被害が出る筈だったのたが、そんな時──華琳の身体を優しく抱きしめる者が居た。

 

ーー

 

鳳翔「…………落ち着いて……」

 

華琳「……………えっ?」

 

ーー

 

頭の上には、自分を守ってくれる柔和な笑顔があり、同時に声が聞こえてくる。 寂しがり屋の女の子を心から心配してくれる声。

 

鳳翔が床に膝を付けて、華琳を優しく抱き寄せた。

 

この地に存在する着衣とは違う変わった手触り、ふわっと漂う優しい香り、包み込まれる温かさに、華琳は思わず思考を停止する。

 

ーー

 

鳳翔「まだ提督は、静かに御休み中ですよ。 あまり騒がしいと………」

 

華琳「………か、一刀が起きてくるというの? それなら……幾らでも騒いで──」

 

鳳翔「そんな簡単な事で起床してくれば、大変ありがたいのですが、それくらいで目を醒ましてくれると、加賀さん達の努力が無駄になりますよ?」

 

華琳「そんな事───」

 

鳳翔「だいたい……騒ぎを寝起きの提督に見られて……貴女は嬉しいですか? 私なら………恥ずかしくて見せられません。 そ、それに、つい抱きしめてしまった私も……この格好は……その………」

 

華琳「………………」

 

ーー

 

確かに、自分が敵と認める者から、こうして抱きしめられるというのは、非常に恥ずかしい。 鳳翔も同じなのか、華琳を諌める声が震えている。

 

しかし……何故か安心してしまっているのも事実。 頭が真っ白になる。

 

それでも、流石に鳳翔は気を取り直し、華琳へ咎めない様に優しく問い掛ける。 

 

ーー

 

鳳翔「曹孟徳殿、貴女は真名……と言いましたね?」

 

華琳「…………い、言ったわよ! 真名の重要性が判らない貴女に──」

 

鳳翔「ならば、お聞かせ願いましょう。 貴女に真名を預けた──荀文若さんの信頼に応えれましたか? 貴女を信じ、共に歩むと誓った『貴女の友達』に、何ら恥すべき行為が無かったのかと、言えますか?」

 

華琳「と、友………?」

 

 

★☆★

 

 

『────決して、忘れません。 我が身に幾星霜の時の流れがあろうとも、我が身に艱難辛苦が降り掛かろうとも。 華琳様達と共に──忘れません!』

 

『華琳様と私は───すでに《とも》です。 それは、親友とも強敵とも呼べる事になりますね』

 

『私は……前に仕えていた主の……最後の願い事を果たしました。  この首は華琳さま……貴女に捧げます!  されど、私の心は──前の主の心と共に、天の御遣い《北郷一刀》の傍へ───!!』

 

 

★☆★

 

 

華琳「───あぁっ!?」

 

鳳翔「貴女に真名を預けた彼女の覚悟、信じてあげないのですか? それに、貴女も提督を目覚めさせる指示を任せた身、最後まで彼女を信じてあげてはいかがです? 覇王としてではなく───親友として!」

 

華琳「私が…………親友……?」

 

ーー

 

憑物が離れたように大人しくなった華琳に、笑顔で離れる鳳翔。

 

丁度、その時───部屋の出入り口である扉が勢いよく開いた!

 

 

─────バアァァァン!!

 

 

その唐突な出来事に何事かと注視し散開する艦娘、直ぐに臨戦体勢に入る恋姫達。 

 

急に左右へ大きく扉が開かれた後、その入り口には現れたのは……小さい影と大きな影が。

 

ーー

 

??「………オ姉チャン………此処ダ……ヨ?」

 

??「ア、アリガトォ…………ホッポ。 ヤット……ヤット……辿リ……着ケタ……」

 

 

「「「 ──────!?!!? 」」」

 

ーー

 

そこには、可愛く両手を前に突き出した北方棲姫、疲れた表情を浮かべる港湾棲姫の姿があった。

 

 


 
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