No.872876

じさつものその2

三日月亭さん

この話、実は自殺を趣向とした人間の話の割りに死人が出なかったりします
後二回ですがまぁこんな感じのコメディいです

2016-10-04 08:47:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:454   閲覧ユーザー数:454

今日、不況に喘ぎ続けているこの国において生活に疲れて命を絶とうとするものがいる

私はそのような人を見るたびに声をつまらせてしまう

そこまで苦しんでいるのはきっと頑張り続けてきたからだ

そのような人に誰が頑張れといえようだからそうなる前に逃げろと言いたい

まだ思考が袋小路に嵌る前に自ら退路を立つ前に

自分の舵は自分で取るのだと、よく経営を戦術と言う言葉で言い表すが

人生においても同じなのだ、人は一人では生きられない以上

社会と言うコミュニティに共存していかなければならにのだ…

 

という感じで友人の悩みを聞きながら意見交換をし

何かあったら連絡するよといわれたわけだが、どうしたものか…

以前の失敗以来例の場所はセキュリティが厳しくなり私だけが顔写真を撮られ

指名手配状態にされてしまい随分待たされたがいよいよ私にふさわしい

死に場所を見つけたのだ。

 

今回はここ公園がその舞台になる詳しくここで語る気はないが

第一発見者の方にも負担なく発見していただき速やかに交番に通報

そしてなんの滞りもなくすむという現世に残した体の処分は速やかに

済ませるのが〝じさつもの〟なのだ

それに今夜は素晴しい、この月が雲に隠れてる時この瞬間が酔狂なのに…

私が定めた場所にまたも先客がいるしかも物凄く平凡そうな中年だ

何の悩みもない、そんな穏やかな顔をしている…この夜を楽しんでるような…

まさかな

私は気を取り直し中年に話しかけてみるそしてただの中年ならご退場願う

「すみません、なにかこの場所に思い入れでも?」

回りくどいと時間がかかるし辛辣な事を言うとまた興が削がれるかもしれない

つまりダイレクトにソフト行かなくては

「え、いや…」

男は戸惑いの顔をしたこれがチャンスなのだ!この言葉の空白に

するりと言葉を入れ込み自主的に退場していただくように誘導するのだ

「私は思い入れがあるんです」

「そうでしょうに一週間前から執拗にここを調査してましたものね」

私の台詞を待たずこの男台詞をねじ込ん出来た、しかも私がここをリサーチしていることを知っている

この男無職の暇人とでも言うのか?全くが怯む訳にも行かんのだ時間がないのだ

「私には時間がないのですよ、もう帰っていただけませんかな?」

切り出したのは相手の方だこの男…一体何を考えているのだ?

「随分酷い事をおっしゃる、私が一週間前からリサーチしているのを知っているなら貴方が譲るべきだ」

私は相手の言葉に怯まない私の矜持は揺らがないのだが次の瞬間、男は

電光石火の側で内ポケットから財布を取り出しあろう事かこの私に一万円札をつき付け

「これで、何も言わずに立ち去ってほしい。」

とぬかすのだこれは完全な侮辱だ、だが怒ってはならない、冷静に冷静に…

「二万だそう、君が引きたまえ!」

バシーンと決めてやった!男はと言うと顔色を変えず三万出してくる

そうすると私が四万出しそれが交互に続く

それが二十一万円に差し掛かったときのことだ

雲が流れ始める、月が顔を出してきてるのだ!嗚呼綺麗だ!!

いかんこんな不毛な争いをしてるわけには私の焦りが頂点に達した

「「この月の按配が最高の瞬間なのだ」」

「「この雲によって月が下界を見つめるのを顔を伏せてるような」」

「「この瞬間こそ最高の逝く時なのだ!!」」

「「だから頼む!!この〝じさつもの〟にこの場を譲って帰ってくれ!!」」

焦りに焦って本音が漏れてしまったと思ってしまったっと同時に

自分の声と相手の男のが寸分の狂いなく合唱したことに驚く

「「あなたも!??」」

また合唱(ハモ)った

お互い気まずくなりつい黙ってしまうそれも当然だ!

完全孤高の酔狂者を気取っていたのにまさか同種の人間がしかも

同程度の知性、感性、嗜好性を持つ同じ目線を持った同レベルの

いかんこのような趣味の者はこの世に少なくても二人はいけない

世間から見ればつまはじき者だ理由なく少なくとも理由なく死ぬ者を

私以外に作るべきではないだろう、という事でこの男を思いとどまらせようと試みる

「私この道15年なんですよ」

切り出したのは相手のほうだった同じ事考えてるのか

格の違いで相手を威圧しようと言うらしい、だが

「私も15年目なんですこの道…」

これも私と同じだ、男は狼狽してるようだ

相手の顔が動揺するの良くわかるそして嘘をついてないか観察する目だ

いかんまるで鏡を見てるようだ本当この男と私は良く似ている

本当この男…

「「あの」」

また合唱る

「どうぞ…」

私の方が相手に言葉を譲った何故なら同じことを考えてると思って

うっかり相手と違うことを口にしてしまうと思うとなんだかこっぱずかし

相手も同じく思ったのか

「いやその…」

全く止めてほしい大の大人がもじもじして、私まで照れるではないか

「いっせーので言いませんか?」

相手の大の男の提案だそんなこと、グッドアイデアじゃないかと思いつつも

照れてるのがよく解りこちらとしてもも恥ずかしい

非常に拷問だこの息苦しい感じさっさと終わらせたい!

「いいですよ、せーので言いましょう」

呼吸を整える相手の目を見ると相手もこっちの目を見ている

目は口以上に訴えている、とちるんじゃないぞって

解ってるさ理解ってる!!

「「まさか同じ粋に達した酔狂者にお出会えるとは思いませんでした」」

「「出来ればこれから飲みにいきませんか是非お話を伺いたい」」

一語一句同じだった、全く初めて会う赤の他人だというのに

しかも交わした言葉はこれ程少ないにもかかわらずここまでシンクロできるというのか

「それに、お互い譲らないでいるからほら、月が顔を上げてしまった」

私は彼にそういった、そう時は過ぎていたのだ

好機を逃がし友を得たといった所だろうか

まぁこの神様の気まぐれは素直に嬉しく思った

 

がここからが新たな戦いだ!

この趣向は大変特殊なのだ決して遅れは取りたくないというのが人情

私は彼を行きつけの飲み屋に誘い朝まで飲み明かし

今まで語ることの出来なかったこの道の趣向性と粋に関して存分に語った

相手も同じらしく私とは違ったアプローチから多くを語る

それは私にとっての新たな視点の開発となり

私の言葉を聞く彼も開発されていくのが手に取るようにわかった

そのお互いが開発されあいハッテンしていく様は

まるでバブル時代の日本を思わせるほどであった

居酒屋の一角がじさつものバブル経済と言う名のハッテン場となったのだ

とても充実したひと時であった

 

孤高のアウトサイダーもこのようなひと時も欲していたのだと

初めて知ったのであった。

 


 
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