No.870450

あなたへの贈り物のおはなし

jerky_001さん

「ぱんっあ☆ふぉー8」にてサークル「ユリキス伯爵領」様にて頒布された「ガルパン最終章おめでとう合同」に寄稿したおはなしです。

2016-09-22 01:25:21 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1097   閲覧ユーザー数:1089

「いやぁなんか、思った以上に沢山貰っちゃったねぇ。」

 大洗女子学園・生徒会室。両袖机の上に積まれたギフトBOXやラッピングバッグの山の向こうから、呑気な声が聞こえてくる。

「それだけ会長が皆から慕われていた証拠です。」

「そう言うかぁしまだって、うさぎさんチームの全員から貰って嬉し泣きしてたじゃん。」

「泣いてなんかいませんっ!」

 生徒会広報・河島桃の言葉に、プレゼント城壁の主の生徒会長・角谷杏はからかう様に返した。

「でも、こんなに沢山、流石に一度に持って帰るのは大変ですよね…」

 副会長・小山柚子は悩ましげに首をかしげプレゼントの山を見つめた。

 次期生徒会選挙の後、戦車道大会を戦い抜いた仲間達で旧生徒会へのささやかな勇退祝いが執り行われた。

一人ずつプレゼントを用意してくれたチームもあれば、少ないお小遣いを遣り繰りして合同でプレゼントを工面してくれたチームもあって、会長達の元にはあっという間にお祝いの品が集まっていった。

 その後はお菓子やコンビニのお総菜等で軽い食事会を済ませ、和やかな雰囲気のまま会は終了。湿っぽい空気が好きではない杏にとっては、それが返って嬉しかった。

 

 扉をノックする音。突然の訪問者に、三人の視線がそちらへと向けられる。

 

「あ、あの、会長。今、お時間よろしいですか。」

「ん、なんだ西住か。構わんから入って来い。」

 訪問者は西住みほだった。桃が入室を促すが、扉が開く様子は無い。

「あ、いえ、ごめんなさい!やっぱり、その、またの機会で…」

「…!待って西住さん!せっかくだし入って入って!」

 思惑に気付いた柚子が慌てて扉に駆け寄り、みほを会長室の中に招き入れる。

「あ、あの…本当に今すぐの用事じゃないので…」

「(いいから西住さん、いいから…)そうだ西住さん!良かったら会長へのプレゼント、持って帰るのを手伝ってあげてくれる?私と桃ちゃん、これからお祝い会の片付けに行くから…」

 尚も用件を言いあぐねるみほに対して、柚子は畳み掛ける様に提案を申し入れた。

「お、おい柚子。用件があるのは西住の方なのに此方が頼み事をしてどうする。それに戦車倉庫の後片付けなら他の皆がしてくれると…」

「(いいから桃ちゃん。いいから。)ほら行くよ~桃ちゃん~」

 提案の意図が読めず訝しむ桃の背中を柚子が押しながら、二人して部屋を後にする。

 

 室内に、杏とみほだけが残された。

「あ~…なんかごめんね西住ちゃん、柚子が変な頼み事して…」

 何処かそわそわした様子で、取り繕った言葉で応じる杏。彼女も、みほの目的を何となく察し、敢えて気付かないふりをしていた。

「い、いえ、大丈夫です。これだけのプレゼント、確かに一人じゃ持って帰れないですし、ね…」

「…それはそうとさっ、私に何か用事があったんだよね…何だった?」

 この期に及んで言いよどむみほに、焦れた杏が確信に触れた問いを投げ掛ける。

 

「………あのっ、実は、会長に、プレゼントがあるんです。」

「西住ちゃんから?それならあんこうチーム合同でもう貰ったけど…?」

「あんこうチームから、じゃなくて…わたしから、あげたいんです…貰ってくれますか。」

「う、うん…うん!西住ちゃんから、プレゼント、欲しいな…!」

 勇気を出したみほの告白に杏も頬を染めながら、それでも真摯に務めようと、席を立ちみほの元へと歩み寄る。

 

 僅かな沈黙。

 

「…これ、受け取って、ください。」

「うん…ありがとう…!すごく嬉しい!飛び上がっちゃいそう!!」

 みほから手渡された包みを受け取ると、次第に喜びが込み上げて、年相応にはしゃいで見せる杏。みほにとってはそれが嬉しくて、照れくさそうにはにかんだ。

「開けても良いかな西住ちゃん?」

「はいっ。」

 可愛らしい包装を破らない様に、慎重に封を開けて中身を取り出す。

「ボコのぬいぐるみの…イヤホンジャック?」

 掌に乗る程度の大きさの、ボコのぬいぐるみが付いたスマホ用イヤホンジャック。独特な趣味の逸品ではあるが、みほからの贈り物だと言う事が、杏にとってはただ嬉しかった。

「でも、どうしてイヤホンジャック?」

「それは、えっと…」

 杏の問いに耳まで真っ赤にして戸惑うみほ。ややあって、その真意を白状した。

「会長が卒業したら、暫くは携帯でしか連絡出来なくなるし…電話やメールをする時に、ボコのぬいぐるみが視界に入って、わたしの事を身近に感じてくれたら嬉しいかな、って…会長?」

「………っ!にしずみちゃぁあんっ!!」

「ひゃぁああっ!?」

 余りにもいじましいみほの思惑に杏は辛抱堪らず、戦車道大会優勝の時に見せた様な大胆なダイビングでみほに飛び付いた。

 

***

 

 既に片付けの終わった戦車倉庫。桃と柚子は杏とみほの逢瀬に思いを馳せた。

「西住からプレゼントか…確かに、卒業したらもう会えなくなるからな…」

「うん。でも…会えないのはきっと精々一年間だけだしね。」

「…?」

 察しの悪い桃に、柚子がくすくすと笑いを堪える。

「だって西住さん、この前大学のパンフレット取り寄せてたもん…会長の進学先と、同じ大学の。」

「何っ?そうなのかっ!?」

 知る由も無かった新事実に、桃はわざとらしい程大袈裟に驚いた。

 

「ふふっ…頑張ってね、西住さん。」

 


 
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