No.869493

地球防衛軍3/4 ヘリ

バゼラートとネレイド

2016-09-16 17:30:58 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:673   閲覧ユーザー数:673

・EF24バゼラート

 EF24バゼラートはボーイング社が開発した戦闘ヘリコプターである。

 公式ではEF24という型式番号に一元化されているが、同じ型式でも時期によって変更点がある。専門家の間では2017年の戦いに用いられたものをEF24-17、主に2025年の戦いで用いられたものをEF24-25と呼んで大別している。EF24-25の発展型は別途項目を設けることとし、本項ではEF24-17とEF24-25の初期型を扱う。

 2013年に発覚した異星人が地球に迫っているという事実はアメリカの軍需産業を奮い立たせた。軍需産業はシンクタンクに献金を通じて、異星人の軍事的脅威を強調した報告書を作成させ、それを議員や官僚に提出することで国防予算を引き上げさせることに成功していた。

 一方で予算分配を巡って軍備拡大に反発する利益団体もまた存在しており、彼らのロビー活動によって軍需産業の思惑が完全に果たされることはなかった。国内での軍需拡大は難しいと判断した軍需産業界は、それぞれの企業が連携し統合配備計画というものを発案。これを議会に訴え、兵器の輸出量を増やす方策をとった。

 統合配備計画とは、軍事力に劣る国家に異星人が侵略行為を働いた際の抵抗力を提供するというものであった。要するに兵器の生産量を増やし、外国に輸出するということである。大量の資金を投じたロビー活動によって、この計画は議会の承認を得るに至った。

 しかし国防上の観点からアメリカ軍が用いる既存の兵器をそのまま輸出することについては上院議会が禁じていた。武器輸出の拡大についてロシアや中国だけでなくEU諸国からも懸念の声が多く、既存兵器よりも性能に劣る低スペックモデルを新たに開発する必要が生じた。

 EF24はその計画の一端として開発されたものであり、原型となったAH-64Eアパッチ・ガーディアンから大幅に性能を制限された戦闘ヘリとして生み出された。

 搭乗員はわずか1名で、操縦と火器管制を1人でこなす必要がある。1人でも操縦が可能なようにある程度の自動制御機能を備えている。

武装はUT社製の30ミリUT機関砲2門をスタブウイングの端に搭載している。統合配備計画によって開発されたもので、既存の機関砲よりも大幅に弱体化されており、初速が低く破壊力が損なわれた仕様であった。最大搭載弾数は1門あたり2000発。砲身は完全に固定されており、狙いを定めるには機体そのものを旋回させる必要がある。

 スタブウイングの懸架パイロンには小型多目的ミサイルを装備できる。小型多目的ミサイルは統合配備計画の一環で開発されたもので、1つのランチャーで15発、スタブウイング左右を合わせて合計30発の搭載が可能である。赤外線誘導により撃ちっぱなしが可能である。ただしこれも性能を意図的に低下させているため命中率は極めて低く、まるで敵を避けるように機動したという報告も存在する。

 開発されたバゼラートは世界各国に向けて売り込みがなされたが、結果は惨憺たるものであった。最大の理由は議会が求めた過剰な低性能化によって、EF24の性能はあまりに劣悪なものであったことである。戦闘ヘリとしては確かに非常に安価な部類ではあったが、それはミサイル警報装置やレーダー警戒装置、IRジャマーやフレア、チャフといった様々な装備を撤廃し、エンジンやローターも精度を落としたものが採用していたことに起因する。また1人乗りという仕様は複座に慣れ親しんできた戦闘ヘリの運用国には不信を募らせる結果となった。

 ボーイング社も売れないであろう事は重々承知しており半ば販売を諦めていた。議員たちに訴えて性能向上型の販売許可を要求したものの芳しい返事は得られなかった。

 ほかにも戦闘ヘリ自体がSAM(地対空ミサイル)の発達で下火になっていたことも大きい。60年台のSAMの命中率は極めて低く何十発と撃ってようやく1機撃墜できるかどうかという程度であったが、00年代以降は命中率が劇的に向上しており、適切に射撃されれば百発百中と言っても良いほどの命中精度を持つに至っていた。そのため戦闘ヘリというジャンルそのものが疑問視されるようになり、完全撤廃とまでは行かなくとも、戦闘ヘリの後継を輸送ヘリの武装型にする動きが世界各国で見られていた。

 EF24は数機生産されたもののすぐさま生産中止が決定し、生産した分は倉庫に安置され解体を待つ状態となった。しかし2017年の戦いが勃発したことで解体が中止し、EDF北米方面軍の戦力として扱われた。しかし大戦初期に制空権を喪失したため活躍の機会は存在せず、レンドリース法によって日本などに提供された。

 戦後、残存したEF24は全機が改修され、俗にEF24-25と呼ばれる仕様になっている。EF24には見た目だけでも最新鋭兵器のように見せかけるように開発されていたことから、内部に何も積まないデッドウェイトと化していた部分が存在していたため、この部分を改修したことでレーダーやセンサー、FCSなどの性能が大幅に向上している。それでも機体性能が悪すぎたため軍用機が主ではなくPMC(民間軍事会社)などに売却され、戦後のどさくさに紛れてマフィアやギャングにも流れて抗争に投入された。

 その後、フォーリナーの攻撃から航空優勢を確保できる戦闘機の開発が現実的なものになったことから、戦闘ヘリに注目が集まるようになった。アメリカ軍の戦闘ヘリの定数が拡大したことでPMCから買い戻すことになり、同時にさらなる改良が模索された。一連の改良からEF24は意外と発展性があることが明らかになり、戦間期及び2025年の戦いの間も改良が続くこととなった。

・EF24バゼラート バルチャー

 EF24のバルチャー型とは、戦間期に開発された試作機である。機関砲をバルチャーレーザー砲に換装している。

 2017年の戦いが終わり、新たな戦闘機の開発が始まると、対地攻撃を担う攻撃機や戦闘ヘリの価値が再認識されることとなった。アメリカ軍では戦闘ヘリの定数が拡大したことで、民間に払い下げていたEF24を購入しなおし暫定的に自軍の戦力としていた。これはあくまで暫定的なものであり、当時開発中であった新型戦闘ヘリが完成すればそちらに置き換える予定であった。だが戦略防衛構想によって通常兵器に充てられる予算が削減されたことで、新型戦闘ヘリの開発は遅々として進まなかった。この開発の遅れによりEF24の改修計画がスタートし、その一環で長距離攻撃兵器の開発が始まった。

 EF24-25に搭載される機関砲はフォーリニウムを使用した特殊砲弾であり、極めて高い貫通力が得られる一方で非常に溶けやすく、発射時の熱と断熱圧縮により一定以上飛ぶと完全に溶けきってしまうことから、フォーリナー相手に有効な射程は160メートルが限度であった。またミサイルもフォーリナーの物量に対抗するため、性能を落として生産性に特化したものであり、射程500メートルが限度であった。

 巨大生物とヘクトルの対空攻撃能力は決して高くはないが、EF24のこれら武装では対空攻撃に晒される中を戦闘しなければならない。運動性が低く回避能力に劣るEF24にとって対空攻撃への対抗手段はパイロットの練度に頼るほかなく、非常にリスクある戦いを強いられることになる。

 現在の仕様と異なり、当時のEF24はすべてにおいて劣悪な性能という評価が一般的で、運動性の改善は土台無理なことと見られており、その無理な中でもなんとか戦力として扱えるような改修が求められていた。その結果が敵と直接対峙しない長距離攻撃能力の獲得であり、バルチャーレーザー砲の開発である。

 レーザー砲の魅力は、撃ってすぐに着弾することや、一発辺り非常に安価なことが挙げられるが、それ以外にも反動がほぼ存在しないことにある。航空兵器にとってこれは非常に大きなメリットである。

 また戦前であればデメリットとして数えられた射程の問題は、技術発展により無視できるほどになった。2017年の戦いの経験でレーザー兵器技術は飛躍的に発展しており、射程が長大化し衛星に搭載できるほどになっていたからである。

 戦闘ヘリのサイズでは大規模な発電装置は搭載できないが、バッテリー技術もフォーリナーの無人兵器を模倣することで大幅に発展しており、弾数制限こそ課せられるがレーザー兵器の運用は十分に可能となっていた。

 これらを理由にEF24にはレーザー砲が搭載されることとなった。レーザー砲に求められたのは「ヘクトルを撃破できる火力」「1キロメートル以上の射程」「砲身の下方への旋回能力」「FCSとの連動」である。

 この中で問題になったのが後者ふたつである。EF24の新型機関砲は凄まじい火力を誇る一方で反動制御が難しいため、砲身の旋回能力を持たせず搭載したものである。そのため反動が小さいレーザーであれば旋回能力を持たせることは可能ではあるのだが、もともと低性能化を求めるという無茶苦茶な仕様をベースにしているため、旋回能力を持たせるには機体そのものの抜本的な改修が不可欠となる。具体的には、操縦席からスタブウインド端までの信号線の増設やソフトウェアの改良が必要であった。旋回能力を捨てる場合は、当然FCSとの連動もできなくなる。

 当時、戦略防衛構想と新型戦闘ヘリ開発計画の板挟みによって、EF24の改修計画も予算不足に陥っていたため、後者ふたつの条項を見送り、結果として前者ふたつの仕様だけが結実するに至った。

 こうしてできあがったバルチャーレーザー砲を搭載したEF24は、試作型としては十分な成果を残した。ヘクトルを撃破するには、複数回の射撃、あるいは僚機との連携が必要になる程度のものではあったが、技術的な発展の余地を十分に残しており、制式型では単機で撃破可能な域であるとの見通しが立っていた。また有効射程は1.2キロメートルで、前述の仕様をクリアしていた。

 だが下方への旋回性を捨てたことと、照射型ではなくバースト射撃型を採用したことで、巨大生物への攻撃は非常に難しくなってしまった。この問題点は制式型のバルチャー2でも解決しておらず、サブ兵装のミサイル、あるいは地上部隊に任せるという妥協的な結論が出されている。

・EF31ネレイド

 EF31ネレイドとは、エアバス・ヘリコプターズ社が開発した戦闘ヘリコプターである。

 2017年の戦いでの戦訓から、フォーリナーの攻撃を凌ぐためには航空戦力の拡充が不可欠という判断は世界各国で一致するところであった。そのためファイターを筆頭にレーザー兵器を搭載した戦闘機が登場しており、2020年頃には先進国の間でマザーシップ以外の敵航空戦力の撃破が現実的なものになっていた。

 航空優勢の確保ができるということは、地上部隊が航空支援を得られるということであり、攻撃機や戦闘ヘリが注目を浴びるようになった。そのような情勢下でフランスはエアバスと共同して戦闘ヘリの開発を開始した。

 フランス陸軍は敵地上戦力との戦闘において、戦闘ヘリと地上戦力が同時に攻撃する立体十字砲火戦術を考案していた。これは地上部隊の進撃に合わせて戦闘ヘリも進撃し、両者が一体となって同時攻撃し、じわじわと戦線を押し上げる戦術である。空中でホバリングし継続的に火力を投射できる戦闘ヘリは、この立体十字砲火戦術にもっとも適した兵器であった。その結果、2023年に誕生したのがEF31ネレイドである。

 当時、ボーイング社製のEF24の改良型が多くの国でシェアを獲得していたが、EF31が新たに開発されたのはEF24の機体特性がフランスの立体砲火戦術にそぐわなかったからである。EF24は機動力と火力を重視しており、敵後方に回りこんでの挟撃や強襲に特化していたのに対し、エアバス・ヘリコプターズ社が開発したEF31は巨大生物への攻撃に特化したものであった。

 EF24のスタブウインドの端に取り付けられた機関砲は凄まじい火力を持つ一方で、反動に耐えきれるように砲身が固定されており旋回させることができない。そのため真下にいる巨大生物を攻撃できず、地上部隊を支援するには高い練度を持ったパイロットが必要となる。

 一方でEF31は旋回可能な3銃身のガトリング砲を搭載しており、対地センサーと連動して機体直下の巨大生物を自動で攻撃することができる。火力こそEF24に劣るものの、攻撃範囲は広い。高度な自動化が施されているため、練度の低いパイロットでも問題なく攻撃することができる。また片翼3基ずつ計6基のハードポイントがあり、12連装ロケットポッドや増槽の装備が可能である。12連装ロケットポッドは対装甲兵器用のもので、ヘクトルや巣穴への火力投射を担う。こちらは照準を合わせる必要があるため技量が必要になる。

 搭乗員は1名。EF24と同じく、パイロットは攻撃と操縦を同時にこなさなければならない。2017年の戦いの影響で人口が激減しており、なるべく少人数で戦える兵器が求められたためである。だが操縦の自動化がかなり施されており、新人パイロットにとってEF24よりも扱いやすかったという。

 機体は対人戦争も考慮してステルス性を持った設計がされており、電波の反射角を逸らすようにできている。スタブウインドは着脱可能な仕組みになっており、ステルス性が重視されるときは取り外すことができる。主脚も飛行時は自動で機体内部に格納する。

 エンジンは2基のターボファンエンジンを搭載している。機体が小型な割に武装が多く、高い最大離陸重量が求められたため、非常に無理のある設計になっている。メインローターのブレードも6枚と他種と比較して多めで、重量に響いたことで機動力が落ち込んでいる。この機体とエンジンの関係は後々になっても尾を引き、2025年の戦いを通して機動力の発展が望めなかった。

 EF31の初期型は機動力の低さが問題視され、改良が続けられた。


 
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