「兄さん」
私が兄さんを呼べば、どんなに忙しい時でも手を止めて笑顔を向けてくれた。
そんな兄さんの優しい顔が見たくて、用事もないのに何回も「兄さん」、「兄さん」と呼び止めちゃう
兄さんはそんな私を叱ったりせず、困った顔もしないで、《どうしたんだ、何か嫌な事でもあったのか?》と頭を撫でてくれながら、私が何か言うまで待ってくれていた・・・
今更公言する意味もないけど、私は兄さんの事が好きだ
幼い時から私を護ってくれていた兄さんが好き
お母さまが公務で家に居ない時、私が寂しくないようにってずっと傍に居てくれた兄さんが好き
私がやんちゃして、怪我を負って帰ってきた時に心配して叱ってくれた兄さんが好き
どんな些細な悩み事を相談しても、笑わずに真剣に話を聞いて答えてくれる兄さんが好き
私が独りぼっちにならないように、春蘭や秋蘭。美羽に七乃。斗詩に猪々子と仲良くなる切っ掛けを作ってくれた。それに………認めたくないけど、本当に認めるのは癪なんだけど・・・あのバカと腐れ縁になれた
他にも兄さんの良い所、好きな所を挙げていってらキリが無いほど、私は兄さんの事が好きなんだ
こんなにも良い所がたくさんある”私の”兄さんだから、身分問わず老若男女、たくさんの人が集まる。
そんな兄さんを誇らしいと思うと同時に、小さい子にも私と同じように接する姿を見て、醜い嫉妬を覚えたりもした。兄さんは私の兄さんなのに・・・って不貞腐れて自室に引きこもり心配をかけたこともあった
当時は自覚なかったけど、今にして思えば、兄さんが取られると思って気を引こうとしたのかもしれない。
引きこもってた理由を素直に話したら、『バカだな。俺が華琳を捨てる訳ないだろ?俺は華琳の事が大好きなんだから』って言われて思わず抱き着いちゃった
頬が赤くって緩み切った顔を見られたくないってのもあったけど、『大好き』って言われて凄く嬉しかったから抱き着いたのよね。その後に、甘えん坊だなって頭を撫でられて、更に頬が緩んじゃったのは内緒。
時には喜び、時には喧嘩したりしながらも、平穏な時間が送れると思ってたのに・・・
私達の小さな幸せを・・・あいつらはぶち壊した
お母さまを捕らえ、麗羽を唆し、美羽を苦しめ・・・・・兄さんを殺した
兄さんがあんな奴らに殺されたなんて信じたくもなかった。
文武で他を圧倒する才を持っていた兄さんが、権力に取りつかれた亡者になんかやられるなんて信じたくなかった
この情報は偽情報に違いない
そんな願いも打ち砕かれた
兄さん直属の親衛隊が、傷だらけの状態で渡してきた二振りの剣。
これを受け取った後の記憶が無い。侍女の話では、暴れたりせずに魂が抜けてしまったかのような状態だったとか
・・・
正気に戻ると、本当に兄さんを失ったんだ……と剣を握りしめながら泣きじゃくった。
あの時は、今まで隣に居るのが当たり前だった兄さんを失った喪失感に襲われ、1人で居るのが怖くて春蘭や秋蘭には迷惑かけたわね。
連絡は取ってなかったけど、あの子・・・美羽にも心配かけたかしら。
あの子も兄さんを慕っていたから、悲しみが無い訳がない。それでも、民を護る立場だからと、悲しみに耐えながら日々頑張って過ごしていた。
それに比べて、私と麗羽はいつまでも立ち直れずに、周囲に迷惑をかけてばかり。心の芯がしっかりしてて、決して折れる事無く勇往邁進を続けるあの子の強さを見習わないといけないわね。
兄さんに見られても恥ずかしくないに
頑張ったなっと言って貰えるように
私と同じような境遇から民を護る為にも
「私はこの戦に勝って、洛陽を十常侍の支配から解放する」
どんなに絶望的な状況でも
どんなに周りが敵だらけだろうとも
十常侍が暗躍しようとも
「必ず勝って・・・美羽や麗羽と過ごす平穏な日々を取り戻してみせる」
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今回のは反曹操連合が組まれ、華琳が出陣した後の心境を”今更”ながら書いてみました。
1話だけの短編ですので、空いた時間でお読みくださいましー