No.866801

艦隊 真・恋姫無双 116話目

いたさん

二ヶ月も音信不通で申し訳ありません。 いつもの半分ですが、ここまで書けました。

2016-09-02 02:03:32 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1103   閲覧ユーザー数:1022

 

【 代償 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 何進の私室 にて 〗

 

 

───華琳の記憶が甦る頃。

 

 

ーー

 

何進「────っ! あぁあああっ!!」

 

港湾棲姫「───ドウシタノ!?」

 

ーー

 

私室で港湾棲姫と話し合いの途中、何進──空母水鬼が急に苦しみ出し、思わず机の上に被さった。 それに続き、彼女の銀髪も散り散りに別れながら、一旦遅れて周辺へと静かに落ちる。

 

彼女は普段着用している赤い鎧を外し、空母水鬼本来の服装で港湾棲姫と会話している。 それは、互いに争わないという意思表示でもあった。

 

港湾棲姫は驚き慌てて近寄ろうとしたが、空母水鬼が助けを許否し、ヨロヨロと自力で立ち上がる。

 

ーー

 

空母水鬼「私の、私の身体より………力が、また一つ消滅した。 この感じは……曹孟徳か。 また、これで……」

 

港湾棲姫「………ダ、大丈夫?」

 

空母水鬼「大丈夫………か。 確かに、身体に異常など無い。 身体の欠損、記憶障害も無い。 その辺は………無問題だ。 だが───」

 

ーー

 

空母水鬼が港湾棲姫に呟き、身体に意識を送って深海棲艦の力を具現化しようとした。 普通なら、彼女の艤装が展開される筈なのだが、その様子が少しも現れない。 代わりに黒い霧のような物が身体を囲んだだけで、少し経過すれば四散して消えてしまった。

 

港湾棲姫は、それを黙って哀しそうに見つめる。

 

ーー

 

空母水鬼「さすがに……二つ目まで解放されると、水鬼としての力が発揮できない。 姫、鬼級と互角……辺りか。 ふふ……南方棲戦鬼達から見れば、今の私は格好な的。 粛清と称し、嬉々として首を狙って来るだろうな……」 

 

港湾棲姫「………ソレナラ……此処カラ離レテ……私達ノ下ヘ……」

 

空母水鬼「───その言葉、詭弁にも等しいぞ、港湾棲姫。 それでは、逆に私を謀殺しようと猫撫声で誘いを掛けているにしか、聞こえない……」

 

港湾棲姫「ソンナワケ───」

 

空母水鬼「だが、その心遣いには感謝する。 勿論、一刀も私を護ってくれるだろうが……管理者達は分からん。 寧ろ、この出来事を導いたのは──その管理者達の仕業かも……知れないのだぞ?」

 

港湾棲姫「────!?」

 

ーー

 

その話を聞いて驚き、思わず空母水鬼へ顔を向ける港湾棲姫。 

 

港湾棲姫、いや、港湾棲姫を含む一刀達が転送された理由は──空母水鬼の討伐。 それを頼んだ者達こそ、左慈を含む管理者である。 

 

無論、港湾棲姫にとっては、元居た仲間と現在の仲間達との板挟み。 だから、秘密裏に和解の道を探るため、一刀達と別行動を起こしていたのだが……まさか、空母水鬼が既に確証しているとは思わなかった。

 

そんな港湾棲姫の考えとは裏腹に、空母水鬼は寂しげな微笑みを浮かべ、港湾棲姫へ語り掛けている。

 

ーー

 

空母水鬼「もちろん………確証などない。 だが、そのような考えが無かったなど戯れ言は信じないからな? あの少年姿の管理者が私に向けて常時放つ殺気、あれは……不倶戴天の艦娘達より、遥かに濃厚な物だった………」

 

港湾棲姫「───!」

 

空母水鬼「そんな輩の居る場所に避難するのは、間違いなく何かしら騒動が起こるのは目に見えている。 勿論、そんな暴挙を許す港湾棲姫や一刀だと思わぬが、もし実行されれぱ……南方棲戦鬼が嘲笑うだろうな……」

 

港湾棲姫「…………」

 

空母水鬼「それにだ──先の夜戦で白波賊も大打撃を受け、鬼灯(ほおずき)……南方棲戦鬼や深海棲艦達にも返し刀で反撃を受けた。 どちらの勢力も、簡単には軍事行動は出来まい」

 

港湾棲姫「ダ、ダケド………」

 

空母水鬼「他にも……『黄巾賊』と名を変えた白波賊が動き出せば、王允だけでは手が廻らぬ。 私が消えれば、喜悦満面な笑みを浮かべる御仁だが、兵を率いて戦う事など話にならない。 所詮、国を弄んで喜ぶ政治屋の一人!」

 

港湾棲姫「…………ソウ………ナノ?」

 

空母水鬼「見かけ倒しなのは、敗れた代理の軍勢で理解できるではないのか? それに、一刀達に匿われていると知れば、疑心暗鬼に囚われ陛下に讒言を奏上して、我らを破滅させる手を採るだろう。 手を組む事を恐れてな?」

 

港湾棲姫「……………」

 

空母水鬼「…………これで理解して貰えるか? この場所が私にとって安全であり、一刀達を守れる力を振るえる唯一の居場所だと………」

 

ーー

 

港湾棲姫が首を弱々しく縦に振ると、空母水鬼が困ったように笑う。 そんな様子を見た港湾棲姫は、まるで……母親に叱られる子供の如く身体を縮ませ、上目遣いで空母水鬼を覗き見る。

 

空母水鬼は、そんな港湾棲姫の頭を二、三回軽く撫でると、困った表情で首を僅かに傾けた後、正面に向き直りニッコリと笑う。

 

ーー

 

空母水鬼「──まったく、昔から変わらないな……貴女は……」 

 

港湾棲姫「…………ダッテ……轟沈スルノ………悲シイ………」

 

ーー

 

涙目で語る港湾棲姫に苦笑するが、一瞬で表情を引締めて更に話掛ける。

 

ーー

 

空母水鬼「そもそも、深海棲艦と艦娘──互いに覇を競う者だというのに、それでも貴女は歩み寄ろうとしていたな?」 

 

港湾棲姫「……………」

 

空母水鬼「無駄な争いが起きないよう警告を発し、わざわざ似合わない兇悪な武装を見せびらかして、艦娘達を怯えさせ遠ざけた。 無駄な努力と嗤う輩が多い中、貴女は信念を貫抜き──今に至った訳だが……」

 

港湾棲姫「何デ…………同ジ根源ヲ持ツ者ガ……互イニ争ウノカ……ワカラナイ。 ダカラ………私ハ………争イナド……シタクナカッタ!」

 

ーー

 

空母水鬼は目を見開き、港湾棲姫を眩しそうに眺めた。 

 

『争いを好まない深海棲艦』──弱者である下級深海棲艦も庇護して守ろうとした異質の深海棲艦。 穏健派などと言われる港湾棲姫だが、深海棲艦側にとっては臆病風に吹かれた役立たずに過ぎない。 

 

辛うじて、その意見に賛同する者は妹分である北方棲姫だけ。 

 

さぞかし風当りも強かっただろうと思うが、空母水鬼が下級深海棲艦だった時と、全く同じ矜持を保っていた事に畏敬の念を抱いた。

 

ーー

 

空母水鬼「《七歩之才》を語るには、まだ時期が早いが……そうか。 私達深海棲艦も艦娘も同じ……異腹の姉妹達というんだな、貴女は……」

 

港湾棲姫「…………私……ダケジャ……ナイ。 一刀モ……他ノ皆モ……同ジ! ダッテ……一刀ハ……私ヲ………受ケ入レテクレタシ……艦娘達モ……理解シテクレタ。 ダカラ……貴女モ………」

 

空母水鬼「そうか………礼を言うが、私は此処に残る。 それに──私は『何進』として、霊帝より陛下を頼まれた勅命もある。 ………すまないな」 

 

港湾棲姫「……………………」

 

空母水鬼「だが………何れ遠くない時期に……歴史が私を不要にするだろう」

 

港湾棲姫「───!?」 

 

空母水鬼「人間同士の争い如きでは轟沈などせぬよ。 死んだと思わせ脱出し、貴女の下へ駆け付けるとしよう。 港湾棲姫──その間、管理者側の説得をお願いしたい。 貴女の下に行って管理者達に殺されては、話にならんからな」

 

港湾棲姫「…………ウン! ………ワカッタ!」

 

空母水鬼「ふふ、その時こそ──貴女と一刀の奪い合いをしようとしようか? どちらが奪い取っても……恨みなど無しだぞ?」

 

港湾棲姫「ワ………私ダッテ………!!」

 

ーー

 

港湾棲姫は、そんな約束を空母水鬼と誓い、部屋から退出。 

 

向かう先は、勿論、一刀達の居る部屋。 

 

『場所ハ……キチント聞イテアル』『大丈夫、絶対ニ……大丈夫』と、空母水鬼に笑顔で別れ、目指す先へと進んで行った。

 

 

 

 

◆◇◆

 

【 華琳の見た物 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

 

華琳「…………」

 

鳳翔「───如何でしょうか?」

 

ーー

 

華琳が静かに箸を置くと、その様子を鳳翔が微笑みながら尋ねる。 

 

その言葉に反応して、射るような視線を鳳翔へと向けた華琳は、少しだけ間を空けた後、口を開いて語りだした。

 

ーー

 

華琳「………気に入ったわ」

 

鳳翔「それだけ……ですか?」

 

華琳「中で煮詰められた小豆の絶妙の歯触り、深みのある甘さ、餅に似ているけど粘りが少なく、滑らかな喉越し。 試しに一杯だけと食してみれば……まさか私自身が代わりを求めるなんて……かなり自慢できる一品よ」

 

鳳翔「汁粉をお気に召して頂き、光栄です。 しかしながら、先程お尋ねした問いの答え、未だ拝聴に至っておりませんが?」

 

華琳「ええ、だから、気に入ったのよ……別の意味で。 何気無く料理を振舞う様に見せながら、私に威圧を掛ける──強かな貴女に、ね」

 

鳳翔「───!?」

 

華琳「ふふ、別におかしな事を答えた訳じゃないわ。 私に真意を答えるようにと申し入れたのは、そもそも貴女よ。 桂花を利用し、一刀を取り込もうとする私に対する牽制ってところかしら?」

 

鳳翔「…………………」 

 

ーー

 

頬笑みを絶やさなかった鳳翔の表情が、僅かだが崩れる。 

 

目が若干ながら鋭くなっただけだが、勘の鋭い者なら気付いて怯える程であるのだが、華琳の様子は変わらない。

 

それどころか、悪戯が成功した幼子のように口角を上げて、機嫌が良く鳳翔の様子を眺める。 自分が鳳翔の掌で踊らされているのが分かり、その意趣返しができて満足しているようだ。

 

しかし、華琳の話は──まだ終わらない。 

 

ーー

 

華琳「私は……疑問に思っていたのよ。 何故、小豆や砂糖という『高級食材』を大量に使用した料理が、これ程までに大盤振舞をされているのかを……」

 

鳳翔「これは……皆さんが、お疲れ気味なのは分かっていましたので、疲れを癒す甘味を御用意したまでですよ。 それに材料は、全て私達が準備してきた物。 この地の人々に迷惑を掛ける様な行動は、何一つ掛けていません!」

 

華琳「………もちろん、甘味が疲労回復に効果があるのは知っているわ。 私も臣下と共に休息を取る時、必ず菓子を用意させるから。 だから、その言い分は筋が通っているから、そこは納得はできているの」

 

鳳翔「では、何故その様な疑う真似を………」

 

ーー

 

華琳と鳳翔の独り言は、既に会話から論争になり、周りの注目を集める。

 

汁粉を作ったの鳳翔単独だったため、他の艦娘達も意味など当然知らず、恋姫達も興味津々で様子を窺い、全員の動きが止まった。

 

そんな中、華琳が………語る。

 

ーー

 

華琳「簡単な事、私が箕子の如く憂いを示さねば、殷王朝と同じ道を辿ったかもしれないからよ。 貴女が作った汁粉、もし、世に広めると───」

 

 

 

 

 

華琳「この漢王朝の……滅亡を早める事になるでしょう。 僅か……数年の内に───」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

更新が二ヶ月も遅れてしまい、申し訳ありません!

 

書いた文章が投稿間際で誤って消したり、新盆の挨拶受付が八月初日から十六日まで行い忙しかったとか、創作意欲が湧かなくて他の無料小説を読んでいたりしていたので……ここまで遅くなってしまいました。

 

まだ、この話や義輝記は続けて行きますが、当分の間、作者が忙しいため週一の更新ができません。 次回の話を心待ちにされる方に叱られるかもしれませんが、どうか気長にお待ち下さい。

 

勿論、間に合えば順次更新していきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

【 迷子 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 どっかの通路 にて 〗

 

港湾棲姫「……………………迷ッタ。 デモ……戻レバ……アッ! 元ノ部屋モ……分カラナイ!? マ、迷子……私……迷子……? 一刀ヤ皆ニ……会エナイ? 会エナイ!? イ、イヤァ! フゥ、フェェ………」

 

北方棲姫「──ポ? オ、オ姉チャ………ン?」

 

港湾棲姫「────!」

 

北方棲姫「…………………ポ?」

 

 

 


 
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