No.864988

快傑ネコシエーター33

五沙彌堂さん

161、霧霞童子の微笑
162、邪法立川流の呪い
163、傀儡鬼の忌彌童子と食屍鬼の彌浄童子
164、日沙妃姫の恋
165、さつき人形(21歳ver)は日の目を見るか

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2016-08-22 21:50:31 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:685   閲覧ユーザー数:685

161、霧霞童子の微笑

 

大陸はほとんど英国や欧州列強の植民地や租借地に成り果てて

最早国家の体裁を保って居なかった。

更に人間、亜人、鬼族さえも塗炭の苦しみの中で生活していた。

全ての鬼族の頭領、霧霞童子は隣の小さな島国に吸血鬼の大谷行基を送り出し、

ある程度の独裁は認める代わりに島国を列強の植民地や租借地にせずに

時代遅れの封建国家から近代的な独立国家のモデルにするように命じた。

利口な大谷行基は政治の表舞台には立たず影の支配者として長きに亘って

君臨することにした。

大谷行基の成功は大陸の鬼族にとって朗報のように思えたがそれは大きな間違いだった。

行基は原則として大陸の鬼族の渡来を禁じ、唯一の真祖吸血鬼として英国の真祖吸血鬼

と結んで国家体制の安定化を図った。

それは大陸の鬼族にとって大きな裏切りであったが、霧霞童子はそんな行基の態度を

裏切りとは見做さず寛容に受け止め全ての鬼族に自制を強いたのだった。

尚早な強硬派は強引に渡来したがそれに対し、行基は強硬手段でそのプライドを傷つけ

命さえ奪うことに容赦なかった。

「食屍鬼なら生きている人を襲って食らうことはないが食人鬼など自由に大陸から行き来

させたら国民(人間、亜人)は皆不安に思って国が安定せんのは行基でなくとも為政者

なら当たり前のことだろうになぜわからないのだろうか、わからぬことではないと思うに。」

霧霞童子は嘆息して呟いていた。

「しかし同じ吸血鬼は受け入れぬの言うのは唯一の真祖吸血鬼という行基のエゴ

であろうが、英国の真祖吸血鬼と結ぶための権威付と言い訳の書状を送って来た所

を見るにやはり後ろめたいのであろう、まあそれぐらいはいいだろう。」

霧霞童子の権威は大陸の全ての鬼族にとって絶対であった。

大陸の列強の植民地や租借地の中では食人鬼は存在そのものが危険視された。

大陸の虫食いだらけになった国土ではもはや自由に行き来できなかった。

英国や欧州では真祖吸血鬼が百年戦争に勝利して各国を統治していた。

真祖吸血鬼同士でも家柄血統など重視され厳しい身分制度があった。

当然、亜細亜大陸の東方からやって来た吸血鬼は卑しい存在であった。

むしろ、普通の国民(人間、亜人)の方が国を富ませる存在として大事に

扱われ、基本的人権が確立されていた。

人間に害をなすデミバンパイア、食人鬼等の亜人は厳しく処断された。

特に英国は立憲君主制で真祖吸血鬼と雖も吸血行為は厳しく制限されていた。

しかし、狡猾な大谷行基は大多数の人間のみを国民として基本的人権を保障し、

少数派の亜人を差別し人間との間に厳しい身分制度を作った。

更に亜人たちが不満を持って団結しないよう種族間の身分制度を強固にして

お互い憎しみ合うようにしたのだった。

霧霞童子から見ればそれは単なる行基の保身で何れは破綻して支配体制がそんなに

長く続くとは思えなかった。

ただ、大陸の食人鬼は行基が同胞を数多く理不尽に処刑したことを深く恨んでおり、

霧霞童子にもいつまでも抑えていることはできなかった。

そこで倶利伽羅童子らの密入国を見て見ぬ振りすることにして放置した。

更に行基に密書を送り、行基の対応を逐一密偵の食屍鬼に見聞させることにした。

行基の対応は苛酷だった、待ち伏せして倶利伽羅童子と蛍火の手練れ以外は

全て皆殺しにし、倶利伽羅童子は隻眼隻手にされた。

倶利伽羅童子は呪術が使えたので行基に蠱毒を放ったものの行基の傍には

デミバンパイア殺しで英国帰りの密教僧古宮慧快が身辺を守っていたので

呪い返しの応報を受け、さらに片足の自由も失った。

しかし生き残った2人も蛍火の軽率な行動から足がついて始末されたのであった。

霧霞童子は倶利伽羅童子と蛍火が殺されたこと知ると密偵からの報告を打ち切らせた。

「倶利伽羅童子は裏社会に通じているから何とか生き残ると思ったがこれで

今回密入国した食人鬼は完全に全滅したか。」

「さて、サトリ鬼のこの私が密入国したら行基はどういう理由をつけて始末しようと

するか考えてみると面白い、この世の全ての人の心が読める私と知恵比べだ。」

「冗談ではありません、童子様自重してください。」

傍らに寄り添う美しい腹心の日沙妃姫が厳しく諫言した。

日沙妃姫は神族と人間のハーフで、霧霞童子の恩人の娘で良き相談相手であった。

「傀儡鬼の長の忌彌童子や食屍鬼の長の彌浄童子が聞いたらなんと申すでしょうか。」

「行基は油断がなりません、どんな卑怯な手で童子様を懐柔して暗殺しようとするか。」

日沙妃姫は真剣に心配していた。

行基は眼中には大陸のことなどどうでも良くただ小さな島国を思い通りに支配すること

しか考えていない上、最早邪魔にしかならない霧霞童子など生きていられると不都合

だと思っている恩知らずな輩であるとこれまで経緯からも明白であった。

「ではどうやって行基は私を暗殺するのかな、サトリ鬼の私を日沙妃姫。」

「童子様に狂人の刺客が偶然出会うよう不意打ちを仕掛ければ可能ではありませんか。」

「流石は日沙妃姫、それなら私も魔力を使って防御することができない。」

「では、小さな島国の抑圧された亜人たちが行基に牙を剝くまで待つとしよう。」

「その前に邪法立川流の妖術僧が邪法立川流被れの鬼族の妖術僧の髑髏で作った

大頭を行基の元に送ってやろう、行基も知らぬ邪法立川流がどんな禍を振りまくやら

あれは最早まともな神経では発狂しかねない悍ましい波動を放っておるからのう。」

霧霞童子は子供が悪戯でも仕掛ける様に小さく微笑んだ。

162、邪法立川流の呪い

 

大谷行基は古宮慧快からの報告を聞いて仰天した。

行基が渡来した当時既に絶滅したと聞いていた邪法立川流の残滓が大きな呪を振りまき

ながら今の世の中に復活しようとしていたことは全く予想外の出来事だった。

「慧快さん本当にお手柄だったね、よくぞこの国を古き邪宗門の手から守ってくれた。」

行基は慧快を心底手放しで褒めていた。

密教の総本山の管長里見堅応はこの国の生き字引であったが行基が簡単に相談できる相手

ではなく、プライドの高い行基も実の所苦手で頭が上がらなかった、慧快が里見堅応に

気に入られ可愛がられていることは好都合で慧快を通じてその知恵を借りていた。

慧快が里見堅応から教えられた封印の山で邪法立川流の妖術僧の放置された髑髏を完全に

粉砕殲滅したことに行基は素直に喜んだ。

しかし、大陸に逃げ込んだ邪法立川流の妖術僧が大陸の鬼族の妖術僧の髑髏で作った大頭

の出所が解明できないことは大きな不安を残した。

「そういえばまだ大陸にいた時、邪法立川流の鬼族の妖術僧をあのお方の命で忌彌童子

が闇討ちにしたことがあったのう。」

行基は大陸の全ての鬼族の主、霧霞童子の全く年齢不詳の青年の様な顔を思い浮べた。

だが、思い浮かべた姿をすぐに打消し、額に脂汗を書きながら別のことを考えた。

「矢鱈に思い浮べただけで、あのお方の千里眼に掛って心の中の全てを見られてしまう。」

「もしや、今回の一連の事件はあのお方が仕組んだものなのか。」

またしても霧霞童子の姿が頭の中に思い浮んで、行基は恐ろしくなってきた。

「流石は行基よ、私の千里眼が心の中の全てを覗く前に打ち消してしまう、よほど後ろ

めたいことを考えているのだろう。」

丁度その頃遠く離れた大陸の玉座で実際に霧霞童子は千里眼で行基の様子を覗いていた。

行基は結果的には都合のいい結末になったので霧霞童子の好意を信じた。

「行基には厄介者を始末させたとは思いつかないようだ。」

千里眼魔術を止めた霧霞童子は玉座の上で行基を嘲笑した。

「邪法立川流の呪いを完全に殲滅する方法は大陸には伝わっていない、

封印では十分とは言えないからな。」

「この大陸では表立って処刑できない闇社会に通じた食人鬼倶利伽羅童子の一派も

行基が全て処刑して汚名を被って恨まれ役を買って出てくれたようだしな。」

「本当に悪いお方ですね、童子様は。」

傍らに寄り添う美しい腹心の日沙妃姫が呆れた様に霧霞童子に微笑みかけた。

「毒は毒を持って制すというではないか、清濁併せ呑むようでなくては鬼族の頭領は

勤まらないからな。」

霧霞童子は日沙妃姫の微笑に笑顔で答えた。

163、傀儡鬼の忌彌童子と食屍鬼の彌浄童子

 

傀儡鬼と食屍鬼は鬼族特に食人鬼のような膂力、吸血鬼のような魔力を持たず、

知恵と勇気を使って困難に立ち向かうため、驕りやプライドが無く、基本的に

人(人間、亜人)に対して平和的、友好的であった。

サトリ鬼の霧霞童子は傀儡鬼と食屍鬼が他の鬼族から卑しく扱われない様にと

鬼族の尊称である童子名を与え、大切にしたのだった。

霧霞童子は不死族にありがちな短命な人間族の命を粗末に扱う行いを嫌っていた。

傀儡鬼は二つ名を人形遣いと呼ばれ人(人間、亜人)、その死骸などを自由に操り呪いを

受けずに相手を殺すことのできる暗殺鬼であった。

鬼族の中では卑しいとされ見下されていたが霧霞童子はその一族を高くとり立てて

傀儡鬼の頭領に忌彌童子の名を与えて重く用いた。

忌彌童子は余程の悪人でない限り、生きている人間を傀儡に使うことはなかった。

霧霞童子は大義名分を与えてから傀儡鬼に暗殺の仕事をさせていたので

やがて他の鬼族に対する傀儡鬼の卑屈な気持ちを消し去った。

食屍鬼は文字通り人(人間、亜人)の死骸を食らう最下級の鬼で鬼族から見下されていた。

霧霞童子は食屍鬼が普通の人(人間、亜人)に自在変化できる所を買って重く用いた。

食屍鬼の頭領に彌浄童子の名を与えて最も信頼できる密偵として使った。

彌浄童子は人間の骸を食料にしていたが骨まで平らげることなく舎利にして供養していた。

恩人である全ての鬼族の頭領、霧霞童子に対する忠誠心も高く本来鬼族同士は不仲だった

がお互い被差別鬼族の傀儡鬼と食屍鬼は友好的であったため協力して仕事もした。

同じような出自の傀儡鬼の忌彌童子と食屍鬼の彌浄童子は特に気が合いいつしか親友と

言う様な仲になり、酒を飲み語り明かしていることが多かった。

「忌彌よう、童子様はいつになったら日沙妃姫様を妃にむかえるのだろうか。」

彌浄童子は酔った勢いで傍らの美しい日沙妃姫に対して独り身でありながら、

とても禁欲的な霧霞童子に対する疑問を投げかけた。

「彌浄、そんなことを口にして童子様の耳にでも入ったらきついお叱りを受けるぞ。」

忌彌童子は彌浄童子の軽口を強く戒めた。

「いくら、自分の恩人の娘だからって、日沙妃姫様にその気がないならともかく、

その気があるのにあれじゃ生殺しじゃないのか。」

彌浄童子は日沙妃姫の霧霞童子に対する秋波に気づいて気の毒に思っていた。

「そんなことを直接童子様に伝えらえるわけないだろう。」

忌彌童子は霧霞童子の異性に対して恬淡な所を美点として尊敬していた。

「童子様は何でも御見通しのようでご自分のことになるといい加減だからなあ。」

彌浄童子は霧霞童子の最大の欠点に気づいていた。

でもそこが霧霞童子の最大の魅力でついお節介をしたくなるのだった。

164、日沙妃姫の恋

 

日沙妃姫は神族と人間のハーフで、霧霞童子の恩人の娘で良き相談相手であった。

日沙妃姫の父親は人間であった。

大陸の鬼族の前の頭領三角童子が邪法立川流被れの鬼族の妖術僧に惨殺された時、

乳飲み子だった後継者の霧霞童子を小さな島国に逃がしてその命を救ったのであった。

その名を大伴の大蔵介と言った。

小さな島国では高位の猫又族、猫間大納言と竜造寺烏丸姫の手で大事に育てられ、

あらゆる教養を身に着け、霧霞童子は本来のサトリ鬼の能力を開花させた。

成人した霧霞童子は自分の大恩人である大伴の大蔵介を尋ねて遠野へ向かった。

大伴の大蔵介は都での栄達には全く興味はなく遠野の山奥で仙人のような生活を

していたがその禁欲的な姿に興味を持った姫神七姉妹の末娘が大伴の大蔵介の元に

やって来て何時しか一緒に住むようになった、やがて大伴の大蔵介はその姫神を

妻に迎えたが姫神の掟に背いたとして妻は神族に幽閉され、忘れ形見の一人娘の

日沙妃と2人で暮らしていた。

だが、14歳になった日沙妃を邪法立川流の妖術僧達が人身御供にしようと狙っていた。

大伴の大蔵介は娘を守るため、命を懸けて邪法立川流の妖術僧達と戦っていた。

近くの里の民は関わり合いになること避け黙殺した、あるいは邪法立川流の妖術僧に

扇動され大伴の大蔵介の元に押しかけ嫌がらせをしていた。

霧霞童子は山奥の小屋を訪れ大伴の大蔵介に会うと悪意と呪いで黒い気が凝っているの

が分かった。

「大伴の大蔵介様あなたに命を救って頂いた霧霞童子です。」

「今度は私が身命を賭してあなたの命を守ります。」

「童子様、すでに私の命は邪法立川流の呪いで長くはありません。」

「ただ一つ心残りなのは娘の日沙妃です、娘を守って頂ければ本望です、

安心してあの世へ旅立てます。」

大伴の大蔵介はすでに覚悟ができていた。

しかし、霧霞童子はどうしても諦めきれず自らの魔力を使って

大伴の大蔵介を守ろうと必死だった。

ところが邪法立川流の妖術僧達は大伴の大蔵介を奸計でだまし討ちにした上、

その瀕死状態の大伴の大蔵介を餌に日沙妃を拉致しようと罠を仕掛けてきた。

「父上、いったいどこにいるのですか。」

日沙妃は気丈な娘だったが瀕死の父親の姿を見て冷静さを失い、

駆け寄って必死に介抱した。

後ろから近づき、日沙妃を拉致しようとした妖術僧がいきなり喉に氷の矢を受け

もんどりうって倒れた、日沙妃は近づく妖術僧達に氷の矢を打ちまくった。

しかし、不死の死人返りの妖術僧は何度も立ち上がってきて限がなかった。

日沙妃にも疲れが見え始め拉致されそうになった時、異変に気づき駆け付けた霧霞童子が

不死者滅殺の小太刀角斬りで不死の妖術僧を怒りに任せて滅多斬りにして完全に殲滅した。

日沙妃と霧霞童子は瀕死の大伴の大蔵介を再び介抱した。

「日沙妃、日沙妃を頼みます童子様。」

そう言い残すと大伴の大蔵介はこと切れた。

二人は大伴の大蔵介の遺体を荼毘に付し小さな骨壺に収めた

日沙妃は悲しみのあまりしばらく泣いていたが霧霞童子は優しく日沙妃に話し始めた。、

「日沙妃様、いや日沙妃姫とお呼びしようと思います。」

「あなたのことはお父上に守り育むよう頼まれました、あなたにとって父親代わり、

兄の様な存在になろうと思いますがどうでしょうか。」

日沙妃は小さく頷き霧霞童子に従ってその庇護を受けることにした。

共に旅をしながら自身の見聞を広げていった。

霧霞童子は日沙妃の聡い所に気が付き、自分の育ての親である猫又族の猫間大納言と

竜造寺烏丸姫の元であらゆる教養を身に着けさせることにした。

日沙妃は姫神の力を十分に使いこなせるようになり、邪法立川流の妖術僧から自身の力で

身を守れるようになった。

やがて16歳になる頃、日沙妃の心に霧霞童子への恋心が生じるようになってきた。

仇を取り父の無念を晴らしてくれただけではなく、山育ちの野生児でちゃんとした

教育を受けてこなかった自分にあらゆる教養を身に着けさせてくれた恩人で

ありながら、何の見返りも求めない最も身近な異性であった。

霧霞童子は異性に対して恬淡でいわゆる朴念仁の唐変木であったため、サトリ鬼で相手の

心の中を読める能力があるにも拘らず日沙妃の恋心に全く気付かなかった。

さらに日沙妃の心の中を覗くようなことは大伴の大蔵介の意に背くと絶対に出来なかった。

しかし、日沙妃はとても健気であった。

常に霧霞童子に秋波を送り気持ちを伝えようとしていた。

一緒に旅をしていて野宿をしていた時のことを思い出して、

「童子様、今夜は冷えますから旅をしていた時のように一緒に寝て体を暖めましょう。」

「姫はもう大人だから異性と同衾するのは例え父親と雖も道徳的に良くない事ですよ。」

朴念仁で唐変木の霧霞童子の返事はそっけなかった。

やがて、霧霞童子が大陸へ戻り鬼族の頭領の座を継ぎ、大陸の鬼族を纏めることになった。

日沙妃は当然のように霧霞童子の腹心としてついて行った。

大陸では腐敗しきって弱まった国の鬼族を統率して、十年も経たない内に鬼族全体の

立て直しに成功したがその陰で日沙妃姫が霧霞童子を助けて吸血鬼と食人鬼の力を削ぎ、

傀儡鬼と食屍鬼の力を拡大した。

それ故に傀儡鬼と食屍鬼は日沙妃姫に対しても強く崇拝し忠誠を誓っていた。

165、さつき人形(21歳ver)は日の目を見るか

 

さつきは雅が自分の人形を作っていることを全く知らず気が付いていなかったが

自分の友人や身近な人物が人形となって出てくる夢を頻繁に見ていた。

「あの夢の中だと私の21歳verの人形はまだ作られてないなあ。」

同い年の撫子、妖子、美猫の人形(21歳ver)は作られているようだったが

さつきと吹雪がまだだった。

これで吹雪の方が先に作られるようだとするとさつきは落ち込むことが想像できた。

特に美猫と妖子が人間verだったので自分がどういう風になるのか心配だった。

さつきはあの夢の中では美猫猫又人形(16歳ver)にいつも理不尽な暴力をうけ、

酷い目にばかり遭っていた。

「どうしてあの美猫ちゃんは何時も凶暴なんだろう、最近やっと元通り仲直りできたのに。」

一方、雅は人形たちが夢の中で無茶な要求をしなくなり大人しくしている様なので

すっかり、人形作成を休んでいた。

ただ、完成した人形を鑑賞して癒されていた。

美猫、銀、妖子、四方音とキジコといった雅の細やかな趣味を知っていて

理解のあるものが書斎の人形を鑑賞に来ていた。

「いつ見ても癒されるのう。」

今日は四方音と妖子が来ていた。

妖子が21歳verに対してどういう反応を示すか出来ることなら自身の21歳ver

変化に嫌悪感を持たないようにするためであった。

雅のアイデアで古宮慧快の作った氷刃猫姫にヒントを得て胸に晒しを巻き全体的に

スレンダーな感じに仕上げ妖子の好みを反映させた。

聡い妖子はふと疑問に思ったことを雅に投げかけてみた。

「21歳verに変化した私ってこんなにスレンダーなんでしょうか。」

「美猫さん21歳verってかなりセクシーダイナマイツで銀さんみたいな感じですし。」

雅に代わって四方音が妖子の疑問に答えた。

「妖子姉様、自在変化を会得すれば体形など自由自在になるから心配無用じゃ。」

「銀姉様など以前は胸に晒しを巻いて邪魔な胸を隠しておったし、そんなに気にすること

ではないのう。」

「要するにあまり気にせず自在変化の修業を積むことが大事じゃ。」

妖子は納得したようなしないような曖昧な気持ちだったが、21歳verで

スレンダーな体形に変化できるようになれば良いと判断した。

といった具合でさつきのことはすっかり忘れ去られていた。

そんなこととも知らずさつきは夢の中のリトルワールドがどうなっているのか気になって

いたのだった。

 


 
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