7月29日―――――
夏至祭が終わった翌朝、リィン達Ⅶ組のメンバーは揃って帝都を後にする事になり、リィン達はオリヴァルト皇子達に見送られようとしていた。
~バルフレイム宮・第二迎賓口~
「いや、君達には本当に世話になってしまった。兄妹共々、士官学院に足を向けて眠れなくなってしまったくらいさ。」
「いえ、そんな……!」
「その、あまりにも畏れ多いお言葉かと……」
オリヴァルト皇子の言葉をリィンとアリサは謙遜した様子で受け取った。
「いいえ、いいえ。わたくしとエリゼなどあのまま連れ去られていたらどんな運命が待ち受けたかわかりません。……本当に、何度お礼を言っても足りないくらいの気分です。」
「……わたくしからも改めてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました。」
「エリゼ……」
「えへへ……本当に無事で良かった。」
アルフィン皇女とエリゼにお礼を言われたリィンはエリゼを見つめ、エリオットは嬉しそうな表情で答えた。
「うふふ、お姫様の件は一つ”貸し”にしておくわよ、オリビエお兄さん♪」
そして笑顔を浮かべて呟いたレンの言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「き、君なあ………」
「貴様……俺達は帝国民として当然の事をしただけなのに、その事を殿下に対する”貸し”にする等あまりにも不敬だと思わんのか?」
マキアスは呆れた表情でレンを見つめ、ユーシスはレンを睨んで注意した。
「あら、ユーシスお兄さんったらおかしなことを言っているわね。レンはエレボニア人じゃなくてリベール人でしかも遊撃士よ?リベール人のレンはエレボニアのお姫様を助ける義理はないし、遊撃士の救助対象は”民間人”よ。貴族の令嬢のエリゼお姉さんは微妙な所だけど一応”民間人”に分類されるからいいけど救助対象が皇族の場合、遊撃士協会は基本不干渉の政治の問題も関わるから同じ救助対象の親類にあたる皇族から”依頼”でもされない限りは自発的に救助には動かないわよ。」
「このガキは……」
「ハア……それに関しては時と場合によるでしょうが……」
「というか本人達を目の前でよくそんな事が言えるわね。」
レンの答えを聞いたユーシスは顔に青筋を立て、サラ教官とアリサは疲れた表情で指摘した。
「ハハ……実際レン君の言う通りだから、君達は気にしないでくれたまえ。レン君の言う通りアルフィン達の件は”借り”にしておくよ。……まあ、正直な所レン君に”借り”を作ったら、その”借り”を返す為に後でどんなとんでもない内容を要求されるのか想像するだけでも怖いけど。」
一方オリヴァルト皇子は苦笑しながら答えた後静かな表情で答え、そして疲れた表情で溜息を吐き、それを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「それと私とセドリックの方もB班の働きには助けられたよ。市内の混乱の収拾……改めて礼を言わせてもらおう。」
「勿体ないお言葉。」
「ふふっ…………お役に立てて光栄です。」
オリヴァルト皇子の感謝の言葉にガイウスとエマは会釈して答えた。
「フフ、”Ⅶ組”設立のお礼をやっとお返しできたみたいですね。それにしても……”帝国解放戦線”ですか。」
「ああ……ノルド高原での一件……さらには帝国各地の幾つかの事件。今までにも暗躍の気配はあったが今回、ついにその名前を明らかにした。”C”をリーダーとする数名の幹部たちに率いられた純然たる恐怖主義者(テロリスト)たち。現在、情報局でメンバーの洗い出しを行っている最中らしい。」
サラ教官の言葉に頷いたオリヴァルト皇子は真剣な表情をした。
「……こう言っては何ですが不思議な人たちでしたね。わたくし達を連れ去りながら悪意を余り見せる事なく……それでいて内に秘めた激情に取り憑かれているかのようでした。」
「……はい。もちろん、姫様や私を攫ったことは許されることではありませんが……」
「内に秘めた激情……」
「……そんな感じはしたかも。」
アルフィン皇女とエリゼの言葉に続くようにラウラとフィーは静かに呟いた。
「『静かなる怒りの焔をたたえ、度し難き独裁者に鉄槌を下す……』……彼らのリーダーの言葉です。」
「確かにそう言ってたな……」
「フッ……まあ、そんな露骨な言葉なら誰でもわかるだろうね。」
リィンとマキアスの説明を聞いたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて頷いた。
「『静かなる怒りの焔』……そして『度し難き独裁者』。」
「まあ、何を示しているのかは明らかではあるが……」
そしてサラ教官の言葉にオリヴァルト皇子が続こうとしたその時
「皆さん……!」
セドリック皇太子がレーグニッツ知事と共に現れた。
(あ……)
(も、もしかして……)
(父さんも……)
二人の登場にリィン達が驚いている中、二人はリィン達に近づいてきた。
「セドリック……何とか間に合ったわね。」
「フフ、いいタイミングだ。」
「皇太子殿下……」
「わざわざお見送りに来ていただいたのですか。」
「ええ、お世話になったからにはこのくらい当然ですから。あ……こちらの方々が”Ⅶ組”のもう一班なんですね。――――初めまして、皆さん。セドリック・ライゼ・アルノールです。この度は、姉の危機を救っていただき、本当にありがとうございました。心よりお礼を言わせてもらいます。」
セドリック皇太子はリィン達を見つめた後自己紹介をして笑顔になった。
「……勿体ないお言葉。」
「あわわっ……光栄です!」
「ありがとうございます、殿下。」
「皇太子……想像してたより可愛いかも。」
「うふふ、”皇女殿下”でも十分通じるのじゃないかしら♪」
「こ、こらフィー、レン。」
セドリック皇太子の感謝の言葉をリィン達が受け取っている中、セドリック皇太子を見つめて呟いたフィーとレンのセドリック皇太子の印象を聞いたマキアスは慌てた。
「ふふっ、皆さんのようにもっと逞しくなってくれればわたくしも安心なのですけど。なんせわたくし達よりも年下で、しかも女の子のレンさんですら、リィンさん達と一緒にテロリスト達相手に果敢に挑んで見事わたくし達を救出したのですから。」
「うぐっ……」
「姫様……失礼ですよ。」
「というか比較対象がレンの時点で色んな意味で間違っていると思う。」
「ハハ……レン君は”存在自体が反則”と言ってもおかしくないチートの塊のような存在だものねぇ。」
「うふふ、だってレンは”真の天才”だもの♪」
アルフィン皇女の言葉を聞いたセドリック皇太子は唸り声を上げて疲れた表情になり、エリゼはアルフィン皇女に注意し、ジト目で呟いたフィーの言葉にオリヴァルト皇子は苦笑しながら同意し、レンは小悪魔な笑みを浮かべて答え、レンの答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「何で君はいつも自分の才能に関してそんなに自信満々でいられるんだ……?」
「しかもレンの場合、本当にそうなのだから、洒落になっていないのよね……」
「アハハ……」
疲れた表情になったマキアスとアリサの指摘を聞いたエマは苦笑していた。
「しかし、セドリックと貴方が一緒というのも珍しいね……?」
「はは……恐縮です。せっかくなので彼らをこのまま、見送らせてもらおうと思いまして。」
「父さん……傷の方は大丈夫なのか?」
「ああ、大事には至っていない。まだ少し痛むが、じきに完治してくれるだろう。」
「そうか………」
父親の傷が大したことがない事を知ったマキアスは安堵の溜息を吐いた。
「知事閣下、お疲れ様でした。」
「ああ、ありがとう。―――かなり変則的ではあったが無事、今回の特別実習も終了した。士官学院の理事として、まずはお疲れ様と言っておこうか。」
「……恐縮です。」
「ありがとうございます。」
「―――”Ⅶ組”の運用、そして立場の異なる3人の理事。色々思うところはあるだろうが……君達には、君達にしか出来ない学生生活を送って欲しいと思っている。それについては他の2人も同じだろう。」
「父さん……」
「…………」
「……そう言って頂けると。」
レーグニッツ知事の言葉にマキアスは驚き、ユーシスは目を伏せて黙り込み、アリサは会釈をした。
「――その点に関しては殿下もどうかご安心ください。」
「はは……わかった。元より、貴方については私も信頼しているつもりだ。だが――――」
レーグニッツ知事の言葉に頷いたオリヴァルト皇子が話を続けようとしたその時
「―――どうやらお揃いのようですな。」
黒髪の男性がリィン達に近づいてきた。
「あ……」
「…………まさか…………」
「…………………」
「ふぅん……あの人が噂の。(うふふ、ちょうどいい機会だから”読み取らせて”もらうわよ。)」
男性の登場にマキアスは驚き、ユーシスは目を細め、リィンは真剣な表情で黙り込み、レンは意味ありげな笑みを浮かべてその身に秘められている”グノーシス”の力で男性の記憶を読み取り始めた。
「オズボーン宰相。」
「……実は、先程まで共に陛下への拝謁を賜っておりまして。」
男性――――オズボーン宰相の登場にセドリック皇太子は笑顔になり、レーグニッツ知事はオリヴァルド皇子に説明し、オズボーン宰相はアルフィン皇女を見つめて会釈をして口を開いた。
「アルフィン殿下におかれましてはご無事で何よりでした。これも女神の導きでありましょう。」
「ありがとうございます、宰相。」
オズボーン宰相の挨拶に対してアルフィン皇女もスカートを摘みあげて上品な仕草で返事をした。
「オリヴァルト殿下も――――”帝国解放戦線”に関しては既に全土に手配を出しております。背景の洗い出しも進んでおりますのでどうかご安心ください。」
「……やれやれ、手回しのいいことだ。これは来月の”通商会議”も安心ということかな?」
オズボーン宰相の言葉に溜息を吐いたオリヴァルト皇子は真剣な表情でオズボーン宰相を見つめて尋ねた。
「ええ、万事お任せあれ。―――失礼。諸君への挨拶がまだだったな。―――帝国政府代表、ギリアス・オズボーンだ。”鉄血宰相”という名前の方が通りがいいだろうがね。」
オズボーン宰相はリィン達を見つめて自己紹介をした。
「あ……」
「は、初めまして、閣下。」
「そ、その………お噂はかねがね。」
「フフ、私も君達の噂は少しばかり耳にしている。帝国全土を又にかける特別実習、非常に興味深い試みだ。これからも頑張るといいだろう。」
アリサとマキアスが話し辛そうな表情になっている中、オズボーン宰相は静かな笑みを浮かべてリィン達に激励の言葉を贈った。
「……恐縮です。」
「……ども。」
「―――もったいないお言葉、ありがとうございます。」
「精進させていただきます。」
「それと……―――久しいな、遊撃士。転職したそうだが息災で何よりだ。」
「ええ、お蔭様で。―――”その節”は本当にお世話になりました。」
オズボーン宰相に見つめられたサラ教官は真剣な表情でオズボーン宰相を見つめ返した。
「フフ……ヴァンダイク元帥は私の元上官でもある。その意味で、私としてもささやかながら更なる協力をさせてもらうつもりだ。まあ、楽しみにしてくれたまえ。」
「……それは…………」
「……………………」
オズボーン宰相の話を聞いたサラ教官とオリヴァルト皇子は厳しい表情でオズボーン宰相を見つめた。
「それと……まさかこのような形で名高き”剣聖”の娘にして、遊撃士協会の麒麟児と会えるとは思わなかったぞ、”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”。」
「ふふっ、それはお互い様です。私の事は世間でも色々と言われていますが所詮はただの遊撃士。そんな私如きが世間でも有名な宰相閣下とお会いできるとは思いもしませんでした。」
「フッ、謙遜する必要はない。リベールの王族を始めとしたリベールの様々な方面での人脈を持っている事に加えてクロスベル、アルテリア方面にも様々な人脈を持ち、果てはかの”Ms.L”とも繋がりがある貴女(きじょ)と比べれば、私の人脈等大した事はないのだからな。」
「まあ……フフ、閣下のような偉人にそんな風に評価されていたなんて光栄です。」
レンとオズボーン宰相のやり取りを見守っていたリィン達は普段のレンの態度や口調とはかけ離れたレンの態度と口調にそれぞれ驚いた様子で見守っていた。
(う、嘘……あのレンが普通に敬語を使っている上、上流階級の人達と接するような態度で接しているわ……)
(しょ、正直普段のレンちゃんを知っていると信じられないですよね……)
(フン……呆れを通り越してむしろ感心するくらい猫を被るのが上手のようだな。)
(宰相閣下がレンの事を知っていたのは驚いたな……)
(しかもあのオズボーン宰相が人脈ではレンが自分より上である事を認めているなんて……!)
アリサとエマは信じられない表情をし、ユーシスは呆れた表情でレンを見つめ、ラウラとマキアスは驚きの表情でレンを見つめていた。するとその時オズボーン宰相はリィン達を見回して口を開いた。
「諸君らも……どうか健やかに、強き絆を育み、鋼の意志と肉体を養って欲しい。――――これからの”激動の時代”に備えてな。」
「…………ぁ……………」
「…………っ…………」
オズボーン宰相の言葉にエマが不安そうな表情をし、ユーシスが唇を噛みしめたその時
(っ……?)
オズボーン宰相の言葉に反応するかのように胸が鼓動したリィンは胸を押さえ
(兄様……?)
「………………」
その様子に気付いたエリゼは不思議そうな表情をし、レンは真剣な表情でリィンとオズボーン宰相を見比べていた。
その後リィン達はオリヴァルト皇子達に見送られてバルヘイム宮を去り、トリスタへと帰還した――――――
今回の話で菫の軌跡は一旦中断して、運命が改変された少年~や焔の軌跡の続きを書くつもりですので、菫の軌跡はしばらく休む予定です。それと私もやっとイース8をクリアしました………イース8やって感じた事は閃以降からファルコムのモブキャラが強すぎるwwアドルたちが苦労して倒した古代種を倒す漂流村の面々もそうですが古代種の比率が高すぎるエリアで生き抜いたおばあさんと執事、後は前作キャラって一体どんだけ強いんだよ!?って思いました(汗)後ダーナの存在感やヒロイン力が今までイースシリーズのヒロインの中で一番のような気がしましたww(といっても私がプレイした事があるのはオリジン、フェルガナ、7、セルセタですが)……というか真EDの結末だったらイースと軌跡世界が一緒の設定の光と闇の軌跡シリーズでもダーナは今も……(汗)
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第129話