~聖アストライア女学院・聖餐室~
「ええっ!?ほ、本当にレンちゃんは遊撃士だったのですか!?」
「それもサラ教官と同じ最高ランクであるA級正遊撃士とはな………フフ、道理で”実戦”について私達よりも遥かに知識を持ち、実力もある訳だ。」
レンが遊撃士だった事にエマは驚き、真剣な表情で呟いたラウラは苦笑した。
「あれ?でも、14歳のレンが遊撃士だなんておかしくない?遊撃士は確か16歳からなれるって聞いた事があるけど……」
「そ、そう言えば………」
その時ある事に気づいたエリオットの疑問を聞いたマキアスは目を丸くし
「既に学院生活や特別実習を通して彼女の能力の一端を見ているだろうからわかると思うが、彼女は天才的な知性の持ち主でね。今より更に幼い頃から遊撃士になる為に既に遊撃士として活動していた彼女の兄や彼女の父でもある当時遊撃士だったカシウスさんの伝手で、遊撃士協会にその実力を認めてもらって遊撃士の見習いとして支部で勉強したり、遊撃士達のサポートをしていたそうなのだが……16歳になるのが待てず、すぐにでも遊撃士になりたかった彼女は支部の受付達に交渉し、その結果規定年齢にも達していないにも関わらず彼女が遊撃士として活動する事を受付達が認める程の”結果”を叩きだした上幼いながらも”八葉一刀流”の皆伝者になった事で支部の受付達から事情を聞いた遊撃士協会本部の幹部たちも特別に認めた結果、彼女は”特例”という形で幼い頃から遊撃士として活動していたんだ。」
「お、幼い頃からって……レンって一体何歳から遊撃士として活動していたのですか?」
オリヴァルト皇子の話を聞いて驚いていたアリサは信じられない表情でオリヴァルト皇子に訊ねた。
「確か彼女が”八葉一刀流”の伝承者である師匠の”剣仙”から”小剣聖”の称号を貰ったのが9歳で、その時を境に遊撃士として活動し始めたとの事だから……9歳からのはずだ。」
「ええっ!?9歳で既に遊撃士として活動していたんですか!?」
「色々な意味で信じられんな……よく依頼人はあんな生意気なガキに自分の依頼を任せられたものだな……」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたエリオットは驚き、ユーシスは信じられない表情で呟き
「フフ、確かにプライベートの時の彼女は我が可憐なる妹にも負けず劣らず悪戯っ娘でマセているが、”仕事”になれば真面目な態度になるよ。それこそ依頼人に対しては我が妹が社交界では猫を被るように常に敬語を使って、真面目な態度で接していたくらいだ。」
「お兄様?さり気なくわたくしをけなしていませんか?」
「フッ、そんなつもりは全然ないさ♪」
ジト目のアルフィン皇女に指摘されたオリヴァルト皇子は髪をかきあげて笑顔で答え、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「う、う~ん……レンが敬語を使って真面目な態度で接している場面ねぇ……?」
「普段の態度を見ていたらその様子が全然思い浮かばないよな……?」
我に返ったアリサとマキアスは困惑し
「フフ……レン君の仕事をしている所を見ていない君達では想像しにくいと思うがレン君は例え依頼の内容が些細な内容――――他の遊撃士では受けないような依頼も率先して請けて決して手を抜かず、全て本気で取り組んで依頼を達成していたんだよ?」
「”他の遊撃士では受けないような依頼”とは例えばどのような内容なのですか?」
オリヴァルト皇子の話の中で気になった事があったガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。
「そうだね……例えば恋の告白の手伝いだね。」
「こ、恋の告白の手伝いですか………」
「レンの事だから、レンにとっては面白いから請けたんじゃないの?」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたエマは困惑し、フィーはジト目で訊ねた。
「ハハ、その事についてレン君に聞いてみたら『恋の天使(キューピッド)役を務めるなんて、二つ名に”天使”の名があるレンにピッタリなお仕事でしょう?』と言っていたよ。」
フィーの指摘に苦笑しながら答えたオリヴァルト皇子の説明を聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「え、えっと……それで実際レンさんはその恋の告白のお手伝いの依頼を成功させたのでしょうか……?」
「ああ。実際彼女のお陰で数組のカップルが成立して、後にそのカップルが結婚した際には自分達が結ばれるきっかけを作ってくれた恩人の自分がそのカップルの結婚式に呼ばれたって自慢げに語っていたよ。」
「う、嘘……」
「一組どころか、数組のカップルを成立させたなんて……」
エリゼの質問に答えたオリヴァルト皇子の説明を聞いたアリサとエリオットは信じられない表情をし
「まあ……うふふ、だったらエリゼも是非その方に貴女の恋愛相談をしたらどうかしら♪」
「ひ、姫様!」
「ハ、ハハ……………」
アルフィン皇女にからかいの表情で指摘されたエリゼは顔を真っ赤にして声を上げ、レンによってある意味エリゼの恋を成就させたと言ってもおかしくない事を身を以って知っていたリィンは冷や汗をかいて乾いた声で笑っていた。
「話を続けるが、当時から彼女は”天才少女”として、遊撃士内だけでなくリベール国内でも有名な存在でね。彼女はありとあらゆる方面で”天才”だから、彼女が遊撃士になった事を惜しんだ人達はたくさんいたそうだよ。」
「ありとあらゆる方面で”天才”とはどういう事なのでしょうか?」
オリヴァルト皇子の話が気になったエマは不思議そうな表情で訊ねた。
「彼女は普通の人よりも情報収集・処理能力が圧倒的に長けていてね。その能力によって武術の腕は当然として、戦術や導力技術に交渉術、政治学や医学、果ては調理技術等彼女は”全ての分野”を少しでも学べば普通の人達が学ぶ何十―――いや、何百倍もの速さで理解して学んだ分野を僅かな期間でマスターできる”天才の中の天才”なんだ。彼女がその気になれば軍や政治家のトップにもなれるし、”ラインフォルトグループ”のような大企業のトップにもなれるし、シュミット博士やラッセル博士のように歴史に名を残す優秀な技術者や世界にたくさんいる多くの患者達の病気や大怪我を治す名医にもなれるし、最高級レストランのシェフや王宮料理人にだってなれる。そしてそこに加えて彼女の二つ名の中にある”天使”を思い浮かべさせるような彼女の可憐なる容姿………―――フッ、”天は二物を与えず”という諺があるが、彼女に関しては”天は万物を与える”と言う新たなる諺を証明するような正真正銘の天才美少女さ。」
「…………………」
「なるほど……だからこそレンは自分の事をいつも”天才”と言っているのですか………」
「それに自分を”天使”と言っている事も自分の二つ名に”天使”の名が冠されているからだろうな……」
「ま、実際レンは他の人達からは”可愛い”ってよく言われているからレンが”美少女”である事は否定しないけど、自分で自分の事を”美少女”って言っている事についてはイラッとするけどね。」
オリヴァルト皇子の口から出た驚愕の事実にクラスメイト達が驚きのあまり口をパクパクさせているか、絶句している中ガイウスとリィンはそれぞれ納得した様子で呟き、フィーはジト目で呟いた。
「ま、まさかレンさんがそんな凄い人だったなんて……………あの、殿下。もしかしてレンさんは薬の調合もご自分でできるのでしょうか……?」
「エリゼ……?」
驚きの表情で聞いていたエリゼは疑問に思っていたレンが用意した媚薬等の出所がオリヴァルト皇子の話からレンが用意したものである事を悟るとオリヴァルト皇子に訊ね、エリゼの質問を聞いたアルフィン皇女は不思議そうな表情をした。
「薬の調合かい?荒事の仕事も関わる遊撃士稼業では必ず役に立つ薬学も学んだとの話も聞いた事があるから、できるはずだよ。実際、彼女の双子の妹―――ユウナ君もレン君と同じあらゆる分野を少しでも学べば何でもできる天才美少女で、以前彼女の悪戯で私がリベールの旅行中私や私がお世話になった人達にユウナ君が調合した睡眠薬を彼女が用意したクッキーに混ぜ込まれて眠らされた事もあったしね。」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「い、悪戯で睡眠薬を飲ませるって……」
「フン……あのガキ同様妹の方も相当厄介なガキのようだな。」
「アハハ……というか姉妹揃ってそんな凄まじい能力を持っているなんて、正直信じられないですよね……」
「………ユウナの”正体”を考えたら”厄介”というレベルじゃないけどね。」
我に返ったアリサはジト目になり、ユーシスは鼻を鳴らし、エマは苦笑した後信じられない表情で呟き、フィーは静かな表情で小声で呟いた。
「エリゼ?どうしてそんな事を聞いたのかしら?」
「え、えっと……数日前に兄様の元を訊ねた際のトラブルが原因でその日の夜は中々眠れなくて……その時に私の事を心配してくれていたレンさんから睡眠薬を頂いたので……」
「トラブル……ああ、あの甲冑の件か。」
「……確かにあのような存在に襲われかけたのだから、その日は眠れなくても当然の事だな。」
「………………」
アルフィン皇女の質問に嘘の答えを口にしたエリゼの話を聞いたマキアスとガイウスが納得している中、エリゼ同様”真実”を知っているリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。
「それと当然だがレン君の遊撃士としての腕前も相当でね。彼女はリベールで起こったクーデター事件と”リベールの異変”の二つの大事件を解決したメンバーの一人でもあるリベールにとって恩人―――いや、”英雄”の一人と言っても過言ではないだろう。」
「え、”英雄”………レンが………」
「父君でもあるカシウス卿も”百日戦役”で活躍した事から”リベールの守護神”として名高いリベールの”英雄”なのだから、親娘揃って”リベールの英雄”だな………」
レンが”英雄”である事を知ったエリオットは信じられない表情をし、ラウラは真剣な表情で呟き
「ちなみに彼女の家族には多くの兄妹がいるのだが……その内の二人の兄と一人の姉の3人は遊撃士で、レン君同様先程挙げた二つの大事件を解決したメンバーである事から、彼らもレン君同様リベールの若き”英雄”さ。」
「ええっ!?」
「まさに”英雄一家”と言ってもおかしくないな………」
オリヴァルト皇子の説明を聞いたアリサは驚き、ユーシスは真剣な表情で呟いた。
「……説明を補足するとレンの二人の兄の内、一番上の兄はリィンも知っている人だと思うよ。」
「え………」
「俺が?一体誰なんだ?」
フィーの指摘を聞いたエリゼは呆け、リィンは不思議そうな表情で訊ねた。
「―――”焔の剣聖”ルーク・ブライト。レンやカシウス・ブライトと同じ”八葉一刀流”の皆伝者の一人。」
「何だって!?”焔の剣聖”がレンのお兄さんなのか!?」
「お、お父さんに加えてお兄さんまでリィンの剣術の”八葉一刀流”の皆伝者って……!」
「英雄だけでなく、”剣聖一家”でもあるのか……」
「フフ、レン達と同じ”剣士一家”として私もレン達を見習って早く父上に追いつけるようにもっと精進せねばならぬな……」
フィーの答えを聞いたリィンとエリオットは驚き、ガイウスは静かな表情で呟き、ラウラは苦笑していた。
「えっと……レンさんはその二つの大事件を解決したメンバーの一人との事ですが、具体的にはレンさんはどのような功績を残されたのですか?」
「そうだね……クーデター事件では反逆者達に拘束されているアリシア女王陛下を救出に向かう精鋭メンバーの一人に選ばれ、アリシア女王陛下を拘束していた反逆者の幹部を撃退して女王陛下を救出後反逆者のトップが逃げ込んだ遺跡を探索する精鋭メンバーの一人になったし、”リベールの異変”時はカシウスさんの采配によって”導力停止現象”で王国全土が混乱していた時王都に襲撃し、アリシア女王陛下やクローディア姫を誘拐しようとした”結社”の”執行者”達を迎撃する少数精鋭部隊の一人に選ばれた上、更には”結社”による王都襲撃が起こった際にはレン君を含めた少数精鋭部隊はたった4人で王都の守備隊や王城の親衛隊を蹴散らした”執行者”達相手にそれぞれ一騎打ちで勝利して撃退。そして”異変”を解決する為に私やクローディア姫達と共に”アルセイユ”で浮遊都市に乗り込み、浮遊都市の探索メンバーの一人として浮遊都市を探索、並びに浮遊都市の中枢で待ち構えていた”執行者”を撃退、更には”七の至宝(セプト=テリオン)”の力を取り込んだ”結社”の幹部である”蛇の使徒”を相手に決戦を挑み、激闘の末勝利した”リベールの異変”での最終決戦メンバーの一人だ。」
「後”影の国”の決戦時はレンとわたしは”影の国”の事件を起こした親玉を倒すメンバーとして、”影の国”の親玉である”世界の意志”とも戦って勝利したから、”影の国”の時もレンは最終決戦メンバーの一人だね。」
「…………………」
エリゼの質問に答えたオリヴァルト皇子とオリヴァルト皇子の説明を補足したフィーの説明を聞いたリィン達は絶句し
「せ、”世界の意志”って、戦って勝てる相手なの……?」
「ひ、非常識な………」
「………フィーもそうだが、レンも私達では想像もできないような多くの激戦を経験していたのだな……」
「”空の女神”が人々に授けたという伝説の”七の至宝(セプト=テリオン)”の力はどのようなもので、そしてそんな力を取り込んだ相手にレンはどのように勝利したのだろうな……?」
「…………………」
「……あのガキはまさに”英雄”と称されてもおかしくない功績を残していたようだな。正直信じたくはないが。」
「それに功績、実力共にサラ教官よりも確実に上だな……」
我に返ったエリオットは表情を引き攣らせ、マキアスは疲れた表情で溜息を吐き、ラウラは重々しい様子を纏って呟き、ガイウスは不思議そうな表情で考え込み、エマは真剣な表情で黙り込み、静かな表情で呟いたユーシスはレンの顔を思い浮かべて疲れた表情をし、リィンは静かな口調で呟いた。
「フフ、それとレン君の凄い所は他にもあってね。遊撃士時代に築いた彼女の人脈は私どころか下手をすれば”四大名門”や父上をも超える凄まじい人脈の豊富さなんだ。」
「し、”四大名門”や皇子殿下達を越える人脈の豊富さって………しょ、正直信じられないのですけど……」
「……殿下。ちなみにレンにはどのような方達と知り合いなのですか?」
オリヴァルト皇子の話を聞いたエリオットは表情を引き攣らせ、ラウラは真剣な表情で訊ねた。
今回の話でお気づきと思いますがこの物語のレンちゃんとフィーは焔3rd篇ラスボス戦はケビン達のチームのメンバーです。ちなみに残りのメンバーはレンとフィーに加えて後3人を予定しているのですが空陣営ともテイルズ陣営とも関連性がないか薄い人物達と言えば大体想像できるかとww(というかケビンとリースがいるのですから、三人の内一人に関してはモロバレでしょうがw)
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第122話