000:電話と回想と静けさ
星空がよく見えるアパートの一室。
そこの窓を開けて上を見上げている…何故か身体中に打撃跡のあるリトは、とある人物と電話をしていた。
親しげに話す携帯越しの彼はリトにとって弟に等しい存在であり、彼の数少ない血縁者の一人だった。
『――ってことで、明日学校終わったら皆連れてそっちに行くね』
リト「ああ。…て言っても、ランボはママンさん達と一緒の方がいいと思うし、無理して来させんなよ?」
『うん、わかってる。…それとあの二人は…』
リト「来たらまずキン肉バスター」
『プロレス技!?』
電話越しに鋭いツッコミをする彼。
さっき言った二人と彼の関係は一言で言えば、加害者と被害者だ。
最初の頃はとげとげしてたり胡散臭かったりした二人なのだが、とある理由で彼らをリトが変えてしまった……もちろん悪い意味で。
だからこそのリトの発言なのだ……被害を受けてる彼の罪滅ぼしの為に。
『あ、そうそう。リボーンは自分で来るって。少し用事があるとかで…』
リト「そっか。…気ぃ付けて来いよ。最近だと惑星Mの技術から作り出した“ガイアメモリ”が流通してるからな」
『ドーパント…だったっけ。人間が怪人になるなんて…』
リト「仕方ねぇよ。そう言う奴だっているんだ」
リトには彼が顔を歪めたように感じた…いや、直感した。
彼は性格的に争いを好まない、優しい男だ。
そして臆病で、理不尽な暴力を良く思わないのだ。
それは他人であっても、自分であってもだ。
だが、その暴力が誰かを傷つけるなら…彼は戦うだろう。
いつも眉間に皺を寄せ、祈るように拳を振るう…いつものように、進み続ける。
『…とにかく明日よろしくね、兄さん』
リト「ああ。はぐれんなよ…ツナ」
リュウタロス「もー、いーくつねーるとー、がーくーえーんさーい」
デネブ「はいはい、四日後の学園祭楽しみだねー」
ジーク「フム…学園祭か。そんな話をしたような、してないような…」
デネブ「いや、したでしょ…ってジーク寝てたっけ、そういえば」
アパートの三人部屋、でデネブとリュウタロスは布団を敷いていた。
ただ一人、ハンモックで寝るジークはゆらゆらと揺れてリュウタロスの発言に疑問符を浮かべる。
それもその筈だ……だって寝てたんだもん。
ジーク「それで、どう言った内容なのだ?」
リュウタロス「えっとねー、リト達と一緒にやるんだよ!クラスとか関係なく」
デネブ「ああ。この学校、かなり自由にできてるからな…」
そう言ってデネブは今日の出来事を振り返った。
それは放課後の事だった。
リト「つー訳で、食堂借りれましたー!」
モモウラキンリュウ「「「イエーイ!」」」
いつも世話になってる学園の食堂で、デネブと侑斗とジーク(寝てる)以外のアパート男組のテンションが上がっていた。
そんな状況を理解できていない二人…桃香と蓮華はリトに話しかける。
桃香「えっとー…どう言うこと?」
蓮華「説明して貰いたいんだけど…」
リト「ああ。そういえば話して無かったんだっけな」
美花「ここに集めれた方々は全員ご主人様のご提案なさった喫茶店で働きたいと仰った方々です」
リト「あと誘ったのもな」
愛紗「ええ。私の場合はリトに誘われたからでして…二人はどうしてここに?」
桃香「面白いのがあるって雪蓮さんから」
蓮華「貴女の個性を活かせるからって姉様から」
愛紗「雪蓮先輩…」
雪蓮「テヘッ♪」
テヘペロ、と雪蓮はふざけて見せるが、それにより蓮華の額に青筋ができる。
ああ、これ怒られるパターンだ、とリトは呑気に見ていた。
それと、ここで天ノ川学園の学園祭の説明をしよう。
天ノ川学園は『自由』と『個性』をモットーにしており、それは学園祭も例外ではない。
学園側に生徒が何をするのか、どこでするのか、人数はどうなのか、どう言った内容なのかを書いた書類を提出することで初めて出し物をすることができる。
ちなみに人員は学年、組関係なく選べるので下級生と上級生の交流にもなる魅力があり、許可されている。
現在のリトの場合、人員以外の書類を書き終えている状況なので、この場にいる者達+αの名前を書いた書類を出せば正式に模擬店を出せるのだ。
そしてリトが集めた者の一人、栄華は不満げにため息をつく。
栄華「まったく…私が何故男に接客など…」
柳琳「ま、まぁまぁ。リトさんに頼まれたんですから…」
栄華「そ…そうですわね。頼まれたからですわよ!仕方なく!やるのですから!感謝してくださらないと!」
七乃「(素直じゃないですねー…)ところで厨房はどなたがやるんですか?」
リト「んー…デネブと流琉は決定だな。食のプロフェッショナルだし」
デネブ「プロフェッショナルってほどじゃないけど…まぁ、頑張るよ」
流琉「私に任せてください!」
リト「あとはどうすっかな、これだけでも十分なんだが…」
さすがにこの食堂の広さで二人の料理人だけだとかなり厳しいだろう。
最低あと三人必要だ、とリトが唸っていると美花が話しかけてくる。
美花「ご主人様、私にお二人のお手伝いをさせてください」
リト「え?お前接客しないの?」
美花「はい。接客する相手がご主人様なら全身全霊、愛を込めてご奉仕する自信があるのですが、見ず知らずの殿方にする気は毛頭もありませんので」
リト「え、あーうん、あんがと…?」
美羽「むぅ…なんだかムカムカなのじゃ…」
音々音「なのです…」
美羽と音々音はコソッと不満を漏らすが、周りにいるリトに好意を持つ者も少々イラッときていた。
だが意外にも、一番嫉妬しそうな愛紗はそんな様子もない…不満なのは変わらないが。
愛紗「あの、リト…私は?」
リト「え?」
愛紗「私は厨房係では無いのですか…?」
リト「あ、メニュー決めるの忘れてた」
愛紗「無視ですか!?」
思わずツッコミする愛紗。
リトはリトで目を合わせないように窓の外で飛んでるピジョンとかを見ていた。
…正直、愛紗を厨房に立たせたくない……食中毒以上に恐い事になるし。
愛紗はそんなリトの意図に気付かず必死に目を合わせようとするが……そんな彼女の肩を叩く者がいた。
双子の姉の桃香だ………青ざめてるけど。
桃香「愛紗ちゃん…駄目だよ…?」
季衣「僕は遠慮したいなー…」
思春「貴様は店を殺人現場にしたいのか…!?」
白蓮「あー…そのー…やめた方がいいぞ?」
沙和「やめてぇ!沙和、学園祭を楽しみにしてたのに…」
真桜「一歩間違えばコナンくんが飛び出してくるんやで!?」
焔耶「うちの兄貴でも治せるかどうか…」
梨晏「食べたら発狂ものじゃない?」
冥琳「自分の力量を確認してからにしろ、愛紗」
次々とボロクソ言われた、一人良心的だけど。
だが愛紗は一応自覚がありながらも言い返す。
愛紗「何故こんなに言われなければいけないのですか!?」
小蓮「だって…ねぇ?」
香風「愛紗ねえちゃのご飯は兵器だって鈴ちゃん言ってたよ」
鈴々「ギックゥ!?なのだ!」
愛紗「だ、だがここ最近の料理を食べたリトは平気なのだぞ!?」
翠「確かに最近愛紗の料理まともになってきたよなぁ…」
愛紗「そうだろう!?」
蒲公英「---でも八分の一の確率で失敗するよね!?タチの悪いロシアンルーレットだよ!?」
鶸「それにリトさんの場合は……もはや慣れですよ、あれは」
蒼「真顔で『口ん中でなんか動いてる』って言った時は怖かったなぁ…」
凪「と言うより、先輩以外の人に出すのですから…作り残しを摘まみ食いしたリオウのようにお客様を瀕死にされたら困ります」
愛紗「orz」
すっかりへこんでしまう愛紗。
これだけでも絶望しそうだ……ファントム生まれないけど。
これはこれで可哀想だな、とリトは励まそうとした。
リト「あ、あのな、愛紗?」
愛紗「なんですか…料理もできない私になんの用ですか…<●>△<●>」
リト「(目ぇ怖っ!!)いや、愛紗は可愛くて美人だからさ!男の目の保養的な意味で接客して貰いたいんだ!」
愛紗「か、可愛い…ですか?美人…そうですか…」←めっちゃ嬉しい
リト「うんうん!だから接客よろしく!(うし、なんとか復活した…)」
愛紗「分かりました、ではしょうがないですから接客をしましょう♪」
おい、語尾に音符出てるぞ。
周囲は愛紗の言葉と気分のギャップを心で指摘しつつも何も言わないでおく。
これで他の事もできるだろうとリトが話を戻そうとしたが、今度は流琉が声をあげた。
流琉「…あれ?じゃあ兄様、私は…?」
リト「馬鹿言うな流琉!!大事な妹をそこら辺のアホの目の保養にさせてたまるかよ!!」
全「「「……………」」」
流琉「に、兄様…嬉しいです…♪」
神崎の仕業とはいえ、流石シスコン…必死さがさっきの比じゃない。
リトのその言動に流琉は頬を真っ赤に染め、胸を押さえる。
すごく幸せそうだ……彼女の脳内では「エンダァァァァァ!」と鳴り響いているだろう。
そして、それと対照的に他の妹ポジは真っ黒なオーラを出し始めた。
あとついでに、他のも。
モモタロス「…おーい、関係ないやつ離れた方がいいぜー」
ウラタロス「リトの半径五メートル以内から出た方がいいよ」
キンタロス「リトやなくても泣けるでっ」
リュウタロス「リトばいばーい」
侑斗「地獄になるな…」
デネブ「さぁ、急いで出るんだ!早く!」
ジーク「zzz…」←デネブに背負われてる
モモタロス達はそさくさと食堂から出ていく。
そしてさっき言ったとおり、ここが地獄になる前に関係のない数人も出ていった。
結果……
我が魂はゼクトと共にありぃぃぃぃーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!
デネブ「ってことで飲食店をやることになったんだ」
ジーク「ほう…王子たる私を見に民達がやって来るのか」
デネブ「全然違うから!?」
ジークに話してみたが全然分かっていない、が仕方ないだろう。
だって王子(笑)だし。
そんな中、リュウタロスは眠気のせいか、半目になりながら疑問を口にする。
リュウタロス「ねー、そういえばサトシ達も一緒にやるんだよね?」
デネブ「ああ。ポケモンバトル部も宣伝のために出し物やるから今日は来なかったけどやるよ?それで、明日メニューに使う材料の買い出しをしてもらうことになったんだ」
リュウタロス「ふーん、まーいいや。おやすみなさーい」
ジーク「zzz…」
リュウタロスとジークは速攻で眠りについた。
て言うかジーク、本当に大丈夫なのか…?
デネブはそう思いながらも部屋の電気を消した。
布団に入り、デネブは目を閉じるが…なぜだか寝付けない。
この頃そう言った事が多いのだ……虫の知らせ、と言うものなのかは分からないが、変な感覚だ。
今日は少し騒がしかったとは言え、ここ最近静かな日々が続いている。
今までの騒がしい日々が、ピタリと止んだのだ。
デネブ「――何も無ければいいんだけどね…」
それはまるで嵐の前の静けさ……デネブは不安になりながらも意識を落とした。
次回、仮面ライダー・FESTIVAL!
「オ久しぶりデスマス!ズット会いたかったデスよ、オージ様!」
「ん゛ー!?ん゛ー!?」
「ピッチュ!ピチュピィィィ!!(ちょっと!マスターから離れなさいよぉぉぉ!!)」
「きゅ…きゅぅぅ…!(ふ…ふえぇぇ…!)」
『アッハハハハ!!スゲェ、スゲェよこの力!!体が軽い、力が湧くぜぇ!!』
「こいつ…まさかヤミーか!?」
『Final Attack Ride DE-DE-DE-DECADE!』
「さて、楽しもうではないか…仮面ライダー」
001:くしゃみと訪問者とホールインワン
XXX「作者と!」
一刀「一刀の!」
X一「「後書きコーナー!」」
XXX「やっぱ忙しくてたまんないね!」
一刀「開口一番にそれかよ」
XXX「だって夏じゃん!サマー!色々忙しいって!休みもそんなないし!」
一刀「ハイハイ、お疲れ」
XXX「天ノ川学園は今回の説明通りとにかく自由です。出し物なり服装なり何でも可!」
一刀「まぁ、元ネタがそうだからな。それで、店のメンバーは?」
XXX「とりあえず回想シーンに出てきたメンバーとポケモン組は確定。まぁ、ちょくちょく加えるかもね。この時点で客寄せのネタは十分なんだけど」
一刀「そりゃ美少女集団だしな。…それはともかく、3日で装飾とかメニューとか作れるのか?」
XXX「ご都合主義」
一刀「おい」
一刀「て言うか一番最初のあれって…」
XXX「言うまでもなくダメダメな彼ですさぁ、という訳で次回もお楽しみに!」
再見(・▽・)ノシ
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それはいつも通りの日常で、でも少し違っていた日だった。