No.860933

英雄伝説~菫の軌跡~

soranoさん

第103話

2016-07-30 00:03:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:834   閲覧ユーザー数:787

 

 

同日、15:00―――

 

その後ゼクス中将が手配したエレボニア帝国軍に猟兵崩れを引き渡したリィン達は急いでゼンダー門に向かってゼクス中将に石切り場であった出来事を説明した。

 

~ゼンダー門~

 

「も、申し訳ありません!拘束した武装集団について共和国軍に連絡したのですがやはり信じてはもらえず……」

「ふむ……無理もない。向こうの被害は、こちらよりも遥かに大きかったようだからな。」

カルバード軍との交渉をしていたエレボニア将校の報告を聞いたゼクス中将は重々しい様子を纏って頷いた。

「だ、だからといって……!」

「その、共和国軍の方でも既に出撃準備を……?」

「うむ、空挺機甲師団が出撃準備を完了したらしい。事ここに至っては……戦闘は避けられぬだろう。」

「遅かったようね…………」

「……………………」

重々しい様子を纏って答えたゼクス中将の話を聞いたレンは厳しい表情で呟き、ガイウスは真剣な表情で黙り込み

「クッ、何らかの交渉ルートが確保できれば話は別だが……」

ユーシスは悔しそうな表情で唇を噛みしめた。

 

「んー……ところで、捕まえた連中から何か聞き出せた?逃げちゃった眼鏡のヒトとか。」

その時ある事が気になったミリアムはエレボニア将校に尋ねた。

「いや、大金で雇われただけで結局何も知らないようだが……というか、君は何なんだ?」

「え、ボク?」

エレボニア将校に指摘を聞いたリィン達はミリアムに注目した。

「そうだった……あなた、本当に何者なわけ?あの眼鏡の男に”子供たち”の一人って言われてたけど。」

「それと銀色の傀儡使い……”白兎(ホワイトラビット)”だったか。」

「フン、どう考えても怪しげな背景がありそうだが。」

「うふふ、この後に及んで正体を隠せると思っているのかしら?」

アリサやリィン、ユーシスがミリアムの正体に怪しがっている様子を見たレンは悪乗りするかのように小悪魔な笑みを浮かべてミリアムを見つめ

「ふむ……」

ゼクス中将は真剣な表情でミリアムを見つめて考え込んでいた。

 

「んー……どうしよっかなぁ。あんまりショゾクを表立って明かすなって言われてるんだけど。」

「え。」

「”所属”ねぇ……?」

「もしかして、君は――――」

ミリアムが呟いた言葉を聞いて何かに気付いたリィンが言いかけたその時

「――ま、その想像は間違ってないと思うぜぇ?」

青年の声が聞こえてきた。

「あー、来た来た!」

すると司令室にスーツ姿の赤毛の青年が入ってきた。

「もー、レクター!ちょっと遅すぎだよ~!」

「おー、スマンスマン。ちょいとクロスベル方面に出張してたもんでな。」

「ああ、あの恐いヒトたちの事務所を用意するってアレ?」

「おー、それそれ。」

青年はミリアムと呑気そうな様子で会話をしていた。

 

「あ、あんたは……」

「フム、軍服を着ておらぬが我らと同じ立場のようだな?」

「―――は、その通りです。帝国軍情報局・特務大尉、レクター・アランドールであります。共和国軍との交渉ルートを担当するために参上いたしました。」

ゼクス中将に尋ねられた青年―――レクター大尉は敬礼して自己紹介をした。

「ええっ……!」

「”帝国軍情報局”…………」

「き、君があの……」

「ふむ、レクター特務大尉か。色々と噂は聞いているが……任せてしまってもよさそうだな?」

リィン達や部下が驚いている中、ゼクス中将は冷静な様子で尋ね

「ええ、既に共和国政府との交渉には入っております。再来月の”通商会議”に向けて無用な対立は避けたい……宰相閣下の意向でもありますので。」

「そうか…………」

レクター大尉の答えを聞いて、僅かに安堵が混じった表情をした。

 

「宰相閣下……ギリアス・オズボーンか。」

「”鉄血宰相”呼ばれる、革新派のリーダー的な存在、ね。」

「えへへ、顔はコワモテだけど結構楽しいオジサンだけどね。」

「――ま、そういうワケなんで後は情報局(ウチ)に任せときな。そうそう、そのガキンチョが世話になったみたいで感謝だぜぇ。」

「ぶーぶー、ガキンチョ言うな。」

リィン達に礼を言うレクター大尉の言葉に頬を膨らませたミリアムはレクター大尉の隣に来てリィン達を見つめ

「――まあいいや。それじゃあ、みんなバイバイ♪すっごく楽しかったからまた会えると嬉しいな!」

「お、おい……」

「ちょっと……!」

リィン達に別れの言葉を告げてレクター大尉と共にその場から去った。

 

「な、なによもう……あっさりと行っちゃって。」

「”帝国軍情報局”……正規軍の情報機関だったわよね?」

「フン、情報機関というより諜報機関と言うべきだろう。”鉄道憲兵隊”と並んで各地の領邦軍からは最大限に警戒されている組織だぞ。」

「やっぱりそうか……」

「あんな小さい子が軍の機関の所属なんて……」

ユーシスの話を聞いたリィンは納得した様子で頷き、アリサは驚きの表情で呟いた。

「ふむ……なるほどな。今のが宰相直属と言われる”鉄血の子供達(アイアンブリード)”か。」

「”鉄血の子供達(アイアンブリード)”……」

「噂では、宰相閣下が拾い上げた特別な才能を持つ若者たちらしい。情報局や鉄道憲兵隊に所属しながら閣下の意を直接受けているみたいでな。しかし、あんな幼い少女までその一員だったとは……」

「………………」

「フン、似合わなさすぎだろ。」

「ええ……納得いかないわね。」

(”白兎(ホワイトラビット)”はともかく”かかし男(スケアクロウ)”は今後のレン達の”計画”の障害になるでしょうね。――――消せる機会があれば、消すべきね。)

ミリアムの正体を知ったリィン達が戸惑っている中レンはレクター大尉を抹殺する方法を考え込んでいた。

「だが―――これで何とか戦争は回避できるはずだ。」

「本当ですか……!?」

一方ゼクス中将が呟いた言葉を聞いたガイウスは明るい表情をし、リィン達も驚いた。

「”かかし男(スケアクロウ)”……それがあのレクター大尉の異名だ。噂では、こういった非公式の交渉のほぼ全てを成功させてきたらしい。宰相殿も動いているようだし何とか抑えられるだろう。―――第三機甲師団、第二種警戒態勢や戻せ!哨戒中の飛行艇は全てゼンダー門に帰投させよ!」

「了解しました(イエス・サー)!」

その後レクター大尉の交渉によって戦争は回避され、リィン達が集落に戻ると、戦争回避の為に動いてくれたリィン達にノルドの民達は感謝を述べ、リィン達にお礼として様々なご馳走を施した。

 

同日、19:00―――

 

~ノルド高原~

 

「―――時間通りか。」

夜闇の中にある漆黒の飛行艇にギデオンは近づいた。

「同志”G”―――お疲れだったようだな。」

そこに飛行艇から全身を漆黒のコートで纏った仮面の男が降りて来てギデオンに近づいてきた。

「同志”C”……わざわざこちらの方に来てくれたのか。」

「まあ、一応リーダーを務めさせてもらっている身だ。なかなかの戦果だったようだな?」

「フン……慰めは結構だ。本来なら共和国との紛争が始まり”あの男”の隙を作れたはず……それがこの体たらくだ。」

「フッ、しかしこの結果すらも我々にとって今後有利に働く……あらゆる所で”楔くさび”を打ちこまれるリスクを意識させることでな。”氷の乙女(アイスメイデン)”にも”かかし男(スケアクロウ)”にも読み切ることは叶うまい。」

「……違いない。さっそく”次”の一手の仕込みに取り掛かるとしよう。いよいよ我らの存在を世に知らしめるためにもな。」

仮面の男―――”C”の言葉に静かに頷いたギデオンは決意の表情になった。

「フフ、その調子だ。」

そして二人は飛行艇に乗って去って行った。

 

「やれやれ……何とかなったみたいね。A班のメンバーも無事だし戦争も何とか回避できたし……ま、情報局の連中が出張ってきたのは驚きだけど。」

一方二人の様子を物陰で見ていたサラ教官は飛行艇が去ると安堵の表情をした後疲れた表情で溜息を吐いた。

「漆黒の高速飛行艇……ラインフォルトの最新型か。軍の偵察機や、貴族や資産家の道楽に使われてるみたいだけど……―――そのあたり心当たりはないのかしら?」

「ふふっ……」

ある気配を感じていたサラ教官が睨むと、なんとシャロンが現れた!

「……本当に、サラ様はお鋭くて困ってしまいます。よく、わたくしの気配にお気づきになりましたね?」

「よく言うわ。半分くらい試してたくせに。それに、ちょっとばかり気配に心当たりがあったから。”2年くらい前の事件”とか。」

苦笑するシャロンに呆れたサラ教官はジト目でシャロンを睨んだ。

 

「2年前、でございますか?」

一方サラ教官の言葉の意味がわからなかったシャロンは不思議そうな表情をした。

「まあいいわ、それよりも本当に知らないのね?今の、黒い高速飛行艇の出所。」

「残念ながら……RFグループの製造記録には載っていない船のようです。あくまで表面上では、ですが。」

「フン……色々あるみたいね。まあいいわ、あたしはこれから集落の方に顔を出すけど……アンタの方はどうするの?」

「そうでございますわね……大旦那様への挨拶もありますしご一緒させていただければ。何よりもアリサお嬢様の驚くお顔も見られそうですし♪」

「やれやれ、あの子も大変ねぇ。」

その後サラ教官はシャロンと共に集落に向かい、リィン達を驚かせた―――

 


 
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