No.86092

オリキャラ恋姫 悪タレ青葉とカタブツ紅花 ―後日談―

 随分時間が空いてしまいましたが、
 恋姫オリキャラ長編、青葉と紅花、完結編にして後日談のお話です。

 自分で作ったキャラを、自分でキャラ崩壊させるなど、作者としてはなんだか微妙な仕上がりの作品となってしまいましたが、すべては読者様に笑いと萌えを提供するため。

続きを表示

2009-07-24 02:49:58 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:5189   閲覧ユーザー数:3983

 

 

 さて、

 皆様お久しぶりです、北郷一刀でございます。

 

 あの張遼との息詰まるようなデットヒートより早や数日、呉にもまた、つかの間の平和が訪れていた。

 

「あ゛い゛や゛~………」

 

 最近 行きつけの菓子屋、青葉や紅花と共に足繁く通っていた その店に今日は俺ひとりで たむろっている。

 別にお菓子を食べに来たわけではない。

 菓子屋に来たのに お菓子を食べず、俺はテーブルの上に突っ伏して「あ゛~」とか「う゛~」とか唸っているのだ。

 店にとっては迷惑千万な客である。

 菓子屋の店長であるオヤジが、俺のテーブルへとやってくる。

 

「……中国茶だ」

 

 とオヤジ。

 

「発酵させてあるので日本茶よりも香りが強い」

 

 その発言、さりげなく世界観ぶっ壊してるよね。

 

「……悪いオヤジさん、折角だけどお茶も飲める状態じゃないんだ。気遣いを無にして悪いんだけど」

 

 俺は、テーブルからやっと右腕だけを離して、オヤジの勧める中国茶を遮る。

 一体俺はどういう状態なのかというと、疲労、そして筋肉痛。……数日前の骨身を削る張遼との逃亡戦は、俺の体を著しく消耗させた。

 何せあの張遼というのは、何度も言うが、この時代最強の武将の一人なのだ、中でも その騎馬術は神業の域に入る。

 そんな張遼と追っかけっこしたのだ俺が、馬で。

 それはもう例えるならばジャック・ハ○マーと一般人の闘いである。

 リアルタイムでは感じていなかったが、終始 火事場の馬鹿力を出して馬を飛ばしていたのだろう。闘いが終わってみれば そのツケが覿面だ。

 

 腰が痛いし尻も痛い。

 

 あまりに痛くてメシも喉に通らないほどだが、城で寝込んでいると また祭さんやら思春がブチブチ煩いだろうので、こうして体調最悪ながらも城の外に出ているというわけだ。

 

「……悪いねー、おやじさん。何も頼まないのに居座っちゃってさ」

 

 オヤジは、無言のまま店の奥に引っ込んでしまう。

 怒らせたか?と思った矢先、オヤジは戻ってきた。その手に水が いっぱいに入った桶を持って。

 

「桶に水…?一体何を………?」

 

 俺が疑問に思う暇も与えず、オヤジは水いっぱいの桶の中に、これまた甕いっぱいの砂糖を注ぐ。

 ま、まさか……。

 

「果糖だ、果実から取り出した純粋な甘味料。本来は蛋白質などがよいのだが……」

 

「待て!それをいつかの誰かみたいに俺に一気飲みしろと言うのじゃあるまいなッ?ムリだよ、俺グラップラーじゃないし!毒手に侵されてもないし!」

 

 と俺が慌てて断ると、オヤジは愚○克己がピ○ルに敗れたような無念そうな顔をするではないか!

 ああ わかったよ!飲めば いいんだろ その14キロの砂糖水!

 俺は、桶を持ち上げると恐る恐る 口に運び。

 

 ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ……、ゴキュ…、………………、ぷはぁ。

 

 おおおおおおおッ!

 

 力が漲るぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!

 

「北郷一刀 復活! 北郷一刀 復活! 北郷一刀 復活ッ!」

 

 こうして俺は、前回の騒動で疲労困憊した体を回復させ、菓子屋を後にしたのだった。

 ………しかし、どうも あそこのオヤジのノリには共鳴してしまうんだよなぁ、なんでだろう?

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 城へ戻ると、まず真っ先に会ったのは潘璋=青葉(チンイェ)だった。

 数日前までは部隊長クラスで日々の雑務に追われていた彼女も、今や将軍。細々とした面倒は部下に任せ、自分は東屋から中庭の風景を眺め、優雅に昼酒などを嗜んでいる。

「んお、ダンナじゃねえか、おいすー」

 

「やあ青葉(チンイェ)、…アレ、一人か?紅花(ホンファ)がいないのは珍しいな」

 

 と世間話をしつつ俺は青葉の向かいの席に座る。

 卓上に並んでいるのは、老酒のたっぷり入った徳利に、酒のつまみで饅頭が山と積まれていた。青葉の甘い物好きも相変わらずだ。

 

「…しゃあねえだろ、紅花のヤロウ、オレが酒と饅頭を 一緒にやろうとすると『邪道!邪道です!』とか言って茶ァ勧めてくんだぜ。あれじゃあ落ち着いて酔えもしねえ」

 

 ああー、

 甘い物好きという絶対的共通項をもつ二人も、歩み寄れないところがあるんだなあ。

 

「それでよう、こないだ祭の姐さんと酒盛りやったんだけど、その時も『邪道!邪道じゃ!』とか言って、甘味の代わりに乾物とか塩辛とかゴリ押ししてくんだよ。やっぱオレが おかしいのかな?」

 

 どうかな、俺はいいと思うけどな、酒と饅頭。

 

 

 ……将軍職に就いてからの青葉は、良くも悪くも落ち着きが出てきた。

 以前のように手柄手柄と躍起になることもないし、命令に無闇に逆らおうともしない。その必要がなくなったからだ。青葉は、自分が将軍になったことで、悪タレ時代からの部下たちを充分に養えるようになった。

 が、一長があれば一短がある。

 将軍として悪タレ時代の軽躁さがなくなった青葉であるが、その代りに悪タレ時代の奔放さが出てきた。精鋭二千を預かる重責にありながら彼女はどうも、その責任に無頓着だ。

 

「……青葉、そういえば、今日の兵の調練は終わったの?」

 

「ダンナ、饅頭食うか?」

 

「ありがとう、それで兵の調練は………?」

 

 自分の預かる兵の質を向上させることも将として重要な責務なのであるが、青葉にとっては そんなこと何処吹く風だった。

 以前は 部隊長として訓練を受ける側だった青葉も、今は将軍として、訓練をほどこす側に回っている。

 それが こうして祭さんみたいに、酒ばっか飲んでていいのかなあ?

 

 

 

「―――青葉ッ!」

 

 

 

 と思っていたら案の定 来た。

 ガチャガチャと鎧ずれの音を鳴らし、足早に寄ってくる人影。真紅の鎧をまとう、名門出身の秀才将軍・紅花だった。青葉とまったく同じ時期に将軍にのぼり、彼女もまた自分の将軍の責の果たし方を模索している。

 

 その紅花が東屋まで到達すると、鋭い視線で青葉のことを見下ろし、竈が火を吐くような勢いで言う。

 

「青葉ッ、アナタまた兵の調練をサボったでしょう!将軍に就かせていただきながら、その責務を全うしないとは何事ですかッ!」

 

 相変わらず、規則や責務には人一倍やかましい この人だ。

 しかし青葉は、そんな相方の怒りも、まるで長年連れ添った妻の癇癪を 巧みに受け流す熟年夫のような貫禄で、

 

「うっせぇなぁ、…いいんだよオレの軍は、訓練なんざしなくても、本番でガチッと本領を出し切れるように、気合の入れ方が違うんだよ」

 

「ウソ仰い!今日だって、アナタの受け持ちの兵は、私が自分の兵と一緒に調練したんですよ!」

 

 うああああ…、そういうことになってるのかぁ……。

 俺が声を上げると、それによって紅花は初めて俺の存在に気付いたようだ。

 

「一刀様ッ?いらしていたんですかッ?……す、すみません!挨拶もせずに長々と………ッ!」

 

「いやいや いーよいーよ、今の紅花は 青葉のお説教の方が大切だろうからさ。俺に気にせず、続けて続けて……、て…?」

 

 そこで俺は、紅花の傍らに、もう一人別の誰かがいることに気付いた。

 人影。

 紅花の隣に立つ、紅花よりも頭一つ分小さい、長くて綺麗な黒髪をもったその少女の人影は……。

 

「明命?何してるんだ?」

 

「はうっ」

 

 紅花の隣に立っていた明命は、その存在に気付かれて やけに動揺しているようだった。しかし、何故この二人が一緒に?

 

「いつの間にそんなに仲良くなったんだ?二人とも?」

 

「いい、…いいえ、別にそんなことはないのです!私、これから用がありますので、これで失礼しますぅ~ッ!」

 と、穴の開いた風船のように飛び去ってしまう明命。…一体なんなんだ?

 

「明命さんには、一緒に青葉(チンイェ)を探してもらっていたんですが…」

 

 と紅花(ホンファ)。

 

「他の先輩方とは打ち解けた自信はあるんですが、明命さんだけは いまだに態度がよそよそしくて……。私、知らずのうちに明命さんの お気に触るようなことをしてしまったんでしょうか?」

 

 真面目な紅花は 本気で明命のことを気に病んでいるようだが…、俺と青葉は顔を見合わせた。

 明命のよそよそしさの理由は、すぐにわかったからだ。

 この紅花。

 普段は、「軍人たるもの常に戦場にいる気構えでなくては!」と常時 鎧姿でいるが、その鎧を脱いだ時の彼女の変身振りは、誰もが息を飲み込むほどだ。

 それが周知となったのは、やはり数日前の張遼戦の時、馬の走行速度を上げるために重い鎧を脱いだ紅花の、あの たわわに実った二つのアレを、俺も青葉も忘れることはできないだろう。

 正直、紅花の おっぱいの大きさは尋常ではない。

 その尋常ではない紅花の おっぱいに、色んな意味でアンチ巨乳の明命である。

 先頃 行われた恒例の対工作員訓練で 紅花もまた明命の洗礼を受けたが、その時 彼女の顔に書かれた落書きは『詐欺巨乳』だった。明命にとって隠れ巨乳は許しがたき背信行為なのだろう。

 

 ………ちなみに、同じ時に青葉に書かれた落書きは『これ以上 呉の乳密度を増やすな!』だった。

 まあ、それはどうでもいいとして………。

 

「青葉、……青葉ッ!もう少し真面目に聞きなさい。日頃から そんな態度をとっていては、折角 許された将軍の座を剥奪されてしまいますよ!」

 

「んなこと ねーって、どんだけ訓練で だらけててもよ、本番できっちり手柄を取りゃクビになんてねらねーって。紅花テメーもよ、力の入れどこ抜きどこ覚えていけよ」

 

「そんなことはありません!いかなる訓練も 実際の戦闘と思って当たり、全身全霊を尽くして目的を達成するのが真の武人です!」

 

「四六時中 気ィ張ってたら、肝心なときに もたなくなっちまうぜ。ホレ、饅頭でも食ってろ、ポイッ」

 

「きゃあッ!(キャッチ!)……青葉ッ、食べ物を投げるとは何事ですか!……まったく、……こんな、…………………」

 

 

 …………………はぐっ。

 

 んきゅ、…こくこく、…………………ごっくん、はふぅ。

 

 甘ーい、甘ーい、甘ぁーーーーい。(心のエコー)

 

 

「………はっ、ダメですよ青葉ッ、私をこんなもので買収しようたって、そうは行きませんからねッ!」

 

 と一瞬前まで幸せいっぱいだった顔を無理矢理 引き締める紅花。

 

「ダメだ…、紅花 可愛すぎる、可愛すぎるよ紅花……!」

 

「だろうダンナ、もう、オレァもう、逆らえねーよ」

 

 もうっ、二人して馬鹿にしてーッ!と紅花は大変憤慨なさっていました。

 

 青葉と紅花、かつて犬猿の仲といわれた二人の関係は、以前より少しは変化したように思える。

 青葉が不良で、紅花が生真面目すぎるという点は永遠に変わりそうにないが、以前は折り合うことのなかった その点に、今は歩み寄りの気配があり、むしろ互いに長所短所を補いあってる傾向すらある。

 今日、紅花が青葉の軍まで調練していることだって、日頃マジメな紅花の真骨頂とも言えるし、逆に模擬戦とか実戦になった場合は、ケンカの場数を踏んだ青葉が陣頭に立って、烈火のごとく軍を操る。

 最近思うが、青葉と紅花は それぞれ2千づつの兵を与えられたが、実際は二人で4千を率いている、というのが正しいのではないだろうか?

 青葉が実戦で精鋭を駆使し、そのアラを紅花が補って十全とする。悪タレとカタブツが、互いの長所で互いの短所を補い合った用兵は、ヘタをすれば思春や亞莎の軍と互角以上に渡り合えるかもしれない。

 

「ん~、こうして見ると……」

 

「んあ?」「どうしました一刀様」

 

「紅花って、青葉の いい女房って感じだね」

 

 

「「ぶぶ~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!」」

 

 

 何故か二人揃って盛大に噴き出した。

 

「なななななッ!何を言い出すんです一刀様ッ!私が女房って…、そしたら青葉が旦那様?そっ、そんなッ、ダメダメダメです、何を考えてるんですか私ッ!」

 

「まったく…、一刀のダンナ言うことがブッ飛んでるぜ…。さしものオレも一瞬 想像しちまったじゃねえか。………フッ、オレも若ェな」

 

 鼻血を拭きながら何を言ってるんですか青葉(チンイェ)さん。

 しかし俺 何か変なこと言ってるかな?よく名コンビの一方がサポート役に徹する時、その人のことを女房役って呼ぶじゃないか、ピッチャーに対して捕手の人とか。

 

「あ、あーあー!そうですね、そうですよねーッ!」

 

「けっ、何だよ一刀のダンナ、そうならそうと最初から言えばいいじゃねえか」

 

 いや、だから最初からそう言ってるんだけど。

 

「しかしまあ アレだね、最初のころと比べると二人ともすっかり仲良くなったね」

 

 

「「仲良くなんかなってませんッ!!」」

 

 

 ……ホラ。

 息ピッタリじゃないか。

 

「……もうっ、一刀様は勘違いなさっています。それは、私だって青葉のことは多少認めるようにはなりましたが、それは、その力を律すれば呉の益となると考えるからで、そのためにも私は青葉を教育しなおし、立派に更正させようと……ッ」

 

「はっ、よく言うぜ。テメーこそ、そのガチガチの頭ちったあ柔くしねえと、どっかの小賢しい軍師に付け入られてコロッと首落ちかねねえぞ。テメーはなあ、少しは悪さを覚えるべきだな」

 

「わ、悪さってなんですか」

 

 ワルサーP38、この手の中に、…違います。

 

「そうだな、……ま、ちょうどいいか」

 

 青葉はおもむろに言うと、ぐい飲みに残っていた酒を最後の一滴まで飲み干してから席を立つ。

 

「お、どうしたんだ青葉?」

 

「調度いいから、これから悪さしに行くんだよ。ダンナと紅花(ホンファ)も付き合え」

 

 青葉は、いかにも これから世紀のイタズラを開始させようという悪ガキの顔をしていた。

 

 

 

 そうして俺たちが連れてこられた場所は。

 

 

 

 ………カポーン。

 

 

 周りに白い湯気が立ち上る。いい湯だな、ハハハン♪上は洪水、下は大火事、これなんだ?正解はお風呂です。

 青葉が俺たちを連れて来たのは、城内に備え付けてある浴場だった。しかも城内勤務の人たちが使う大浴場ではなく、王族とか、それに近い重臣だけが使える豪華な個室風呂。

 間違っても、いまだ将軍に過ぎない青葉が使っていい場所じゃない。俺だって、蓮華か小蓮と混浴でもしない限り立ち入れない場所だ。

 

 ………、スミマセン俺 何度か使ったことがあります。

 

 それはさておき、どうして青葉は こんな偉い人専用浴室を ちゃっかり使えてたりするんだ?

 

「…ホラ、昨日荊州から、情勢の報告とかって魯粛さんが都入りしてきたじゃね?そん時 蓮華様が、魯粛さんの労をねぎらおうっつって ここの風呂を用意させたわけ」

 

 ああ、たしかにそんなことあった。

 魯粛さんエライ感動してたっけなあ、私ごとき者のために~、とか言って。

 

「それで、その後 水を抜く前に、釜番に小遣い握らせて、焚きなおさせたってスンポーよ」

 

 なるほど、青葉の言う『悪さ』って そういうことだったのか。

 たしかに冥琳あたりにバレたら超説教コースだろうな。だが、菓子屋のオヤジの砂糖水で復活できたとはいえ、いまだ張遼戦の筋肉痛に苛まれる この体、その芯を暖めてくれる湯は、それこそ万病を癒す霊薬といっても過言ではなく……。

 

「あ、そーいえば……」

 

 俺は、俺の隣で同じように湯船に浸っている青葉の方を向き。

 

「青葉、君ってたしか、張遼戦でお腹に刀傷負っただろ?もう大丈夫なのか?」

 

 俺ごときの筋肉痛ですら、まだ完治していない昨日の今日だ。それよりも深手である青葉の傷が全快しているとは到底考えがたく、それなのに風呂になんか入っていいの?と本気で心配してしまう俺。

 それを受けて青葉(チンイェ)は、気持ちよさそうに口ずさんでいた鼻歌を止めて、不敵に笑った。

 

「あの程度の傷が、まだ治ってないかだって?なら その目でたしかめてみなよダンナ」

 

 と言って立ち上がる青葉。彼女の肩が、胸が、腰が、湯船から浮上して、俺の面前に露わになる。その全身が、急激な曲線によって固められた青葉の裸体、その表面を、数千もの水滴が、急カーブを描いて滑り落ちていく。

 青葉自身は、その中でも傷を負った腹部を ことさら強調し、

 

「どうだい、もう うっすらと痕しか残ってねえだろ?この雑草育ちのオレ様の生命力を、その辺のヤツらと一緒にすんなよな」

 

 しかし、重大なのは そこではない。

 青葉は、その性格が スッゴイ男前なので、彼女が女性であることを時々忘れてしまう。が、青葉はたしかに女性だった、今日ほどそれを明確に意識したことはない。俺の面前の青葉は、ヘタな女性よりなお ずっと女性だ、ジューシーな女性だ。

 

「ん?どうしたいダンナ?」

 

 大フィーバーを起こしている俺の脳内の様子を知るよしもない青葉は、特に意識するでもなく、その発育しまくりな肢体を再び湯船の中に隠す。それでなんとか暴発を防げた俺だった。

 

「……ま、まあ、しかし、なんだ、こうして昼間っから風呂っていうのも乙なもんでいいよな」

 

「だろう?だっていうのに、紅花(ホンファ)の奴は隅っこで何やってんだろうなぁ、…オイ、紅花ッ」

 

 青葉が呼ぶ。

 その紅花は、湯船の隅で俺たちからの視線に逃れるように小さくなっていた。

 

「イヤだって、そりゃ隠れますよ。殿方と一緒の湯船に浸かるなんて…、殿方の前で裸になるなんて…」

 

「なんか初々しい照れ方してんなぁオイ」

 

「青葉ッ!アナタこそ どうかしてますよ。一刀様の面前で そんなに簡単に裸身を晒して!アナタには女性としての恥じらいがないんですかッ?」

 

「ああ…、そんなんでメシが食えてた時期もあったなぁ…」

 

 と感慨深げに呟く青葉の おっぱいが、水面でユラユラ揺れている。俺は そこへ視線が引きつけられるのを何とか留めるのだった。

 

「しかし、ま、紅花もアレなら少しは安心だね。あんな調子じゃあ、ダンナの子種を受けるなんて夢のまた夢だろ」

 

「ん?ああ、アレは冥琳が勝手に言ったことであって、俺自身はなんとも……」

 

「なあダンナ」

 

「ん?」

 

 青葉に威儀を改めて言われた。

 

「もしダンナが、オレに断りなく紅花のこと手ェ出したら、指詰めるよ?」

 

「真顔で怖いことを言うな!」

 

 冗談かとも思われたが、青葉は完全に本気の目をしていた。最近の青葉の、紅花へ対する過保護さは、言語を絶するものがある。

 

「そういうわけには参りません!」

 

 青葉の言を否定したのは、意外にも守られる側の紅花だった。

 

「前々から心苦しく思っていたのです。私たちは冥琳様より、一刀様の種を受けるという使命を頂きながら、一向にそれを果たすことができない」

 

「…いや、紅花も真に受けなくていいから、冥琳の言うことだし」

 

「いいえ、将帥たる者、一度受けた使命は何であろうと必ず果たさなければいけません!」

 

 紅花はいつの間にか、湯船の隅から こちらへ移動してきていた。水面(みなも)に揺れる戦艦ビスマルク級の おっぱいも気付けばすぐ近くへ。

 

「ですが、恥ずかしながら無学な私は、…あの、そういったことにまったく知識がありません。知識を集めようにも、…あの、そういったことを扱った書物など一向に存在しませんし……」

 

「正確に言うとだ、紅花が行きつけてるような上品な店に、艶本なんか置いてねえってこったな」

 

 と青葉。

 

「かくなる上は、生きた知識を求めようと、人に直接聞いてみることにしました」

 

「誰に聞いたの?」

 

「穏様です」

 

 

 なんという人選ミス!

 

 

「ダメだったでしょうか?博識な穏様なら、大抵のことには答えてくれると思ったのですが」

 

 たしかに知識量なら呉一だろう穏は、しかし彼女は、同時に三国一のエロ魔神だということも忘れてはいけない。そんな彼女にエロ関係の質問をしたら、「じゃあ~、実地で練習してみましょうね~」となるのが目に見えるではないか。

 

「安心しろダンナ、そうなる前にオレが救出した」

 

 青葉(チンイェ)は とてもいい仕事をしていた。

 

「……というわけで、いまだに私は、一刀様から情をかけていただく作法を学べずにいるのです。これでは冥琳さまから下された使命を果たすことができません」

 

「だから、そうムリしてまで やる必要は……」

 

「将帥としての!使命がッ!」

 

 やっぱり紅花(ホンファ)は真面目すぎて融通が効かないなあ。

 紅花が こうなるとテコでも動きそうにないことは、もう既に実証済みだ。俺としても、こんな綺麗な女の子に迫られるのは嬉しくないわけがないが、どう説得していいものかと悩む。

 

「………あ、そうだ、そんなに、…えーと、子作りのことを勉強したいなら、いっそ青葉に教えてもらえばいいんじゃない?」

 

「え?オレ?」

 

 湯船の縁に もたれていた青葉が、突然のご指名にたじろぐ。どうやら自分とは関係ない話題に及んだので すっかり気を緩めていたようだ。

 

「まあ、さっきの穏みたいなこともあるし、ヘタに他人に聞いて ややこしいことになるぐらいなら、青葉に任せれば少なくとも安全だ」

 

「……やだよ、メンドくさい」

 

 青葉は見るからに億劫そうにしているが、その実ソワソワしているように見えるのは俺の目の錯覚か。

 

「青葉!いいから さっさと教えなさい!アナタだって一刀様の種を受け入れる使命を受けたのは同じなのですから協力するのは当然でしょう!」

 

「待てよ!つかオレが教えるのは もう決定なのかよ!……面倒くせえ、じゃあ、何から教えればいいんだ?」

 

「何から教わればいいんでしょうか?」

 

「そこからかよ!……まったくテメーは、じゃあ何だ、最初はやっぱり接吻からかな?」

 

 接吻=キス。

 一番最初にキスの授業とは……。

 

「青葉って案外 純情?」

 

「うるせえよダンナッ!根性焼きするぞッ!」

 

「ちょっと、見くびらないでください青葉!いくら世間知らずの私だって、接吻ぐらい知ってます!」

 

 俺と青葉が言い争ってるのに、紅花介入。それに答えて青葉が、

 

「わかっちゃいねえのはテメーだよ紅花、どうせオメー、接吻つったら唇を重ね合わせるぐらいにしか思ってねぇんだろ」

 

「違うんですか?」

 

「違う、接吻にも技ってもんが あんだぜ。それを知っとかねーと、男を やる気にさせるなんて土台ムリな話さ」

 

「で、では その接吻の技術というものを学ばなければならないのですね?どうやって教わればいいんでしょうか?」

 

「ふむ……」

 

 青葉は、自らアゴに手を当てて考え込み……。

 

「実地でやる?」

 

 それはさっきの穏とまったく同じ展開だ。

 

「そ、それは、私と青葉が唇を重ねる、ということですか?」

 

「えっ?」

 

 その言葉に、青葉の息を呑んだ。そして紅花の方は、色々と葛藤を踏み越えた ご様子で、

 

「女同士で唇を合わせるなど無意味で退廃的な行いですが、一刀様との本番に備えてと思えば致し方ありません。さあ、やりますよ青葉(チンイェ)ッ」

 

 と言って唇を突き出してくるではないか。

 

「うおっ……」

 

 それを目の当たりにして、青葉の方はむしろ圧倒されている。

 助けを求めるように俺へ視線を送ってくるので、俺はとにかく無言でGOサインを出した。途端 青葉から非常に恨みのこもった視線を頂いたが、彼女はやがて意を決し、目を閉じて待ち続けるしおらしい紅花(ホンファ)の、その牡丹の花びらのような唇を、奪った。

 

「おおっ」

 

 つい歓声を漏らしてしまう俺、北郷一刀、思春期。

 

 湯煙の立ち込めるこの浴場に、重なる二つの女体。

 青葉の舌は、頑なに閉じられた処女の唇を割って、その内側に侵入する。

 

「……んっ、…あぷっ、………くちゅ」

 

「れろっ、………ちゅ、にあ、………………すげ」

 

 思いっきりディープな動きで、激しく絡まりあう青葉と紅花の舌。その二匹の生き物は 絡まりあう蔦のようであり、妖しい蛭のようでもあり、既に自身の唾液で充分に湿っていながらも、執拗に相手の唾を吸って、さらに潤おうとする。

 

 それでもなお飽き足らないのか、青葉は縦横無尽に舌を動かしながら、さらにその腕を別の生き物のように密やかに、紅花の背中へ回す。それにならって紅花も、同じように両腕を青葉の背中へ。

 

 熱い抱擁の形になりながら、互いに貪りあう舌の動きが、さらに淫靡さを増す。

 

 

「……………ぷはっ」

 

 

 そうして やっと二人が唇を離したのは、たっぷり5分は経過した後だったろうか。

 二人の口の周りは、互いのあふれ出した唾液でベトベトだった。

 その唾液を腕で拭って、青葉がこちらへやってくる。

 

「……どうした、青葉?」

 

「…………ダンナ、オレやばいかも」

 

「は?」

 

「オレさあ、最近まで同性愛とかバカにしてたんだ、女同士で舐めあって何が楽しいかとかさ。……でも、今になって その考えが改まりそうだ。イヤ、別に女がどうとかじゃねえんだ、問題は紅花だ、紅花が可愛すぎるのがいけねえんだ!」

 

「しっかりしろ青葉!紅花が可愛いのは同意するが、それでも越えちゃいけない一線はあるんだ!理性とは人間だけが持つことを許された心の武器なんだ!理性を保て青葉、君はやればできる子だ!」

 

「ヤレるッ?デキるッ?」

 

「そこに反応すんなッ?」

 

 青葉は、今のキスだけで相当キてしまったようだ。しかしそんな青葉クライシスなど一向気にかける風もなく。紅花はひたすらマイペースに、

 

「今ので、接吻の技術は習得できましたね?では次です、青葉、チャキチャキ先へ進んでください」

 

 と さならる授業を要求する。それは今の青葉の理性には、張遼の追撃時以上にヤバいことだった。

 

「…………そそ、そうだな、接吻の次っていやー、やっぱ胸か?」

 

「むね?」

 

「男ってのはな、オレやテメーみてえな大きな胸が大好きなのさ。テメーの そのスイカみてえな胸を触らせれば、大抵の男は天に昇るだろうよ」

 

 青葉さん、アナタも天に昇りそうな気配です。

 

「……と、いうわけで、オレが ちっと触ってみっから、紅花、胸出してみな?」

 

「こ、こうですか?」

 

 紅花が湯船からその原子力潜水艦を浮上させる。彼女の若々しい肌は表面張力でお湯を はじきまくり いくつもの透明の小玉を乳房の上に散りばめている。

 

「………何度見ても、オレのより大きい………!」

 

 青葉(チンイェ)も相当大きな方とは思うが、それすら凌駕する紅花(ホンファ)のBP(バストポイント)は一体どの次元のものだろうか?

 そして自分より大きな おっぱいを揉みしだくという事実は、女性にとって いかなる意味を持つのだろうか。

 

「いいか……、触るぞ………」

 

 青葉は生唾を飲み込んで、恐る恐るに そのふくらみに触れる。

 

「やんっ」

 

 その瞬間、紅花が声を漏らした嬌声は、普段の紅花からは考えられない可愛さ&いじらしさ。

 

「こっ……」

 

 青葉の、どこぞのネジが外れた。

 

 

 

 

「この大きさで、こんなに感度が高いなんて どういうこっちゃーーーーーーッッ!!」

 

 

 

 

「きゃーッ!どうしたんですか、どうしたんですか青葉ッ?なんで私に覆いかぶさるんですか?やめてください、色んなところを触るの やめてください!」

 

 いかん、青葉の理性が崩壊したか?

 先ほどからの畳み掛けるような紅花の可愛さからすればさもありなんと思われるが、ここで止めなきゃ さすがにヤバい。俺はすかさず お湯をジャブジャブいわせて、青葉を後ろから羽交締めに。

 

「やめるんだ青葉ッ、君の気持ちは大変にわかるが、これ以上すると放送コードに引っかかる!既に充分アウトな気もしないではないが、とくかくもう これ以上はやめてくれ!」

 

「後生だダンナ、オレをこのまま、線香一本が燃え尽きるまでの時間まで放っといてくれ!その間に すべてを終わらせるから……!」

 

「終わらせないために俺がいるんだろーがーーーーッ!」

 

 いかん、今の青葉は、紅花の可愛さに惑わされて すっかり飢えたオオカミ状態だ。自分が女であるということもスッカリ忘れている。

 ここで俺がすべきことは、青葉に自分が女だということを思い出させ、襲う側じゃなくて襲われる側だよ?と教えてあげることだ。

 そのためにはどうすればいいか?答えは一つだ、たとえ後でどんな報復をされようとも俺は躊躇わない、ほりゃあ!むにゅ!

 

「きゃあああーーーーーーッ!?」

 

 絹の引き裂くような悲鳴を上げて、青葉は湯船の中に全身を埋めた。

 

「だだだ、ダンナ、オレの何処触ってやがるぅ?」

 

「君が、自分が女の子ってことを忘れてるからだ、今ので思い出したろう。しかし!今ので別の問題が発生した!」

 

「な、何だ?」

 

「今度は俺の理性が消し飛んだということだーーーーーッ!!」

 

「きゃーーーッ?」

 

 ミイラ取りがミイラに、とはまさに このこと。

 だって、青葉の豊満な おっぱいとダイレクトに接触した上に、いつも男前な彼女の「きゃあ!」なんて可愛い声を聞いたら、そら理性だって外れるわい。

 もう放送コードなんかどうでもええ、俺は俺の、感情の赴くままに、人間の本能を曝け出すんじゃあ!

 

「いやーッ!ちょ、ちょっと助けて紅花!オレを助けてーッ!」

 

「えええええああああああえええええ、と、一体こういうときは どうすれば……」

 

 傍から見守る紅花も、どう反応して いいかわからず強制待機モードだ。

 このまま誰も俺を止められず、この作品は発禁を喰らうシーンに突入してしまうのか、と思われたその時、

 

 

「風呂場で何をやっとるかーいッ!!」

 

 

「痛ぇ!?」

 

 

 突如俺の頭上を襲うゲンコツ、その痛みに我を取り戻し、一体何事かと周りを見渡してみると。

 

「祭さん…ッ?」

 

 俺にゲンコツを見舞ってくれた救世主の正体は、なんと祭さんだった。

 

「まったく、種付けを許された途端 早速手を出しおるとは、お盛んなことじゃな北郷」

 

「祭の姐さんッ?一体どうしてここに?」

 

 と青葉(チンイェ)が慌てながら聞くと、

 

「何を言っておる、おぬしに ここの釜番を紹介してやったのはワシじゃろうが、昨夜使われておったのを聞きつけて、優雅に昼風呂でも楽しもうかと思ったら、先客がおったというわけじゃ」

 

「ち、青葉……」

 

 何が悪いこと教えてやるだ、思い切り祭さんの受け売りってことじゃないか。

 よく見たら、祭さんとて そのいでたちは一糸纏わぬ全裸、まさに入浴の正装だった。

 

「ワシだけではないぞ?ホレ見てみい」

 

 祭さんの後方には、同じくまっぱの思春、亞莎、明命が……。

 

「祭殿に誘われて 湯浴みに来てみれば……」

 

「一刀様、フケツですぅ」

 

「やっぱり大きな おっぱいが いいんですね?あうぅ」

 

 そして それだけには止まらない。

 

「……おや、随分騒がしいと思ったら、こんなに先客が来ていたのか」

 

「冥琳と穏まで!」

 

「まあ、私とて脳の髄まで石頭、というわけではないからな。魯粛のおこぼれに預かって湯を楽しみたいと思いもするさ」

 

「私は~、ご相伴に預かりにぃ~。でもでも、紅花ちゃんも青葉ちゃんもズルイです、二人で こっそり一刀さんに可愛がってもらおうなんて、私の実地練習は断ったくせに」

 

 オイオイオイ、なんでこんなに呉の宿将たちが続々 集結しているの?

 俺の周りには、青葉・紅花を初めとして、蠱惑的な裸体が数え切れぬほどに立ち並んでいる。

 これで、あと二人揃ったら全員集合になってしまうではないか…、と思ったそのとき、

 

 

「こらっ、小蓮、風呂場で走ってはいかんだろうが!」

 

「へへへ~、お姉ちゃんと お風呂、久しぶりぃ~、……って、ああ!」

 

 

 来てしまった、最後に浴場に訪れたのは、蓮華と小蓮の呉主姉妹。

 

 俺が、色とりどりの美女たちに囲まれて、ハーレムを創り上げているのを目撃した彼女らは、

 

「一刀……、昼日中から、いいご身分ね」

 

 蓮華は、頬をピクピクさせながら皮肉げに言う。

 

「まあ、そう言うな権殿、ワシらとて ここへは偶然 居合わせたんじゃ」

 

「そうですよぉ、もっとも、青葉ちゃんと紅花ちゃんは、その気だったようですけどぉ~」

 

 穏!何火に油を注ぐようなことを言っておるですか!

 青葉と紅花の新人二人も、先輩たちの注目を浴びてブルブル震えているではないですか!

 

「ねえ、祭、冥琳、ちょうどいい機会だし、私、前から一度試してみたいことがあるんだけど」

 

 蓮華がいきなり言い出した。

 

「おお、ワシも調度 同じことを思っていたところじゃ」

 

「道徳的に問題があるとも思いまするが、せっかく新顔含めて全員揃っていることです。何事も試してみるのが いいかもしれませんな」

 

 え?え?どういうこと?

 俺は、この集結した呉のメンバー全員の顔を見渡して、思いをめぐらした。

 まず、青葉と紅花、祭さん、思春、亞莎、明命、冥琳に穏、小蓮、そして蓮華。

 

 ま、

 

 

 ………まさかの11Pッ?

 

 

終劇

 

 

~あとがき~

 

 さて、

 長編のラストを飾るお話としては最悪の終わり方となってしまった気もしますが、お楽しみいただけましたでしょうか。

 恋姫オリキャラストーリー、悪タレ潘璋とカタブツ朱然、青葉と紅花のお話。

 作者としては、これまでと まったく毛色の違うお話であり、キャラクターを一から作製して、オフィシャルのキャラクターに近付ける難しさ。

 通常のSSとは違う、読者様のリアクションを見ることもできて とても勉強になりました。

 

 読者様には、純粋にこのお話をお楽しみいただき、かつ、これをきっかけに三国志本家での朱然・潘璋に興味を持っていただければ作者冥利に尽きます。

 

 では、次はまた、違う お話でお会いしましょう。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
67
5

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択