No.85963

フォーチュンクエストR 「聖なる夜に」(2)

kotomiさん

◆昔書いた、フォーチュンクエストの二次創作。携帯で書いていたので文字数制限やらなんやら(ry
◆(1)の続きです~

2009-07-23 11:30:32 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1949   閲覧ユーザー数:1884

「ねぇ、クレイたち起こさないでいいの?」

外へ飛び出したトラップを追って、夜の町へと出たんだけど。

すっごく寒い!

マント羽織ってきて良かった。

「クレイのヤツ、完全に泥酔状態だぜ」

あ~、トラップと一緒になって、かな~り飲んでたもんね。

かといって、ルーミィやシロちゃんを起こすわけにもいかないし…

「ノル達もまだ帰ってなかったからな」

考えてることが分かったのか、先に言われる。

町から点々と続く足跡を辿ってるんだけど、最初一人分だった足跡が、一つ増え二つ増え…

十人分くらいに増えていたの!

「ねぇトラップぅ。こんな大勢の盗賊、二人で相手できるわけないよ!

一度戻ろ?」

不安になってきたわたしに、トラップは「ばぁか」と冷たく言った。

「よく見てみろよ、足元」

足元…?

自分の足と、白い雪、残った足跡。

え?なに?なんなの?

全然分かってないわたしに、トラップは足跡を指した。

「こんな小さな足、大人のわけねぇだろっ

大方、どっかの悪ガキ共のイタズラだろうが。

シーフ様からモノ盗りやがって。とっちめてやる!」

トラップも何か盗られたらしい。

どぉせビール飲みすぎてグッスリ眠ってて、気付くの遅れたんだろうけどね。

けど、トラップの勘は外れていた。

足跡は、シルバーリーブの外にある森へ続いていたんだから。

やっぱり、クレイたち起こしてくればよかったのよ!

暗い森に、小さな足跡がいくつもいくつも…

「ねぇ、やっぱり一度戻ろうよぉ」

「怖いなら、一人で戻れよな」

…トラップの意地悪

暗い夜道ならまだしも、森の中で、か弱い女の子に一人で帰れって言うわけ?

わたしは観念して、ゆっくり歩くトラップについていった。

なんてね、トラップがゆっくり歩いてるの、わたしがはぐれないようになんだよね。

口は悪いけど、なんだかんだ言いながら、わたしやルーミィに合わせてくれる。クレイみたいに素直に心配してくれるわけじゃないけど、トラップも仲間を思う気持は同じ…

「頼むから、こんな時に迷子になるなよな」

…だと思う。

こんな暗い森の中で迷子になったら…ポタカン(ポータブルカンテラのこと)もないし、本当に困る。

いつの間にか止んだ雪。積もった雪に月明かりが反射して多少明るさもあるけど、そうでなくても方向音痴なんだもの。はぐれたら絶対シルバーリーブに戻れない!

本当に情けないんだけど、断言できる。

それにしても、トラップの口ぶりからすると、トラップも何か盗まれたみたいよね。何盗られたのかしら

「ねぇトラップ…」

ふっと顔をあげて、わたしは青ざめた。

うそぉ、嘘でしょ?!

わたしは森の中、一人でいた。

「トラップぅ!冗談やめてよぉ」

見渡しても、目にうつるのは木と雪ばかり。

なんで?なんでっ?

わたし、またやっちゃったわけっ?

確か、トラップの足跡を見ながら考え事してて…

目の前の雪には、足跡の"あ"の字もなかった。

「トラップぅぅっ」

声を張り上げても、木々に反射され、木霊する。

これじゃあ、プレゼントどころじゃない!

わたしは、寒さに痺れてきた足を引きづりながら、再び夜の森を歩き始めた。

しばらく歩くと、小さいモンスターに囲まれてしまった。

「やだやだぁ、こっちこないでよぉ」

腰に差していたショートソードで、つんつんと刺しても、その柔らかい体がダメージを吸収していた。

名前とか、キットンがいないと判らないけど、スライムの一種なのは一目瞭然。ぷにぷにの、50cmくらいの体。その肌には、淡く光る斑点。

それが、軽く20匹くらい!

こっちをじーっと見ていたの!(目がどこかは分かんないけどね)

キャーキャー騒いでいたんだけど。

スライム達は何もしてこなかった。

むしろ、わたしの悲鳴に怖がってるようにも見えた。

「そんなやつ相手にしてんなよ、ばーか」

後ろから頭をこづかれて、振りかえるとトラップ!

「馬鹿って、なによぉ」

涙目で見上げると、トラップはひょいとわたしの手をとって、スライム達の前からサッサと退散した。

「おめぇなぁ、言ったそばから迷子になってんじゃねぇよっ」

「ご、ごめん…でも、よく場所わかったね」

感心と感謝を込めて尋ねると、トラップは『やっぱ馬鹿だろ』って表情でわたしに言った。

「お前の足跡辿ってきたに決まってるだろぉが」

そっか。

わたしも、自分の足跡を辿って戻ればよかったんだ!

うぅ、やっぱりわたし、向いてないのかなぁ…

 

少し進むと、ちょっとした洞窟の前に出る。

いつの間にか、例の足跡があった。

「あの中に、ルーミィのプレゼントがあるのね」

「たぶんな」

トラップが先頭をきって、ゆっくりと洞窟に近付いて、中を覗いた。

わたしも、そぉっと覗いてみる。

中は本当に申し訳程度の広さで、でも明るかった。

広さは、ちょっとした部屋くらいかな。っていっても、みすず旅館のあの部屋よりは全然広いけどね。

その中央に焚き火があって、それを囲む人影。

その人影っていうのがあまりにも可愛くて、わたしは思わず声を出しそうになった。

「なんだ、あいつら」

と言うトラップも、心なしか口元が笑ってる。

人影っていってもね。身長はわたしたちの腰より低いくらい。ドワーフかなって感じの、ずんぐりむっくりな体つき。赤い帽子と服。ちょっと大きめの鼻の下には、不釣り合いな程の量の、白い髭。

「ねぇトラップ。サンタっていたのね」

絵本で昔見たような、大きなおじいさんではなかったけれど、パッと見はサンタそのものだったの!

「ばぁか。サンタがプレゼント盗むかよ」

目を丸くしていたトラップだったけど。

中にいたサンタ?達がそれぞれの白い袋にたくさんのプレゼントを詰めているのを見ると、中へズカズカと踏み込んでいった。

近付いてくるトラップに気付いた彼等は、よく聞き取れない声でざわめきだす。

その中の一人が、白いずた袋に入れようとしていたプレゼント包み。

「あぁーっ!それ、ルーミィのプレゼント!」

わたしの声に、一瞬手を停めたサンタも、すぐに袋にまた詰めはじめてしまう。

「おめぇら、このプレゼント!町からかっぱらってきたんだろっ」

そう、わたしも同じこと考えてた。

町から点々と続いていた無数の足跡。

盗まれたのはきっと、わたしたちだけじゃないんだ!

シャワシャワとしか聞こえないような声を出しながら、サンタ達は顔を見合わせる。

「お願い、返して!」

言葉が通じるのか不安だったけど。なんと、サンタの一人が、わたしの方へやってきた。

「シャワシャワ、ワシャシャ」と何か言うと、そのサンタはわたしに小さな箱を差し出した。

「あっ、それ…」

と、トラップが慌てた声。

たぶん、トラップが盗まれたモノなんだろうな。飾り気のない、白い箱を受け取ったわたしを見て、サンタは満足そうに小さな目を細めた。

『シャワシャワ…シャワシャワ…』

再び騒だすサンタ達。

ごうっと、突然風が舞った。

火が消え、洞窟は真っ暗になった。

「こらぁ!てめぇら、待てぇっ」

『シャワシャワ…シャワシャワ…』

トラップたちの声を追って外へ出ると、トラップの見上げる空に目をやった。

月の浮かぶ夜空に、シャワシャワ…シャワシャワ…と、まるで鈴のような声が広がる。

サンタ達は、そのまま夜空に消えてしまった。


 
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