がちりりくる3~たまさえ
【珠季】
「20歳の誕生日おめでとう。紗恵香ちゃん」
「ありがとうございます」
学校の仕事を終わらせて帰宅する途中で紗恵香ちゃんの誕生日のことを思い出して
必要そうなものを買ってきて帰ると料理を作っていた途中だったのかエプロンを
つけたまま玄関まで来て迎えてくれていた。
何かそんな光景が新婚したての夫婦みたいでちょっとドキドキしたり。
こんなこと、紗恵香ちゃんには言えないけどね。
それから盛り付けと配置を手伝って一段落してから言ったのがさっきの言葉。
最近話題になってるケーキ屋さんで普通のサイズのを買ってきて、ちょっとお高い紅茶も。
ついでにこれは誕生日に適してるとは言えないけれど興味本位で買っちゃった…。
お酒類。何が飲めるかわからないから色々な種類を買ってきちゃったよ~。
「二十歳になったんだからもう飲めるよ。どうする、紗恵香ちゃん」
「えっ、私も飲むんですか?」
「ダメだったかな…?紗恵香ちゃんだったら平気かなと思ったんだけど」
「飲みましょう」
少し戸惑っていた紗恵香ちゃんにそういうと私に言われたからなのか、
少し強気な表情になって私の言葉に乗ってきた。
「む、無理しなくてもいいよ~」
「珠季ちゃんが飲むなら私も飲めます。見た目、大人なので」
「見た目関係ないでしょ~…!」
さりげなく遠回しに私が子供っぽいとからかわれてるような気がして
ちょっとだけムッときたのだけど、そこは紗恵香ちゃんらしくすぐさま
私のご機嫌を取りにスキンシップを図ってきた。
「珠季ちゃん、かわいい」
「もう…年上の女性をからかわないで~」
「恋人が愛おしく感じて可愛がりたくなるのに年齢関係ないでしょう?」
「うーん…そうかもしれないけどぉ…あれぇ…?」
上手く丸め込まれた感が否めないけど、そのままじゃれついていると
料理が冷めてしまうのですぐに頂くことにした。
結局のところ、紗恵香ちゃんは一番アルコール度数の少ないキンキンに冷えた
缶ビールを飲むことにしたようだ。まぁ、最初はその方がいいよね。
自分で勧めたのに少し心配になってしまうのは矛盾しているだろうか。
**
最近の仕事の話とか、紗恵香ちゃんが通ってる大学での様子とか聞きながら
少しずつお酒を飲んでいく、初めての割に変わった様子を見せなく相変わらず
優しく微笑んでいて可愛いなぁと思いながら見ていた。
って、これじゃ私の方が先に酔っ払ってるみたいじゃないのぉって少し焦ったけど
まぁ、そうかもしれないという気持ちはどこかにはあった。
「紗恵香ちゃん?」
「はい?」
「少し酔ってきた?」
「そんなことないですよ」
やっぱり酔ってなかったか、酔ってる紗恵香ちゃん見たかったのになぁ。
って思ってると、紗恵香ちゃんは立ち上がって私の傍にいつも通りの笑顔で
近づいてくる。
なんだろう? って思った刹那。
チュッ
「ひゃあ!?」
「ふふっ、珠季ちゃん反応かわいいです」
「ちょ、ちょっと!? いきなりなにを…うむぅっ」
急にされてびっくりしたのと頬といえど紗恵香ちゃんの柔らかさと匂いを
感じちゃってドキドキしている状態。
理由を聞こうと隣の紗恵香ちゃんの方に振り向くと今度は顔の両側を紗恵香ちゃんの
手で挟まれて思い切り口にされてしまう。
チュ~ッ
「…!」
「…///」
普段だったら紗恵香ちゃんの匂いだけなのに今日はプラスお酒の匂いが入ってるから
何だか私の頭の中がくらくらしてきたような気がした。
「はぁ…珠季ちゃんかわいい…」
「紗恵香ちゃん酔っ払ってる!」
私の彼女は酔っ払うとこうなっちゃうの!?
「酔ってませんよ~…」
「あぁ…だんだん目が据わってきてる…」
今になって酔ったような顔になってきてる。心の隅で飲ませたことを後悔しながらも
いつもとは違う積極的な紗恵香ちゃんにキスされちゃってこれはこれで嬉しかったり。
「ちゅっ…。ふふっ、珠季ちゃん甘い」
「もう…。んっ…くすぐったいよぉ」
小鳥がついばむみたいな可愛らしいキスを何度かしてから少しずつ紗恵香ちゃんの
勢いがなくなっていくことに気付く。
「なん…だか…ねむくなって…」
「あぁ、もう…。ちゃんとお部屋行って寝ないと~」
「はい…」
「私も一緒に行くからね」
体の小さい私が紗恵香ちゃんを連れていくのは大変だと思ったのでちゃんと
意識があるうちにベッドのあるとこまで連れていくと、力尽きるようにどさっと
ベッドの上に倒れる紗恵香ちゃん。
そのまますぐに寝息が聞こえてきて私も隣に寝て紗恵香ちゃんの顔を覗いた。
いつもとはまた違った可愛さが私の気持ちをくすぐってくる。
「かわいいなぁ、紗恵香ちゃん」
普段の大人っぽさは寝ている今は見えなくて子供っぽい寝顔をしているのを見て
キュンキュンする。
でも子供に対してはこんな感情抱かないよね。目の前にいるこの可愛い子が
本当に私の彼女なんだなぁって改めて思って彼女の頭を撫でると、
んんっという息と声が混ざって出たような声に一瞬ドキッとする。
「幸せだなぁ、仕事の疲れも取れそうだよぉ~」
そのまま今の思ってる気持ちを行動に移す。
私は目の前にいる紗恵香ちゃんをギュッと抱きしめて彼女の体に顔を埋めた。
体が小さいからか位置的に胸の辺りにきちゃったけど…。
ふかふか、ほわほわ。いい気持ち。
「こんな細い体しているのに筋肉もそれなりについてるのに、
なんでこんなに柔らかいの~? 反則的だよぉ…」
とか言いつつもやめられない止まらない。貪るようにもふもふし続けている内に
私自身もいつの間にか眠っていた。
**
「珠季ちゃん」
「はぇ?」
「おはようございます…」
「おはよう紗恵香ちゃん…あれ私いつの間に寝て…」
あくびしながら軽く目を擦ってから紗恵香ちゃんの方を見ると、顔を赤くしながら
どうすればいいのかわからない、とばかりにもじもじしている。
なんとも珍しい状況を見ていた私は。
「どうしたの、紗恵香ちゃん?」
「あのですね…。私昨日途中から酔っ払っちゃったみたいで…」
「あぁ、よく記憶なくなるって言うよね。紗恵香ちゃんもそう?」
「い、いえ…全部…覚えてます///」
「えっ」
その言葉に私は目を見開いて驚いた。
ってことはキスいっぱいしたことや下手したら私が抱きついていたことも…?
「途中起きた時に珠季ちゃんが私を抱きしめて幸せそうに寝ていた姿…可愛かったです」
「ふあぁぁぁぁ!?」
驚きと恥ずかしさのあまり変な声が出てしまった。
だってだってこんなの恥ずかしすぎでしょ~~~~。
でも…。
「でも…」
ベッドの上にちょこんと座る二人。熱がこもった息を静かに吐いて目を合わせる。
火照る顔、どきどきする胸。まるで飲んでいた時みたいに気持ちが高まっていた。
「珠季ちゃん…今度は…お酒関係なく、しよ?」
「う、うん…!」
今度は勢いに任せたキスじゃなくて、ゆっくりと相手のことしか頭にない状態で
脳がとろけそうになるほど熱くなって長く長く私達はキスをした…。
何か色々あったけど、こういうのも悪くないかも。キスを終えて普段通りに戻った
私がそう呟くと紗恵香ちゃんも苦笑しながら「そうですね、たまには」と言ってくれて
すごく嬉しくて私は笑顔を浮かべて照れ笑いをした。
「今度は珠季ちゃんが酔っ払う姿見るので、覚悟してくださいね」
「あ~、まだ紗恵香ちゃんに負ける気はないよ~。次も私が可愛い紗恵香ちゃん
拝むんだからね~」
そんな風に言葉を交わして朝ご飯を食べてから私は仕事、彼女は大学へと赴く。
こうして一緒に暮らせる幸せ。知らないことを少しずつ知っていく幸せ。
そういう何でもないこと一つ一つでも好きになっていくのを楽しみにしながら
私達は一緒に前に進んでいくのだった。
お終い。
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今回は健全なのを書いたのでこちらにも投稿。
大人になった紗恵香とお酒を嗜む珠季ちゃん。
酔いならではの積極的な部分も?
珠季ちゃんの誕生日のつもりで書いたのに中身は紗恵香さんの誕生日になってました(あるぇ~?)なのでちょっと早めに投稿することにしました。
少しでも楽しんでもらえたら幸いです。