No.855081 16-06/24 降臨・デスティニー吹雪!(SS)2016-06-25 00:00:42 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:832 閲覧ユーザー数:811 |
(アニメ艦これ・3話のあのシーンから…)
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「やだ、髪が痛んじゃう…」
如月は、硝煙混じりの潮風にさらされた髪を、そっと整えた。
その彼女を、深海棲艦の艦載機が狙ってる事など、知る由もなかった。
満身創痍になり、戻るべき艦も失った艦載機は、
せめて艦娘を1人でも道連れにしようとしていた。
自らの運命も知らず、如月は自慢の髪を整えていた。
そして気付いた時には…既に艦載機が目の前に迫っていた。
『 轟 沈 』
如月の心に、その2文字が焼き印の様に深く熱く食い込んだ。
脳裏にも、鎮守府の仲間達の顔が消えては浮かび、浮かんでは消えていく。
長門秘書艦、陸奥さん、赤城さん、間宮さん、
夕立ちゃん、島風ちゃん、睦月ちゃん、吹雪ちゃん……
会いたい…!
もう一度、みんなに会いたい…!
会いたいよぉ…っ!!
如月の噛み締める様な願いをあざ笑うかの様に、
艦載機はまっしぐらに突っ込んでいく。
それは、恐怖で動けなくなった非力な獲物を狙う、狡猾な蛇--
今まさに、獰猛な毒牙が、哀れな獲物を引き裂こうとしていた。
瞬間……!
独特の鋭い射出音を伴って迸った一条の光芒が、艦載機を撃ち抜いた。
光芒は艦載機を爆発ごと呑み込み、影も残さず吹き飛ばした。
「!?」
爆風のかすかな残滓から身を守る事も忘れて、呆然としている如月に、更なる衝撃が--
--大破状態の艦載機がもう1機接近していた。
だが如月には、第2の接近に気付く余裕はなかった。
もうひとつの存在--光芒を放ったと思われる『もの』が、急速に接近していたからだ。
『それ』は有り得ない位の高速で迫り、大きな武器の様なものを抜き放った。
(攻撃!?)
如月は反射的に身を伏せたが、『それ』は如月を無視して--或いは守る様に--艦載機に肉薄して、そして……
「やぁぁぁーーッッッッ!!」
気合と共に、艦載機を両断した。
その斬撃の余波は、爆風すらもかき消し、吹き飛ばす程だった。
その時--驚きの余り、思考や判断が追いつかない如月だったが、
その耳は気合の中に『馴染みのある声』を捉えていた。
「なななななな、何なにナニ!?!?ナニなに何!?!?」
余りにも衝撃的過ぎる出来事の連続に、如月は混乱していた。
自分が轟沈を免れた…それは理解出来る。
その危機を、『謎の存在』が助けてくれた…それも分かる。
ならば『それ』は、一体何なのか?
その時になって初めて、如月は『それ』の姿を--
--すぐ目の前で、背を向ける形で宙に佇んでいる存在--を見た。
逆光のせいでシルエットはぼやけているが、『それ』は人の姿をしていた。
頭・そして1対ずつの手足が、『人の姿』と認識させるのだ。
だが…細かい部分が、人とは大きくかけ離れていた。
腕と脚は、鎧を髣髴とさせる装甲で覆われていた。
それは、堅固でありながら軽そうな印象を与える、不思議なものだった。
左手には細身の砲が、右手には大業物の剣が、それぞれ握られていた。
これが敵の艦載機を吹き飛ばし、また断ち切った武器である事は、まず間違いない。
背中には何らかの推進器と見られる機械。そして……
そこからは、膜状の光が噴き出していた。
それは、翼の様な幻想的な輪郭を形作っていた。
そのせいなのか…一瞬『オーロラの羽衣をまとった妖精』の様にも見えた。
光の翼を広げた者--
それは、天界から降臨した天使なのか、
或いは、魔界から現れた堕天使なのか…
『それ』は一体何なのか--
如月の知る限り、そんな武器・装備を持つ艦娘は存在しなかった。
それどころか、艦娘であるか・深海棲艦であるか…敵か味方かどうか、それすらも判断がつかない。
戦おうか、逃げようか、どうしようか…如月が判断に迷っていると、
『それ』が振り向いて……
「如月ちゃん、大丈夫?」
如月に声をかけた。
それは間違えようもない、日頃から耳にして、慣れ親しんだ声だった。
「ふ…ぶ、き……ちゃん?」
如月の口から、無意識のうちに声の主の名が出た。
声の主…吹雪は、2つの武器をしまいながら、もう一度声をかけた。
「如月ちゃん、大丈夫?怪我してない?」
2回目の呼び掛けで、混乱状態にあった如月の頭も、多少落ち着いてきた。
「う…うん、大丈夫。ちょっと怪我しただけよ…」
多少のダメージを負ってはいるものの、轟沈に至る程ではなかった。
とは言うものの、如月の心は完全に落ち着いた訳ではなかった。
あれだけの攻撃を、本当に吹雪がやったのか?
本当だとしたら、一体どんな武器なのか?
それ以上に、艦娘が空を飛ぶものだろうか?
しかも、あんなスピードで?
何より、優雅でありながらも力強い姿は何なのか?
しかし--
今だ混乱覚めやらぬ如月は、たった一言を絞り出すだけで精一杯だった。
「吹雪ちゃん…本当に、吹雪ちゃん…なの?」
如月の問いに、吹雪は微笑むだけだった。
「うん。でも…ちょっとだけ違うよ」
「違う…?」
「今のわたしは……『デスティニー吹雪』!」
「デスティニー…吹雪…!」
吹雪は頷いて、如月に手を差し伸べた。
「さぁ、帰ろう。わたし達の鎮守府へ!」
如月は手を伸ばして、吹雪と手をつないだ。
「うん、帰ろう。わたし達の鎮守府へ!」
如月と手をつないだまま、デスティニー吹雪は
光の翼を広げて空へと舞い上がった。
冷たく、固く、武器を内蔵したデスティニー吹雪の手。
しかし如月には、いつもの吹雪の手--温かく、柔らかい、いつもの友達の手に感じられた。
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先日の作品で予告した通り、今回はデスティニー吹雪の
登場シーンのSSです(誰得)
悪名高い、アニメ版「艦これ」3話を改変したいと、
妄想全開で書きましたwwww