第53話:クウヤとセイ!衝撃の再会!
潮風が吹き海面が美しく輝くこのルネシティに到着した少年は懐かしげにその街を船の上から見渡していた。
「ついたぞー!
みんな、ここがオレの育った街・・・ルネシティだ!」
クウヤはそう、ポケモンたちに告げた。
船から下りた後、もう一度ポケモンたちに告げることがあり真剣な顔で口を開く。
「みんな、もう一度言うけど・・・最後の相手・・・この街のジムリーダーはオレがとっても世話になった人なんだ。
とても落ち着いてて、すごく優しくて、でもポケモンが強いおじさん。
だけどここまで来たからオレは負けたくねぇんだ。
全力でぶつかって勝って、リーグ制覇しようぜ!」
クウヤのその言葉に同意する一同。
みんなモンスターボールに戻ったがアーチはそのままジムに向かうクウヤについていく。
その様子を見る人影には気づかずに。
「・・・・クウヤ・・・・」
数分後、ちょっと道に迷ったこともあったがクウヤ達はなんとかルネシティジムに到着した。
屋敷――というより豪邸にみえる――風のジムの扉をノックしてしばらくすると扉が開き、一人の青年が姿を現した。
「はい、こちらルネジムですが・・・!」
青年はクウヤの顔を見て驚く。
「まさか、クウヤ君!?」
「久しぶり、審判のにーちゃん!」
「本当に久しぶりです、すぐにアダン様のところへ案内いたします!」
以前から知り合いのようだ、この審判はクウヤをジムの中へ通した。
水タイプの専門らしくプールが設置されているジムのバトルフィールドを通り抜けて、応接室に入る。
アーチを控えソファに座りしばし待つと奥の扉から懐かしい人物が「ふたり」出てきた。
予想外の展開にクウヤは目を丸くし唖然とする。
「アダンのおっちゃんに、オダマキ博士!?」
「久しぶりだね、クウヤくん。」
「何ヶ月ぶりでしょうか、
立派なポケモントレーナーになりましたね」
「あ、えと・・・」
「あぁ、何故ここに博士がいるのか、ですね」
「うん」
「それではお話しましょう」
老紳士、という言葉がしっくり来る男性・・・アダンは全員それぞれのいすに座ったのを確認すると、静かに口を開く。
「キミがここまでこれた時に全てお話しようと決めていました。」
「なにを?」
「キミを旅立たせたい、あの一家から救い出したい・・・そういう願いを聞き入れオダマキ博士に頼んだのですよ、私や、セイ君が」
「!」
アダンの言葉に驚き、クウヤはなにもいえなかった。
そんなクウヤの様子に気づきつつもオダマキ博士はそのままアダンの話を続けた。
「クウヤという名前の男の子に出会ったらポケモンを与えて欲しいと
私は事前に頼まれていたのだよ。
それがきっかけになるから、と」
「そうだったのか・・・」
「セイ君と共に以前から考えていたのです。
あの貴一家は一見害はなさそうですがあまりいい話は聞かないので、 その真実を知るために、とね・・・・・」
「・・・・・」
「なによりも私はキミ自身のために、この作戦を立て、賛同したのです」
「オレの、ため?」
「ええ」
アダンは紅茶を口付け真剣なまなざしでクウヤを見る。
思い出すのは、あの時の事・・・。
弟子と共に浅瀬の洞穴に向かったとき見つけた、今にも死にそうなくらいに弱っているのに生きようと必死に泣く小さい赤子の姿・・・・。
その赤子の姿とクウヤの顔が、重なった。
「あの夫婦は自らの名声のためにキミを引き取りました。
私が見つけた子どもを引き取り実の子として育てる・・・このルネシティ内だけだとしてもまさに名声をあげるチャンスですからね。
本来ならあの時、ジムリーダーとしての立場を無視してでも キミを私の元に残しておくべきだった・・・。
そうすればキミがあの夫婦に虐げられることもなかった」
「おっちゃん・・・」
アダンはクウヤに向けて頭を下げる。
「このとおり、キミに辛い思いをさせて、申し訳ありませんでした・・・・」
「!? 」
アダンの謝罪にクウヤは驚く。
「なんでおっちゃんが謝らなきゃいけねーんだよ!
なにも・・・なにも悪いことしてないじゃん!
おっちゃん、いつもオレやセイに
優しくしてくれたじゃねーか!」
クウヤはありったけに自分の思いをアダンに向かって叫び伝える。
「ミクリにーちゃんやセイ、アダンおっちゃんがいたからオレ・・・辛くても虐められても、我慢してこれたんだ!
みんなのおかげでオレ・・・今トレーナーになれてポケモンとであって、ここまでこれたんだ!
だから、だから・・・・」
「・・・」
「自分が全部悪いなんていうなよぉ・・・!」
クウヤの脳裏に浮かんだのはここまでの旅。
アーチ、ナーク、エーネ、ピーカ、ヒーン、ノープとの出会い、ジムリーダーやトレーナーとのいくつものバトル、野性ポケモンとのバトル・・・。
クウヤにとって今一番の親友であり最大のライバル、リクガとラカイ・・・。
本当にここまでこれたのは、このきっかけを与えてくれたから。
「・・・」
「クウヤ・・・本当に強く、そして優しくなりましたね」
「お、っちゃ・・・うっ」
「シャーモ、バシャ」
「アーチ・・・ぐすぅ・・・」
ようやく自分が軽く泣いてた事に気づくクウヤ。
必死で涙をぬぐい、もう一度アダンに、そしていつの間にか自分の肩をもってくれてたアーチに視線を向ける。
アダンがクウヤの頭をなでていると、オダマキ博士はかつて自分が育ててたアチャモだったポケモンをじっと見つめた。
「あの小さいアチャモがここまで素晴らしく強いバシャーモに・・・お前も、頑張ったなぁ。
これからもしっかりご主人を守ってやるんだぞ」
「バシャ」
「本当に・・・・。」
アダンは優しく微笑みたちあがる。
同時にクウヤの頭から彼の手が放れた。
「・・・クウヤ。
キミのこのジムへの挑戦を受けましょう。
いつでもまた来なさい」
「!」
彼の言葉にクウヤは一気に顔を上げた。
その目にはまださっきの涙が残っている。
「ジム戦では相手がキミでも手抜きは一切しません。
本気で戦いますから、覚悟してください」
「・・・ああ、わかった!
絶対勝ってやるからな!」
クウヤは涙を止め完全にぬぐうと、白い歯を見せてニッ、と笑った。
「それじゃ、まずは食事にしましょうか。
キミもおなかを空かせているでしょう」
「あ・・・そういやそうだった」
へへ、と笑うクウヤ。
「ふぅー、おなかいっぱい!」
「バシャ」
「それじゃアーチ、一度ボールに・・・うわあ!」
ジムを出たクウヤはアーチをボールに戻そうとするが空から何かが襲い掛かってきたことでそれを遮られる。
「なんだ!?」
再び飛び掛ってきたそれをアーチが全身で受け止めるとクウヤはすかさず図鑑を開く。
「『ネイティオ』!?
おいお前、なんで急に襲ってきたんだ!」
「・・・」
「おい、きいてんのか!?」
アーチの両腕で封じられてたポケモンはモンスターボールの光線により主の下へ戻る。
その光線を目でたどった先にいたのは・・・自分に旅を与えてくれた義兄だった。
「ひさしぶり、クウヤ」
「せ、セイ!?」
「待ってたよクウヤ、
さぁ・・・僕とポケモンバトルしよう?」
「え・・・え・・・
ええええええええええええええ!!!!!!!!!」
突然の義兄の言葉・・・バトルの申し出にクウヤは絶叫し驚いた。
「くくく・・・いい気味だ」
その様子をほくそえみながら、二つの影が見ていた。
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いまもぶっちゃけTINAMIの使い方を理解してません(!)