「私たち艦娘の最大の武器になると思います」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:第15話(改2.6)<艦娘の強さ>
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「しししし、司令官!」
あたふたと小柄な艦娘が来た。駆逐艦かな。
黒髪の少女が敬礼しながら声をかけてきた。
「ふ、吹雪であります! よろしく、お願いします!」
私は彼女の姿を見てオヤッと思った。
「あれ? 君は、どこかで……」
私は記憶を手繰った。
「あ、海軍の公報によく出ていたよな?」
「は、はい! 恥ずかしながら」
彼女は敬礼したまま硬くなった。少し頬が紅潮している。
私は軽く右手を差し出した。
「そんなに緊張しなくて良いよ、ヨロシク」
硬直した吹雪は直ぐにニッコリ笑った。
「あ、シェイクハンドですね?」
驚いた。いきなり横文字か。
「そう。握手だ」
(真面目で大人しそうな娘だけど。洒落たことを言うな)
透き通るような声で彼女も右手を差し出した。
何気なく握手しようとした私は、ひょっとしたら何万馬力で挟まれるのだろうか? と一瞬、冷や汗が出た。実は艦娘と握手をするのは初めてだった。
だが次の瞬間、私たちは普通に握手をしていた。何の変哲もない握手。そして吹雪の手は暖かい。彼女も少し、はにかんだように頬を赤らめた。
「済みません。指揮官の方と握手をするのは初めてなんです」
「ああ、私もだ」
そこで彼女は真っ赤になってしまった。
「ヒュー、ヒュー」
(誰だ?)
私は振り返って苦笑した。
「島風、茶化すな」
一瞬、怒られるかと思ったのだろう。ウサギ耳の彼女は少し首を縮めていた。一瞬、周辺に緊張が走る。
だが私は別に気にせず黙っていた。それで安堵したのか連装砲を抱っこした彼女は舌を出して笑った。
「えへへ」
そんなやり取りで青葉さんと秘書艦もホッとしたようだ。場には再び穏やかな空気が戻った。
私は、ふと思った。
(艦娘にも喜怒哀楽がある)
当たり前のようで不思議な感覚だ。
実際、あるブラック鎮守府では詰められた艦娘たちが反乱を起こしたこともある。
当時は鎮圧や報道管制が大変だった。以後、艦娘に対する扱いには細かい規制が加えられたとも聞く。
(とはいえ艦娘に緩い私には、あまり影響ない命令だったが)
「では、失礼します!」
吹雪は私に向かって軽く、お辞儀をした。私も軽く敬礼を返した。
「頑張れ」
「はい!」
次の瞬間、彼女は右手と右足を同時に出して歩き始めていた。
「器用だな」
思わず苦笑した。
祥高さんも同じ印象を抱いたようだ。テーブルに戻ると彼女は言った。
「あの娘は特型駆逐艦ということもあって一時期、外部の新聞からも取材されて一躍、時の人になったんですよ」
「なるほど」
その時、横の方から声がした。
「あのぉ、取材の続き、宜しいですか?」
「あ」
振り返ると青葉さんだ。そういえば彼女の声も独特な張りがある。記者には良いかもな。
メモ帳を片手に青葉さんは、やや上目使いに質問する。
「えっとぉ、新しい鎮守府に着任された第一印象は、如何(いかが)ですか?」
「そうだね。悪く無いよ」
半分お世辞だ。
サラサラとメモを取りながら彼女は続けた。
「えっと、既に敵と遭遇されたそうで。何か感じられたことはありますか?」
「うーん」
情報が早いなと思いつつ私は、ちょっと考えた。
「いまだに正体がハッキリしない敵の強さ、かな」
「なるほどぉ」
彼女はメモを取り続ける。
一呼吸おいて私は付け加えた。
「しかし、そんな敵にも対抗する我が海軍の素晴らしさ。特に艦娘の火力には頼もしさを感じたね」
「ほうほう」
感心しながらメモする青葉さん。
「ふむふむ」
暫し、ペンを顎(あご)に当てながら海を見詰め、考える彼女。やがてメモを閉じた。
「はい、貴重なご意見、どうも有り難うございました」
微笑んだ彼女の瞳は海の光を反射して澄んで見えた。
私はドキッとした。間近で見る彼女の笑顔は普通の少女そのものだった。
大抵の記者、人のことを聞き出す輩は目が曇っている。だが彼女は違う。
(不思議な感じだな)
そして青葉さんは立ち上がった。
「では失礼します。今後とも宜しくお願いします」
一礼した彼女は私たちの前から立ち去っていった。
それを見ながら秘書艦は言った。
「あの娘は情報通で、この鎮守府の広報担当もやっています」
「なるほど」
(美保は百人規模ながら個性派揃いだな)
思うに鎮守府とは一つの個性的な町だ。それが地方の、いち組織であれ存在意義は国防に留まらない。
軍隊には情報や物流、基本業務を自己完結出来る多芸さがある。美保も例外ではない訳だ。
私の思いを察したように祥高さんは補足した。
「艦娘は器用な娘、そうでない子、様々です。でも誰でも皆、素敵な個性を持っていますから」
長い『耳』を揺らす島風を見ながら彼女は続けた。
「そういう個性こそ私たち艦娘の最大の武器になると思います」
「そうだね」
私はコーヒーをすすった。
「画一ではない」
率直な印象を口にした。
目の前の駆逐艦。ウサギ耳の島風に、無口な寛代。対照的だ。そんな個性的集団を束ねるのは大変だろうか。
すると急に秘書艦は真面目な顔をして言った。
「不足ながら私も司令着任までは代理で指揮を執っておりました。この鎮守府のため私も精一杯、お支え致す所存です」
不意討ちのような固い挨拶。
「分かった」
少し焦った。そこで、ちょっと構えつつ聞いてみた。
「毎回、君は指揮官着任後に、それを言うのか?」
すると祥高さんは微笑んだ。
「済みません。私、よく『押しが強い』って言われるもので……これも鎮守府と艦娘のためだと、ご理解下さい」
その表情は青葉さんとは、また違った雰囲気だった。
私も姿勢を崩して苦笑する。
「それは分かる。司令部付きの艦娘たちは、大抵そんな感じだ」
「へえ?」
いきなり島風が反応する。
私は肩をすくめた。
「むしろ艦娘で、ここまで責任感を持って執務する方が珍しいだろう」
「恐縮です」
祥高さんは、またニッコリ笑う。その笑顔に私はホッとした。
「うんうん」
島風も大きな耳飾りを揺らしながら頷いている。
「秘書艦は固いから」
その一言で場が和んだ。
「やれやれ」
呟いた私はイスに座り直した。
「これじゃ普通の鎮守府の方が気楽だな」
ただ私は食堂に入る前に出て行った黒髪の艦娘が気になっている。
(あの艦娘も、どこかで見た記憶がボンヤリとある)
誰だっけ……ダメだ、思い出せない。
私は、ため息をついた。
前任地から持って来た資料も焼失した。もはや手がかりは無い。
だが、いざとなれば指令室にある艦娘の顔写真を調べたら分かるだろう。そう思い直した。
ただ今は、ちょっと気力がない。大勢の艦娘を前にして既に混乱気味だ。
「ナンだか難しい顔?」
島風が覗き込んできた。その屈託の無さは私の悩みなんか、お構いなしだ。
「新しく覚えることが一杯だよ」
「ふうん」
「まぁ徐々にだな」
私は頭に手をやった。
「そうですね」
祥高さんも微笑んだ。
「……」
寛代は黙って私を無表情で見つめていた。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府:第一部」の略称です。
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私は食堂で吹雪と出会い青葉から取材を受けた。そして秘書艦が自分の考えを語る。