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No.854048
みゆうさん
今年も清掃ボランティアの一環で海水浴場のゴミを拾う。プラスチックゴミは重点的に拾わないとね。まだ使えそうなビーズや小瓶や貝殻なんかはポケットに……。 赤や透明のクラゲが浮いている波打ち際、風雨に侵食された岩が剥き出しの崖下、錆が浮き出たコンクリートの堤防などを歩き回って袋が一杯になる頃、ふと振り返るとリュー姉が逆さにひっくり返ったボートの底でくつろいでいるのを見かけた。 「隙ありにゃ!」 リュー姉がふざけて私に投げてきた小石が私に当たる寸前で跳ね返ってリュー姉に当たる。 「痛っ…、お疲れさまにゃね」
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「何か投げてきたみゃ?」 一応、ゴミ袋半分くらいは拾っているらしい。手ぶらだとミランシャ姉さんに怒られるからみゃ。 「みゃ…」 「ちゃんと拾ってるにゃよ。…そうだ、働き者のミドラにはご褒美あげるにゃ。ミドラ好みの色の石拾ったにゃ」 リュー姉は手のひら大の小さめのガマ口財布から10円玉数枚と緑色の小石を取り出す。 「……そんな財布持ってた?」 「島の中に落ちてたにゃ。どうせ持ち主もいないし私の物にゃ」 狐の刺繍の入った、京都の土産物屋で売ってそうな高そうな代物だ。どこかから流れ着いたにしては綺麗だし……。 「あっ、ダメにゃ!」 リュー姉の手からガマ口財布を一瞬で奪い取る。硬貨単体ならともかく、財布ともなれば落とし主がいないか確かめないと。(=Φ人Φ=)づ彡 「……じゃあ、はっきりするまでこれは預かっとくな。……リュー、中に入ってたはずのお金も出しなね」 財布(リュー姉がカーデのポケットに隠していた小銭)はミランシャ姉さんに渡して、落とし主が近くにいないか探してもらう。 私達は島の中の神社まで散歩する。 「ふぅぅ、あれ気に入ってたのにがっかりにゃ……」 すっかり不機嫌になったリュー姉は、回りの草木を尻尾でベシベシ叩きまくって葉や枝や虫を撒き散らす。私は、草むらから私達の方に飛び出してきた虫を片っ端から潰す。さっき草刈りして綺麗にしたばっかりなんだけどみゃ……。 「……落とし主がいなければリュー姉がもらえるみゃ」 「小銭しか入ってなかったし、どうせ分からないにゃ。無くした奴も名前書いてチェーンで繋いでおけば良いにゃ!」 リュー姉は、近くの堤防の上に置いてあったミーラン君の飲みかけのお茶を奪い取って飲み干す。 「ぐびぃ~」 「んにっ、何するんだよ!?」 「あんたのお姉ちゃんに取られた分だにゃ!」 リュー姉は空になったペットボトルを捻り潰して堤防の向こうの岩場に投げ捨てる。だから清掃したばっかりなんだけどみゃ……。 ミーラン君を抱き抱えて堤防の上に飛び乗る。 「今、ちょっと不機嫌だからミランシャ姉さんの近くにいるみゃ」 私達は獣道同然の道を通り、小さなお堂と苔むした灯籠のある神社まで着た。前に着た時はミツバ ナツキさんという緑狐娘がいたけど今日はどうかな。私達意外に人の気配はしないけど。 「私はさっきもここ着たにゃ。あの財布はこの枯れ井戸の縁に落ちてあったにゃ」 リュー姉が神社内の井戸の蓋を乱暴にこじ開ける。中は外の地面とほぼ同じ高さまで埋められていて、水は一滴もない。 「あ…、勝手に入ったらダメだみゃ」 「ここは秘密基地みたいなとこだにゃ。誰もいないし、渡し船に乗らないとこれないのが難点だに…」 「神社の境内だし、勝手にいじられると困るんだけど」 お堂の裏から緑の毛並みに巫女服姿の狐娘http://www.tinami.com/view/692528 が現れる。ナツキさんだ。 「わっ、お狐様だにゃ!?」 「あ、久し振りですみゃ」 「あら、ミドラさんか。ん、……」 ナツキさんは井戸の中のリュー姉の方をジッと睨む。なんとなくチベットスナギツネのような感じみゃ。 「な、何にゃ???」 「そこの緑の猫人さん、貴方がさっきそこで拾ったはずの財布を返しなさい」 「にゃっ!? (……誰も見てなかったにゃ……)」 リュー姉の尻尾の毛が逆立つ。あれナツキさんの財布だったのか。 「隠しても分かるからね。名前やチェーンを着けていなかったのは私が悪いけど、あれは落としたんじゃなく置いていたんだから。中に1000円入っていたからそれも忘れないで。……ああ、今は貴方の山猫のお姉さんが持ってるわね」 ナツキさんは弓を握りしめる。 「や、私の方が年上なんだけどにゃ。……連れて来るから待っててにゃ……(……なんか祟られそうにゃぁ……)」 リュー姉は井戸から慌てて飛び出す。 「貴方の山猫のお姉さんは今、桟橋に停まってる船にゴミを積み込んでいるわ。せっかくだから、運んでいきなさい」 リュー姉の両手、頭に満杯のゴミ袋を持たせる。 「ちゃんと返してくれたら私は何もしないけど、山猫のお姉さんには怒られるから覚悟しなさい」 「……もういいにゃ!」
2016-06-19 18:38:46 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:1141 閲覧ユーザー数:1138
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今年も清掃ボランティアの一環で海水浴場のゴミを拾う。プラスチックゴミは重点的に拾わないとね。まだ使えそうなビーズや小瓶や貝殻なんかはポケットに……。
赤や透明のクラゲが浮いている波打ち際、風雨に侵食された岩が剥き出しの崖下、錆が浮き出たコンクリートの堤防などを歩き回って袋が一杯になる頃、ふと振り返るとリュー姉が逆さにひっくり返ったボートの底でくつろいでいるのを見かけた。
「隙ありにゃ!」
リュー姉がふざけて私に投げてきた小石が私に当たる寸前で跳ね返ってリュー姉に当たる。
「痛っ…、お疲れさまにゃね」
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