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魔法少女リリカルなのは~ゼロ始まる転生者~16話「守りたいあの娘」

wisteriaさん

 この作品を楽しみにしていた読者の皆さん方、遅くなって本当に申し訳ございません。いいわけとなりますが、某艦隊ゲームにはまってしまい小説がおろそかになりました。
 現在、職に就いていますので昔のように週一ペースでは書けませんが、完結までしますので、のんびりまったりお待ちください。
 それでは、リリカルマジカル再びです。

 後、はやてちゃん遅くなったけど誕生日おめでとう。

2016-06-14 00:23:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2000   閲覧ユーザー数:1952

 

としみつside

 昼過ぎ。学校が半ドンで終わり、みつるの誘いを断って駆け足でフェイトを探した。

 不安が俺の頭の中にあった。ジュエルシードは一人でも探すことはできるとフェイトは言ってた、けどであいつのこと探索をしている途中でぶっ倒れるかもしれねぇ。もし戦闘の最中だったら……

「フェイトの居場所はわかったか?」〈はい。公園の林の方で広域探索魔法を使っているようです〉

 シュターがフェイトの居場所を割り出した。あれすげー体力使うってアルフさん言ってたけど、大丈夫か?

 海鳴臨海公園の北側の緑地地区から入り、高い広葉樹林が立ち並ぶ林に足を踏み入れた。桜は散り他の木々と同様に緑色の葉をつけ始めている。草は刈り取られてからしばらく経っているようで、踝のところまで草が伸びていた。昼休み前で、人影がなく昼前の太陽が木々の影だけ見えていた。林の辺りを見回したがフェイトの姿はどこにもなかった。

 周りじゃないとすると…………上か?視線を木の枝のほうへ移すと、木の枝に立って魔法を使っているフェイトの姿を見つけた。服は、薄い水着の様なバリアジャケットではなく黒で統一されたワンピースを着ていた。

「お~いフェイト」

 フェイトは俺の声に気づき魔法を止めた。

「とし?……学校は?」

「サボってきた」

「ええっ!? っとと!!」

 フェイトは動揺して片足を枝から外して危うく木から落ちそうになったがすぐに体勢を立て直した。その拍子にスカートの中が見えてしまったのは心の秘蔵ファイルにしまっておこう。ちなみに中のパンツは黒だった。

「冗談だ。昼までだったから手伝いに来ただけだ」

「そうだったんだ。ビックリした」

 いくら俺でも半ドンの時にはサボリはしねえよ。

「そこ危なくねえか? 降りてきたらどうだ」「うん」

 フェイトは魔法を使ってスカートを抑えながらゆっくりと木から降りた。

「アルフさんはどこだ?」

「別のところでジュエルシードを探しているよ」

「ふ~ん。そうか」

 アルフさんの所在を確認した後フェイトの顔を見る。白い肌に綺麗でどこか憂いた瞳。さっきまで広域探索魔法を使ったという感じが微塵もねえ。いや、隠しているだけかもしんねぇ。

 最初にフェイトに会った時は儚げな少女という感じだったが一緒にいるうちに思っていた印象と違った。

 言い表せば芯が強い、花でいえばカラスウリだな。自分は大丈夫だと言って弱音を吐いたことがねえ。母ちゃんのためにそれほどに必死なんだ。

「あの、とし…………前から言おうと思っていたんだけど」

「うん?」

「何も関係ないのに、ジュエルシードを集めるのを手伝って私達を助けてくれて、本当にありがとう。でもこれ以上関ると、としに迷惑をかけてしまう。私はそんなの嫌だ。だからもうここで降りて。あの白い服の魔導師の子と白髪の子友達なんでしょ」

 突然の別れ話にに少し頭が混乱した。

 落ち着け俺、俺が嫌われるようなことがあったか?えーと、フェイトの口に無理やりお握り詰めこんだことか?でもあれ、フェイトがなにも食わねぇからやったんだし……

 いや待てよ。ああそうでぃ。昨日の管理局のことか。アルフさんが局が本格的に介入したらとか言ってたな。――管理局。昨日アルフさんから説明してもらったことをおおよそに言うと次元世界を取り締まる裁判所と警察と消防を合わせた機関だ。

 ジュエルシードはロストロギア、っー危険物。そんな危険物を所有し、集めていた俺達は管理局に御用される。理由はおそらくの管理局のことだろう。それなら合点がいくてもんだ。

 管理局がまだ俺のことを把握しきる前にフェイトはここで降りると言ったのだろう。確かに九歳で

補導されるのは御免だ。だけど……

「てやんでぃ!」

 右手をフェイトの額の前に突き出し、デコピンをかます。

「痛っ!」

 デコピンの勢いでのけ反るフェイトの両肩を掴み、ありったけの思いをぶつけた。

「フェイト! おめぇと別れてはいサヨナラなんてできねぇぜ! ここまでやってきてんでぇ、ジュエルシードの最後の一つまで集めるまで付き合うぜ」

 フェイトはおでこをさすり、少し涙を浮かべた。

 

「でもそれじゃとしが」

「管理局が来る前にぱぱっと取って、フェイトの母ちゃんに残りのジュエルシードを渡してフェイトは母ちゃんに守ってもらって、俺は……俺はほとぼりが冷めるまで逃げていくそれでいこう。大丈夫だって、子が危なくなったら親は守ってくれる。俺の母ちゃんもそう言ってたしよ」

 反論させる隙を与えないほど早口で話したてた。俺自身捕まるかもしんねぇが、警察だからこの年で恐喝や暴行はねぇし黙っておけば大丈夫だろ。フェイトだけを逃がせばそれでいいんだ。

それになのは達との仲を悪くしたのは俺だ。そこの始末は俺がつけるべきでぇ。

 フェイトは額をさすりながら、少し沈黙した後、さっきとは異なり腹を括ったようで口を開いた。

「わかった。でも、としは私が守る。母さんにとしも守ってもらう様に言う。私たち捕まらないようにジュエルシードを集めよう」

 俺に向けられたその眼差しは、強い信念がひしひしと感じ取れた。これぇあ、俺も簡単にお縄につくわけにはいかねぇ。その心意気に答えなければならねぇな。頭を縦に振った。

「おっしゃー! じゃ、さっさと行こうぜ!」

 フェイトの腕を引き、伸びてきた草を踏みつけて林の外へと走り出した。

「待ってとし! まだジュエルシードがどこにあるのか知っているの?」

 急停止し、その勢いで草が刈り取られいくつか舞い上がった。

「…………風がこっちにあるぞって、聞こえたような気がしてこれは俺の動物的直観が働いたと思ってこっちに走ったんだけどよ。やっぱ聞き間違いかな~なんて……」

 振り返って、慌ただしく言い訳したがフェイトの口元は失笑が浮かんでいた。うっせいやい、風の声なんかビューとしか聞いた事ないし、そんなものが目覚めたら目覚めてほしいぜちくしょう。

 フェイトの表情が再び鋭くなった。

「アルフ?! 見つかったの?」

どうやらアルフさんからの念話が来たみてぇだ。今までは、バルディッシュを通じての通信をしていたが恐らく、管理局から傍受されねぇようにしたんだな。

「とし! ジュエルシードが見つかったよ。場所は向こうの……」

 フェイトが指した方向は、俺がさっきまで走り出していた方向を指していた。その方向を空に指していたフェイトの指がゆっくりと肩のあたりまで落ちた。

 ふふん。どうやら、俺の動物的直観が目覚めてたみてぇだな。

「えっと、その……こういうこともあるんだね。ははは」

 発した笑い声は少しずつ小さくなっていった。

 

 広場に到着した俺たちは、ジュエルシードによって変形した化け物と戦っているアルフさんを見つけた。

「フェイト! とし! こいつリーチが長くて迂闊に近づけないんだ」

化け物は3、4mほどの巨大なカマキリの姿であったが、体の色は黄緑の上に禍々しい紫色の斑点がいたるところにできていて、カマキリの特徴である鎌状の腕の片腕が2mぐれぇある鞭になっていた。

 周辺は結界が張って外の世界とは別の空間になり結界から出ない限り被害は出ないようだが、結界内の広場はこっ酷でぇ状態だ。木は幹が折れ隣の木にもたれかかる様に倒れ、ベンチは真っ二つにされて抉られた地面の土に埋もれ、銅像だった物は原型を留めずそれが乗っていた台座には瓦礫が鎮座していた。

 空中から8つ金色の槍の魔力弾がフェイトの手から放たれ、カマキリモンスターを襲う。弾が命中し爆煙が舞い上がる。すぐに煙が一気に消え去る。カマキリモンスターが右腕の鎌で振り払ったようだ。

 その体は傷の一つもつかなかった。鎌の部分に円状の跡がいくつもできていて、鎌で魔力弾を受け止めたみてぇだ。片方の鎌も変化したようで、腕の下からギラリと鋼鉄のような鋭利な刃が生えていた。まるでつぐの持っているデバイスの形のように。……あいつは俺を赦してくれんかなぁ。あいつもあいつで戦ってる理由もあんだしよ。

 何を考えてんだ、つぐはあんな三角顔じゃねえし、開口一番の『バカ』も言わねえ。目の前の奴はカマキリモンスターだ、つぐのことを考えんのは後だ。

カマキリモンスターは身体を左右に揺らしながら、左腕の鞭で地面を抉りながら叩きつけて俺たちを睨んでいた。威嚇のつもりかぁ? すぐに襲うと思っていたが、おつむの方はまだ小さい虫だと思っているみてぇだな。

「俺は右の鎌をフェイトは左の鞭を――フェイト?」

 フェイトはマントの上から脇の辺りを押さえて小さく震えていた。

「あたしが鞭の方をやる。フェイトはあたし達が牽制した後に攻撃しな!」

 アルフさんがカマキリモンスターの左腕の方へ駆け出し、遅れて俺が右腕にへと走る。カマキリモンスターの左の鞭が地面をえぐりつつしなり、アルフさんを払おうとする。アルフさんはそれを飛び越えたが、鎌がアルフさんの跳んだ

位置に鎌を横に掻き払おうと迫る。

「こっちを忘れんなよっ!」

〈Rasanz Schlag〉

 走りながら剣に変形したシュターを一振りし、群青の刃の光線を放つ。光線はガラ空きにな右側に直撃し、低い声の奇声を上げて鎌の動きが止まった。この隙にアルフさんが魔力弾を5発放った。

3発が鞭で叩き落とされたが、残りの2発が胴体に当たり炸裂し、細かい弾が爆煙と共にカマキリモンスターを覆い再び奇声を上げた。

「どんどんいくぜぃ!」

〈Rasanz Schlag〉

 今度はさっき振り下ろした方とは逆に掻き払い群青色の光線を放つ。カマキリモンスターはそれを鎌で防いだ。

〈Körper Stärkung〉身体強化

 鎌に向かって跳び、防御姿勢を採り横向きになった鎌の根元に振り下ろした。身体強化されたとはいえ身体の一部を切れることはなく、カマキリモンスターは俺を振り払おうと力を込めて押し返そうとする。鍔迫り合いの状態だったが奴の方が力が強く

だんだんと押し戻されていく。

〈Photon Lancer〉

 カマキリモンスターが攻撃を受けて、再び低い声の奇声を上げた。当たった攻撃は金色の弾、フェイトの支援射撃だ。フェイトの攻撃でひるんだ隙をついて、フェイトは魔法陣を発動させたと同時にカマキリモンスターの左脇の下に飛行接近し、

鎌状に変形したバルディッシュで切り払う寸前だった。右の鎌は俺が動きを止め左はアルフさんが囮になりつつ魔力弾を撃ち攻撃。そしてさっきの魔法――高速移動の魔法――で一気に接近して仕留める。獲った!

 

 ……フェイトの斬撃は、フュンと空気だけを切った。みんながが攻撃が当たらなかった事に理解できず目を見開いた。俺はハッとさっきまで鍔迫り合いしていたカマキリモンスターがいなくなった事に気づいた。

そしてすぐに、この奇妙な状況が耳をつんざくなる飛翔音が聞こえたことでみんな理解した。カマキリモンスターが翅を広げ飛んでいたのだ。カマキリモンスターは、降下しながら鞭で攻撃を行う。フェイトはとっさにと回避しようとした。

だが、カマキリモンスターはさっきまでしなかった捻りを使って、リーチが長くなりより勢いがついた鞭で空気を切り裂き、フェイトを叩き落とした。

「「フェイト!! 」」

 アルフさんと俺が同時に叫び、先にアルフさんがフェイトを救出しようとした。しかし左の鞭が何度もアルフさんがいる地面を叩きつけ、その衝撃で飛び出た土塊がアルフさんを阻んだ。

 俺は、降って来る土塊を避けながら、叩き落とされたフェイトを介抱し、体を揺さぶった。

「フェイト! しっかりしろ!!」

 だが、休む暇もなくカマキリモンスターが俺たちに向かって押しつぶそうと降下してきた。俺は、フェイトを抱きかかえ転がりながら踏み潰されるのは回避した。しかし、バリアジャケットたぁゆうが、形は鎧だから転がると肉が挟まって痛ってなぁ、ちくしょう。

続いて、カマキリモンスターは再び鎌の腕の部分で俺達めがけて振りおろした。直撃は避けれれた。だが、地面に叩きつけた衝撃波で俺達は吹飛び、大小の土の塊がマシンガンで撃たれているかのように俺達に当たる。

 土の塊に当たり続けたため吹き飛ばされた勢いを弱める事が出来ず地面に叩きつけられ、フェイトを離さないように地面を何度も転がり続けた。

 地面の摩擦と草で体の回転が止まる。立ち上がるとフェイトを受け止めた衝撃が鳩尾に入ったようで腹の物が喉仏の辺りまで戻っていた。首を上に向けて喉を鳴らしそれを再び胃に納め一呼吸を置く。

「フェイト大丈夫……か?!」

 ふわりと捲れ上がった黒のマントの下から腕に痣や腫れが浮かんだフェイトの体が見えた。腫れはすでに青くなり、その傷が痛々しく思わず目をつむってしまった。見たくねぇ……でも目を開けなきゃフェイトが無事かわかんねぇよ。

 一番辛れぇのは、フェイトだ、友人の俺が安心させなきゃどうしようもねぇじゃねぇかよ!!

 心を奮い立たせて、本能的に傷を見まいとして閉じようする瞼に力を込めてこじ開け、フェイトを再び見る。

 フェイトはマントで腕を覆い隠してた。その顔は、悲痛な顔で俺を見ていた。その姿と脳裏に刻まれてしまった腕の痣の痛ましさに頭の熱が沸々と煮え上がり、カマキリモンスターを睨み駆け出した。

「てめぇ!! フェイトを傷つけやがって!!」

〈主、落ち着いてください〉

「うっせいや! 言いてぇことはわかってんだよ!」

 落ち着いて、行動しろっつことだろ! でも、あんな傷をつけられたら冷静のれの字もねいぜ!! シュターの制止を無視し、カマキリモンスターに向けて剣を振る。

〈Rasanz Schlag〉

 群青色の魔力光線が、カマキリモンスターの鎌の刃に当たるが刃こぼれすることもなく、脆くも消え去った。だが、これが狙いでぃ。

「後ろがガラ空きなんだよっ! 」

 アルフさんの踵落としが、カマキリモンスターの後頭部を直撃して奴は体勢を崩す。魔法陣を出現させ、剣に魔力を集中させる。ここであいつが体勢を立て直させる前にけりをつけてやんねえと! 

〈主、あまり強力な魔法は、主では……〉

「わぁってら、ちょいと足止めするだけだっての」

 剣を地面に突き指した。放出した魔力が何本も地面を走り、カマキリモンスターの体の下にまで走った。直後、放出した魔力が通った後がまるで縁日のかたぬきのように奴が立っていた地面が割れ、割れた地面に巨大な体が引きずり込まれた。

 態勢が崩れたままのカマキリモンスターは、地面から脱出することができず長い胴体が割れた地面に落ち込み、手足を空に向けてバタバタするしかなかった。その形は、手足が葉っぱ、地面に埋まった体は実とあの南国の果物を連想させる。

「へへ、どうでぃ。まるでパイナップル見てえじゃねか」

 身動きの取れないカマキリモンスターが首を上げると、あごの下にきらりと光るもの――ジュエルシードだ! 

 俺よりも先に、アルフさんが気付き、カマキリモンスターのあごに向かって飛びひざ蹴りを喰らわす。動けないカマキリモンスターは、直撃を食らい、あごを貫かれた。

 カマキリモンスターから、一筋の光が見えると奴は、光に包まれてだんだんと小さくなっていった。どうやらジュエルシードが取れて元のカマキリに戻ったようだな。

 アルフさんが、ジュエルシードを手にし、すぐにフェイトのもとへ駆け寄った。俺も、続いてフェイトの方に再び駆けつけた。

「フェイト、大丈夫かい? 」

「う、うん大丈夫だよ。アルフ、とし。私は……」

 言葉とは裏腹に、その顔は疲れと痛みに耐えている表情をしていた

「とにかく、家に戻ろうさ。」

 アルフさんがフェイトを抱えて飛び立とうとした。俺は、フェイトに小声で囁く。

「さっきは、ごめんなフェイト。今度はどんなことがあってもフェイトを守るからよ」

 

 

 
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