「空軍は……陸軍もやられたよ」
「え?」
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マイ「艦これ」(みほちん)
:第4話(改2.8)<逃避行>
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「ぷへぇっ」
思わず吐いた。泥水の味……くぼ地には水が流れていた。
そういや弓ヶ浜にゃ、こンな小川が多かった。
兵学校での訓練を思い出す……まさか自分がこの年で少女を抱えて水路に飛び込むとは。
川の外では激しい閃光と地響きが続く。時折、砕けた土や小石が頭上からバラバラと降り注ぐ。
私は少女を護りつつ低姿勢で振動に耐え続けた。その間も女の子は、ずっと大人しい……が何かブツブツ呟いてる。
(少し変わった子なのだろうか?)
俗にいう『中2病』……この年頃は、そんなモノか?
ふと振動が収まり敵機が遠ざかる気配がした。
「やれやれ」
少し顔を上げた私は改めて少女を見た。
「大丈夫か?」
私は周りの様子を見つつ彼女から離れた。
「……」
少女は呟くのを止めた。そして大きい瞳で、こちらをじっと見上げている。
お互い何も言わない。場は一瞬の静寂に包まれた。
遠くからは断続的に爆発音が続いている。
共に小川に飛び込んだから彼女も制服の上から下まで、ずぶ濡れだ。
制服もボロボロ。どこかで擦ったか。
改めて確認したが、お互いに無事らしい。
だが、この少女は敵の攻撃を恐れていない。つまり感情が動いていない。
私も海軍だから各地で住民を避難させた経験がある。普通の市民は大概、敵の攻撃を受けると動揺して逃げ惑う。結果、犠牲になった人も無数に見た。
(肝が据わっているのは元軍人くらいだ。まして女学生が落ち着いているなんて初めてだ)
妙に感心した。
「ブツブツ」
再び少女は呟き始めた。
やばい、目の焦点が合ってない。
(電波系の危ない子か?)
さっきの年輩の男性を思い出した。もし、この子もその類(たぐい)なら恐怖という概念は無いだろう。
私は息を殺して辺りの様子を伺う。少女の呟きと地響きは続いている。
今は夏。ジッとしてると徐々に汗ばんでくる。
「ここから早く移動したいな」
何気なく呟いた。
それでも暑い日で良かった……これが冬場ならキツイ。そもそも冬に水を被ったら動けないだろう。
「冬、水?」
不意に舞鶴の海戦を思い出す……。
辺りは焦げたような臭いが充満している。これは陸戦の臭い……海の戦いとは違う。
敵の兵器は通常火薬ではない。硝煙というより何かが純粋に焦げたような鼻にツンと来る臭いだ。
それでハッとして我に反った。危ない、ここは前線だ。
敵機は上空を旋回し続けてる。発動機の音が聞こえず黒光りする機体には何ともいえない不気味さと威圧感がある。
おまけに我々の使う航空機と違って自由自在に動き回る。
「深海棲艦め」
私は睨み付けた。
連中には何度も辛酸を舐めた。あのチョコマ動く戦闘機は侮蔑の意味を込めて前線では『ゴキブリ』と呼んだりもする。
歴史的には敵の出現と時を同じくして『艦娘』が出現した。彼女たちが私たち人類の味方になってから人類は優勢に傾き始めている。それほど艦娘の存在は大きかった。
だが地上戦となれば、やはり連中が強い。地上兵器に対しては圧倒的に優位に立つ。現に陸軍も空軍も歯が立たない。
だが意外にも連中は地上を逃げる人間は十分に索敵し切れない。
「何しろ普段相手をしているのは艦娘だからな」
連中の機体は対艦攻撃用の機体だ。そもそもゲリラのような普通の人間……特に地上において、それに特化した電探は持っていないようだ。
(だから地上で視界が悪くなると単純に相手を見つけるのが困難らしい)
そういった諸々の理由からだろうか? 彼らが戦いを挑んでくるのは専ら海上の艦娘や鎮守府に限定されることが多い。
裏を返せば一般住民が生活する地上を彼らが空襲したり銃撃することは、ほぼ無い。それが反(かえ)って陸軍の連中が歯がゆく感じる理由だ。何しろ敵が陸に攻めて来ないから陸軍は開店休業状態なのだ。
挙句、一部で陸軍縮小案も出る始末。これは世界的傾向だ。噂では海外にも艦娘は居るらしいが通信網が寸断されており情報が乏しい。詳細は不明だ。
私は改めて少女を振り返った。
「今のうちに、逃げよう」
「……」
何か呟いていた彼女は口を閉じると小さく頷いた。
手を差し出すと躊躇(ちゅうちょ)無く私の手を取った。
(ほのかに暖かい)
この状況で妙にホッとした。
私たちは小川を出た。身を屈めて茂みに沿って数百メートル先に見える防空壕を目指す。陸軍の対空砲火は、いつの間にか聞こえなくなっていた。恐らくは敵に攻撃されたのだろう。
そういえば美保空軍は迎撃機の一つくらい出さないのか?
(まさか全滅?)
そう思っていたら後ろから少女の声。
「空軍と……陸軍もやられたよ」
「え?」
なぜ、その情報を知ってるのか?
……いや今は問うまい。逃げるが先だ。
軍事施設が叩かれるのは仕方ないが民間人への攻撃は避けたい。軍人の使命だ。
私は不意に彼女に謝るように言った。
「済まないな」
「……」
相変わらず大きな瞳で私の背中を見つめてる気配。
今回、美保鎮守府の提督(指揮官)という辞令を受けた私だが軍人は単独では結局、何もできないのだ。司令といえども、ここでは単なる看板だ。
それに敵の前で一瞬、足が竦(すく)んだことは恥ずべきことた。軍人の名が廃(すた)る。
「実に歯がゆい」
私は敵機に注意しつつ唇を噛み締めた。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府:第一部」の略称です。
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私は女の子に追い付くが意外にその子は敵襲を恐れていなかった。