No.851851

命一家~7話

初音軍さん

みきの能力(?)が発覚。ただ今は癒し効果くらいしかないですが。みきと一緒にいる人は幸せな気持ちになれますね♪

2016-06-06 20:46:58 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:371   閲覧ユーザー数:371

命一家7話

 

【ミューズ】

 

 私のいる場所は地上より堅苦しくて物も少なくていつも仕事に迫られて

居心地がすごく悪い。だから時々人目を盗んで地上に降りて息抜きをしていた。

 

 そこで命が住んでいる町にふらりと寄ってみると楽しそうに遊んでいる一風変わった

子たちがいた。その中には命と萌黄の娘のみきの姿もあった。

 

「あんなに大きくなって。人間の成長は早いねぇ」

 

 他には優しそうな男の子と…、暑くなってきたというのに冬着を纏っている子もいた。

私がジッと見ていると、途中でみきが私に気付いて手を振ってきた。

 

「おねーちゃーん。こっちにおいでよ~」

 

 相変わらず人懐っこい笑顔を浮かべながら私のことを誘ってきた。

ここで無視するわけにはいかない。めんどくさいけれど、みきのために私は笑顔を

作って友達と思われる子たちの元へ歩いていった。

 

「このお姉ちゃんは時々うちに来て遊んでくれてるミューズお姉ちゃんだよ」

「どうも、いつもみきと遊んでくれてありがとね」

 

 私がそう言うと、優しそうな男の子はニコニコしながら私に挨拶してから

みきに話しかけていた。

 

「みきってお姉さん多いね、血繋がってないけど」

「うん。でもみんな大切な家族だよ!」

 

 仲も良いしって続けて言った後に自慢げな顔をしていた。

私はみんなとそれほど仲良しってほどではないけれど、みきがそういうのなら

そういうことにしておこうと思った。

 

 それからしばらくみきの話で盛り上がった。特に冬着の子は目を輝かせながら

みきのことを熱心に語っていたからよほど好きなんだろうなって思い、微笑ましかった。

 

 話し終えて子供たちが帰った後、私とみきがその場に残った。

私は振り返ってみきに話しかける。

 

「じゃあそろそろ私たちも帰りましょう…か…」

「うん、どうしたの。お姉ちゃん」

 

 振り返るとみきの周りに変な空気が漂っているように感じた。

よく見るとその淀んだ空気だと思ったいたものは怨霊だった。

私は慌てて取り払おうとした瞬間。

 

 パァッと一瞬眩しくなるくらいの光を放ち妙な気配を漂わせていた怨霊たちは

まるで浄化されたように消えていなくなっていた。

 

「? どうしたの、ミューズお姉ちゃん」

 

 私の名前を再び口にして首を傾げるみき。どうやら彼女の周りについていたものには

彼女自身気付いていないようだった。

 

 それにしても、この浄化に近い現象は一体なんだったのだろうか。

私自身この国についての魔術的なことは全くの無知だから、このことを家についたら

命に知らせようと思った。ついでにラーメンでも作ってもらおう。

 

 そう思いながらみきと一緒に帰ると気分もより盛り上がるというものである。

 

 

**

 

「え、そんなことが?」

「うん」

 

 ずるるるるう~。

 

 家について命にラーメン作ってもらい、食べながらさっき起こっていたことを

話すとすごく驚きながら再度聞いてきた。

 

 私は頷いてから最後に残ったスープを残さず飲み干してから。

 

「ごちそうさま~」

 

 満足した私は自分のお腹に手を当ててさすりながら詳細を話した。

霊みたいなのがまとわりついていて、すぐに消えていなくなったこと。

 

「一度あの先生に相談してみる?」

 

 あの先生とは命が子供を作る時にお世話になった病院の先生のことだ。

そう私が聞くと命は真剣な面持ちで頷いていた。

 

「まぁ、そんな深刻なのじゃないと思うけど念のためね」

「ありがとう、みゅーずちゃん」

 

「なんのなんの。可愛いみきのためだもん」

 

 私も普段は人と関わりを持ちたくはないんだけど、この家族と接していると

ついつい首を突っ込んでしまいがちになる。

 

 それだけ居心地がいいのだろうか、それとも他の理由でもあるのだろうか。

まぁ、どちらにせよ深く考えず行動してから考えればいい、というのが私の考えだ。

 

 

**

 

【命】

 

 最近特に問題もなく穏やかに日々が過ぎていって大切な家族を見守れてると思った矢先、

みきのことで大変そうなことが見つかった。報告してくれたのはみゅーずちゃん。

 

 いつもマイペースで神出鬼没で、人にあまり関わらないようにしていたあの子が

みきのことを真剣に話すから私は彼女のことを信用していた。

 

 ただ面白がって嘘をつくっていうこともあるかもしれないけれど、彼女に至っては

そんなつまらないことはしないだろうって確信はあったから。

 

 だってそういう性格の子だから。

 

 

**

 

 気になることを言われたから…というだけではなく、ちょうど定期健診的なもので

みきの調子を見てもらうために私はみきを連れてかかりつけの病院へと向かった。

萌黄や瞳魅さんやマナカちゃんはそれぞれ忙しいから暇そうにしていたみゅーずちゃんも

一緒に同行してもらった。

 

「えへへ、今日はママとみゅーずお姉ちゃんと一緒で嬉しいな~」

 

 みきはいつものように綺麗な目を私たちに向けて笑顔を振りまいていた。

特に何の問題もなさそうだけど、病とか他に何かあっても最初は表面に

現れないものだから。ちゃんと見てもらわないとねって、思っていた。

 

「よし、病院まで時間かかるし、何して遊ぶ?」

「じゃーね、しりとりしよっ」

 

「いいね~」

 

 みきと遊んでくれているみゅーずちゃんを見ていると見た目通りの年齢に見える。

多分もっと年上なんだろうなって、直感的なものを感じる。

 

 でもそれはそれ。彼女のことを詳しく知ろうとは思わなかった。

そんなことをしたら二度と会えなくなりそうで怖かったから。

 

「あー、負けた~~」

「わーい、みきの勝ち~」

 

 私も一緒に加わっていたけど、けっこう長期戦になっていて私の番まで回ってきたら

言えなくなってそうで危なかった。負けず嫌いなのかみゅーずちゃんは本当に悔しそうな

顔をしてみきに再戦を挑んでいた。

 

 そんな様子を見ているうちにいつもは長く感じる道のりもいつもより短く感じた。

二人は電車から降りて歩いている最中でもそういう風に遊びながら歩いていると

あっという間に病院に辿り着いていた。

 

 

**

 

 電話で伝えていたから病院の前にはいつもの無口無表情の助手さんが迎えてくれた。

最初に見たときはちょっと怖い人なのかなって思ったけど、話していると結構優しくて

暖かい男性の方だなって思った。

 

 そのせいか、みきも今じゃすっかり懐いていて楽しそうにしていた。

 

「健康面では問題ないみたいだね」

 

 そして、私の前には少年っぽい見た目の車椅子に座った先生が私に問いかけてきた。

 

「それで、他には?」

「あの、電話でも言ったのですが。何かみきに取り憑いていたのを見たと…この子が」

 

「あ、うん。何かこう黒い霊的な何かだね」

「ふーん…」

 

 みゅーずちゃんが簡単な説明をすると先生は紙に色々書き込んでから顎や口元に手で

なぞりながらなにやら考え事をしていた。

 

「大体、子供は親の代と祖父母の代まで血は繋がっているものなんだ。命くん達の

親御さんってどんな感じの人達かわかるかい?」

 

 聞かれて私の中で浮かんだのは萌黄のお母さんの姿。

それと声だけの私の母の存在。それを思い出して先生に話してみた。

 

「ふーん、共通してるのは二人共退魔師だったことかな。遠いといっても血の繋がりは

あるんだね」

 

 メモに視線を向けながら話し続ける先生。

表情はよく見えないけれど声から様子を感じられた。

 

「不思議なこともあるもんだ、同じタイプの血縁同士がこうやってまた一緒になるって。

僕は運命なんて言葉信じないけど、まさにそう呼べる状況が重なって今があるのか」

「先生…?」

 

「何、心配することはない。種類は違うように見えるけどあの子に宿っているものは

退魔の力だ」

「え…?」

 

「専門的なことは僕もわからないけどね。多分そうだと思う」

 

 そう言って先生はみきを呼ぶとみきの手を触り目を閉じて何かを感じ取るような

雰囲気を出していた。

 

「うん、元々の性格もあるけど。この子に触れてると穏やかな気持ちになるというか

マイナスの気持ちが浄化されていくような感覚になる」

「そうですか…。よかったぁ、みきに何かあったら私…」

 

「でも、こういう力は面倒なものも引き寄せるから気をつけていたほうがいいけどね」

 

 そして先生はみきの傍にいたみゅーずちゃんに視線を移した後、軽く笑って

安心したような表情を浮かべる。

 

「まぁ、また何かあったらうちに来るといい。いつでも歓迎するよ、

情報収集にもなるからね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 言い方は時々アレなこともあるけど、先生も助手さんもみきのことちゃんと考えて

くれていて私は安心して診てもらうことができる。私もみきも普通じゃないから

普通の病院にいくことができないというのもあるけど。

 

 その数少ない所が良い人たちが居てくれてありがたかった。

 

「そうか、私達の両親の血が…」

「どうしたの、ママ?」

 

 帰りの途中、駅の中でベンチに座って電車待ちをしている間、

隣を見ると疲れたのか私に寄りかかって寝ていたみき。

寝顔が可愛らしくて愛しくなって、私はつい手を伸ばしてそっとみきを抱きしめた。

 

 柔らかくて暖かくてほんのり甘くていい匂いがして何か…すごい落ち着く。

 

 まるで天に昇ってしまうくらいの心地良さに意識が遠くなっていくとみゅーずちゃんの

声が聞こえて我に返った。

 

「大丈夫?ちょっと危うかったんだけど」

「き、気持ちよすぎました」

 

 みゅーずちゃんに声をかけられた後、すぐに電車が来て私はみきを抱っこしながら

電車に乗った。

 

 揺られながら私はみきを見ながらふと思った。

人と人以外のものも引き寄せてしまう体質に少し不安も覚えるけれど、

それ以上に母の力と似たようなものを持っている娘を見て嬉しく思っていた。

 

 私は母を身近にいた時がなかったから…。みきから見て私はちゃんと母親

できているのだろうか。

 

 少しだけ自信なく思うも寝ている娘の髪を触り撫でながら愛しい気持ちに満たされて。

気がついたら降りる駅まで着いていた。

 

 

**

 

「へー、そんなことあったんだ~」

 

 仕事から帰ってきた萌黄に相談すると驚きながらもどこか嬉しそうにしていた。

萌黄はまだお母さんと一緒にいた頃の記憶があるから思い出しているのだろう。

羨ましいとかそういうのはあまりないけど、少し寂しそうにしていた私を見た萌黄は。

 

「今日は3人で一緒に寝る?」

「え?」

 

 ここのとこみきと一緒に寝ていて萌黄とは別々だったから、その申し出はとても

嬉しかった。

 

「嫌?」

「ううん、すごく嬉しいです」

「え、今日萌黄ママも一緒なの?やった~」

 

 タイミングよくみきが部屋の中へ入ってきて嬉しそうに駆け寄ってくる。

少し前まで夜中に怖い夢を見るのか、ぐずることがあったから別にしていたけど

最近は全くなくなっていたし。

 

「というか、これから毎日そうしよう。わたしもそうしたい」

「はい」

 

 そして私の目をジッと見た萌黄は素早く私の唇に自分のを重ねてキスをしてきた。

心が温かくなる萌黄のキス。

 私の中にあった不安だった気持ちがすぐに払拭されドキドキさせてくれる。

萌黄がいてくれたら私は何でもがんばれる気がした。

 もちろん瞳魅さんやマナカちゃんたちも私の力の原動力になっているけど

やはり萌黄は特別なのだ。

 

「おやすみなさい」

「おやすみ」

「ねむい…」

 

 そうして久しぶりに3人でベッドに潜って幸せな気持ちで眠りに就いた。

そしてその日は何だか暖かくて心地良い夢を見たような気がした。

 

 


 
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