ジオフロントB区画に入ったロイド達が探索の途中で襲ってきた魔獣や暴走した清掃オートマタを排除しながら進んでいくと奥の広い場所に到着した。するとロイド達を挟み込むようにオートマタ達が現れ、さらに巨大なオートマタが現れ、ロイド達は協力して撃破し、巨大なオートマタ達を排除したロイド達が次のフロアに入ると、そこは狭い通路となっており、通路の途中には扉があり、そこから音楽が流れ、その事に気付いたロイド達は警戒しながら扉をそっと開けて、部屋を覗いた。
~ジオフロントB区画~
「さ~てと。今日も荒稼ぎするかね~。」
部屋の中には複数の端末の前にソバカス少年が座っており、端末の操作をしていた。
「まずはラインフォルト社の新型鉄道車両のスペック………それからヴェルヌ社の高級スポーツ車のスペック………へえ、ZCFでは新しい型の定期飛行船を開発してんのか………オーバルギアの開発といいあそこも相当飛ばしてるよなぁ。……後は”Ms.L”の情報だな……クソッ、相変わらず”Ms.L”に関する情報はプロテクトとカウンターウイルスがえげつなすぎるぜ……!ったく、このヨナ様でも突破できないプロテクトと排除に苦労するカウンターウイルスを仕掛けるなんて、どんな化物プログラマーを雇っているんだよ、”Ms.L”は!?」
(あれって……)
(どうやら”銀(イン)”ではないみたいだけど……)
(なんだぁ、あのガキは?)
(うふふ、性懲りもせずに何度も挑んでくる”お子様”とこんな形で顔を合わす事になるとはね。)
(……やっぱり……)
端末を操作しているソバカスの少年を見ていたロイド達は戸惑っている中レンは小悪魔な笑みを浮かべ、ティオは呆れた表情で溜息を吐いた。
「しっかし、”銀”の旦那も銀耀石(アルジェム)の結晶とは気前がいいよな。このサイズだと、1万ミラくらいにはなるんじゃないかね~。へへっ、明日あたりに”ナインヴァリ”で換金するかね。ギヨームのオッサンの所で新型のパーツも買っておきたいし。ハハ、それにしても旦那も無駄なことするよな~。あんなメールを送ったところでここまで辿り着けるワケないじゃん。このヨナ様の足取りを追えるヤツなんてゼムリア大陸捜してもいないっつーの!」
「―――それはどうかな?」
ソバカス少年が笑いながら豪語していたその時、ロイドの声が聞こえ、部屋に入ったロイド達はソバカス少年に近づき
「なっ……!?」
ロイド達の登場に少年は驚いた。
「どうやら君が………”ハッカー”みたいだな。」
「おいおい………まだ本当にガキじゃねえか。」
「な、なんだアンタら…………!………ま、まさか”銀”の旦那が言ってた『特務支援課』かよ……!?」
ロイド達に見つめられた少年は戸惑った後、ある事に気付いて驚きの表情で見つめた。
「ああ、その通りだ。」
「どうやら”銀”とは本当に面識があるみたいね……」
「い、いや、あり得るもんか!この天才ヨナ様の足跡を追ってここまで辿り着けるなんて……」
ロイド達を見つめて少年が混乱していたその時
「……相変わらずですね。ヨナ・セイクリッド。」
ティオが呆れた様子で少年――ヨナに声をかけた。
「ティオ・プラトー!?ど、どうしてここに……!?」
「それはこちらの台詞です。財団を出奔したあなたがどうしてこんなところに……?」
驚きに表情で自分を見つめるヨナをティオはジト目で見つめて尋ねた。
「ティオ、知り合いなのか?」
「エプスタイン財団の同じ研究所にいた事があります。もっとも専門が違ったのでそれほど親交はありませんでしたが。」
「くそっ、そうか……アンタならあのモードを使えばボクの痕跡を追えるハズだよな……ああもう、わかってたらもっと念入りに仕掛けたのにっ!」
「詰が甘いですね、ヨナ。そんな事だから、悪戯をして財団に大損害を与えるんです。」
「う、うっせーな。」
悔しそうにしているヨナをティオはジト目で見つめながら指摘した。
「なんだぁ、その大損害ってのは?」
「彼は幼少から、財団の研究所でシステムエンジニアとしての英才教育を受けていたのですが………悪戯がひどく、ある時、研究成果の一つを台無しにして大損害を出してしまったんです。そして、それを怒られるのが嫌で出奔してしまったらしく………」
「な、なんだそりゃ……」
「ふう………どんな理由かと思えば。」
「やれやれ……見たまんまのガキってことか。」
「要するに自分の才能に有頂天になって、怒られるのが怖くて逃げたギルバートお兄さんと同じ典型的なヘタレエリートね♪」
ティオの話を聞いたロイド達がそれぞれ呆れている中、レンはからかいの表情でヨナを見つめた。
「ク、クソ……言いたい放題言いやがって……ティオ・プラトー!財団に告げ口したりすんなよ!?したらアンタの恥ずかしい秘密を導力ネットにばらまいてやるからな!」
ロイド達の会話を聞いて悔しそうな表情をしたヨナはティオを睨んで警告したが
「どうぞご勝手に。別に、知られて恥ずかしい秘密なんてありませんし………あったとしても、あなたに掴まれるような隙は見せませんし。ネットにばらまかれたとしてもすぐに対処できるでしょうから。」
「く、くう~!」
余裕の笑みを浮かべて呟いたティオの言葉を聞き、悔しそうに唸った。
「ふふっ……」
「はは、ティオすけの方が完全に役者が上みたいだな。」
「それで……ヨナと言ったな?君はどうしてここにいる?一体、何をしているんだ?」
「っせえな、アンタにそんなことを話す義理は―――」
ロイドに尋ねられたヨナは舌打ちをした後つまらなさそうな表情で答えを拒否しかけたが
「答えなさい、ヨナ。この場所にたどり着かれた時点でゲームはあなたの負けです。」
「ぐっ……わかったよ。ボクはな、今このクロスベルで”情報屋”をやってるんだ。」
ティオに睨まれて唸った後答えた。
「情報屋……?」
「おいおい……ガキには似合わねぇ言葉だな。」
「ハッ、今時の情報屋は年齢(トシ)なんか関係ないつーの。このクロスベルにはとにかくいろんな情報が集まって来る。帝国、共和国、リベール、レミフェリア、レマンからアルテリアまで……それに加えて、色んな会社や国際企業の支社なんかも多いしな。そういった所の情報が導力ネットを通じて流れるんだよ。まだセキュリティ意識も低いから美味しい情報を喰い放題ってわけさ。」
「そ、それって……」
「どう考えても違法じゃないのか?」
ヨナの説明を聞いたエリィとロイドは表情を厳しくした。
「いえ、まだ試行段階なので取り締まる法律はありませんね。いずれ法制化は時間の問題かと思いますが……」
「ま、このクロスベルはそこらへんも甘そうだしね~。財団のラボも飽き飽きしてたらからここで”情報屋”を開いたってわけ。へへ、お得意様もかなりいるし、ガッポリ儲けさせてもらってるぜ。」
「やれやれ……世の中舐めてやがんな。」
「……まあ、その内とんでもないしっぺ返しを受ける事になるでしょうね。」
ヨナの話を聞いたランディとレンは呆れて溜息を吐いた。
「しかし、わたしがクロスベル警察に出向してたのは知らなかったみたいですし……少々、情報屋として甘いのでは?」
「うぐっ……仕方ないだろ!ボクだってクロスベルの事を全部は把握してねーんだし!”仔猫(キティ)”の相手だってあるから色々と忙しいんだよ!」
そして口元に笑みを浮かべたティオに指摘されたヨナは唸った後説明した。
「”仔猫(キティ)”……?」
「こ、こっちのことだっつーの。……って、まさか……アンタが”仔猫(キティ)”じゃないよな?いつ、クロスベルに来たんだよ?」
「質問の意味がわかりませんが………わたしがクロスベルに来たのは2ヵ月ほど前のことですね。」
「だよな……ハッキングのクセも違うし。」
「?」
「話はよくわからないが……そろそろ答えてもらおう。”銀(イン)”とはどういう関係だ?」
「!………………………」
ロイドに尋ねられたヨナは驚いた後、黙ってロイドを見つめ
「あのメールを送ったのが君なのは確かなんだろう?なぜ、あんなものを送った?」
「フン、まあいいだろう。……ほらよ、受け取りな。」
椅子から立ち上がってロイド達に近づき、ロイドに銀色のカードを渡した。そしてロイドはカードに書かれてある文を読んだ。
今こそ門は開かれた。いざ”星の塔”に挑み、我が望みを受け取るがよい。
「これは……!」
「”銀”からの伝言……!?」
「”銀”の旦那からの依頼でね。アンタらにメールを送ってここに辿り着いたらそのカードを渡せって言われていたんだ。……まさか、本当に辿り着くとは思わなかったけど。」
カードの文を読んで驚いているロイド達にヨナは説明した。
「フン、なるほどな。そんじゃお前、”銀”ってのに何度も会ったことがあんのか?」
「ああ、お得意様の一人だぜ。たまにここに直接来ては色々情報を買ってくれるんだ。ま、こんな変な依頼を引き受けたのは初めてだけどな。」
「ここに”銀”が……」
「どういう人物なんですか?」
「いや、いつも黒衣をまとって仮面を着けてるから知らねーし。何でも、カルバードの東方人街の伝説の殺し屋なんだろ?カッケーよな、クールだ!」
「クールって……」
「やれやれ……恐いもの知らずの小僧だぜ。」
「というか”情報屋”の癖に、下手したらそのクールな殺し屋に自分が消されるかもしれない可能性に気づいていないなんて、おめでたい子供よねぇ。」
興奮した様子で銀の事を語るヨナにロイドとランディ、レンは呆れていた。
「でも、”銀”が私達を誘っているのは確かみたいね。何か話したいことがあるような文面だけど……」
「ああ、そうみたいだぜ?何の用事か知らないけどアンタたちを試したいんだとさ。」
「くっ……」
「へっ、ずいぶんとふざけた犯罪者じゃねえか。」
「うふふ、レンを試そうとするなんて伝説の暗殺者だけあって肝も座っているわね。」
ヨナの話を聞いたロイドは唸り、ランディとレンは口元に笑みを浮かべた。
「しかし、この”星の塔”というのは何のことなんでしょうか………?」
「”星の塔”………どこかで聞いたことがあるような。」
「もしかして………クロスベルの郊外にある”星見の塔”のことかしら。」
ティオの疑問を聞いたロイドが考え込んでいる中、心当たりがあるエリィが答えた。
「あ……ウルスラ間道の途中にあるあの中世の塔のことか。」
「おいおい、あんな所まで俺らを呼び出そうってのか?」
「でも、他に手掛かりはないわ。ここは行ってみるしかないんじゃないかしら……?」
「―――ああ、俺も賛成だ。準備をしたらすぐにでも南口から出るとして……」
エリィの提案に頷いたロイドは仲間達と共にヨナに視線を向け
「……問題はこの小僧をどうするかってことだな。」
目を細めたランディが呟いた。
「な、なんだよ……もうボクに用はないだろ?」
「あのな……このジオフロントはクロスベル市の施設だ。どう考えても不法占拠だろ?」
自分達に見つめられて戸惑っているヨナにロイドは真剣な表情で指摘した。
「ふ、ふん………使われていない場所を有効活用して何が悪いってんだ。それに、ジオフロントを勝手に利用しちゃいけませんって法律は無いはずだぜ!?」
「そういうのを屁理屈って言うんだ。」
「それに、こんな場所で暮らしていたら危ないでしょう?魔獣だって徘徊しているし、食生活にも問題がありそうだし……」
「……ですね。宅配ピザの箱ばっかりですし。というか、まさかここまで運んでもらっているんですか?」
ロイドと共に注意したエリィの言葉を聞いた後、ある事に気付いたティオは仲間達と共に机に置かれてあるピザが入った箱や積み重なったビザの箱を見て疑問に思った事を口にした。
「んなわけねーじゃん。ゲートを出たあたりまでいつも届けてもらってるんだ。それに、このすぐ先に出口近くに通じている排気ダクトがあるからな。そっちを使えば安全に出れるってわけさ♪」
「ダメだコイツ……引きこもる気満々じゃねえか。」
そしてヨナの説明を聞いたランディは呆れて溜息を吐いた。
「はあ、こっちも忙しいからこの場は見逃すけど……あんまり悪さしたり、やり過ぎたりするんじゃないぞ?恨みを買って危ない目にあったりするかもしれないんだし。」
「そうね……それが心配だわ。」
「ハッ、そんなヘマするかよ。ま、アンタらも欲しい情報があったら来なよ。ただし、ボクは高いぜ?安月給の新米警察官なんかに払えるとは思えないけどな~。」
「こいつ………」
得意げに語るヨナをロイドは睨み
「まあまあ、ロイドさん。いざとなれば、わたしがここにハッキングして必要な情報を貰えば済みますし。」
「うふふ、その時はレンも手伝うわ♪後ついでに世の中の厳しさや”上には上がいる事”を教える為にそのソバカス君じゃ絶対解除できないようなウイルスをハッキングで送ってあげるわ♪」
一方ティオはロイドを宥めながら話し、ティオに続くようにレンは小悪魔な笑みを浮かべて答え
「おい!?」
二人の話を聞いたヨナは声を上げてティオとレンを睨んだ。
その後支援要請などを終えて、準備を終えたロイド達はウルスラ間道にある森の奥に建っている”星見の塔”に向かった――――
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第12話