No.849504

Triangle Goddess! 第12話「孤高の戦い」

Nobuさん

怒涛(?)の展開になっていきます。

2016-05-25 08:28:10 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:811   閲覧ユーザー数:809

 エルダーは、一人魔物の軍勢と戦っていました。

「ジーン、ゲルダ、ヴィアには見捨てられてしまったが……俺は、負けるわけにはいかない!」

 襲い掛かってくる魔物には、様々な種類がいました。

 鎌のような顎を持つ蜘蛛の魔物、シザースパイダーや、翼を持つ石像型の魔物、ガーゴイルなど……。

 中には、魔界からやって来た「悪魔」という存在も混ざっていました。

「悪魔もいるか! だが、俺は全て斬り伏せる!」

 他の兵士達も戦い、一般人達は全員避難しているとはいえ、戦わなければ町は破壊されてしまいます。

 そのため、エルダーは只管に魔物を剣で切り裂いていました。

「パルスブレイド!」

 剣から放たれた衝撃波が、魔物を一網打尽にしました。

 しかし、魔物の数は減る事はありません。

 むしろ、どんどん増えていくばかりです。

「……駄目だ、追い付かない! せめて、ジーン達がいれば……」

 しかし、三女神はエルダーの無謀な行動を見て、彼を見捨ててしまいました。

 そのため、今更言っても加勢はしないだろう、とエルダーは思い、

 三女神のところには行きませんでした。

 

 しかし、この選択が、後のエルダーの運命を大きく揺るがす事になるとは、

 まだ、気付いていませんでした……。

 

「どうやら、ここまで減らせたようだな」

 エルダーの活躍によって、魔物の数は減っていきました。

 兵士達の力もあったかもしれませんが、魔物は数時間前の5分の1に減少していました。

 残っている魔物は、エルダーにとっては雑魚でしかありませんでした。

「後は雑魚のみか……。さあ、来い!」

 エルダーが剣を掲げた、その時です。

 

「オォーーーーッホッホッホッホッホッホッホォーーーー!!」

「!?」

 突然、空から女性の高笑いが聞こえてきました。

「だ、誰だ!!」

 女性はふわりと、地上に降り立ちました。

 その女性は、長く美しい黒髪と、真紅の瞳を持っており、

 身体には非常に面積が少ない服を纏っていました。

 それだけならただの妖艶な女性に見えますが、その背にある蝙蝠のような翼と、

 頭に生えた鋭利な角から、女性が人間ではない事は明らかでした。

「お前は……淫魔か!」

「そうよぉ~私はサキュバス、誘惑の淫魔よ。あなた、いい男ねぇ。誘惑したくなっちゃったわ」

「くっ! させん!」

 エルダーはぎりっと歯を食いしばり、剣を持つ手も強く握りしめました。

「お前を倒し、この町を守ってみせる!」

「できるものならやってみなさ~い!」

 いつまでもふざけた態度を取るサキュバスに、流石のエルダーも苛々してきたようです。

 思わず斬りかかりそうになりましたが、理性がそれを抑えました。

「さぁ! いっくわよぉ~! ド・ゲイト・デ・テラ・ド・テネブ!」

 サキュバスが呪文を詠唱すると、闇の槍が飛んできました。

 エルダーはそれを剣で切り裂きました。

「せいやぁっ!」

 エルダーの剣技がサキュバスを攻撃し続けます。

 サキュバスは物理攻撃にはあまり強くないため、

 人間であるエルダーの攻撃でもそこそこのダメージを与えられます。

「うふふっ、私の必殺魔法、い・く・わ・よ! ド・ポプル・ド・ニイス・デ・ハンズ!」

 そう言うと、サキュバスは呪文を詠唱し、エルダーに向かってウィンクをしました。

 淫魔の十八番の魅了魔法、テンプテーションです。

「く……っ」

 それを受けたエルダーは眩暈を患いましたが、エルダーは振り払いました。

「あらぁ~、あなた意外に強情なのね。しょうがない……ならば、こうしてやるわ!」

 サキュバスの身体から、闇の魔力が吹き荒れました。

 それは、彼女が本気を出した証なのです。

 

「本気を出してくるか! ならば、こちらも本気を出す!」

 エルダーは剣を構え直しました。

「あっはははははは、楽しいわねぇ。じゃあ、再開するわよー!」

 そう言い、サキュバスは闇の魔力をエルダーに放ちました。

 エルダーはそれを避け、剣で切り裂きました。

 

 しかし、サキュバスは魔法に特化しているとはいえ、れっきとした悪魔です。

 その身体能力は人間を上回っていました。

「ぐっ……」

「あらあら、反撃しないの?」

「反撃はするぞ……だが……!」

 状況は徐々に、サキュバス側に傾いていきました。

 エルダーは何とかサキュバスを倒すために、剣を持って彼女に突っ込んでいきました。

「いくぞ! インフィニット!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そしてエルダーがサキュバスの懐に潜り込み、疾風の刃でサキュバスを切り裂きました。

 まさに、肉を切らせて骨を断つ行為です。

 サキュバスは大ダメージを受けてしまいました。

「……わ、私にだって、淫魔としての誇りはあるんだからぁ!」

 そう言うと、サキュバスは右手に闇の魔力を溜めました。

「デ・ロタ・マ・ギ・ド・テネブ!!」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そして、全力で放った闇の魔力が、エルダーを貫きました。

 

「ふふふ……楽しませてもらった、わ、よぉ……」

 そう言うと、サキュバスは塵となって消えました。

「すまない……ジーン……ゲルダ……ヴィア……」

 強力な闇魔法を受けたエルダーの身体から、大量の血が流れ出しました。

 このままでは、エルダーは命を落としてしまいます。

 

「……人間が……神を守るなんて……逆、だよな……。でも……彼女達が無事なら……俺……は……」

 エルダーは三女神を守れた事への安堵を胸に、息を引き取ろうとしていました。

 

 その時です。

 天から、一人の女性が降臨しました。

 彼女は煌めく黄金の鎧を身に纏い、長く美しい金髪をなびかせ、聖なる槍を掲げていました。

「我が名は戦乙女(ヴァルキリー)。オーディン様の命で、魂を選定するために降臨した」

 

「い、戦乙女だ……」

「戦乙女が、降臨された……!」

 人間もモンスターも、その人間離れした美しさに、思わずその動きを止めてしまいました。

 そう、この女性こそ、アールガルドの主神オーディンに仕える女神、ヴァルキリーです。

 アールガルドでいつか来る最終戦争「ラグナロク」に備え、

 戦死者の魂を「アインヘリアル」として選定します。

 また、不死者や悪魔など、負の陣営に属する魔物達を打ち倒す役目もあります。

 

 ヴァルキリーは呼吸を止めようとしているエルダーの前に現れ、問いました。

「お前はよく戦い抜いた。悪魔と戦い、これに勝利した。

 だが、お前も悪魔に攻撃され、死に瀕している。問おう……死してもなお、生きたいか?」

「……頼、む……」

 エルダーは、息も絶え絶えに小さな声を発しました。

 三女神に謝るために……ヴァルキリーの問いを、承諾しました。

 

「……承諾した。お前に新たな生を与えよう」

 ヴァルキリーがエルダーの身体から魂を抜き取ると、

 彼女は光の翼を生やし、エルダーの魂と共に神界に去っていきました。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択