No.847736 真・恋影無想月神さん 2016-05-15 00:34:37 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1943 閲覧ユーザー数:1658 |
7話 洗脳・悲しき真実
「会いたかった、会いたかったよ。一刀。」
話しかけてきてすぐに地和はそう言って抱きついて来た。俺は振り払おうとも考えた。まだ地和の事情を知らなかったから。でもできなかった。体が自然と地和を受け入れた。
だが、卒業したとはいえかつてのトップアイドル〝皆の妹・地和ちゃん〟が道の真ん中で男に抱きついて泣いていると言う絵面は非常に悪いものだった。俺は地和に場所を変えることを提案しようとした、その時だった。
「地和、いた。」
思わず剣を構えていた。異様な雰囲気を感じ取って体が勝手に反応した。
「あ、恋さん。ごめん。一刀、大丈夫だよ。恋さんは何もしないから。」
「?、地和の友達?」
「うん。大切な人。」
「なら、いい。恋何もしない。それより地和、ちゃんと連れて帰らないと白蓮と愛紗から怒られる。」
なんだ?さっきの異様な雰囲気はこの子から発せられたのか?真名みたいだから誰の事か分からないけど何者なんだこの子……
「あ、うん。そうだね。一刀、ごめん。一緒に着いてきて?」
「え?あ、あぁ。わかった。」
そう言われて2人についていく。着いたのは蜀の屋敷の前だった。
「あれ?ここって蜀の屋敷じゃ?」
「うん。私、今は蜀に所属してるから。」
「え、なんで…」
「とりあえず、入ろ?そこら辺はちゃんと説明するから。」
蜀の屋敷へと入った。その後、地和と護衛の女の子は報告があるらしく先に部屋で待っててと部屋の位置だけ知らせて去っていった。
言われた通りに進むと壁に屋敷全体の見取り図のような物が貼ってあった。これを見る限りでは蜀と呉の屋敷は繋がっているようだ。
二階建てで下の階が将の部屋と食堂、上の階に王の部屋や執務室、資料室などになっているようだ。
てかこれ、こんなとこに堂々と書いていて大丈夫なもんなのか?
とりあえず言われた通りに進んで部屋の前まで着いた。部屋の扉には竹簡の表札のような物が付いており〝公孫賛と地和〟と書かれていた。
公孫賛…?確か元幽州の太守の人だっけ?そういえば地和が辞める少し前まで公孫賛さんがマネージメントしてたんだっけ。その時に仲良くなったのか。
「おや?女子の部屋の前で決断できぬ男が一人。どうしましたかな?」
「あ、星。あれ?」
「あ、とはなんですか。あ、とは。そもそもここは蜀の屋敷。私はこれでも五虎大将軍の一角ですぞ?ここにいてもなんの不思議もあるまい。」
「あぁ、そっかそっか。ごめん。ごめん。」
「なぜか腹が立つのだが……」
「はは、ごめん。」
「まぁ、それはもういいが、改めて聞くがここで何をしておるのだ?」
「あぁ、うん。例の試験の後に地和から呼ばれてさ。」
「む?地和は今は違えど魏の関係者。正体を話したのか?」
「いや、言ってない。術が解けてるわけでもないのに会った瞬間に〝真名〟で呼ばれた。」
「どういう事だ?」
『 私が説明しましょうか? 』ニュイーン
「何奴!?」
「于吉。突然出てくるのは辞めてくれ。俺は慣れてきたけど他の人が見たら99%ビックリするから。星、コイツは大丈夫だよ。」
「優殿の関係者か?」
「まぁ、そうだね。」
そう言うと星はいつの間にか出していた短刀の様なものを仕舞ってくれた。星もこうやって気軽に話してるけど趙雲だからなぁ。
「場所を変えましょうか。」 パン
視界が歪む、また異空間か。この感覚苦手なんだよなぁ。
「ここは?」
「常識の範囲外だから理解は難しいだろうけど誰も来ない誰にも干渉されない不思議な場所だよ。」
「妖術の類か。」
「まぁ、そうだね。さてと、于吉~?どこ行った?」
「ここです。」 ニュイーン
「だから、その出方は気持ち悪いから止めろってば。」
「わかりました……説明に移ります。」 ショボーン
しょげてる……のか?
「優殿、あれは本当に信頼できるのか?」 コソコソ
「大丈夫だって。」
「いいですよ……しょうがないんです。あなた方、外史の住民は潜在的に私や左慈が嫌いでしょうから……」
「?、どういう事はわからぬが疑ってすまなかった。説明の方を宜しく頼む。」
「えぇ。順に話をして行きましょう。あなたは理解が出来ない箇所が多々あるかも知れませんがそれは後から北郷に聞いてください。」
「承知した。」
「まず、今この外史には私達以外に管理者が4人潜り込んでいます。そのうちの1人が魏の曹紀だという事がわかりました。」
「やっぱりそうか。」
「曹紀は魏の面々を仙術で洗脳している可能性が極めて高いですね。仙術を用いてますから作用は強めでしょう。そして次に張宝に正体がバレたことについてですが……ん、来ましたね。」
「すまないな。説明に手間取った。」
華佗ともう1人の女性は誰だ?どこかで見た覚えがあるような、ないような
「華佗殿ではないか。それに冥琳殿も。なぜ2人が?」
「華佗も同じ関係者なんだけど、そちらの人は?」
「すまない。名乗ろう。性は〝周〟字は〝瑜〟名は〝公瑾〟。貴殿が北郷殿か?」
「はい。天での名前は性が〝北郷〟名が〝一刀〟こちらでの名前は性が〝柑〟字が〝奈〟名は〝月〟です」
「全て事情は先程華佗に聞いた。まず礼を言いたい。貴殿だったのだな、私の病気の事を華佗に知らせてくれたのは。それと祭殿の件も。本当に感謝している。」
俺は3年前この世界から消える直前に華佗に3つのことを頼んだ、一つは苦肉の策によって生死をさまようであろう黄蓋さんの治療。そして周瑜さんの病気への対策だった。あの時は魏が勝つと信じていたし黄蓋さんと周瑜さんという2人を失うのは惜しいと思い頼み込んだけど……
そうだ。今、考えればなぜ華佗は言う事を聞いてくれたんだろ?正史に反する事なのに。
「いえ、当時、俺はズルをしました。それでも未来(さき)の世界にとって黄蓋さんや周瑜さんは必要だと思ってましたから。それに、俺の頼みを聞いてくれた華佗のおかげですから。」
「それでもだ。私は愛しい者と別れずに済んだ。私の真名は〝冥琳〟だ。是非真名で呼んでくれ。」
「ありがとうございます。俺の真名は優です。これからお世話になると思います。宜しくお願いします。冥琳さん。」
「さて、お互いに真名交換まで終わった所で話の続きに戻りましょう。あなたがたにはこれから聞く事は一切理解出来ないでしょう。なので、」 パンッ
于吉が手を叩くと真っ白な空間にちゃぶ台とお茶が現れた。
「大体の話が終わるまではお茶でも飲んでいてください。では、始めましょう。」
「あぁ、頼むよ。」
「さて、張宝に正体がバレたことについてです。時間を少し戻しましょう。張宝は黄巾党を結成させる際に〝太平妖術〟と言う術を使用しています。普通の人間ならば使用は不可能ですが、元々、張宝には術師としての才覚があったのでしょう。だが、才覚があるからと言って技術があるわけでは無いですからね。発動はできても停止させることはできなかった。それが出来なかったために起きたのが彼女の最も重い罪である〝黄巾党の乱〟」
「……」
「太平妖術と言うのはとある仙人が作った〝太平妖術の書〟と言う原本を元に使用できるものです。そもそも人が使ってもいいシロモノではない。」
「太平妖術の書……」
「太平妖術については分からないことが多い。ただ、張宝には過去に太平妖術を使用した事でなんらかの〝呪い〟のような物が掛かっているのでしょう。そのお陰で彼女は曹紀の洗脳を受けていないんでしょう。」
「管理者の使う仙術よりも人間(地和)が使った太平妖術の方が強いってことか?」
「いえ、別に張宝の力の方が強かった訳ではありませんよ?こういう言い方はよくありませんがたかが外史の人間が使用した術に我々管理者の術が負けるわけはありません。」
「どういう事だ?」
「この場合は〝不完全でも太平妖術を発動した事実〟がありますから。張宝が発動した太平妖術自体が曹紀の洗脳より弱くても太平妖術その物にある呪いの力が強い。」
「?」
「そもそも、あの時に発動された太平妖術は〝黄巾党の乱〟を起こすきっかけとして使用されました。そこで術としての役目は終わりです。だが強い術にはそれ相応の〝対価〟や〝代償〟が伴います。それは張宝に対する〝呪い〟という形で支払われた。その呪いの力は曹紀の仙術よりも強い。という事です。」
「要はその呪いのお陰で地和は洗脳にかかってないってことか?」
「あぁ、そういう事だ。一刀、これ以上深く考えるな。妖術とか仙術は理屈じゃないからな。」
「あ、あぁ。」
華佗……いたのか。
「皮肉な物です。かつて犯した罪の代償が今では愛する者への気持ちを守る為の盾になっているんですから。」
「ん、でも俺の姿が見えてたのは?」
「それは、あぁ、お2人とも少しあなたがたにも関係のある話をするのでこちらに。」
「ん?」
「張宝が北郷の姿を認識出来ていた理由ですが、大きくわけて2つあります。1つは先程話した呪いの影響でしょう。ですが、それだけではハッキリと認識は出来なかったはずです。北郷、孫策や趙雲は張宝の前であなたの正体を明かすような事を言いましたか?」
「いや、私は言ってないぞ。雪蓮も言っていないはずだ。そんなペラペラと喋るのであれば真名で誓約した意味もないだろう?」
「…………あ、」
「ん?まさか、」
「雪蓮さん、俺と戦っている時に俺の事を御使いクンって言ってた。その時地和は司会で結構近くにいたはずだから……」
「それでしょう。多分張宝は北郷と孫策の戦いを集中して見ていた。その時に孫策が言った一言で天の御使い・北郷一刀が孫策と戦っていると自動的に認識したんでしょう。だから、最初から北郷の事を〝一刀〟と呼んだ。まぁ、そもそも洗脳すら弾く呪いですからこちらの術も時間が経てば認識できたのかもしれませんがそれは問題ではありませんよね?お2人さん。」
「あぁ、真名で誓約したことを破れば死を持って償わなければならないからな。」
「いや、でもそれは……」
「優殿。あなたとて真名に関することでの重要さが分かっておるでしょう?それを堂々と、しかも人が大勢いる所で喋るなど言語道断。」
「いや、でもさ、さすがに打ち首とかはさ……」
「ならば、鞭打ちか。こればかりは親友であっても許せる事ではないからな。」
「2人とも、頼むよ。穏便に済ませてくれ。俺は魏の皆を守る為に魏との関係を絶つといった。魏の皆の件が洗脳だと分かった今でもその気持ちは一切変わらない。でも、嬉しかったんだよ。俺の事を愛してくれている女の子がまだいてくれて。その事実だけでも俺の心の支えになるんだ。確かに遅かれ早かれそうなっていたのかもしれないけどさ、もしかしたら術の認識の前に俺の心が折れてしまっていたかもしれない。だからあれで良かったんだよ。だから頼む。雪蓮さんへの罰は穏便に済ませてくれ。」
「……わかった。星と2人で相談し身体が傷つく様な罰以外での罰を考えよう。私とて雪蓮の身体に傷をつけたくはないからな。本当にすまなかった。そしてありがとう。」
そう言うと冥琳さんは俺に頭を下げた。
「さて。最初の謎も解決した所で北郷はそろそろ戻らないと張宝が戻ってくる頃でしょう。華佗、一緒に行ってください。たまたま会っておしゃべりしてました。作戦です。」
「了解した。行くぞ一刀。」
「あ、あぁ。2人は?」
「この人達は送る場所が違いますし一緒に行けば怪しまれるでしょう?」
それもそうか。
「じゃ、2人ともまた今度(?)」
「あぁ。お前とは近いうちに会うだろう。」
「私は次会うときは偶然か酒盛りの時ですな。」
「あぁ。それじゃ。」
「行ったか。で、まだ話があるのだろう?于吉殿。」
「おや?なぜそう思われるのです」
「あんな奇妙な術が使えるのだ。それぞれ別の場所に送るなど容易いのではないか?」
「えぇ、まぁ、そうですね。お2人には少しお話しておきます。曹紀の事ですが、あれは曹操達を殺すためにこの世界に来た管理者です。我々も警戒はしていますが今後、どんな事があるかはわかりません。もしかすると蜀や呉でも狙われる者が出るやも知れません。注意してください。劉備はまだ大丈夫みたいですが孫権は割と危ない所まで来ていますし。」
「承知した。」
「蓮華様が……わかった。気をつけよう。」
「それともう1つ。洗脳の事ですがあれはきっかけを作るに過ぎません。」
「どういう事だ?」
「彼女達、魏の面々は自ら洗脳されたという事です。北郷とはまるで太平妖術を使用していた張宝が特別のように話していましたが、あの手の洗脳術は〝友情〟だとか〝恋心〟だとか〝愛情〟でどうにかなるものなんです。」
「な、」
「要するに彼女達、魏の面々は寂しさからか何故かは知りませんが、自分達から洗脳を受け入れたんです。だから決して彼女達を〝被害者達〟だとか思わないでください。私達管理者も立派なクズですが彼女達も同じなんですよ。望んで北郷一刀を傷つけているんです。」
「……そうか。わかった。忠告感謝する。今後の参考にするよ。」
「えぇ、では送りますね。」 パンッ
7話をお送りしました。8話以降に関しては1週間も開かないとは思いますが多少時間が開くかもしれません。(リアルの関係上。)
冥琳さん途中から話し方一刀との話し方変わってますね。それと一刀も。まぁ、気にしないでください…
次は拠点or呉での話ですね。地和は一度拠点書いてますし一刀と地和の話は飛ばそうと思います。(別に地和ヒロインじゃないし……)
魏の面々の洗脳ですが全員が、とは書いてません。そこは今後のお楽しみですかね。しばらくはシリアス系が続くかと思います。
Tweet |
|
|
16
|
1
|
追加するフォルダを選択
第7話です。少し遅くなりました。