ジャンヌ達は行方不明になった息子を探すため、洞窟の中を探索していました。
「洞窟の奥まで来ましたね……」
「さて、この奥に本当に依頼主の息子はいるのだろうか」
「依頼内容が依頼内容だし、信用できる、よね」
バイオレットはやや不安を抱いていました。
「いたぞ!」
エルダー達が歩いていくと、男の子を見つけました。
彼こそ、依頼主が探していた息子なのでしょう。
「大丈夫ですか?」
「ああ、オレは大丈夫だ」
男の子は木の棒を持っていました。
「それで、何故お前はそれを持っているんだ」
「だってよ、この辺にいるモンスターをやっつけたら、かーさん喜ぶかと思って……」
「だからといって、小さい子供が大きなモンスターに立ち向かえば、危険です!」
ゲールの言う通り、子供が大きなモンスターと戦うのは、
何の装備もせずに獰猛な獣に挑むのと同じです。
そのため、彼女は男の子を守ろうとしましたが、もちろん男の子は聞きませんでした。
「やなこった。だって、ヒーローになりたいんだもん!」
「ヒーローになるのはいいんだけど、もう少し身の程を弁え……」
バイオレットがそう言いかけた、その時でした。
「ヨ コ ゼ ッ !!」
突然、男の子の後ろから巨大なモンスターが現れました。
そう、ボストロールです。
「よしっ、見つけたっ!」
男の子はそのモンスターに向かって木の棒を振り下ろそうとしましたが、エルダーが止めました。
「何するんだよ!」
「冒険者でも騎士でもないのに、モンスターに立ち向かうのはおかしい」
「だ、だってよぉ、ヒーローになりたいのに……」
「ヒーローになる前に死んでは意味がない」
「ひっ!」
死ぬ、という言葉を聞いた男の子は、素早くエルダーの後ろに隠れました。
「ンン? オマエラ、ウマゾウダナ……」
そのモンスターは、何でもいいから人を食べたがっているようです。
当然、ジャンヌ達は放っておくわけにはいきませんでした。
「あなたに恨みはありませんが……」
「野放しにしておくわけにはいきませんからね」
「あたし達が、ここでやっつけるからね!」
「早く退治して、ここを脱出しよう!」
「……が、頑張れよ!」
「イダダギマァズ!!」
男の子に応援されつつ、ジャンヌ達はボストロールと戦う事にしました。
「ウマゾウダナァ!」
「いやっ!」
ボストロールが棍棒を振り下ろしてジャンヌに攻撃しました。
「大丈夫? お姉ちゃん!」
「ええ、大丈夫ですよ……エアリアルブラスト!」
「えーいっ!」
「ウギャアッ!」
バイオレットが影でできた刃を構え、ボストロールに突進して斬りつけました。
ジャンヌは彼女の後ろから、風を飛ばして攻撃しました。
「俺も戦わせてもらうぞ! パワークラッシュ!」
「いきますよ……ドレインライフ!」
「ウグオォ!」
エルダーも剣を力任せに叩きつけ、ボストロールにダメージを与えました。
ゲールも生命を操る魔法によってボストロールを攻撃しました。
「かなり効きましたか……?」
「ボストロールは物理攻撃には強いが、魔法には弱いからな。
魔法を中心に使っていけばいい。だが、俺は魔法は使えない。魔法はお前達に任せる」
「ええ、分かりましたよっ!」
「ナニガナンデモ、オマエラヲ、クウ!」
ボストロールは棍棒でジャンヌ達を薙ぎ払いました。
衝撃波がジャンヌ達の身体を打ち据え、かなりのダメージになったようです。
「ぐっ……! 知能の低さと反比例するまでの怪力……ですね!」
「大丈夫ですか? ヒールライト!」
何とかゲールが回復魔法で傷を癒したため、戦闘不能にはなりませんでした。
「バイオレット、恐れてはなりません。相手には必ず、弱点が存在するはずです。はあっ!」
「うん!」
ゲールが光を飛ばし、ボストロールを攻撃しながら言いました。
バイオレットは姉の言葉に頷き、敵の弱点を見極めながら攻撃していきました。
「グオォッ! マブシイ! マブシイ!」
するとどうでしょう。
ゲールの光を浴びたボストロールが、目を覆ってしまったのです。
「トロールは日光に弱い、この光は日光じゃないけどそれに近かったよ!」
そう、トロールは日光だけでなく、それに近い強い光にも弱いのです。
石化はしませんでしたが、大ダメージは受けてしまいます。
「お姉ちゃん、一気に攻めていこう!」
「はい!」
「サセルカ!」
「させない!」
エルダーはジャンヌ達に攻撃が届く直前で剣を振りました。
「ありがとうございます、エルダーさん」
「ああ。よし、一気に行くぞ!」
「ええ! 力の種が、秘められし武の才能を目覚めさせる……シャープネス!」
ゲールが強化呪文を唱え、エルダーの武器を強化しました。
「助かる!」
「さあ、これで奴に止めを!」
「ああ。……これでとどめだ! グランドクロス!!」
エルダーの強化された武器が光り輝くと、その光がまるで十字架の如き斬撃を放ちました。
「グギャアアアアアアアア!!」
眩い光の攻撃に、トロールが耐え切れるはずがなく、トロールの身体は溶け、死んでしまいました。
「や、った……」
「これで、トロールは倒れましたね……」
見事トロールを撃破したジャンヌ達は、ほっとしました。
「すげえ……」
男の子は、ジャンヌ達の活躍を見て見惚れました。
「ヒーローになりたかったのに、ヒーローに助けられちまったな……オレ、まだまだだよ……」
「まだまだだと思うなら、これからしっかりと修行をしていけばいい」
「ああ、そうだな! あんちゃん! オレ、ちゃんと頑張っていくよ!」
男の子はエルダーに撫でられ、顔が赤くなりました。
「仲が良さそうですね」
「ええ」
「うん!」
ジャンヌ達三女神は、その様子を微笑ましく見守っていました。
その時です。
「見つけたぞ……三女神よ」
「!!?」
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この物語も二桁話に達しましたね。それはともかく、次は二番目のボス戦です。