第32章 素敵なBreak time in 希の店
(某月某日 午前8:20 喫茶店『望名(ぼうな)』内 ホール)
希は手早く、自慢の珈琲と、あの辛―いホットサンドイッチの“レッドホットチリトーストからからましまし”が、希、リキュール、テンニャン、蛭子の4人分、それから二人が起きてきたときに食べられるように別に2セット、甘―いサンドイッチも調理したのでした。
希「他につまめる物も用意したし、お冷やも用意したから、とにかくここで休憩しよう。美佳が逃げる時まで、こっちに手があるようなシーンは作らなかったし、向こうも向こうで町中に武装した連中を送り込む事は出来ないと思う。それに、正直全員、疲労が現れているs」
リキュール「はぐはぐはぐ…」
テンニャン「mgmgmgmg」
蛭子「pkpkpkpk」
女の子3人「辛くておいしーーーーい!」
希「ははは、お口に召して貰えて嬉しいよ。ってか、アレをパクパク行けるとは、凄いな、正直…」
リキュール「希~、これ、うちの店でも出そうよ~、キッチン貸すからさぁ~」
希「ほとんど“まかない”で消えるんでしょ?」
リキュール、テンニャン「うっ…」
希「いいよ。材料もvonaの物で作れるし。ただ客については人を選ぶから、当分は、まかないと特別メニュー少し、で様子を見よう」
リキュール、テンニャン「やっっったぁぁぁ~♪」
そのやりとりを見ていた蛭子は、少し笑ってしまった。
蛭子「ふふふ。面白いね、みんな」
リキュール「え? だってムーンライトエリアを出発する時も、こんな感じだったよ?」
テンニャン「そうアル♪ うちらの信条は“楽しく面白く!”アルから」
蛭子「凄いね、みんな」
リキュール「蛭子も染まるのよ、こんな感じに♪」
蛭子「善処するわ」
そんなガールズトークの間に、ショックで気絶していたスイートと黒崎の意識が戻って起きてきた。
スイート「いつつ…。う~」
黒崎「全く…。酷い目に遭った」
そして二人は、皿の上の“天敵”を見て、目を背けた。
スイート「そ・・・・それは・・・・」
黒崎「作った本人と食べている皆に悪いが…、すまない」
希は二人に、スイート用のストロベリージャムサンドと、黒崎用のアンバタサンド(バターを塗ってから“あんこ”を薄く塗った甘いサンドイッチ)が乗っかっている皿を差し出した。
希「これは、甘いよ」
二人は恐る恐る皿をのぞいてから、パンを少しめくり、中身を確認してから、それらのサンドイッチをぱくついた。
二人「甘くて美味い!」
リキュール「なーーーーーーんか、あっちの方が、女子力高くない?」
テンニャン「こっちは激辛食べて、平気状態アルからね…」
蛭子「あ、甘い物も・・・覚えよう・・・・」
そんな中、希も激辛サンドを食べながら珈琲を飲んでから、皆に提案した。
希「みんな、とりあえず安全のため、女子の半分、男子の半分が、先に2時間仮眠を取ろう。2時間後、残りが仮眠して、体調を万全にして、準備してから、敵地に向かおう」
蛭子「ちょうど昼休みの時間中に出発か。悪くない。紛れるにはちょうど良い」
テンニャン「そうアルね。しっかり休んでから、ラストダンジョンに向かわないとダメアルね」
スイート「では、さっきまで気絶していた俺と黒崎、それから途中参加の蛭子が先の番兵だ。ムーンライトエリア組みの希、リキュール、テンニャンは先に休んでくれ」
希「え? でも、食器の片付けとか…」
スイート「俺はバーの店員だよ? お手の物だ」
黒崎「俺も自炊はしている。安心して寝てくれ。希は調理と連続戦闘で一番疲れているはずだ」
希は感謝の気持ちで一杯だった。ぬこみんとステロイドは抜けてしまったが、このみんなで来られて良かった。
希「すまない、では先に休むよ。ベッドとかは、テーブル合体と座布団でいいね」
リキュール「こういうのは慣れているから大丈夫だよ♪」
テンニャン「そうアル!」
こうして、先の仮眠組が仮眠を取ることにした。
第33章 まどろみの中
…
…
…
???「望…望…」
希「ん…なんだ…もう眠りから…もう少し寝ていたいのに…」
???「望…よく聞いて…。この先へは…行ってはいけない…」
希「??? その声は、母さん? え、だって、母さん、サヴァイバリングで助けてくれたし、ステロイドにも力をくれたし…。もう、みんなもこの先に行くために準備しているし…。今更遅いよ…」
???「母さん、貴方のver.2.0の行動までは、把握出来てなかったの。私達も隠密行動せざるを得なくてやっていたけど、ver.2.0も同じく陰で暗躍していたの。私達がレジスタンス行動なら、ver.2.0は“クーデター行動”。草薙とその上の連中は、これから力を失い、実質、ver.2.0による支配が始まるの」
希「どっちみち、ver.2.0をぶっ倒すのも目的だし、これからの行動を変更する動機にはならないよ。草薙とかその上の連中が失墜するなら、手間が省けるし、ムーンライトの人達もある意味喜ぶんじゃないの?」
その女性のシルエットをした“おぼろげな姿”は、少し悲しそうな表情に変わった。
???「望…それなら、1つだけ誓って。Ver.2.0とは戦わないで」
希「!? 何言ってるの、母さん! それじゃ、俺たちがここに来た意味の半分はないも同然なんだよ!?」
???「この貴方の店、ver.2.0とか美佳さんから取り戻せたのよね?」
希「ま、まぁ、今は一時的だけど…。それに、おそらくあの二人はここには戻らないと思うよ。母さんの話の通りなら、そんな実権を握る予定のver.2.0なら、忙しくて喫茶店のマスターを副業には出来ないはずだから…」
???「ver.2.0が、この世界をどうするか、それは母さんにもわからない。だけど、それなら、そうなった時に、もっと賛同してくれる人を集めて、出来れば私達と合流してから、レジスタンス行動という形で、作戦を練っても遅くは無いのよ。それまで、この店で前のように、そして今は貴方の仲間と一緒に、喫茶店を経営していけば、それでいいじゃないn」
希「母さん! どうしたの! サヴァイバリングで助けてくれた時の、強気の母さんはどうしたの! 実はこうなる前、俺は母さんのイメージって、こんなではなかったんだよ。この世界の真実を知らないで育ったから、当然だけど。今は、正直、母さんと父さんの助力あって、ここまで来られたし、これからも生きていくつもりなんだよ!」
シルエットは更に悲しい表情へと変わっていった。
???「母さん、知ってしまったの、ver.2.0がガーディアンフェザーの一部の幹部を抹殺した時に使った、彼のデイライトガンを」
希「え!? だって、美佳のケースと同じなら、草薙が奴に渡して、奴も研究所か何かで練習して、それで使っているデイライトガンなんだろ!?」
???「草薙は、焦りすぎたの。“希突起人類”として最も有望だからと。彼の能力を最大限に生かし、更におそらく彼らの持っているデイライトガンでも最大の力を持つ銃を、彼に渡してしまったの。Ver.2.0として自分達が作った人間なんだから、絶対に“反抗してこないはずだ”、そう慢心してしまっていたの…」
希「まぁ、よくある上層部の愚行って奴だね」
???「Ver.2.0は表向きは、反抗してなかったけど、それとは別の顔で、陰で暗躍して、彼の犯行とわからない形で、少しずつ幹部を消して行っていたの。いまだに草薙は、彼を疑っていない。だから、これからすぐに“彼もわからない形”で、ver.2.0に消されて、その先は…」
流石の希も、最強、最大、とか言われて黙ってなかった。
希「俺のパンドリオンも最強だよ! これをくれたのは母さんだよ! 俺も最強だと持っているし、パンドリオンの力と皆の限界突破銃で、これまで生き残って来られた!」
シルエットはしゃがみ込んでしまった。
???「ver.2.0のデイライトガンの名前は、『抹消銃・デリーター』。名前でわかるでしょ?」
希は、一瞬考えた後、言葉を失った。
???「抹消銃・デリーター。つまり、英語の“Delete”=抹消から来ている銃。存在を消す銃、よ。抹消された対象、人物なら、他の全員が“認知してない”状態まで変化し、社会的に消されるの。物理的な痕跡は残っていても、データが残っていても、本人を他人が誰も“知らない”状態までにされたら、何かの間違いで、いずれ痕跡は壊され、データは抹消されてしまい、この世から、いたことも消される。それが、彼のデイライトガンの能力」
希「…」
???「勿論、こんな怖い銃を、有能だから、とホイホイ使える状態で渡したら、自分達も危ない、と感じるのが普通。だから草薙も、セーフティをかけて、ロック解除の装置は草薙が持ち、デリーターには別の“物理攻撃系能力”を付加しておき、彼にもそれが彼のデイライトガンの力だ、と最初は教えていたの」
希「…だが、ver.2.0は、真実を知ってしまった」
???「そう。最強の希突起人類として、草薙は、最終的には、本来の能力による、人類の“選別”を彼に命令してやらせる、そういう話を、なんらかの形で知ってしまったの。そして、ver.2.0は、彼の“信頼感”による、草薙の隙を見て、一時的に装置を盗み出し、コピー品を作り、また元に戻し、そして、彼のデリーターを、貴方達の“限界突破銃”と同じシステムで“限界突破させて本来の力を引き出す”タイプに変えたの。だから、表の顔で草薙と接している時には、なんら疑われる事がない」
希「だが、暗躍して、少しずつ、ガーディアンフェザーの要人を抹消していき、それは草薙も認知出来ない形で進んでいた」
???「そして、ver.2.0は、草薙も抹消し、自然の形で、上に立つ」
希は、手に握ったパンドリオンを眺めた。パンドリオンは、今は声を発してなかった。
希「俺は…それでも…」
???「行くなら、まず母さん達と合流して。情報は貴方達専用のSNSに暗号文で残しておくわ」
希「母さん、ありがとう…」
???「暗号文の場所に、母さんと父さんはいるから。会いたいわ、望…」
希「母さn…」
そして、まどろみの夢は、覚めた…。
(某月某日 午前12:30 喫茶店『望名(ぼうな)』内 ホール)
希「う・・・・・」
スイート「起きたか? 他のメンバーの仮眠は全員終わっているよ。希だけは一番疲れているだろうから、4時間の仮眠にしよう、って皆で決めて、2時間経過の時点でも起こさなかったんだ。何か凄く、うわごとを呟いていたようだが、大丈夫か? もう少し寝るか?」
希は体は元に戻っており、意識がはっきりしてしまう前に、夢の記憶を整理していた。
希「母さん…ver.2.0…抹消銃・デリーター…暗号文…SNS…解読場所で両親と合流…」
リキュール「ちょ、大丈夫?」
希は記憶が整理出来た後、引き締まった決意の顔付きに変わった。
希「すまない皆、おかしな話だと思っても聞いてくれ。夢で母さんと会った。正確には寝ている間になんらかの形で、母さんが俺に話をしてくれたのだと思う。詳しくはわからないが、1つだけ確認する方法がある。それを確認した後、母さんの話と、これからの行き先を相談したいと思う。それでいいかい?」
全員、やはり不思議そうな顔付きと、同時に心配する顔付きにもなった。
黒崎「あ、ああ、それでいいが、本当に大丈夫か? 夢は夢だぞ?」
リキュール「夢の確認方法って、あるの?」
希「夢で最後に母さんは話した。俺たちが使っているSNSに、暗号文を残したから、それを解読し、結果出てきた場所で、母さんと父さんと合流してくれ、と」
蛭子「つまり、その暗号文が、本当にあれば、夢の確認になるわけ、ね」
希は頷き、自分のムーンライト専用のスマホを取り出すと、SNSの書き込みをチェックしていった。
そして、最新の書き込みに、それは確かにあったのだ。“暗号文”としか考えられない、意味不明の文字の羅列が。
投稿者:From_your_mother_to_you
投稿:
1,18,1,25,1,4,15,20,15,20,15,23,5,18,4,5
13,1,20,20,5,13,1,19,21
6,21,13,9,5,25,15,18,9
希「数字の羅列…しかない…」
黒崎「ヒント無しか…。希のお母さんもチャレンジャーだな」
蛭子「でも、これくらいでないと、暗号文の意味がないから、ちょうどいいと思うよ? 意味わかんないけど…」
リキュール「希? これで確かね。夢は、“現実”、だったのよ」
希は横にあった手ぬぐいを頭に巻くと、頬を叩いて気合いを入れ直した。
希「解いてやるぞ!」
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☆第32章、第33章のまとめ投稿と、第33章末文による、暗号文解読出題です!
☆サイバーパンクで神話の入ったガンアクション小説です。
☆ラストまでのプロットをちゃんと書いてあるので、形式は、少しずつ続きを書いていく、章区切りの長編となります。
☆『pixno』(URL:http://www35.atwiki.jp/pixno/ )に参加しております。
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