No.844539 九番目の熾天使・外伝 ~改~竜神丸さん 2016-04-26 13:38:29 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:3243 閲覧ユーザー数:1035 |
真っ暗な空間に無数の星が輝く、次元航空区域…
「おいミハエル、勝手に寝るな。寝る暇があるならこっちの作業も手伝え」
「うるせぇなオスカー、分かったよ……ふぁ~」
その真っ暗な空間を、ある一隻の貨物船が移動していた。操舵室には作業服を着た男が二人、部屋の壁には時空管理局直属の物と思わせるようなシンボルマークが描かれている。
「しっかしよぉ、何で俺達がこんな面倒な仕事しなくちゃいけねぇんだよ…」
「グチグチ言うな。回収されたロストロギアをマウザーさんの部隊に引き渡す、これも重要な任務だ」
「密輸品として回収されたロストロギアを、な。正規のパトロール部隊の監視を掻い潜って、秘密裏に部隊に引き渡さなきゃならねぇんだ。これを面倒と言わずして何て言うんだ?」
「OTAKU旅団に何度もやられてる所為で人員が不足して、それで俺達も現場に駆り出されたんだ。高い給料貰えるだけ、ありがたいもんだと思え」
「へいへい。お前のそういうお堅いところ、ホントにご苦労さんって思うよ」
この二人の男は、管理局非正規部隊に雇われたエージェントだった。これまで発見されずにいたロストロギアを正規の魔導師部隊よりも先に回収し、それらをマウザー率いる非正規部隊に引き渡す。たったそれだけの非常にシンプルな仕事内容だ……最も、ロストロギアなんていう危険過ぎる代物を取り扱っている時点で、命の保証は決して出来ない訳なのだが。
「にしても上層部のオッサン共、そんなに旅団にびびってんのか? 聞いた話だとよ、旅団にいるメンバーの内の何人かは、鎧を着た妙な不審人物にやられてるって話だぜ」
「それでも旅団の勢いが衰えている訳じゃない。現に旅団は今も絶え間なく活動を続けている。俺達とて油断は出来んぞ」
「はん、警戒心の強いこって―――」
-ズズゥゥゥゥゥゥゥン…-
「「!?」」
その時だ。貨物船が大きく揺れ出したのは。それと同時に警告音も鳴り響き始める。
≪WARNING……WARNING……≫
「おいおい、一体何だってんだよ!?」
「何かが貨物船に激突したんだ……くそ、バランスが崩れて…!!」
-ガシャアンッ!!-
「「!?」」
舵を取ろうと必死に動く二人だったが、突然聞こえて来た音にピタリと動きが止まる。鉄で出来た天井を突き破るかのような音。それを聞いた二人はゆっくり後ろへと振り返り……後ろを振り向いた事を後悔した。何故なら、二人が向けている視線の先には…
「「「「「グジュルルルルルルルルルルルルルル…」」」」」
昆虫のような姿をした無数の生命体が、天井や壁に張り付いていたのだから。
「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」
数秒後、二人の断末魔が響き渡る事。
この生命体逹が原因で、貨物船が爆発する事。
そして…
-キィィィィィン……キィィィィィン……-
その爆発が原因で、あるロストロギアの欠片があちこちに散らばってしまう事。
それらの出来事が発生するのには、たった五分の時間すら必要なかった。
「地球外生命体ワームの進撃が原因で、管理局に雇われていたエージェント達の貨物船が爆発。船内に積み込まれていたロストロギア“黒水晶”の欠片が各次元世界に散らばってしまった。その黒水晶の欠片を見つけ出し、封印処理を施して
「それが団長から下された、今回の新しい任務の全容だ……全く、こっちは新しいメンバーの調査任務まで同時に請け負ってんのに、面倒な事になっちまったもんだ…」
管理外次元世界オルトロス。この世界にも黒水晶の欠片が一つ落ちたという情報が舞い込んで来た為、早速okakaとディアーリーズの二人がオルトロスまで出動し、黒水晶の欠片が落ちたと思われるを探索して回っていた。
「しっかし管理局の連中も、こんな時期に余計なトラブルを招きやがって。冗談抜きで迷惑な話だ」
「……」
「まぁそんなトラブルの原因になったワームも迷惑や奴等だが……って、どしたよディア?」
「…あぁいえ、何でもないです。すみません」
「任務中なのに何をボーッとして……あぁ、そっか」
言いかけたところでokakaは気付いた。
「確かこの世界だったな……お前が管理局の施設から脱走して、旅団に拾われる事になったのは」
「…えぇ」
かつて管理局に捕らわれ、違法研究の実験台に利用されてしまったディアーリーズ。当時は自力で施設を破壊して脱走し、力尽きたところをクライシス率いるナンバーズに拾われた彼だったが、その後もナンバーズメンバーを管理局からの刺客と勘違いしたディアラヴァーズが攻撃を仕掛けて来るなど、この時は色々な事があった。
「…まぁ、碌な思い出が無いだろうな。お前からすれば」
「今も頭の中に浮かんで来ますよ……僕の事を実験台扱いした、管理局の腐り切った科学者共の声が」
-実験体No.67……彼は非常に素晴らしいです、どれだけ薬を打ってもまだ生きています-
-そりゃ良い。精々このまま、管理局の為に役立ってくれや。クソガキちゃん……ヒハハハハハハハ!!-
「……」
かつて自分を実験台にして来た違法研究施設の科学者逹。そんな連中の言葉が頭によぎったのか、ディアーリーズは無意識の内に拳を握り締める力を強め、それに気付いたokakaもあまり深くは追及しない事にした。
「…まぁ何にせよ、黒水晶の欠片がこの辺りに落ちた事は間違いねぇんだ。さっさと回収して
「…そうですね。僕もそうしようと思ったところです」
「あ、でも少し待ってくれ」
「?」
ディアーリーズが頭にクエスチョンマークを浮かべる中、okakaは取り出したライドブッカーを即座にガンモードに切り替え、自身の真後ろに向かって一発の弾丸を撃ち込んだ。すると…
「グワッ!?」
「!!」
弾丸の撃ち込まれた木々の間から、一体の下級ロイミュード(スパイダー型)が傾斜のある地面を転がり落ちながら出現。それと同時に草むらの中からも二体の下級ロイミュード(コブラ型とバット型)が現れ、二人の周囲を一斉に取り囲んだ。
「ロイミュード!! こんな所にまで…」
「わざわざ俺達を追いかけて来たとは考えにくい。俺達がここに来る前から、コイツ等の気配は少なからず感じ取れていた。つまり考えられる可能性は一つ」
「…コイツ等の目的も、黒水晶の欠片の回収ですね!!」
「「「フンッ!!」」」
下級ロイミュード逹は指先から一斉に弾丸を放ち、okakaとディアーリーズは左右に回避。その際にokakaは取り出したマッハドライバー
「ハルカにAIを組み直して貰ったドライバーだ、下手に壊すようなマネはしてくれるなよ!!」
「流石にそんなヘマはしませんよ…!!」
≪シグナルバイク!≫
マッハドライバー炎の開かれたパネルにシグナルリンクを装填し、再びパネルを閉じる。変身音が響き渡ると共にディアーリーズは両腕をクロスし、拳を力強く握り締めてから勢い良く両腕を広げる。
「変身!!」
≪ライダー! リンク!≫
その変身音と共に、ディアーリーズの全身に装甲が纏われていき、変身が完了される。
仮面ライダーマッハにも似た青色のボディ。ヘルメットの形状をした頭部。その頭部に付いた、ハヤブサのような翼の装飾。風で靡く白いマフラー。そして胸部装甲に装備され、アルファベットの『L』と描かれているタイヤ状のパーツ“シグナルコウリン”。
ネクストシステムによる新型の戦士―――仮面ライダーリンクは右腕を高く上げて指を鳴らす。その瞬間、ハヤブサのような翼の幻影が背中に一瞬だけ出現し、更にその周囲を青い羽根が無数に舞い上がっていく。
「「「ッ…!?」」」
「付き合って貰いましょう、終焉の時間に…!」
その威圧感に対して下級ロイミュード逹が少しだけ圧倒される中、仮面ライダーリンクは新たな決め台詞を堂々と言い放ってみせるのだった。
一方、他の管理外世界では…
「ギャォォォォォォォォォォォォォォッ!!?」
「…雑魚が」
激しく波打っている海岸にて、二百式は巨大サラマンダーの胴体を一撃で一刀両断してみせていた。真っ二つに斬り裂かれたサラマンダーの胴体が轟音を立てながら地面に倒れていく中、二百式は返り血の払われた太刀を左腰の鞘に納め……
「おぉ!? 二百式の奴、もう仕留めたのか……ってぬぉっと!」
「シャアッ!!」
「クカカカカカ…!!」
複数のスケルトンと戦闘中だったストロンガー(げんぶ)も、実力を上げた二百式の力を見て驚いた。そこにスケルトン逹が容赦なく襲いかかる中、二百式は左腰の鞘に納めた太刀ではなく、右腰の鞘に納めていたもう一本の長剣を引き抜き―――
「
―――複数のスケルトン逹を、一瞬で縦から真っ二つにして見せた。縦に真っ二つにされたスケルトン逹がバラバラに崩れ落ち、更には海岸付近にあった巨大な岩石までもが、次々と真っ二つに斬られて砂浜に落ちていく。それを目の前で見ていたストロンガーは驚き、思わず二百式の方を見据える。
「うぉ!? …凄いな、二百式の奴。あんなにいた骸骨共を一瞬で…」
「……」
感心した様子のストロンガーに見向きもせず、二百式はその抜いた長剣をただ静かに眺める。その刃は少しの刃毀れも無く、その刀身は黒く、一定の美しさを保っていた。
これは、二百式がワイルドハントのイゾウを撃破した後の出来事…
『…ドクター』
『何かな、ウーノ』
『…普通の人間は、義手を付けた直後ではまともに動かせない筈ですよね?』
『いやはや。旅団のナンバーズメンバーが如何に狂っている連中か……今、改めて思い知らされたよ』
場所はジェイル・スカリエッティの
『ふぅぅぅぅぅぅ…』
黒いシャツ1枚に迷彩柄の長ズボンを着た二百式が、派手な動きでトレーニングを行っていた。鋼の義手を新たに取りつけたばかりの状態であるにも関わらず、彼は
≪二百式君≫
『…!』
≪君のご要望通り、最高にハイスペックな最新作を、君の右腕として取りつけてみたんだが……新しい右腕を手に入れた気分はどうかな?≫
『…あぁ、悪くない』
二百式は珍しく満足気な表情を浮かべ、吊り下げられているサンドバッグに連続パンチを叩き込み、強烈なキックを繰り出してサンドバッグを思いきり蹴りつける。その勢いでサンドバッグが敗れ、中の砂がドザァと床に零れ落ちていく。
≪リバインズ君から、君が右腕を失った事を聞いて驚いたよ。そんな君が、わざわざ私の所に義手を付けるよう頼んで来た事にもね≫
『…もはや、形振り構ってられる状況でもない。この
≪普通なら、kaito君辺りに腕を治して貰うところなんだがねぇ。ただまぁ、私の最高傑作を買い取ってくれた事には私も感謝しているよ……先程から、ここのトレーニング器具をひたすら壊していっている件についても、今回は特別に目を瞑ってあげようじゃないか≫
『okakaにでもツケておけ。アイツの会社、最近また儲かったらしいからな』
圧倒的怪力で、また一つトレーニング器具を破壊する二百式。その光景にスカリエッティは少しだけ口元を引き攣らせるも、すぐに表情を戻してにこやかに笑ってみせる。
≪まぁ良いさ。せっかく私の作品を買い取って貰えたんだ……もう一つ、君にサービスしておこう≫
『?』
何の事かと思う二百式だったが、その答えもすぐに判明した。ダンベルを軽々と回転させる二百式の前に、トーレが一本の長剣を鞘に納めた状態で持って来た。トーレはその長剣を差し出し、ダンベルを放り捨てた二百式はそれを手に取る。
≪まずは抜いてみると良い≫
『! これは…』
鞘から抜刀すると、黒い刀身が露わになる。それを見た二百式は表情が変わる。
≪ある世界における大業物21工の内の一振り、黒刀“
『…そんな物を、何故お前が持ってるんだ?』
≪これまでリバインズ君から実験用に提供されてきた次元犯罪者の中に、その刀を所有する者がいたのさ。しかしいくら名刀とは言っても、使い手が三流なのでは名刀も真の力を発揮出来ない。そうは思わないかい?≫
『…確かにな』
≪だから、私の方でその刀を確保しておいたんだ。他のナンバーズメンバーは特に欲しがっているような訳でもなさそうだったが……君はどうだい、二百式君? いらないのであれば、別にそれでも構わないが―――≫
『いや、気に入った。貰っておこう』
≪…ほぉ? やけにアッサリだね≫
『理由は俺にも分からんが……何となくだ』
≪…ぷ、くははははは……そうか、何となくか。良いよ、持っていきたまえ≫
『恩に着る』
二百式は黒刀“
『…何だ?』
≪せっかく新しい義手と新しい剣を手に入れたんだ。ちょっとでも良いから、模擬戦を頼めないかい? 実は数日ほど前にオットー、ディード、セッテの3人も調整が完了したばかりなんだ≫
『!』
『『『初めまして、二百式様』』』
スカリエッティのその言葉に反応するかのように、3人の少女が二百式の前に出て来た。
中性的な容姿を持った茶髪の少女―――No.8のオットー。
栗色のストレートヘアの少女―――No.12のディード。
額にヘッドギアを付けたピンク髪の少女―――No.7のセッテ。
可憐な容姿ながらも無表情な少女達の紹介を聞いて、二百式は確信した。
『…なるほど。こっちのナンバーズも全員集合、という事か』
≪そういう訳だ。よろしいかな?≫
『…良いだろう』
トーレ、チンク、セイン、セッテ、オットー、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、ディード。9人のナンバーズと正面から対峙した二百式は早速、手に持っていた竜王で居合いの構えを取る。
『力が有り余っていたんだ……模擬戦と言えど、手加減はせんぞ』
≪それでは、準備はよろしいですね?≫
その一言に、ナンバーズ逹は一斉に戦闘態勢に入る。スカリエッティはモニター越しにその光景を微笑ましい様子で眺め、そしてウーノが模擬戦開始の合図を出す。
≪模擬戦、開始≫
そして二百式達は、同時にその場から駆け出すのだった。
ちなみにその後、模擬戦で暴れ過ぎた所為でトレーニングルームが滅茶苦茶になった為、その分の修理費もokakaの会社にツケられる羽目になったのはここだけの話である。
「…まぁ、あの時は色々あったものだ」
「? 二百式、何か言ったか?」
「何でもない。モンスターは殲滅したんだ、さっさと撤収するぞ」
「あ、おい…!」
口調はいつもの素っ気ない感じながらも、表情は上機嫌な様子の二百式。彼はストロンガーの変身を解いたげんぶに振り返る事も無く、さっさと
「チッ……何が色々あったものだよ、イラつかせやがって…!!」
げんぶがさりげなく零した、狂気を孕んだ独り言にも気付かないまま…
「ふん、でりゃあっ!!」
「ヌガァ!?」
「ギャアッ!?」
場所は戻り、管理外世界オルトロスの森林エリア。そこではディアーリーズの変身したリンクが、単独で下級ロイミュード逹を相手取っていた。人数だけで見れば1対3でリンクが不利だが、それはリンクが劣勢に陥る要因には至らない。
「せぇい!!」
「グ、アギッ……ギヒャァアッ!?」
額と顎に一発ずつパンチを喰らい、リンクのキックで木々に叩きつけられるコブラ型ロイミュード。するとリンクの後ろからバット型ロイミュードが飛びかかるも、それに気付いていたリンクはマッハドライバー炎からシグナルリンクを抜き取り、代わりに黄色のシグナルバイクを装填する。
≪シグナルバイク! シグナルコウカーン!≫
「シャアッ!!」
音声が鳴ると同時に、バット型ロイミュードのパンチがリンクに炸裂。しかし…
「無駄です」
≪スベール!≫
「!? アヒャッ!?」
リンクのシグナルコウリンが、『L』の文字から『滑りやすい』という意味がある道路標識の絵柄に変化。するとバット型ロイミュードの繰り出したパンチが、まるでスケートリンクの上を滑るかのようにリンクの背中の装甲を滑り、リンクに全くダメージを与える事が出来なくなった。
「ちなみに、こんな事も出来ますよ…!」
≪キュウニ、スベール!≫
「ふ、は、せやっ!!」
「「「!? ヌゴワァッ!?」」」
マッハドライバー炎の上部スイッチを4回連続で叩いたリンクが、下級ロイミュード逹のボディをそれぞれ一発ずつ殴りつける。するとシグナルスベールの効果で下級ロイミュード逹は足裏の摩擦がなくなり、地面に足を滑らせて一斉に転倒し始めた。
「うん、凄い……これなら行ける!」
≪シグナルバイク! ライダー! リンク!≫
再びシグナルリンクを装填した後、リンクはマッハドライバーのパネルを開き、上部スイッチを押してから再びパネルを閉じる。
「まずは一体目…!」
≪ヒッサツ・フルスロットル! リンク!≫
「グ、ギギ……ウガァァァァァァァァァァァァッ!!」
リンクはその場から大きく跳躍し、ライダーキックの構えに入る。それを見たスパイダー型ロイミュードは、すかさず口から蜘蛛の糸を吐いて抵抗を試みるが…
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「グ、ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
ハヤブサのような青いエネルギーを全身に纏ったリンクのライダーキック“ファルコクラッシュ”が、蜘蛛の糸を一瞬にして焼き焦がし、そのままスパイダー型ロイミュードに炸裂。スパイダー型ロイミュードが爆発した時の衝撃でコブラ型ロイミュードが再び転倒し、バット型ロイミュードは慌てて翼を広げて逃亡を図るが…
≪タイヤコウカーン! フッキングレッカー!≫
「逃がすかよっと…!!」
「フゲェ!?」
右肩にタイヤを装備した黒い形態―――PDドライブ・タイプワイルドが、レッカー車を模したタイヤ“フッキングレッカー”から伸ばしたワイヤーをバット型ロイミュードのボディに巻きつけたからだ。バット型ロイミュードはそのまま地面に叩きつけられ、PDドライブはすぐに次のシフトカーをシフトブレスに装填する。
≪タイヤコウカーン! ランブルダンプ!≫
「更に、ハンドル剣!」
フッキングレッカーのタイヤが外れた後、代わりにダンプカーを模した黄色いタイヤ“ランブルダンプ”が右肩に装備され、彼の左腕には大型ドリル“ランブルスマッシャー”が出現。更に何処からか飛んで来たハンドル剣を右手で装備してから、リンクに向かって叫ぶ。
「ディア、そろそろエネルギーが限界の筈だ!! 俺にエネルギーを分けろ!!」
「分かりました!!」
≪モーット、リンク!≫
リンクはマッハドライバー炎の上部スイッチを四連続で叩いた後、擦れ違い様にPDドライブの右肩へと触れる。その瞬間、リンクのボディに溜まっていたエネルギーがPDドライブのボディ全体に伝わり、強烈なエネルギーの充填が一瞬にして完了された。
「…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉパッション全開だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ンゲ……ゲギャアッ!?」
「グフゥ!?」
機動力の低さが弱点だった筈のPDドライブ・タイプワイルドは、とてつもない速度で二体の下級ロイミュードを攻撃し始めた。スピードが速過ぎる所為でPDドライブの動きを捉える事も出来ず、二体の下級ロイミュードは斬撃を受け、ドリルで薙ぎ払われ、どんどん窮地に追い込まれていく。
「ヒャッホォォォォォォォォイ!! コイツは良いぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
≪よぉし一城、このパワーで一気に決めようじゃないかぁっ!!!≫
「いよっしゃあ!!!」
≪ヒッサーツ・フルスロットル! ダンプ!≫
パッション全開だからか、ベルトさん(PD)すらもテンションがハイの状態だ。そんな中でPDドライブはハンドル剣を一度投げ捨ててから、ドライブドライバーのイグニッションキーとシフトブレスを順番に操作し、必殺技を発動。PDドライブはとうとう目に見えなくなるレベルにまで速度が上昇し…
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
「ホバババババババババババババババババババヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?」
バット型ロイミュードに狙いを定め、とてつもない速度で四方八方からドリル攻撃を繰り出し始めた。ただでさえ元からパワータイプの形態でこんな攻撃方法を使ったら、もはや敵の方に同情したくなるくらいのオーバーキルである。当然、バット型ロイミュードは抵抗出来ないまま一方的にやられ続け、呆気なく爆死してしまった。
「…ふぅ、絶好調だぜ」
「グ、ヌゥゥゥゥゥ…!!」
「あ、まだ一体残ってますね。逃げるつもりのようですが…!」
「そのようだな。さっさと仕留めるか…!」
≪ドライブ! タイプ・スピード!≫
そんな中、ボロボロながらも必死に撤退しようとするコブラ型ロイミュード。それに気付いたリンクは拳を握り、PDドライブも初期形態であるタイプスピードへと戻り、逃げ出すコブラ型ロイミュードを仕留めるべく追いかけようとした……その時だった。
-ブォォォォォォォォォォォォォォォン…-
謎のエンジン音が、二人の耳に聞こえて来たのは。
「「―――!?」」
「ン、ォオ…?」
そのエンジン音に、二人だけでなくコブラ型ロイミュードすら思わず足を止める。彼等のいるエリアに向かって来ているのか、エンジン音は少しずつ大きくなっていく。
そして…
「「なっ!?」」
エンジン音を響かせる存在は、その正体を現した。
「あれって、もしかして…!?」
「ネクストライドロン……いや、ネクストライドロンとは違う…!?≫
そのネクストライドロンにそっくりな、近未来的なデザインの自動車型ライダーマシン。しかしカラーリングはそれと異なり、ダークシルバーに赤いラインが入ったカラーリングだ。
「ヌ……ウガァ!?」
そのネクストライドロンに似たマシンはコブラ型ロイミュードを撥ね飛ばした後、大きくターンしてからようやく停車。そしてドアが開き、ある存在がマシンから地面に降り立った。
「「ッ!?」」
その姿を見て、二人は更に驚愕する。
何故なら、そのマシンから降りて来たのは―――
「ありゃ、また変な状況に出くわしちゃったかなぁ…?」
―――okakaですら見た事の無い、ドライブそっくりの仮面ライダーだったのだから。
To be continued…
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