No.843813

オルタンシア・サーガ~歴史を作る者達~ プロローグ

オルサガをプレイ中に、友人に「これの二次創作やってみたいね」と言ったところ、「じゃあやれよ」っと言われて書いてみたものです。

もしかしたら単発で終わる可能性もある為に、文章はかなり短いです。
こちらに関しては期待しないでください。

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2016-04-22 19:24:02 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1024   閲覧ユーザー数:1014

オルタンシア・サーガ~歴史を作る者達~ プロローグ

1431年5月30日、フランス・ルーアンの『ヴィエ・マルシェ広場』にて、ここで一人の英雄の命の灯火が消えようとしていた。

ブーヴルイユ城より連れてこられた英雄は、手首に手枷、足首に鎖状の足枷、両脇に全身鎧姿を付けられて、普段は開けた広場であろう、ヴィエ・マルシェの広場へと連れて来られる。

英雄の死を目撃するため、商人も職人も農夫も兵士も、あらゆる階級の者達が詰め掛け、その広場だけでも五千人、一万人はいるであろう。

 

かつてフランス全土に名を馳せた英雄の変わり果てた姿を目の当たりにし、同じフランス人の者は肩をがっくりと膝を落として、言葉なく泣いている。

それに対し、そんな英雄の姿を嘲笑う者達もいた。かつてフランス軍に苦しめられ、はたまたそのフランス全土に名を馳せた英雄に苦しめられたイングランド軍の兵士達だ。

英雄の向かった先に、足元には木の藁が蓄えられ、その藁の中、長い棒がただ一本立てられており、兵士が長い棒を一時的に倒して、英雄をそれに縛り、そのまま立てる。

英雄の見る風景には、自らの死を悼んでくれるフランス人。それを嘲笑うイングランド人が見える分けではなく、ただただ晴天の青空が広がっており、流れる雲の隙間より、神の手が降りてきて、自分を助けようとしていると思った。

 目の前の司祭が何かを話しているが、曖昧な返事となってしまい、死刑執行人が藁に油を注いでいる。

一分であろうか、三十分であろうか、一時間であろうか。英雄は周りに静寂を感じて、これまでの自身の人生を思い返していた。

とある辺鄙(へんぴ)な村で生まれ、ゆくゆくは村の誰かと結婚し、畑を耕し、子を産み死んでいく人生を歩んでいく筈であった。

しかしとある時に神の声を聞いた。「お前がフランスを救うのだ」と……。

英雄は村を出て軍に入り、フランスの為に戦った。一時の栄華を誇るも、最後には国に、人に犯され、腐った聖教者達の欲の為に死んでいくことになってしまった。

 だが英雄は満足であった。

国に、神に、フランスに住まう人々の為にこの身を捧げたことに満足して……。

その結果、この身が炭の塊になろうとも……。

 

………嘘である。

英雄は必死に問いかけた。

全知全能を司る神に。

天から自らに指示を出していた神に。

自らの身を捧げた筈の神に。

 

英雄は神に祈りを捧げている時にふと思ってしまった。

 

全ては勘違いであったのではないかと……。

 

自らが神の声の代理として行ってきた献策も、戦での作戦指示も、それは神の声の影響ではなく、自らの才能だったのではないかと。

そう思った瞬間、足元から全身にかけて感じる火の熱を感じた。

 

違う。自分はまだ満足していない。

生きたい。逝きたくない。神の力なんかではなく、自らの力を試したい。

英雄は何かを司祭に訴えたが、既に燃え上がっている煙のせいで喉が潰れてしまっている為に、司祭は何を勘違いしたのか十字架の付いた棒を持ち上げた。

しかし、英雄が欲したのはそんなものではなかった。

火傷の痛みと、吸い込んだ煙とが相まって、徐々に神経が麻痺し、失われていく意識の中で徐々に痛みが消えていき、英雄の意識は……。

 

漆黒の闇に包まれた。

 

 

とある国の屋敷にて、そこに新たな命が誕生しようとしていた。

「奥様、頭が見えてまいりました。もうすぐでございます」

寝具に横たわっている女性が、侍女を側めに置きながら下腹部に力を入れて力んでいる。肩で息をしながらも、女性の膣部より、体液に塗れた子供の頭が出てきた。それから女性が出産と戦うこと数時間。部屋の外には女性の夫であり、館の主が落ち着かなくソワソワと扉の前で動いている。部屋の中から胎児の鳴き声が聞こえてきたとき、男がハッと扉を見た瞬間に扉が開かれた。

「どうだ!?男か!?女か!?」

「女の子でございます」

侍女の言葉を聞いた瞬間に、男は「でかした」と叫びながら妻の下へ走って駆け寄った。

それから暫くして、出産の落ち着きを取り戻した女性は、少し憔悴しているものの、頬を少し上げて夫に笑顔を見せる。

この館の主の妻の出産は、今回が初めてではなかった。既に二人には数人の子供がおり、それらは皆男であった。貴族として生まれた男にとっては、貴族が抱える悩みの種の一つでもある跡取りに関しては、ひとまずの収束がついていた。いずれ息子達が立派に成長すれば、そのうちの誰かが、自分の跡を継いでくれるであろうと思っていた。しかし、男の子宝に多く恵まれれば、男は女の子宝も欲してしまっていたのだ。男は自らの信じる神に祈った。その願いが通じたのか、今回男は待望の女の子を手に入れたのだ。

 男が赤ん坊の頬をつつくと、赤ん坊は難しそうに体を動かしもがいており、その愛らしさに夫婦は二人仲良く笑いあった。

「いずれこの子にも、我が家の家名に恥じない淑女として育ってもらえたらな」

「任せてください。私が……いえ、私達が愛情持って育てれば、この子もきっと他者を思いやれる優しい子に育つわ」

「……そうだな……。そう育って欲しい……。それより、この子の名前を考えてきたのだが……」

男は妻にそっと耳元で赤ん坊の名を伝える。

「……いい名前だわアナタ。きっとその名前に恥じない立派な淑女に育ってくれます」

その言葉に満足し、男は赤ん坊に向き直り、女の子に自ら付けた名を呼んだ。

 

「お前の名前は……」

 


 
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