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ALO~妖精郷の黄昏・UW決戦編~ 第38-3話 これからの時間

本郷 刃さん

UW決戦編の3話目です。
今回は微シリアスで基本ほのぼのイチャイチャ的な感じかと。
一応、コーヒー警報を発令w
それではどうぞ・・・。

2016-04-17 11:34:09 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:6962   閲覧ユーザー数:6373

 

第38-3話 これからの時間

 

 

 

 

 

 

 

ユージオSide

 

「ふっ! よし、これで一時は薪も足りるよな」

 

薪が少なくなっていたことを思い出して、朝の鍛錬のついでに薪を増やそうと薪割りをした。

なるべく天命の短い樹を選んで倒し、それを斬って運ぶのを繰り返している。

予備はあるけれども薪はどうしても減っていくからね。

斧を薪と一緒に小屋の中に片付けて、扉を開けて僕は家の中に入った。

 

「おはよう、アリス。鍛錬と薪割り終わったよ」

「おはよう、ユージオ。それとお疲れ様。朝食はもう少しで出来上がるから待っててね」

 

恋人であるアリスよりも先に起きて鍛錬と薪割りを始めたから挨拶もいま交わした。

エプロンをして朝食を作りながらこっちを向いたアリスはさすがに火元から目を離すわけにはいかず、すぐに料理に戻った。

その間に僕は水桶に溜めている水で顔を洗い、布巾で顔の水を拭う。

テーブルの椅子に座ろうとしたところでアリスが「出来た」と言い、

彼女が手に何も持っていないことを素早く確認して僕はすぐに動いた。

 

「ユージオ、でき…んっ///!?」

 

ゆっくりと振り返ったアリスを軽く抱き締めながら彼女の唇に口付ければ、驚いたのも束の間ですぐに身を委ねてきた。

重ねるだけの口付けを三度行ったところで同時に離す。

 

「ふぁっ…/// もぅ、料理とか包丁とか持ってたら危ないところよ///」

「持ってないのを確認して動いたから問題無しだよ。それに今朝はまだだったからね」

「そぅ、だけど…/// ユージオはなんだか手慣れてきたわね/// わたしはまだ慣れないのに…」

「慣れなくてもいいよ。僕だって羞恥は減ったけど、嬉しさとか喜びは日に日に増しているんだからさ」

「わたしも、嬉しさと喜びは増していくわ/// 幸せ過ぎるもの///」

 

一度は離した身体を一緒に抱き締めあって、でもすぐに離れる。

 

「朝食、冷めないうちに食べましょう///」

「うん」

 

アリスが焼いたパンケーキとサラダをテーブルに用意して、僕達は朝食を取り始めた。

ここは僕とアリス、二人の家。

あの日、ルーリッドの村に帰ってきたあとでガリッタ爺さんに教わりながら僕達が作った。

 

ここで僕はアリスと平和に二人暮らしをしている。

 

僕達がこんな生活をしているのには、帰省した日に遡る…。

 

 

 

 

僕達が公理教会の馬車に乗り、最高司祭様直々に書かれた紹介状を渡したことには村のみんなから大層驚かれた。

禁忌目録に背き、大罪人として連行されたはずの少女が教会仕様の馬車に貴族のような服を着て、

彼女の許へ向かった少年こと僕と共に帰ってきたともなれば驚き、騒がれるのは仕方がないか。

 

紹介状、というよりも手紙の内容はアリスと僕についてであり、

最高司祭であるカーディナルさんによって読み上げるように書かれていた。

 

『この者、アリス・ツーベルクは第三者の介入により境界を越えた為、彼の一件は事故であるものとして大罪には値しない。

 しかし、ダークテリトリーの汚染を受けていることが判明、

 処置を行う為に無理にでも公理教会に留める必要があった為の連行であるので大罪人には非ず。

 教会にて汚染の処置を行うも進行を抑えることしか叶わず。

 幸いにもこの者の人格に変化が訪れることはなく、また高い才能を持ち合わせていることも判明し、

 汚染除去が完了するまでの間に勉学・神聖術・剣術の指南を行ったことを記す。

 また、人界の民を守る功績を残した帝立北修剣学院次席上級修剣士であるユージオを召喚、

 この者とアリス・ツーベルクが幼馴染であることが判明したことで両者を再会させ、

 これが影響したことで汚染除去が完了した次第である。

 これによってユージオを特例として学院より一時帰省を行わせ、アリス・ツーベルクの護衛兼監視役とさせる。

 アリスの実力よりも上であり、なおかつ心身で任せられる者としてユージオが選ばれたものである。

 これは最高司祭の勅令であり、両者の行動に第三者が介入することは罪に問われずとも、

 ユージオを通して教会より厳重注意が課されるものである。

 しかして、村民である貴殿らを配慮する為、両者と公平かつ公正に話し合い、互いに苦にならぬ生活を送ることを命ずる。

 最高司祭より』

 

内容はこういうものだった、なんというか脅しとも取れる言葉が出ているような気がする。

実際にはまったく違うのだが公理教会の最高司祭を疑うことはないから現状に関しては問題無いと思う。

 

アリスの父であり、村長でもあるガスフトさんはこれを読み上げると複雑そうな困惑した表情を浮かべた。

実の娘が大罪人として連行されたもののそうではなく、

そこに罪は無く処置の為にという理由であれば帰ってきたことは嬉しいんだと思う。

だけど、ダークテリトリーに汚染されたということが果たして今後も大丈夫なのか、

村人に影響は無いのかという村長としての心配や不安もあるんだと分かる。

 

他の人達の反応もそれぞれだけど似ているのが解る。

アリスのお母さんのリアッカさんや母親という立場の人達は彼女が帰ってきたことを喜んで、

同じく純粋に彼女の身体を心配しているらしい。

僕やアリスと同年代のみんなや僕達を可愛がってくれた年配の人達は喜びを半分にアリスと自分達の心配をしている感じ。

深い関心が無いのかそれとも単純に村の身内が帰ってきたと思っているだけなのか大きな反応を示さない人もいる。

そして多くはないけれど少なくもないのが不信感や危機感、あるいは自身の利益になればと思っている者達。

 

多くもなければ少なくもないこの村の意識を把握できてしまった。

アリスを助けるまでに経験してきたこととキリトに教わってきたのが原因か。

彼も言っていたけど、周囲に機敏過ぎるのはあまり良いモノじゃないっていうことを体感した。

 

「とりあえず、これからのことを決めませんか? 最高司祭様の手紙にもそう書いていたでしょう?

 ガスフトさんも色々と案じているようですから、まずは話し合いを」

「あ、あぁ、そうだな」

 

丁度お昼時ということもあり、ほとんどの人達は食事や仕事等に戻っていった。

僕達は馬車を連れてそのまま村長の、アリスの家に入った。

中に入る前に僕は馬と馬車と積み荷は教会から僕達に預けられている物だから触れないようにと言っておけば、

誰も近づくことをすぐにやめていた。

 

 

 

集まったのはアリスの家族であるガスフトさんとリアッカさんとセルカ。

僕の両親と二人の兄、有力な農家の主であるナイグル・バルボッサさん、次に有力な農家のリダックさん、

前衛士長のドイクさんと現衛士長のジンクの親子、村唯一の教会のシスターであるアザリヤさん、

他にも何人かの村の代表者達が集まり話し合いをした。

 

話し合いと言っても話したことはただ一つ、“アリスを何処に住まわせるか”だった。

家族であるセルカとリアッカさん、幼かったアリスの教師を務めたシスター・アザリヤ、

女性の代表者達はアリスの家であるここに住まわせるべきと主張。

逆に私欲が高いバルボッサさんやリダックさん、村を守る立場にいるドイクさんとジンク、

それに一人の男性代表者が村に住まわせることすら反対と主張。

僕の家族と残りの代表者達は汚染というありもしないこととアリス自身の身体を心配して、

聖なる場所である教会ならばどうかと提案し、主張した。

 

以上が挙げられた村人達のアリスに対する思いの違いだと一目瞭然だ。

 

「アリスは私達の娘です。罪が無く穢れの治療が終えたのなら我が家に住まわせるべきよ」

「彼女がどれほど長い時間を家族から離されていたのかは皆さんもご存じでしょう」

「アリスちゃんにはまず家族の温もりが必要なんだよ!」

 

「それでなにか起こったらどうするのだ!」

「儂らや皆の身に危険が起こらないとも限らんのだぞ!」

「俺達には衛士として村を守る責任があります。安易に村に置くべきではない」

 

「だからって追い出すことはないじゃないか」

「そうじゃな。確かにその可能性もあるが村の子供であることに変わりはないぞい」

「聖なる加護のある教会ならいいだろう。まずはそこで様子を見て、大丈夫そうなら…」

 

話し合いというかなんというか、女性陣と権力者は互いに譲らず、

第三組目は譲歩案のはずだけど女性陣も権力者も譲らないから譲歩案にも移らない。

 

僕個人の主張なら勿論、アリスは自宅に住むべきである。

だけど私欲のある権力者二人はともかく村を守るジンク達の気持ちは分からなくもない、

実際は汚染なんてないけど整合騎士のことを明かさない以上は仕方がない。

間を取って譲歩案というのも内容的には悪くない、

他の村の人達だって自分達の身は安全にしたいけどアリスのことも気に掛けているんだから。

 

セルカは言い合いをしている大人達を無視してアリスにくっついたままだ。

まるでもう離れない、遠くへ行かせない、というような感じで。

アリスもセルカを優しく抱き締めていて、ただ大人達の交わしている言葉を聞いて複雑そうな表情を浮かべている。

女性陣達の言葉は純粋に嬉しくて、権力者の言葉は悲しくて、衛士の言葉は整合騎士だからこそ理解できて、

村のみんなの言葉の二つの思いも察せられる、だから揺れて、アリスは自分の主張をしない、出来ない。

ただ、これが大罪人としてここに来ていたら問答無用で追放だったのかもしれないし、

整合騎士としてくるか明かすかをすれば“アリス”という個人を見る人は少なくなるだろう。

 

結局のところこの状態が一番まともなのかもしれない。

それにしても、僕は大切な恋人のことなのに随分と冷静で居られるなとも思った。

でも、同時にそうしていないといけない気がしてきた。アリスが不安定だからこそかもしれないけど。

 

さて、だからといってこれ以上長引かせるのは良くないよね。みんなにも天職があるし。

 

―――パァァァンッ!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

「みなさん、意見はもう十分出揃ったでしょう?

 これ以上の意見や提案も無いようですから、村長であるガスフトさんに決断を下してもらいましょう。

 決定権は村長にしかないですからね」

 

力を込めて一回だけ掌を合わせるように叩けば、大きな音に全員が目を見開いて驚き、言葉を失う。

静かになったことで僕はガスフトさんに決断を求めた。

村長であるだけでなく、父であり、人である考えも捨てていなければ、きっと大丈夫だと思ったから。

 

「……皆の考えは良く分かった、私はこれらの意見を纏めようと思う。自身や村の心配もアリスの心配も分かる。

 よって、村の外に家を建て最初の一年間をそこで過ごし、何も起こらなければ次の半年間を教会で過ごし、

 ここでも何も起きなければ我が家で再び生活していくこととする。これならば良いだろう、どうかな?」

 

要は経過をみて問題が無ければそれでいいだろう、ということであり一番の解決策である。

僕としてはもっと短くてもいいと思ったが、そこは村人達の総意で決まるものだ。

 

「いますぐと言いたいですが、貴方がそう言うのであれば仕方がありません…」

「まぁ、それならば構わんが…」

「そうだ。それが良いな」

 

どうやら決まりらしいけど、ガスフトさんは最後にアリスを見て目で問うた。

 

「わたしも構いません。決定に従います…」

 

寂しそうに、それでもしっかりと答えたアリス。これまでの話だと僕は自宅ってことになっちゃうよね。

でも、カーディナルさんの手紙による僕は護衛兼監視役、それならいま動かないといけないかな。

 

「それなら、僕も彼女と共に住まうことにします」

「「「「「「「「「「はっ…?」」」」」」」」」」

「ユ、ユージオ///?」

 

僕とアリスを除く全員が揃って一声上げて固まり、アリスはいきなりのことに頬を染める。

 

「僕とアリスは男女の交際をしていますし、僕達の仲は最高司祭様も認めてくださっていますから。

 だからこそ僕が彼女を護衛し、同時に万が一の対策になっているんです。勿論、アリスが嫌じゃなければですが」

「だ、だからって…こ、この場で言わなくても…////// 嫌じゃ、ないけど…//////」

 

こういう場だからこそなんだよ、少なくともいまはこうした方がいい。

アリスを一人にはしたくない、僕の我儘だけど今はこの流れを利用させてもらう。

 

「い、いや、しかし…」

「僕にはダークテリトリーの汚染を止める(すべ)もありますし、なにより彼女が否とは言っていない。

 これは僕達が決めたことなので、手紙にもある通り第三者の介入は控えていただきたい」

 

笑みを浮かべて手紙の一文を告げれば、ガスフトさんは口籠ってから「分かった」と一言告げた。

ただ、やけに周囲が静まり返っていたことには少し気になった。

 

「(ユージオ、やっぱりキリトに似てきているような気が……わたし、色々な意味で不安になってきたかも//////)」

 

まぁこれで長ったらしい会議も終わりになったし、やることをやらないといけないな。

会議後、セルカが僕とアリスに馴れ初めを聞きに来て、

僕のことを「兄さんか兄さまって呼んだ方がいい?」と聞かれた時は揃って真っ赤になってしまった。

 

 

 

 

僕は母さんが、アリスはリアッカさんとセルカが作った昼食を取った。

久しぶりの母さんの料理は凄く美味しいと感じて、アリスも喜んでいた。

とはいえ、僕とアリスは村の外に家を造らないといけないから早速行動に移った。

 

ガリッタ爺さんが造り方を教えてくれるということで、

僕とアリスは幼い頃の秘密の遊び場だった深い森の奥の日が当たる草地に家を建てることにした。

さすがに一日や二日で出来あがるわけじゃないからそれまでは馬車を寝床に使うことにした、大きい馬車で助かったよ。

優先度の高い樹を選んで切り倒し、材木にしてガリッタ爺さんの指示を受けながら家を建てた。

整合騎士としての力などのお蔭もあって、十日ほどで完成したのは僥倖かな。

ガリッタ爺さんはさすがに僕達の力に驚いていたけど。

 

家の完成に伴って、僕とアリスはセルカと一緒にザッカリアの街へ馬車で買い出しに出かけた。

セルカは初めて訪れる街の目新しいものにはしゃいで、アリスもあの話し合いの時からそれなりに経っているし、

これからの生活が楽しみなのか凄く楽しそうだ。

カーディナルさんから貰った資金で揃えるんだけど、僕もアリスもあまりの額に頭を抱えたね。

 

「それじゃあ買い物ついでにセルカも案内しようか」

「そうね。セルカ、行きましょう」

「うん、姉さま。あ、ユージオ、アレはなに?」

 

初めての街に目を輝かせるセルカに色々と教えながら、僕達は生活に必要な物を購入する。

 

「食器類、スプーン、フォーク、ナイフ、よし揃ってる」

「調理道具も買いに行きましょう」

「そのあとは食材も買いにいかないと」

 

料理と調理、食事に必要なもの、野菜や肉に小麦粉などの食材を買っておく。

 

「テーブルと椅子も買いに行こう。いいのがあるかな?」

「明りのためにランタンと蝋燭も必要よね」

「薪割りの斧とかも必要でしょ。ユージオの手に合ったものじゃなきゃね」

 

購入して持てなくなっては馬車に乗せにいき、街の衛士にまで手伝おうかと問われるほど。

 

「服とかも収納しないといけないから、衣装棚を見にいきましょう」

「小さくてもいいから本棚と本も買っておけば?姉さまもユージオも読むでしょう?」

「アリスは鏡台が欲しいでしょ?そっちもいこう」

 

衣類も多くはないし本も少しあればいいから、小さめの衣装棚と本棚を買う。

僕とアリスで別けて持って、セルカは本を持ってくれた。

この光景を見た衛士は多分だけど自分達よりも若い僕とアリスが軽々と持っているのを見て呆然としていた。

 

「あとはベッドだけかな」

「ユージオ。ベッドは、その、大き目の物を、一つで…///」

「そうだね……え? ちょっ、はっ…そういえば、寝室にベッド二つは入りきらないはず!? まさかアリス…!」

「折角の二人暮らしだもの、いいでしょ…///?」

「う、うん…///」

「姉さまとユージオって、そこまで…///」

 

アリスが寝室はそこまで広くしないって言ったのはこういうことだったんだ/// でもまぁ、断る理由はないんだけどね。

というかセルカにも聞かれているよ、これは恥ずかしい。

ともかく、大き目のベッドを一つ購入して僕達は街での買い物を終わらせた。

ただ、帰りの道中が静かで気まずくなったのは仕方が無いということにしたいね。

帰り着いたのは既に夕方に差し掛かった頃、先にセルカを村まで送り僕達は建てた家に帰ってきた。

 

完成した家は若い僕達が二人で生活するには十分なものだと思う。

 

まずは居間と食堂と台所を兼ねた部屋、ここにテーブルと椅子と窓の近くに二人で座れるくらいのソファを置き、

小さな棚には食器類などを置いているし、倉庫の側に出られる扉もある。

寝室の窓寄りに二人で寝る為の大き目のベッドを置いて、窓側の方に小さな木製の台座とランタンを、

反対側には折り畳み式の鏡台を、その横の壁に沿わせて衣装棚と本棚を置いたことで寝室の内装が出来あがった。

隣の部屋には『青薔薇の剣』と『金木犀の剣』と鎧を飾り、普段は使わない道具類もここに納めている。

この部屋と廊下を挟んだ先には風呂場も造っている、教会で風呂に入っていたアリスにとっては必須なんだと思う。

外には小さな倉庫が二つあって、一つは食材を保存しておくものでここは神聖術の凍素で作り出した氷を使い冷蔵貯蔵庫にし、

もう一つは割った薪を置いておく倉庫、そのさらに隣には二頭の馬の為の馬小屋がある。

以上が僕らの完成した家の内装だ。

 

 

 

全部の作業が終わった頃にはもう完全に夜になっていて、疲れもあるからご飯を食べて早々に眠ろうということになった。

ただし、問題というか今日までの生活で分かったことが一つ。

 

「うぅ、ごめんなさい、ユージオ…///」

「はは、仕方が無いよ。幾ら整合騎士でも料理をしたことがないなら、当然というか」

 

そう、アリスは料理が一切できない。

最初の時に至っては熱素で焼いて消し炭になったし、包丁で野菜を切ろうとすると危なっかしくてすぐに止めた。

僕も上手い方じゃないけど出来ないわけじゃないから二人でセルカに教えてもらうことにしているけどね。

そういうわけで今日は僕が簡単なものを作った。

 

「ほら、今日まで家を建てて買い物もしたから疲れただろう? しっかり食べて、明日からゆっくりしよう」

「うん、そうね。それじゃあいただきましょう」

 

僕達は夜の食事を取って、寝間着に着替えてからベッドで眠りについた。

僕もアリスも疲れていたのか、互いの温もりを感じながらすぐに意識が落ちていったと思う。

 

 

 

 

カーテンから差し込む朝の陽射しに気付いて、目が覚めたら……アリスが抱きついていた。

こういうこともあるかなぁ、とは思っていたけどまさかいきなりとは思わなかったね。

やろうと思えば抜けだせるんだけど、憚られちゃうのは彼女の寝顔が可愛いからにしよう。

 

「独り占めは恋人の特権、だったね…別に遅くなってもいいか、休みに来ているんだし」

 

早く起きないで済むのは久しぶりだし、アリスの温もりを感じていたいから二度寝をする。

その時に彼女を抱き締めたら、気持ち良さそうに微笑んでいたのが分かった。

 

次に起きたらお昼頃になっていたことにはさすがに驚いたね。

 

「ユージオ、おはよう……っていう時間じゃなかったわね」

「おはようでいいと思うよ。最近は家を建てて、馬車の中で寝ていたからちゃんと眠れてなかったのかも」

「わたしもぐっすり眠ってたわ。でも、途中で温かくなって、なんだか良い夢を見られた気がするの」

「あ、それ僕がアリスのこと抱き締めた時かも」

「そ、そうだったの…////// も、もうお昼の時間だから食事にしましょう/// 教えてね///?」

 

照れちゃったみたいだね、食事にしようと誤魔化したアリス。

人前とか男女の営み、とかは僕も照れるし恥ずかしいけど、二人きりならある程度の余裕はある。

だから、キリトが婚約者のアスナさんと朝に必ずしているらしいことを真似させてもらう。

 

「アリス」

「んぅっ//////!? んちゅ、んっ…//////」

 

キリト曰く“朝の口付け”が彼とアスナさんの日課らしい。

驚いた様子のアリスだったけど、すぐに僕に合わせてきた。

深いものじゃなくて、だけど何度も味わうかのように啄ばむように口付けを交わしていく。

どちらともなく離れれば、アリスは抗議するように上目遣いで可愛く睨んできた。

 

「いきなり、だなんて……驚かさないでよ…//////」

「嫌、だったかな…///?」

「嫌なわけがないわ、本当に驚いただけなの/// でも、どうしていきなり///?」

「キリトがさ、婚約者のアスナさんと日課でしているって聞いたから、どうかなぁって///」

「キリトはこれを日課にしているの///?

 た、確かに、朝からこんなに、幸せを感じられるのは……で、でも、これを毎日って、駄目になっちゃいそう…///

 いや、だけど…///」

「嫌じゃないなら毎日しようか。それじゃあ僕は先に顔を洗ってくるから、アリスはその間に着替えておいてね」

「え、あ、うん……って、決定なの///!? ユージオっ///!?」

 

とりあえず僕は部屋から出て顔を洗いに行った。

着替えてきたアリスと入れ替わりで僕も普段着に着替えて、一緒に昼食を作ってから食べた。

 

 

 

家が完成してから二日ほど経った頃、突如として彼女達(・・・)はやってきた。

 

「氷華!?」「雨縁!?」

 

そう、空を駆けて他にも空いている草地に降り立ったのは僕の飛竜『氷華』とアリスの飛竜『雨縁』だった。

なぜ彼女達がここに来たのか、それは氷華の頭絡に挟まれていた手紙によって解決された。

手紙の主はカーディナルさんからで、こう書かれていた。

 

『ユージオとアリスへ。二人とも息災か?

 元気にやっているのならばそれで良い、困ったことがあれば相談してくれればよい。

 さて、何故に氷華と雨縁がそちらへ来たのか、それはそのものらが二人の許へ向かいたいという意思を示したからじゃ。

 お主らが故郷へ帰ってからというもの、二頭共に元気が無くての。

 大人しい二頭の性格を考慮し、お主らの許へと向かわせた次第じゃ。

 ゆっくりとしているところに申し訳なく思うが、どうか氷華と雨縁を傍に置いてやってほしい。

 村の者達にはアリスが世話をしていた飛竜だとでも言っておればよい、では良しなに頼む。カーディナルより』

 

「……だってさ、僕は構わないよ。むしろ大歓迎だし、もう少し接してあげたかったから」

「わたしも大丈夫。雨縁ってば、仕方が無い娘ね。窮屈でしょう?頭絡と鞍を外してあげるから、屈んでちょうだい」

 

アリスは慣れた手付きで頭絡と鞍を外していき、僕も馬とは違うから四苦八苦しながらも氷華の頭絡と鞍を外した。

それと彼女達の拘束術式がまだ掛けられているらしくて、アリスが雨縁の術式を解除して、

僕はアリスに解除術式を教わってから氷華の拘束術式を解除してあげた。

二頭はすっきりしたかのように身動ぎしたあと、再び空に舞い上がった。

何度か姿を消して何をしているのかと思えば近くの枯れ草を咥えて持ってきて、家の側に自分達の寝床を作っていた。

微笑ましくて僕もアリスも同時に笑いだしたんだ。

 

 

 

そして、氷華と雨縁を迎えた後、僕達は改めて二人で静かに暮らしている。

 

一つ、アリスには言っていないことが…いや、言わないように言われていることがある。

それは氷華が持ってきたカーディナルさんの手紙、僕だけが読むようにと書かれた文。

隠されていた、もう一つの手紙の内容、それは…。

 

『ユージオへ。アリスは勿論、他の者へも一切の他言を無用とする。

 キリトより連絡がきた、内容は帰還した元の世界にて敵からの襲撃を受けているというもの。

 キリト達を襲撃してきた者達の狙い、それは“アリス”じゃ。彼女を絶対に守るのじゃ』

 

願って止まなかった友からの知らせは、凶報も兼ねていた。

 

アリスがこれを知れば、彼女は間違いなく自分を犠牲するだろう。

させはしない、そんなことは絶対にさせない。アリスは守る僕の全てに懸けて。

だから、いまのこの幸せな一時を大事にしよう。

 

ユージオSide Out

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

あとがき

 

九州在住の自分は先日の地震に驚きながらもなんとか書きあげることができたので最新話を投稿しました。

 

無理無茶無謀ではない、自分のペースで書いているから。そして待ってくれている皆さんがいることを思えば書きあげられた。

 

まぁ暗い雰囲気はゴミ箱にポイするとして、なんとか書けました~!

 

さて、原作ではただのアリスで大罪人として村に帰ったのですが本作ではカーディナルの口添えもあって違う展開に。

 

「でもそれなら村に住まわせたらいいんじゃないの?」とか皆さん思うでしょうし、自分も最初はそうしようかなと思いました。

 

ですがね、そうしたら………ユージオとアリスを同棲させてあげられないじゃないですか!(本気顔)

 

イチャイチャが書きたいんですよ、二人をラブラブさせたいんですよ!

 

地震でみんな暗いですし、自重しろとか思われるかもしれませんが断固として断る。

 

いまだからこそ糖分と癒しを捧げたい! ならば書くのはイチャラブだ、異論は認めぬ!

 

そういうわけで楽しんでいただけていれば幸いです、自分も余震に負けずに頑張ります!

 

次回もまだほのぼのイチャイチャでいきますがあと2,3話ほどで戦闘に入っていくかと思います。

 

アバターの募集は今回出た新刊であったようにリーファ達の介入前くらいで締め切ることにしました。

 

未だ詳しい募集要項を見ていない方はプロローグのあとがきを参照してください。

 

長くなりましたが次回もよろしくお願いします・・・。

 

 

 

4月18日追伸

ラグナロクの時のアバターで参加するという方はデータを送らなくても構いませんが、

設定の変更はしませんし、せめて黄昏編のデータで参加するという旨をお知らせください。

連絡がなければ基本不参加としますのでそちらもお願いいたします。

 

 

 

 


 
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