No.83833

スノーマン

望月 霞さん

短編第3弾になります^^
2006年の冬に書いたと思いますが、これは童話風に描写してみました。
とある国の冬に起こった、雪だるま中心の物語です。
今回も楽しんでいただければ幸いです^^

2009-07-12 06:44:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1053   閲覧ユーザー数:949

 ここはとある世界のとあるところ。 ここが世界のどの辺りにあるのか、この地の名前すら、誰も知らない。 だが、外地に住んでいる人間がたまたま偶然に見かけたのは、いつのころかのクリスマスであった。

 「パパーッ!! あっちにね、かわいいお人形さんがいたのーっっ!!!」

 「お人形? こっちの店じゃなくてかい?」

 「ちがうのーっ!! お人形さんがね、なかよくおうたをうたってたんだよっっ!!!」

 ……人形が歌を歌っている? どういうことなのだろうか。 一応、子供に話を聞いてみるが、どうも言っていることがおかしい。  何故ならば、着ぐるみや操り人形ではなく “本物の人形” が動いているらしいのだ……。 と言っても、どうせ子供の言うことである。 信じる大人など、誰ひとりとしていなかった。 ここで誰かが好奇心に任せて様子を見てきていれば、彼らの気まぐれな外出に付き合えたかもしれなかったのに ――。

 

 

 

 「ふんふふ~んふふんっ♪」

 「くるるくっくる~んっ♪」

 「ぴーちちぴちぴっぴっ♪」

 と、木の人形とわらの人形、そしてぬいぐるみなど、様々な人形が集まり輪を作って歌を歌っている。 人形によって話す言葉が違うので、音程はあっていても、はたから聞いたらただの雑音にしか聞こえなかった。 だがもちろん、これらはただの “人形” である。 誰かが操って遊んでいるのだ。 と言っても、人形に糸がかかっているわけでも、背中にゼンマイがあるわけでもなかった。 では、いったいどのようにして人形が動いているのだろうか?

 ……答えはこうである。

 「おもしろいっち! ニンゲンってこんな物を作っているんちねー!!」

 「かわいいっち! どうやったら作れるんちね?」

 「ニンゲンは火を使うから、オレっちたちには作れないっち……」

 「これは火を使わないっちよ? ボクらでも作れるっち!!」

 と、語尾にヘンななまりがある、独特の話しかたをする何か。 見てみると ―― 何と雪ダルマである! 雪ダルマが話しているのだ!!

 「でも、オレっちたち。 外界に遊びに来たことがバレたら氷付けにされるっち!」

 「いやいや、そんなもんじゃすまないっちよ! きっと頭を持ってかれちまうっちさ……」

 「大丈夫っち! 外界には誰も来ないっちっ!! だからバレないっちよっっ!!!」

 「そうそうっち! 思う存分遊ぶっち!!」

 と、4体の雪ダルマがそれぞれ言う。 よく見ると、顔は同じであるが、それぞれ違う特徴があった。 それは、普通の雪ダルマにはおそらくついていないだろう、人でいう背中と思われるところにある “羽” である。 「ピクルの羽はいいっちね! ボクもその色がいいっち!!」

 と、ひと際元気そうな、緑色の羽を持った雪ダルマが言う。

 「そぉーっちか? ピクルはケイシャの羽の色がいいっちー」

 と、ピクルと名乗る、赤い羽根を持った雪ダルマは、自分に向かって言った雪ダルマ ―― ケイシャに言った。

 「ねぇねぇ! この人形にも羽をつけてみるっちよ!!」

 と、遊び心でいっぱいの雪ダルマ ―― ヨークが言う。 この雪ダルマの羽の色は、澄み切った空のような水色である。

 「羽? どうやってっち??」

 と、薄紫色をした羽をした雪ダルマが言う。 この雪ダルマは、どうやら好奇心旺盛のようで、ヨークが行っている作業を、じーっ、っと眺めている。

 「大したことないっち。 ただ、これで羽をつけてあげるだけっちよ、キララ」

 という返事を、キララにした。 そのように言われたキララは、頭を少し右回りに動かして、よくわからない、といった行動をとった。

 「ピクルー! ケイシャー! その人形も持ってきてっちーっ!!」

 「わかったっちーっ!!」

 と、ヨークは羽をパタパタさせながら、2体の友達に頼んだ。 その間、ヨークは何やら準備をし、キララはその辺で、ボヨ~ンボヨ~ン、と跳ねて遊んでいる。その数10秒後、ヨークは180度に顔を回し、

 「準備できたっちよ~っ!!」

 と、ジャンプしながら楽しそうに皆を呼んだ。 呼ばれた3体は、ヨークの元へと集まり、何やら相談をしている。 ……はてさて、これから何が始まるのだろうか?

 「―― ということなんだっち!」

 「へぇぇ~! これでボクたちが生まれたんでっち?」

 「そうそうっち!  だから、これをつければこの人形たちもオレっちたちの仲間入りっち!!」

 「いいっちねーっ! ぼくっちも賛成でっち~!!」

 「ボクもっち!!」

 「ピクルもっち!!」

 と、キララ、ケイシャ、ピクルの順で元気な返答を返す。

 新しい遊びをするために、4体は準備に取りかかった。 それは、ここに持ってきた人形たちを彼らの仲間に加えて独自の遊びをする、というものらしい。 まずは、彼らの象徴である “羽” を人形たちにつけてあげた。 つけかたは至って簡単で、まだ命を吹き込まれていないそれを背につける、というものだ。

 「さてっと! つけ終わったっちか~!?」

 「こっちは終わったっちよー!!」

 「こっちもっちー!!」

 「OKっち! じゃあ、始めるからこっちにきてっち!!」

  と、ヨークは皆に向かって叫んだ。 それを聞いたピクルたちは、急いでヨークのところへと急ぐ。 全員がそろったのを見たヨークは、何かをつぶやく。 すると、ヨークが何かを言い始めてから、辺りが白い光がほのかに色づいていった。 だんだん、雪のような光が多くなっていき、しまいには周りが見えないぐらいの量になる。 だが、次の瞬間、光の結晶は、ぱぁっ、っと飛び散ってしまった。

 「あ~ぁ、キレイだったっちのに……」

 「ぬひひ、真ん中を見てみるっち!!」

 「あーっ!!」

 「ど、どうなってるっち~っ!?」

 と、ケイシャとキララがほぼ同時に叫ぶ。 空を見ていたキララが、何かと思って見てみると、

 「に、人形が空を飛んでいるっちーっっ!!!」

 「さぁさぁ、オレっちたちもいくっちよ!!」

 と、ヨークが最初に空へと旅立つ。 目的は当然、空に浮いている人形たちだ。 呆然と見ている3体に向かって、ヨークは、

 「何してるっちー! 早く空で遊ぶっちーっ!!」

 と、短い腕をぶんぶん振りながら、3体に呼びかけている。 はっと我に返ったピクルたちは、あわててヨークの後を追った。

 

 

 

 空に広がる色とりどりの羽は、中心から外れたところから見れば幻想的で、不可思議な空模様だった。 ただ、その中に繰り広げられていることはいたって普通のことであった。

 「わーいっ!! 楽しいっちーっっ!!」

 「これはいいっち! ……うわーっ、人形たちの羽がキレイだっちねー!!」

 「ねぇねぇっち! ここから 『マチ』 って近いっちか?」

 「近いっちよ。 どうしたっち? キララ」

 「この人形たちは返さないといけないっち……。 だから、ごめんなさいって意味で、このまま行かないっちか? きっと、ニンゲンたちも喜んでくれるっちよ!」

 「それはいい考えっち! じゃあ、ちょっくら行ってみるっち~!!」

 おおーっ! と、キララの提案に、全員が賛成した。

 ……本来ならば、人間に姿を見られてはいけないのだが、彼らの場合生まれて間もないところから、そのあたりのことが理解できていない。 この後が大変である。 まぁ、それが幸と出るのか不幸と出るのか、何ともいいようがないのだが。

 

 

 

 だが、彼らの空の旅は人間たちがたくさん住んでいる町の上で終わった。 というのも、大人たちがかけつけてきて、彼らを強制送還したのだ。

 「何考えてるっちか! ニンゲンに姿を見られなかっただけでもよかったっちが……」

 「あれほど外に出てはいけないって言ったでちっ!! もしかしたら、溶けてなくなっていたかもしれないでっちっっ!!!」

 「大体、他雪ダルマ様ならず他人様のモノを勝手に持ち出すなんて、そんな風に固めた覚えはないっちよっ!!」

 「こんな魔法まで持ち出して! 人形を飛ばす以外に使ってないでっちねっ!? 使ってないでっちねっっ!!??」

 あうう……、とキララ、ケイシャ、ピクル、ヨークの4体は、親たちから野次の台風を受けていた。 いや、雷暴風、言ったほうがいいかもしれない……。

 「まあまあ、待てっち」

 と、しおれた声が部屋に聞こえる。 ふとそちらのほうを見てみると、ひときわ大きな帽子をかぶった、大きな雪ダルマがいた。 大きい雪ダルマは、帽子をつかみながら、

 「やってしまったものはしょうがないっち。 その辺でやめたらどうっち」

 「そうそうっち! かわいい子供のイタズラっちっ!!」

 「そうそうっち!!」

 と、4体。 しかし、それ以上は親雪ダルマたちの視線で阻まれた。 すると、大きい雪ダルマは、

 「そうかそうか。 では、こちらも “カワイ~おちおき” をするとしようかのっち」

 「―――― っ!!!」

 

 

 ……そのあと、彼らの悲痛な叫び声が響き渡ったことは言うまでもない……。

 

 

 

 この後、人間たちの町は人形が返った家では大騒ぎになっていた。 人形が歌ったり空を飛んだり等、誰の仕業かつきとめようと、テレビ局まで出てきた始末だ。 しかし、結局のところはわからず、そのうち人々の間から薄れていった。

 それ故なのか、後にこう言い伝えられるようになる。

 

 

 

 ―― クリスマスの時季、人形が勝手に動き出すのは “雪の妖精 ・ スノーマン” の仕業である ―― と。


 
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