華琳は蜀での用事を終え、成都城の外城門を背に許昌への帰路に就いていた。馬車に揺られる彼女は頬杖を突いて外を眺めながら、滞在中にふと気になる事があったのだ。
(そういえば朱莉・・・なにやらふっきれた顔をしていたわね・・・)
彼女が誇る『魏の三羽烏』の一人・凪の姪で今回自信の護衛を務める若手の兵のうちの一人・朱莉である。
彼女ははたから見ればいつもと変わらない感じであるが、ある程度親しい仲だと彼女がウキウキとしていることが分かる。
「成都で何かあった・・・とみるべきね。ふふふ、今夜の宿で吐かせましょう」
魏の覇王様は馬車の一室で妖しく微笑んだ。
魏の一行が本日の宿泊先の城に入城し、夕食の後自分の警護番が来るまで同僚との相部屋で一人になった朱莉は荷物の入った鞄から紙を取り出し、筆の毛先を墨につけた。
「文通・・・ですか?」
成都を立つ前日、劉永が発した聞き覚えのない名に朱莉は首をかしげた。場所は2人が再会した大樹の根元である。
「うん。昔おとう・・・じゃなくて父上が話してくれたことなんだけど、天の世界では手紙を遠くにいる人に送って親交を深めたりしていたんだって」
三国同盟が成立し、各国の治安が安定してきたころ伝令兵の精度向上を兼ねて郵便制度を確立させた。
「前○密すげーな・・・」
文案を完成させた一刀はぐったりとしながら『郵便制度の父』と呼ばれた偉人に改めて敬意を表したとか・・・
「なるほど。郵便を使うのですね・・・それで宛先はどちらにすれば?」
「成都城の僕の部屋にしてくれればいいよ。朱莉の宛先は?」
「私は許昌城の女子兵舎の103号室を宛先にしてくださればいいです」
お互いの宛先を交換して、朱莉は明日の帰国の準備のため西の丸に戻って行った。劉永は明日以降、朝から地方都市の視察のため見送りができないのでここでお別れとなった。
(秋蘭様、任務完了です!)
朱莉は内心小躍りしながら西の丸へと戻って行った。
この約27時間後、彼女は覇王様の尋問を受けるのだが―――
神ならぬ彼女には、その事を察知できるはずもなかったのである。
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朱莉ちゃんの恋の行方は!?
そろそろ円を出さなきゃなーって思い始めている13弾です