第1章 1話 出会い
中央では黄巾が荒れ狂い、涼州等の国境では五胡との小競り合いが続いていた時代
蒼天を貫くように流星が降ってきた。
「母様、あれ流星じゃないかな?」
茶髪を後ろでまとめた少女が傍に居た妙齢の女性に声をかけた。
「昼間に流星なんて吉兆かしら。それとも凶兆かしら?」
妙齢の女性は空を見上げながら不思議そうな顔をして言ったがなにやら思い出したように少女の方を振り返り言った。
「流星と言えば、翠。天の御使いの噂知ってる?」
「天の御使い?」
「この間出入りの商人から聞いたのだけど、都の方で流行ってるらしいわよ。なんでも流星と共にに降り立ち乱世を鎮めるって話しらしいわ。」
「ふ~ん、流星と共にねって!母様あの流星こっちに向かってくる!逃げなきゃ。」
「間に合わないわ!伏せなさい。」
2人は地面に伏せ、やってくるであろう衝撃に身構えていた。
…………
「あれ?どうしたのかな。」
「衝撃がこないわね?」
流星はこちらに向かって落ちてきていたはずなのにいつまで経っても落下の衝撃はこない。
狐に摘まれたような顔をしながら顔を上げると何もないのを確認し2人は立ち上がった。
「変ね~、どこにも流星が落ちたような跡はないし…」
2人して周りを見回してると少女が何か見つけたようである。
「母様!あそこだれか倒れてる!」
「えっ、だれも居なかったはずだけど?」
少女が指差す方を見てみると確かに誰か倒れているのが見えた。
母親の方が怪訝な顔をしながら考え始めると少女がいきなり駆け出した。
「行ってみよう。」
「待ちなさいって…まったく猪なんだから、だれに似たのかしら。」
ふっと溜息をつくと少女の後を追いかけていった。
「……見たことない服着てるな。太陽の光でキラキラしてら。」
倒れている男?の首に手を当てて脈を診る。
「うん、生きてるようだ。気を失ってるだけか。」
そこに追いついた女性が声をかけた。
「翠!あんなことがあった後でしょ、考え無しに行動するのはやめなさい。」
「大丈夫だって。気絶しているみたいだよ。でも母様見てくれよこの服。こんなの見たことないよ。どこの貴族かな?」
「あら、本当キラキラして私も見たことないわ。」
「でもどうしよう、母様。気づきそうもないよ。」
しばらく考え込んだ後、やれやれとばかりに
「仕方ないわね。城に連れて行きましょう。」
「えっ、いいのかよ。」
「仕方ないでしょう。このまま放置する訳にもいかないし。翠、馬を連れてきて。」
「わかったよ。」
少女は馬のところへ駆け出していった。
「流星と共に降り立つ天の御使いか…まさかね…」
少女が馬を連れてくると気絶している男を馬に乗せ、2人は城へと帰っていった。
こうして天の御遣いこと北郷一刀と錦馬超こと馬超(真名:翠)、涼州の象徴と謳われた馬騰(真名:菖蒲)は出会い、この外史が動き始めるのである。
……一刀はまだ気絶しているが……
…………………
次の日の朝。
兵から昨日保護した男が目を覚ましたと聞いた馬騰は馬超を伴い部屋を訪れていた。
「おはよう。どうやら目が醒めたようね、君」
「へっ?」
「気分はどう?怪我はしてない?」
「え、ええと…」
見知らぬ部屋に居ることに混乱していた一刀は突然、馬騰が馬超を連れて部屋に入ってきたことで、頭の中が余計にこんがらがる。
「…どちらさん?」
「ん?私?私の名は馬騰。それからこの子は馬超。以後よろしくね」
「ばとうさんとばちょうさんですか・・あの・・俺どうしてここにいるんでしょう?」
「それは私達の方が聞きたいんだけど、君は昨日、町の外の荒野に倒れていたのよ。それを私達が見つけ連れてきた訳。」
「荒野に倒れていた?」
(どうなってんだ?部屋で寝てたはずなのに目が醒めたら中華風の部屋に居て、だれか来たと思ったら、ばとうにばちょう?中華風の名前だよな。見たところ着ている服も中華風だし。ここ中国?でもいつの間に来たんだ?…)
「あの~ここ…どこ?」
「ここは涼州武威。私の城よ。」
「り?涼州?……ここ中国なんですか?」
「ちゅうごく?、なに?」
「えっ、中国じゃないんですか?」
「涼州だって言ってるだろう。それよりお前の名は何て言うんだ。後、どこの出身なんだ?」
「ああ、北郷一刀と言います。日本は東京の浅草出身です。」
「姓が北で名が郷、字が一刀。変わった名ね。」
「いえ、姓が北郷で名が一刀です。字っていうのはありません。}
「字がない?後、にほん?とうきょうのあさくさ?そんな邑、聞いたこと無いわ?それ、どこの州にあるの?」
「ええと…ちょっと待って。状況が全くわからなくて混乱してきた…」
馬騰の質問を遮り、思わず頭を抱え込む。
(どういうことだ?どう見ても中華風なのに中国じゃない?それに日本を知らない?アジア圏で日本を知らないなんて。んっ、ばちょう・・馬超か?確か三国志の武将の名だよな。…まさかな、三国志の時代にタイムスリップなんてありえないよ。でも…)
「あの~…今は後漢王朝ですか?」
「はあ?何言ってんだお前?」
「あはは、そんなはずないよね。」
「そんなこと当たり前だろ。今は劉宏陛下の御世だ。」
「えっええぇぇぇぇ!」
「きゃっ」
「うわぁ!」
まさかと思っていたことをあっさり肯定され思わず大声を出してしまう一刀であるが、突然の大声に驚く2人を尻目に我知らずとばかりに考え込む。
(まさか本当にタイムスリップ?でも嘘ついてるようにはみえないけど。しかし待てよ。確か三国志に出てきた馬騰や馬超は男のはずだ。ということはパラレルワールドってこと?信じられんな~。でもな~そう考えれば辻褄が合うんだよな…ぐふっ)
「こっこのばかやろう!いきなり大声出すな…あれ?」
「す~い~、せっかく起きたのにまた寝ちゃったじゃない。」
馬超が怒鳴りながら一刀を殴るとそのままぱったりとベッドに倒れ気絶した。
「仕方ないわね。翠、あなたついててあげなさい。起きたら連絡して続きをするから。」
「ええーー、そんな!」
…………………
その日の夜。
「…んっ、んん」
「おっ、やっと起きたか。」
「…んっ、君は…馬超?」
馬超は部屋の外に居た兵に一刀が起きたことを馬騰に知らせるよう告げると一刀の方を向き言った。
「さっきは悪かったな。でもいきなり大声出すお前も悪いんだぞ。」
「あっ、そうか。馬超に殴られて気絶したんだ…でもすごいパンチだったな。」
「ぱんち?」
「拳で殴ることだよ。…ってことはやっぱり夢じゃない訳だ。すごく痛かったもんな。」
「ふん、悪かったな。馬鹿力の暴力女で」
「えっ、そんなことないぞ。気絶した俺をみててくれたんだろ。馬超はやさしくて可愛い子だぞ。」
「かっ可愛いって…」
馬超は顔を真っ赤にして俯いてしまう。っとそこに連絡を受けた馬騰が入ってきた。
「気がついたようねって…翠、顔が真っ赤よ?どうしたの?」
「えっ、なんでもないよ。母様、なんでもない。」
「?…まあいいわ。では北郷君。朝の続きをさせてもらうわね。どうしてあんなところに居たのかしら?」
そう問われた一刀は意を決したような顔で口を開いた。
「えっと、どうやってここに来たのか、どういう目的を持ってここに来たのか。それは俺にもわかりません。だって自分の部屋で寝てたはずなのに目が醒めたらここに居たんですよ。俺が聞きたいくらいです。でも1つだけわかったことがあります。信じてもらえないかもしれませんが、どうやら俺はこの世界というかこの時代の人間じゃない。馬騰さん達から見ると1800年ほど未来から来た人間ということになります。」
「はぁ~、未来だと?お前狂人か?」
あきれた顔をしながら馬超が言うと、
「きっ、酷いなぁ~。いたって普通だと思うんだけど。」
と一刀は苦笑いしながら言った。
「翠、待ちなさい。北郷君、それを証明できる?」
馬騰は馬超を制しながら一刀に向かって言った。
「う~ん、証明ですか…」
何かを探すかのように体中をまさぐっていたがポケットに何かあったようでそれを取り出した。
「生徒手帳と携帯か。…これなんかどうです?」
生徒手帳を開くと中に貼ってあった自分の写真を見せた。
「へぇ~、随分そっくりな絵ね。」
「いや、絵じゃなくて写真といって俺の姿をここに写し取ってるんです。」
「どうやって?」
「う~ん、あっここで携帯だ。これで撮れますけど…撮ってみます?」
「よし!あたしを撮ってみろ。そのかわりどこかおかしくなったりしたらぶっ殺すかんな。」
「ぶっそうな奴だな。…よし撮るぞ。」
携帯のレンズを翠に向けるとボタンを押した。
♪♪
「わっ、なんだ今の音は?」
「それ、楽器なの?」
「よしっ、撮れた。楽器みたいなこともできますけど…ここを見てください。」
そういって2人の方に携帯を差し出し撮った写真画像を見せる。
「へえ~、翠がこの中に居るみたいね。」
「あたしこんな顔してるのか~。」
「すごいわね。妖術?」
「いや、妖術じゃなくて、科学の力ってとこかな。」
「かがく?なにそれ?」
頭に?を浮かべながら翠が聞いてきた。
「学問って言ったらわかる?…俺が居た世界は科学が進んでいて-------」
テレビや自動洗濯機、車や飛行機…そういった科学的な物に関して話を続ける。
「まあ話は分かったわ。今言ったことは俄かには信じられないけど、目の前でしてくれたその写真のことを考えると否定はできないわ。」
「じゃあ母様。どうするんだ?」
「そうね~、北郷君。どこか行く当てとか…ないわよね~。」
「…ありません。」
「じゃあ、うちで保護してあげるわ。」
「えっ、いいのかよ?母様。」
「ええ、いいのよ。彼は多分例の噂にあった天の御使いよ。まあそのことが涼州にとって利になるかはまだわからないけど、彼の知識、天の知識と言えばいいかしら。これは大いに役にたつわ。という訳で君の知識をこちらに提供するという条件を飲んでくれるならうちで保護してあげるわ。どうかしら?」
馬超と馬騰の話を聞いていた一刀だが聞きなれない言葉に疑問?の顔になる。
「あの~、その前に天の御使いってなんですか?」
「ああ、今、都の方で流れてる噂よ。流星と共にに降り立ち乱世を鎮めるって話しらしいわ。」
「えっ、そんな噂が流れてるんですか。そして俺がその天の御使いだと?」
「あたしは信じてないけど、お前が現れた状況が状況だけにな…」
馬超は一刀が現れた状況については説明する。
「はー、確かにそんな状況じゃ俺でも信じるしかないですね。」
「それでどうかしら?」
話を聞き終えた一刀は顎に手を当て考え込むがやがて徐に
「…俺の知識っていってもどれだけ役に立つかわかりませんよ?」
「君の世界はここと比べるとかなり進んでいるようね。ということは君にとってなんでもないことが私達にとっては大変役に立つってことがかなりあると私はみてるのよ。」
「…わかりました。どこまで役に立つかわかりませんが精一杯やってみます。」
「よし!それじゃあ…」
ぐ~と一刀の腹が鳴った。
「あっ」
「ふふふ、そう言えば北郷君今日まだなにも食べてないわよね。なにか持ってこさせるから食べたらもう寝なさい。いろいろあって疲れたでしょう。」
「はい、ありがとうございます。」
それじゃあと言うと馬騰と馬超は連れ立って部屋を出て行った。
2人が部屋を出て行くと一刀は椅子の背に持たれ大きく息を吐いた。
「ふう~、タイムスリップなのかパラレルワールドなのか。未だに実感は湧かないけど、少なくとも夢じゃないんだよな。…まあ為るようにしか為らんか。」
その後、運ばれてきた食事を食べるとベッドに入り横になった。
するとやはり疲れていたのかすぐ眠りに入っていった。
…………………
<あとがき>
始めましてhiroyukiといいます。
いろいろな方のSSを読んでる内に興味を持ち稚拙ですが書いてみました。
真恋姫無双の2次創作で一応馬超√のつもりで書いています。
何分初心者の初作品ですので誤字脱字やおかしなところ等あるかもしれませんが生暖かい目で見守ってください。
後、指摘やご意見等は大歓迎ですので宜しくです。
Tweet |
|
|
144
|
62
|
追加するフォルダを選択
真恋姫無双の2次創作です。特に何√と言えるものではなく敢えて言えば涼州√?かなと思ってます。オリキャラは今のところ2人の予定で1人は最後の方で出すつもりですのでほぼ1人ということになると思います。こういう小説は初めてですので不備等いろいろあると思いますがご指導宜しくお願いします。PS 茶々零様 許可を戴けましたので投稿することにしました。参考になれば幸いです。