No.837219

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク 改訂版

soranoさん

外伝〜ジェニス王立学園占拠事件〜後篇

2016-03-14 00:03:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:868   閲覧ユーザー数:812

 

~ジェニス王立学園~

 

「「………………………………」」

学園に潜入したヨシュアと銀は近くの建物に身を隠し、中庭の様子をうかがった。中庭では猟兵や装甲獣、人形兵器達が見回りをしていた。

(……どうやら建物の裏手を移動した方がよさそうだ。あとは建物にいる人質と大体の敵戦力さえ掴めれば……)

そしてヨシュアは建物に付いている近くの窓から様子をうかがった。様子をうかがうと、男子寮の入口では2人の猟兵達が談笑していた。

(男子寮内の敵兵は2名……。銀、そちらには誰かいるのか?)

猟兵達の様子を確認したヨシュアは部屋に付いている窓から様子を窺っていた銀に訊ねた。

(男子生徒2人と負傷している用務員がベッドに寝かされている。―――あの様子では致命傷ではなかろう。)

(そうか……まずは一安心かな……銀、僕はクラブハウスと本校舎の様子を調べてくる。そちらは講堂と女子寮の様子を確認して来てもらってもいいか?)

(―――よかろう。合流地点は侵入地点だ。私は先に行くぞ。)

ヨシュアの小声の言葉に頷いた銀は空間の中に消えるように入り、ヨシュアは食堂・クラブハウスに向かおうとしたがかなりの距離があることにヨシュアは気づいた。

(……仕方ない。一気に駆け抜けるか。)

ヨシュアは神速のスピードで駆け抜けて、クラブハウスに身を隠した後、クラブハウス内の様子をうかがった。クラブハウス内には4人の猟兵達がいた。

(敵兵士は4名……。何か起こった時のための待機要員といったところか。もしかしたら2階には人質がいるかもしれない。)

クラブハウス内の様子をうかがったヨシュアは先を進んで、本校舎の学園長室の様子をうかがった。

 

~学園長室~

 

学園長室内ではコリンズ学園長がギルバートを睨んで問いかけた。

「ギルバート君……。一体どういうつもりだ。何故このような狼藉を働く?」

「フフ……目的は2つです。まず我々は、王国内に更なる混乱をもたらすよう上から指示されていましてね。そこで我が懐かしの母校を舞台に選ばせてもらったんですよ。」

「……変わったな、ギルバード君。学生時代の君はあんなにも熱心に政治への道を志していたのに……。いつから君の情熱は失われてしまったのかね?」

ギルバートの答えを聞いたコリンズ学園長は厳しい表情で問いかけた。

「理想は理想。現実とは醜いものですよ。ミラと権力こそ全て……。ダルモアの秘書をしていた時に僕はその真実を悟ったんです。いずれは市長を追い落として後釜に座るつもりでしたが……遊撃士どものおかげで目論見がパーになりましてね。そこで、別の形で権力を掴むことにしたのです。」

「愚かな……」

「クク……何とでも言うがよいでしょう。そしてもう一つの目的は……リベール王家の姫君ですよ。」

「!」

ギルバートの目的を聞いたコリンズは表情には出さず、心の中で驚いていた。

「噂によると、この学園に在籍なさっているようですね。どの生徒がそうなのか教えて頂きましょうか?」

「……何を言っているのかさっぱり分からないな。確実に言えることは……この学園にそのような娘は存在していないということだ。君の完全な見込み違いだぞ。」

「はは、あくまでとぼけるおつもりですか。まあいい、時間はたっぷりある。じっくり見定めるとしましょう。」

「くっ……」

口元に笑みを浮かべて語るギルバートをコリンズ学園長は唇を噛みしめて睨みつけていた。

(彼が今回の首謀者か……。そういえば学園のOBという話だったな。)

学園長室の様子をうかがったヨシュアはさまざまな場所の様子をうかがい、生徒達がいると思われる教室の様子をうかがった。

(あ……)

窓から教室の様子をうかがうと、そこにはジル達がいた為、ジル達から状況を聞くためにヨシュアは窓をノックした。

 

~教室~

 

「なんだ……?」

「今……何か音がしなかった?」

「……こっちか?」

ノックの音に気付いたハンスは窓際に寄ると、窓の外にいる人物―――ヨシュアに気づくと驚いた。

「なっ……!」

(……静かに、ハンス。大声を上げたら見張りに気付かれるよ。)

大声を出しかけたハンスに窓の外にいるヨシュアは小声で警告した。

 

(わ、分かった……。……しかしお前ねぇ。この状況で大声を出すななんてかなり無茶なこと言ってるぜ?)

(はは……ゴメン。)

(ちょっとハンス……。窓の外に誰がいるわけ?)

ヨシュアとハンスが会話をしているとジルが興味ありげな様子で近づいてきた。

(おい、押すなって。あのな……絶対に大声上げるなよ。)

(はいはい。この生徒会長のジル様がそんじょそこらのことで大声を上げるわけが……)

ハンスの忠告を聞き流すような様子で頷いたジルは窓の外にいるヨシュアの姿を確認し

(~~~っ!!!)

ヨシュアの登場に驚いたジルが叫び声を上げそうになると、ハンスがとっさにジルの口を覆った。

 

(やっぱり大声を出しそうになったな……)

(そ、そりゃ驚きもするわよ!何よヨシュア君!どうしてそんな所にいるの!?)

(久しぶりだね、ジルさん。時間がないから手短に説明するけど……)

そしてヨシュアは今までの経緯と一人の男子生徒の報せで学園の異変を知ったことを説明した。

(なるほどな……。要するに、学園を解放するためにギルドが動いているってわけか。)

(そういう事。他のみんなが動揺しないよう君たちには伝えようと思ってね。)

(そっか、助かるわ。他にあたしたちで協力できそうなことはある?)

(そうだな……。現在、学園内にいる生徒と職員のリストが欲しい。救出時の助けになるからね。)

(なるほど)」

(オッケー。メモに書くから待ってな。)

ヨシュアの要請に頷いたジルとハンスは、現在学園にいる生徒と職員の名前を書き、窓の隙間からヨシュアに手渡した。

 

(……ありがとう。一時間もしないうちに本格的に動き始めると思う。それまで我慢してて欲しい。)

(ええ、分かったわ。)

(お前らの方こそくれぐれも気を付けてくれ。それと……無事片付いたら学食でメシくらい付き合えよ?今まで何をしてたのかみっちり話してもらうからな。)

(はは……分かった。お手柔らかに頼むよ。)

その後合流地点に戻ると既に銀が戻っており、銀と情報交換をしたヨシュアは銀と共にエステル達の所に戻った。

 

~ジェニス王立学園前~

 

「……以上が偵察で判明した学園敷地内の大まかな状況です。」

「そうか……。良く調べてきてくれたな。」

「ああ、これで何とか作戦が立てられるってモンだ。」

「しっかし、あのギルバードが学園を襲った張本人だなんて。しかもクローゼのことを狙ってたみたいですって~?”方舟”で会った時、足腰が立たなくなるくらいぶっ飛ばしておけば良かったわ!」

ヨシュア達の報告でギルバートが首謀者だと知ったエステルは怒りの表情になっていた。

「かつて有能な市長秘書で、今は”結社”の使い走りか……。挫折して根性が歪んじゃった元エリートの典型って感じね。」

「うん、まさにそんな感じ。……でも、どうしよう。兵士の数もそれなりだし、人形兵器や装甲獣もいるのよね?」

シェラザードの推測に頷いたエステルは考え込んだ。

 

「それに人形兵器を動かしてるってことは……”結社”の人たちは、この状況でオーブメントが使えるってことだよね?」

「あ……」

「どうやら博士の発明した『零力場発生器』と同じような技術が使われているみたいだ。しかも数に制限はないらしい。」

「ってことは、連中の方は銃もアーツも使い放題って事だよな……?さすがにちと厄介だな。」

ティータの推測を補足するように話したヨシュアの説明を聞いたフレンは厳しい表情で考え込んでいた。

「まあ、ここは定番かもしれないけどここは二手に分かれるべきね。正面から戦力を誘い出して裏から別動隊が突入するみたいな。」

「だが、それをするには少々戦力が不足しているな。あの数だと正面からの攻め手は10人前後はほしいところだ。」

「そうですね………それだけいれば待機中の兵士をこちらに引き付けられそうです。」

「問題は正面の攻め手の戦力不足、か。」

アーシアの意見に続くように答えたバダックの話にヨシュアは頷き、銀は静かな表情で呟いた。

 

「そうね……10人前後って………ここにいる全員でやっとじゃない。このまま王国軍の部隊が到着するのを待つしかないわけ?」

「……その必要はない。それについては自分たちが補わせてもらおう。」

エステルが悩んでいたその時クルツ、アネラス、グラッツ、カルナがエステル達に近づいて来た。

「あ……」

「ああ~っ!アネラスさんたち!?」

「はは、何とも絶妙なタイミングで来てくれたな。」

予想外の援軍の登場にティータは呆け、エステルとジンは明るい表情をした。

 

「へへ、ついさっきルーアン支部に到着してね。」

「ジャンから話を聞いて慌てて駆けつけてきたわけさ。」

「まったく……これ以上ないくらいの援軍だわ。」

「……エステルちゃん。湖畔で助けてもらって以来だね。あの時はありがとう。危ない所を助けてくれて。あの後、エステルちゃんが掠われちゃったって聞いて私、ホントに申し訳なくて……」

「あはは、いいってば。こうしてちゃんと無事だったし。それに……ヨシュアも戻って来てくれたしね。」

申し訳なさそうな表情で話すアネラスにエステルは苦笑しながら答えた。

「そっか……。えへへ……久しぶりだね、ヨシュア君!お姉さんのこと覚えているかな?」

「はい……もちろん。僕がいない間、エステルがお世話になったそうですね。どうか礼を言わせてください。」

「ふふ、お世話になったのはむしろ私の方なんだけどね。それよりも私としては、君がいない間、エステルちゃんがそれだけ寂しそうにしてたか教えてあげたいんだけど……」

「ちょ、ちょっと~!?」

アネラスの話を聞いたエステルは慌て始めた。

「えへへ、冗談だってば。……どうやらあんまりゆっくりできない状況みたいだし。」

「うん……実はそうなのよ。ヨシュア、銀さん。もう一度、学園内の状況を話してくれる?」

「了解。」

「よかろう。」

その後ヨシュアと銀はクルツ達にも状況を説明し、エステル達は銀の存在に疑問を持っていたクルツ達に銀はレンが雇っている協力者である事を説明した。

 

「なるほど……そういう状況か。確かに、二手に分かれて迅速に事を運ぶ必要がありそうだ。」

「そうなるとこの人数なら……。裏手を5人、残り全員を正面に分かれるのがいいんじゃないか?」

「ま、妥当な線だろうな。問題はどういうメンツで分かれるかってことだが……」

クルツとグラッツの提案に頷いたアガットは考え込んだ。

「あ、それならあたし、裏手から突入する方にするわ。この学園のことだったら他の人より詳しいと思うし。」

「僕も同じく。と言うか、ついさっき偵察してきたばかりですから。」

「ならば私も裏手から突入するメンバーだ。私もそちらの者と共に学園を偵察してきたからな。」

「それじゃあ私も裏手からの突入班に参加してもいいかな?前にエステルちゃんと一緒に戦おうって約束したしね。」

エステルとヨシュア、銀が申し出るとアネラスが続くように申し出た。

 

「アネラスさん……」

「フットワークの軽さを考えると妥当なところでしょうね。ただ3人とも前に出て戦うタイプだから……。ちなみに貴方はどういうタイプなのかしら?」

メンバーの戦闘技能を考え込んでいたシェラザードは銀の戦闘技能を知らない事に気づき、銀に訊ねた。

「私は暗器使いでもあるが、普段の得物はこれだ。」

訊ねられた銀は答えた後斬魔刀を構えた。

「で、でか……っ!アガットの重剣とはタイプが違うようだけど……」

「―――恐らくは”太刀”や”刀”のような東方の剣の一種だろうな。」

銀の得物に驚いた後首を傾げているエステルにバダックは自身の推測を答えた。

「という事は彼も前衛と考えた方がいいから、サポートできる人間が1人は欲しいわね。私が4人のサポートに回ろうかしら?」

「いや……それなら自分が務めさせてもらおう。方術でエステル君たちをバックアップできるはずだ。」

そしてアーシアが申し出たその時、クルツが申し出た。

 

「クルツさん……」

「よろしくお願いします。」

「ヘッ、どうやら決まりだな。そういやカルナ……あんた、得物は大丈夫なのか?」

メンバーが決まった事に頷いたアガットはカルナの武器が導力銃である為”導力停止現象”が続いている今の状況でカルナが戦えるか気になった為、カルナに尋ねた。

「ああ、導力銃のことだね。さすがに困り果てたんで、こんな物を調達したよ。」

アガットの問いかけを聞いて苦笑しながら頷いたカルナは普段持っている銃より数倍大きい大型の銃を見せた。

 

「な、なにそのゴツイ銃!?」

「あ、それってもしかして……!」

銃の大きさにエステルが驚いている中、銃の正体を察したティータは目を丸くした。

「ふふ、ラインフォルト社製の火薬式アサルトライフルさ。武器屋のエーファさんがコレクションしていた年代物でね。無理言って貸してもらったのさ。」

「そいつはまた珍しい物を……」

「確かに火薬式の銃なんて最近じゃ全然見かけないわね。って、ティータちゃんも火薬式のガトリング砲を持っていたっけ?」

「えへへ、はい。おじいちゃんが貸してくれた秘蔵のコレクションなんです。」

シェラザードに訊ねられたティータは恥ずかしそうに笑いながら答えた。

 

「ふむ、これで正面からの陽動班も問題なさそうだな。早速、作戦を始めるとするか。」

「オッケー!」

「頑張ります!」

こうして……ギルドによる学園解放作戦が始まった。シェラザード達は正面から強化猟兵を誘き出し……エステル、ヨシュア、アネラス、クルツ、銀は裏から突入して人質を解放することになった。

 

エステル達が行動を開始したその頃、学園の中庭を徘徊している猟兵達は談笑していた。

「……ギルバードのヤツは何を考えているんだ?こんな所を占拠したってガキどもをビビらせるのが関の山じゃないか。」

「確かに王国内を混乱させるなら都市を狙った方が良さそうだが……。ただ、この学園には各界の良家子女が集まっているらしい。噂じゃ、リベール王家の姫君がお忍びで在籍してるって話だぞ。」

「王家の姫君……クローディア姫のことか!?」

仲間の説明を聞いた猟兵は驚いた様子で声を上げた。

エステル達が行動を開始したその頃、学園の中庭を徘徊している猟兵達は談笑していた。

「はは、それはないさ。王城で暮らしているという話だし。ただ、”怪盗紳士”がご執心だという娘がここの生徒でしかも王族であるのは確からしい。ギルバードは、それが誰なのか突き止めるらしいぞ。」

「なるほど……それが本当ならいい点数稼ぎにはなりそうだな。しかしそうなると、軍やギルドが本気でかかってくるかもしれん。警戒する必要がありそうだ。」

「なに、占拠したばかりだしすぐには気付かれないだろう。それに連中は俺たちと違って導力兵器が使えないんだ。火力を集中すれば撃退できるさ。」

「ふむ、確かに……」

仲間の話を聞いた猟兵が考え込んでいたその時門の前から銃声が聞こえてきた。銃声に気付いた猟兵達が門の前を見ると、そこにはカルナとティータが火薬式の銃を連射させて人形兵器達を徐々に圧し始めていた。

「か、火薬式の銃器だと!?骨董品を持ち出しやがって……」

「このままだと突破される……。待機している連中を呼ぶぞ!」

猟兵達は陽動班の狙いにまんまとはまり、仲間を呼んで、陽動班との戦闘を開始した。

 

一方その頃、エステル達別働隊は旧校舎から潜入した。

「……始まったわね!」

「うん、私たちも急がないと!」

「陽動部隊と戦闘をしている猟兵達に気づかれない為にも速やかに目的を果たすぞ。」

「この先の裏門の鍵は先ほど外しておきました。すぐに開くと思います。」

「分かった。速やかに各施設に潜入し、拘束された人々を救出する。救出した者は『人質リスト』でチェックしていくことにしよう。」

「了解ッ!」

「レッツ・ゴーですね!」

こうして『ジェニス王立学園解放作戦』が始まった………!

 

 

 


 
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