それから時は進み、一刀を乗せた馬車は洛陽まであと少しの所までやって来ていた。
「あれが洛陽か・・・・・・そういえば一度も来た事は無かったな」
ひとりごちる一刀。
そんな一刀の目に、あるものが飛び込んできた。
道の端を歩いている筋肉隆々の巨漢の二人。
その間に挟まれるようにして歩いている見覚えのある男の後姿。
「華陀!?」
一刀の声に振り向く三人。
「一刀!?」
一刀の顔に驚く華陀。
一刀は馬車を止めさせると、そこから飛び降り、華陀の下へと歩み寄ろうとした。
しかし、それは一人の大男によって遮られた。
「ご主人様~~!やっと会えたわ~~ん♡」
華陀の隣にいた貂蝉が感極まった状態でそのたくましい腕を大きく広げ、一刀へと迫ってくるではないか!
「!?」
初対面のはずの男の突然の行動に動揺を禁じえない一刀だったが、ダンプのように突っ込んでくる貂蝉をかろうじて避けた。
「んもう!ご主人様のイケズ!」
「これ貂蝉!気持ちは分かるがはしたないぞ!」
抱擁を躱されて身体をくねらせながら拗ねる貂蝉に、卑弥呼の叱咤が飛ぶ。
「確かに卑弥呼の言うとおりねん・・・・・・ごめんなさいご主人様」
「いや・・・・・・というか、ご主人様ってどういう事だ?あんたと会うのはこれが始めてのはずだが・・・・・・」
「それは・・・・・・そのう・・・・・・」
説明に困る貂蝉。
そんな一刀たちに使者から声がかかった。
「北郷殿!出来れば急いでいただきたいのですが」
「ああ、すまない。華陀、見たところお前も洛陽に行く所のようだが・・・・・・」
「そのとおりだ」
「なら一緒に行かないか・・・・・・というよりも来てくれないか?お前が来てくれれば百人力なんだが・・・・・・」
「難しい患者か?」
「まだ診ていないから何とも言えないが、担当医の力ではどうにもならないらしい。頼めるか?」
「分かった」
「決まりだな。三人共、馬車に乗ってくれ」
「こ、困りますよ北郷殿!どこの誰とも知れぬ者たちを・・・・・・」
「そこの二人は知らないが、この華陀は間違いなく大陸有数の名医だ。俺が保証する。帝のために今は一人でも多くの名医が必要なんじゃないのか?」
「むう・・・・・・しかし、私の一存では・・・・・・」
「だったら話は俺がつける」
散々渋った使者だったが、結局一刀に説き伏せられ、華陀たちを乗せた馬車は洛陽への道を再び進み始めた・・・・・・
「ところで・・・・・・卑弥呼だったか?」
「む?儂がどうかしたか?」
「いや・・・・・・もしかして漢女道亜細亜方面継承者の卑弥呼さんか?」
「前が抜けておるな。今はここにおる貂蝉が継承者となっておるが・・・・・・お主、何故それを知っておる?」
「ある人から、少々漢女道を学んだものでね。アンタの名前も聞いていたんだ」
「ある人とは誰か、聞いてもよいか?」
「徐福。それが漢女道を教わった人間の名だ」
「徐福・・・・・・そうか。あやつが・・・・・・」
「知ってるの卑弥呼?」
「うむ。儂と漢女道亜細亜方面継承者の座を争った漢女じゃ。争ったといっても別に憎みあっておったわけではなく、良きライバルとして互いに認め合い、研磨しあった仲じゃ」
「そうなの」
「あやつは今どうしておる?」
「さあ・・・・・・行き先も言わず、ずいぶん前に別れてしまったからな。今頃どうしているのやら・・・・・・」
「自由を好む漢女じゃったからな。あやつらしいわい・・・・・・」
遠き日を思い出すように目を細める卑弥呼。
会話が切れた所で、華陀が一刀に尋ねた。
「ところで一刀。さっき帝がどうと言っていたが・・・・・・」
「ああ。俺が診ようとしているのは帝だ。まあ俺たちにとってはどんな身分の人間だろうとただの患者だ。そうだろう?」
「そうだな」
一刀の言葉に頷く華陀。
「北郷殿。まもなく洛陽に到着します」
「そうか、分かった」
こうして一刀達を乗せた馬車は洛陽へとたどり着き
そのまま王宮へと向かったのであった・・・・・・
王宮に到着してすぐに華陀、そして容姿は不審者以外の何者でもない貂蝉、卑弥呼を勝手に連れてきた事について揉めたが、一刀はこの三人が絶対必要だと断固として譲らず、帝の命を救う可能性を少しでも上げるためと言って担当者を説き伏せた。
その後、王宮の中へ入った一刀達は医師達が集められている一室へと案内され、そこで帝の治療法についての論議に参加することとなった。
「俺達は来たばかりだから、状況を確認させてもらいたいのだが・・・・・・」
一刀の発言を受け、場を取り仕切っている一人の老医師が説明を始めた。
「帝の病の原因は、どうやら肝の臓にあるようなのじゃ」
「肝臓か・・・・・・」
「それもかなり進行しておるようじゃ。一刻も早く治療しなければ帝のお命は・・・・・・」
「それで、治療法についての方針は決まっているのか?」
「時間が無いゆえに、外科療法でやりたいのじゃが・・・・・・」
「出来ないのか?」
華陀の言葉に首を縦に振る老医師。
他の医師たちも難しい顔で沈黙している。
「帝の衰弱が激しく、そのような大手術に耐えられるとは思えぬ」
「それで手詰まりになっている訳か・・・・・・」
一刀は納得したように頷いた。
「・・・・・・なあ。俺たちを一度、帝に会わせてもらいたいのだが」
「何をしようというのじゃ?」
一刀の発言に周りの医師達がざわめき始めた。
「五斗米道を知っているか?」
「一刀。ゴットヴェイドーだ」
「知ってるよ。けどその発音はここの医師達には難しいんだよ」
「むう・・・・・・」
納得いかない華陀だったが、渋々引き下がった。
「五斗米道・・・・・・そういえば聞いた事がある。針を使う不思議な医術を扱う流派の名前じゃったか・・・・・・」
「私も聞いた事があります」
「私も」
老医師と他の何人かの医師が声をあげる。
「ここにいる華陀はその五斗米道の継承者だ」
「なんと!」
驚いた医師達は華陀を注視した。
「だから一度、五斗米道独自の治療を試させてほしい。そういうことだ」
一刀の発言に対し、様々な声が飛び交った。
「あれが華陀か。相当の名医だと風の噂で聞いた事があるが・・・・・・」
「しかし、そのような怪しげな医術を使う者に帝の御身をお任せしてもよいものか」
「もし失敗して帝のお命を失うような事があれば、治療を認めた我らにも責任が・・・・・・」
「静まれい!」
老医師の一喝によって場は静寂に包まれた。
「儂は華陀に任せてみようと思う。他に良い方法が見つからぬというならやってみる価値はあろう」
「し、しかし、万が一失敗したら・・・・・・」
「失敗を恐れて可能性を潰す。それが医師のやる事だというのか?」
「うぐ・・・・・・」
老医師に対し反論する術を失い黙り込む反対派の医師。
他の医師たちも同様のようだった。
「決まりのようじゃな」
そう言って老医師は一刀たちに向き直った。
「すぐに取り次ごう。しばし待っておれ」
「助かる」
「ところで、華陀については分かったが、お主と、その後ろに控えておる者達は何者じゃ?」
老医師の問いに、一刀たちは各々自己紹介を行った。
「俺は北郷一刀。曹操のお付きの医師だ」
「アタシは貂蝉。ご主人様の愛のド・レ・イよん♪」
「儂は卑弥呼。漢女道に生涯をかける者じゃ!」
「・・・・・・」
一刀に関しては理解したものの、貂蝉と卑弥呼に関しては理解の理の字すら掴めない医師たち。
そんな彼らに助け舟を出す一刀。
「後ろの二人に関しては華陀の助手だと思っておいてくれ」
「う、うむ・・・・・・」
「あらん♪アタシはご主人様の助手希望なのよん♪」
「・・・・・・そうか。考えとくよ」
そしてしばらくして
一刀達は帝との対面を果たす事と相成るのである・・・・・・
どうも、アキナスです。
とりあえず合流した華陀と一刀。
一刀君、破門された割には友好的ですね。
まあその詳しい理由については後々語ることになるかと・・・・・・
そして、次回は帝の病魔との対決。
果たして打ち破る事は出来るのか?
次回に続きます
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二人の医師の再会・・・・・・