No.836915

艦隊 真・恋姫無双 106話目

いたさん

戦艦棲姫との再会です。

2016-03-12 16:17:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:766   閲覧ユーザー数:702

【 潜水艦 苦手発言 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城 内城庭園 にて 〗

 

磯風達が、龍驤の艦載機の後を追い掛け出て来た場所は、内城の庭園。

 

そこには、顔見知りの三人が居た。 艦載機は磯風達の頭上でクルクルと旋回、場所を此処だと示す。 

 

しかし、争った後は見受けれる物の、追い掛けていた怪しい者は居ない。 そのため、磯風達は周辺に居る明命達に事情を尋ねる。

 

ーー

 

明命「あの者は確かに強敵でした。 だけど、どうして豆を投げられただけで、あれだけ怒るのでしょうか? その理由が……全く分かりません………」

 

潮「曙ちゃん…………あの逃げた深海棲艦だけど。 やっばり鬼系……だったのかな?」

 

曙「知らないわよ! 深海棲艦の事情なんか──」

 

川内「──じゃあ、代わりに私が教えてあげる!」

 

潮「川内………さん?」

 

曙「……………はあっ?」

 

ーー

 

何時も元気な川内が、三人の会話に割り込んだ。 

 

しかも、彼女は昨日の夜戦で戦艦棲姫を破壊した武勲艦。 明命が目を輝かせ、川内の言葉に食い付いた。

 

ーー

 

明命「ぜ、ぜひ、教えて下さい!!」

 

川内「それはね──至極簡単な事よ。 理由は………」 

 

明命「……………」ゴクリ

 

潮「……………」

 

曙「……………」

 

川内「───今が『夜戦』の時間じゃないから!」

 

「「「 ─────!? 」」」

 

ーー

 

訳の分からない一言に明命の首が傾く。 潮と曙の頭の上にも、疑問符が浮かんでは消えた。 意味が分からない……何故、夜戦が関係するのだと。

 

そして、三人の心の中で答えが『川内(この人)は何を言っているのだろう?』と、一つになる。

 

川内は、自分の目の前で不思議そうな顔をする三人に………静かに語る。 その語る言葉には、なんとも言えない妙な迫力があった。

 

ーー

 

川内「────潜水艦って………怖いんだよ?」

 

「「 ─────!? 」」

 

「 ───────! 」ビクッ 

 

川内「夜戦でね、幾ら潜水艦に狙っても……攻撃が効かないの。 ハッキリと言うと………慢心したら満身創痍になっても、おかしくないんだから!」 

 

「「「 ─────!? 」」」

 

川内「私がだよ………誰よりも夜戦を好み、夜戦に生き、夜戦を愛した………私がだよ? 得意の夜戦フィールドに踏み込みで対峙しても、潜水艦への攻撃しが………これっぽっちも当たらないんだよっ!?」

 

ーー

 

夜戦〇〇と呼ばれる程、夜戦が三度の飯より大好きで、その夜戦力も改装する事に秀でる艦娘が……である。 得意の世界で歯が立たない………これは屈辱以外に何があると言えようか!?

 

しかも、慢心に満身創痍………これを和ませる為の配慮か、わざとボケを入れて突っ込ませる腹積もりなのか。 悩ませて貰うところである。

 

しかし、その川内の話を聞き……他の者より、更に不安げにする者が一隻。

 

───両手で我身を抱き、怯えた表情の曙。 

 

当時の痛ましく遣る瀬ない出来事を……思い出したようで、ポツリポツリと語る。 あの時の記憶が、今も頭の片隅に残っていてのだろう。

 

ーー

 

曙「そうね………あたしが護衛してた僚艦も………殆ど潜水艦に轟沈させられて。 冲鷹、浮雲、太平丸………そして漣さえも………」

 

潮「あ、曙ちゃん……………だ、大丈夫?」

 

曙「………………………」

 

川内「気分を悪くさせて……ゴメン。 だけど、潜水艦という艦種は、それだけ大変なの。 だから、私が狙うとすれば……日中の明るい内に轟沈させる! 多分、アイツも………それを狙っていたのよ!」 

 

明命「……………………」

 

ーー

 

落ち込む曙、興奮する川内、心配する潮。 

 

その三人の様子に黙って見守るしかなかった明命であった。

 

 

◆◇◆

 

【 情報交換……? の件 】

 

〖 洛陽 都城 内城庭園 にて 〗

 

磯風「───すると、既にイクは向かった……と言うんだな?」

 

雛里「は、はい! 『せつぶん』とか言って豆……ですかぁ? それを……その……深海棲艦らしい人物に投げたら……あわわわ」

 

磯風「───やはりか! それで、それでどうなったのだっ!?」

 

雛里「ど、どど、怒髪衝天して………あうあうあぅ……」

 

漣「あー、磯風の言い方が、相変わらずキツキツで怖いのよ。 雛里ちゃんを怖がらせて、もう可哀想すぎるぞぉ……コノヤローww」 

 

磯風「ふ、普通に喋っているんだが…………」

 

漣「あっ………じゃあ~? もしかして、もしかすると………ドS?」

 

雛里「───!?」ビクッ!?

 

磯風「だ、誰がだっ! ちょっと、焦って……状況を尋ねただけだぞ!!」

 

漣「……………えぇ~(・∀・)」ニヤニヤ

 

磯風「────そんな『僅も信用していない』と判る顔で見るな!!」

 

ーー

 

神通「あの………その………話の内容が御理解できないと……思いますが………」

 

思春「心配など無用。 前々からの実績、貴女達が北郷の仲間であるのなら、信用させて頂く。 他国の重臣や冥琳様からの信頼も厚い。 私など、文句を言える立場でも無いので………」 

 

神通「……………ありがとうございます」

 

思春「───それに、天の御遣いは、昔から理解の追い付かない事を言い出すと心得ている。 だから──今更に過ぎない。 それに………正直、私達も慣らされてしまった部分もある。 誰かのせいで……」

 

神通「はあ…………」

 

朧「………詳しく聞きたいような、聞きたくないような…………」

 

ーー

 

明命達と別に、磯風達も雛里や思春に出会い、軽巡棲鬼との経緯を話し、その後の情報を交換し合うのだった。

 

★☆☆

 

 

曙「───あの行為は『節分』って言ってね! か、簡単に話せば、鬼を厄に見立てた天の国式厄払い! だから、豆を食べたり、鬼に投げたりすれば嫌がるのよ! あ、あの深海棲艦が………鬼かどうか知らないけど……」

 

明命「なるほど! そうですね、川内さんの理由より、曙さんの説明の方が納得できます! あの深海棲艦は、当たった豆を凝視してイクさんに攻撃していましたから! ───流石です、曙さんは知識も豊富なんですね?」

 

曙「こ、これくらい………誰だって………」

 

ーー

 

ちなみに、節分の意味を声高だかに説明するのは──『曙』である。 

 

川内の言葉で気落ちした曙に、磯風が節分の話を説明して貰うように頼んだからだ。 黙っていても落ち込みばかり。 ならば、別の事で気を向かわせれば、気晴らしになるし、喋れば通常の曙に戻るのでは……との思案もある。

 

ーー

 

川内「───えぇっ!? わ、私の言う事も間違ってないんだよっ!!」

 

曙「あのね、どうして話をややこしくしたい訳ぇ!? 確かに夜戦の事は判るけど、こんな日が高い今頃に、夜戦もへったくれも無いの!」 

 

川内「や、夜戦を………へったくれと一緒にすんなぁ!!」

 

 

雛里「あ、あの……お二人が話す『へったくれ』とは、どんな物なのでしょうか? ひ、非常に興味がありましゅ!」

 

磯風「へったくれ………へったくれぇ…………すまん、全然分からない……」

 

朧「つまらない物を軽んじる言葉……だと思う。 …………多分」

 

 

曙「だいたい普通に考えれば、深海棲艦が轟沈可能だから狙った。 そして、逃げれば追い掛けたくなるから行動したのが、本当の理由じゃないの!?」

 

川内「だから、そんな在り来りの理由なんて、面白味に欠けるじゃない!」

 

曙「面白いからって、そんな事すれば一刀提……ん、クソ提督に迷惑かけても……………な、何よ? あたしの顔をニヤニヤしてぇ! 気持ち悪いったらありゃしないわよ、もうっ!」

 

ーー

 

それを聞いた第七駆逐隊に……波紋が広がる。 

 

具体的には、漣が『ほほう……?』と笑ったり、潮が『えっ!?』という表情をしたり、朧が当然との顔をして大きく頷いたりと。

 

磯風と川内が、曙の慌てる様子を確認。 サムズアップを互いに決めて、笑い合う。 新たな好敵手が現れた事を喜ぶように。

 

雛里と明命が目を丸くし、思春は小さく溜息を吐いていた。

 

 

◆◇◆

 

【 再び戦場へ──の件 】

 

〖 洛陽 都城 内城庭園 にて 〗

 

そんな、和やかなやり取りが続き、情報を掌握する磯風達だが、急に辺りの空気が変わる! 大気の歪み、空間に何らかの異常を感じ、皆が皆、顔を左右に振り向かせ、情報を得ようと試みた!

 

 

───────!!!

 

 

そんな折、巨大な爆音が城壁を揺るがし、天へと昇らんとする水柱が立ち上がる! 艦娘達は、直ぐに原因を掴み迎撃態勢を見せ、その逆に……このような近代的攻撃に慣れていない恋姫達は、目を見張り声が思わず漏れた。

 

ーー

 

明命「い、今のは───っ!?」

 

雛里「あわあわあわぁ────!!」

 

思春「──────ぐうっ!」

 

ーー

 

雛里は、その大音響と衝撃に驚愕の表情を浮かべ、被っていた帽子で顔を覆う。 明命も驚き背中に背負う『魂切』の柄を掴み、姿勢を落とす。 思春は、衝撃が起きた場所と理由を見定める為、その方向を睨みつける。

 

ーー

 

磯風「全艦集結、単縦陣を取れ! もう少し時間を取り皆と合流するつもりだったが───味方が心配だ! 直ぐに向かう!!」

 

漣「─────キタコレ!?」 

 

朧「出撃ですね! 気合いを入れて行きますっ!」

 

曙「───ふふん、そう来なくっちゃね!」

 

潮「皆さん………待ってて下さい!」

 

川内「………………あ、あれぇ? 胸騒ぎが……する……」

 

神通「那珂の事も………心配です! 早く行きましょう!!」

 

ーー

 

磯風の顔に緊張が走り、艦隊を再度編成し直し──水路に足を踏み込む! あの凄まじい攻撃を見ても、躊躇せず向かって行く様子に、思春は苦笑する。

 

ーー

 

思春「………………益州や洛陽の戦い、そして昨夜の戦いといい、貴女達の戦いには正直付いていけない。 私達が居ても足を引くだけだろうから、此処で雛里を守りつつ待機していよう!」

 

磯風「…………その方が良い。 あの砲撃、敵は間違い無く戦艦。 磯風達でも大破、果ては轟沈の危険があるのに、人を連れて行く訳など無理だ。 安全な場所で………朗報を期待してくれ!」

 

ーー

 

雛里「皆さん………気を付けて。 私の策は此処まで、後は磯風さん達の力で切り抜いて下さい! そして、必ず御主人様に……顔を見せて………」

 

漣「もう、ひなりんったら暗く考え過ぎ! 漣達はね、轟沈しに行くんじゃなくて用を済ましてくるだけヨ? だから、当然──パッと行って、パパッと終わらせて帰ってくるし! ────ねっ?」

 

潮「はい! 必ず………雛里さんや皆さんの元に、全艦隊で帰投します!」

 

朧「────負けないっ!」

 

曙「ふん、幾ら雛里が優秀な軍師で結果を不安がってもね、あたしは必ず全艦共に無事で戻って来させるわよ! 今度こそ絶対にっ!!」

 

雛里「───はいっ!」

 

ーー

 

明命「………あれっ? ど、どうしたんですか? 川内さんの様子が………?」

 

川内「……………… (  ̄З ̄)ブツブツ」

 

神通「あの砲撃の後から………何かおかしくて………」

 

川内「────────ああっ! どう考えても分からないっ!!」

 

「「 ─────!? 」」 

 

川内「───こうなったら実際に行ってみなきゃ! ほらっ、磯風! 早くぅ抜錨!! このモヤモヤを向こうに行って、しっかり見定めないと!!」

 

ーー

 

明命「お、お願いします! あの子も───無事に!!」

 

磯風「………心配などいらない。 必ず………守り抜いてみせる!!」

 

ーー

 

艦隊全員が隊列を整えると、磯風が号令を出す!

 

離れた場所で艦載機は、平らな場所で翼を休めていたが……磯風達が出撃すると聞いて、試行錯誤の上、なんとか飛び立ち、同じように洛水へ向かう。

 

水路から単縦陣で隊列を組み、戦艦級の深海棲艦との戦いが待つと言うのに、笑顔を浮かべる者も居る始末。 余裕の笑みか、はたまた心配を掛けたくない配慮か解らない。

 

だが、情を交えた行為に嘘偽りは無い。 

 

ーー

 

磯風「準備は良いか!? 全艦抜錨──艦隊出撃だ!!」

 

「「「「「「 ────!! 」」」」」」

 

ーー

 

精悍な様子を見せながら、艦隊は水上の上を滑るように進み、水路に突入して行く!

 

手を振りながら水路を進む艦隊を見ながら、雛里は心配そうに最期まで見守り、明命が無事を祈る。

 

思春は、水路に消え行く艦娘達の後ろ姿を見詰めながら、静かに呟いた。

 

ーー

 

思春「…………必ず帰って来い。 死ねば………アイツが哀しむだろうからな」

 

ーー

 

こうして、磯風率いる艦隊は水路を渡り、洛水へと向かう。

 

そこに居る──想像を絶する深海棲艦の姿を……知る事も無く。

 

 

◆◇◆

 

【 戦艦棲姫 の件 】

 

〖 洛陽 都城  洛水 にて 〗

 

龍驤「………………す、すまん。 ウチも、赤城にめっさ言えた義理やあらへんわ。 まさか、あないな奴が出て来るなんてぇなぁ………」

 

高雄「いえ、龍驤さん……貴女が直掩機を周辺に展開していた御蔭です! その為に、戦艦棲姫の初撃を避ける事が出来たのですから!」

 

ーー

 

龍驤が直掩機を展開した際、何時もの演習通り、周辺での警戒を直掩機に行わさせていた。 周辺は戦場になるため、附近の立ち入りは禁止にしてある。 だが、何らかの事で迷い込む者も居るので、その偵察も行わせていた。

 

ところが、洛水の上流へ向かわせた直掩機より、緊急に入った電信の内容は『テ連送』───意味は『敵艦見ユ』

 

水路は洛水の横にあるため、もし深海棲艦が罠に嵌まり出てくるのなら、この場所より飛び出して来る筈。 それが、全く違う場所からの報告により、龍驤は瞬時に事態を掴み、愛宕や附近の艦娘達に連絡したのだ。

 

その連絡が行き渡った時、空に轟音と高速で飛来する物が艦隊に来襲! 

 

艦娘達は、その飛来する物が自分達を狙う砲弾であり、その狙い先は、艦隊中央部だと覚る。 その砲弾の大きさからして、相手は戦艦級という事も!

 

だが、この時点で警戒していた艦隊は、すぐさま弾着点を割出し、附近の艦娘達に回避行動を取らせ、被害を軽微に押さえれる事に成功したのだった。

 

そして、砲弾を放った深海棲艦は、現在───艦娘達の前方に居る。

 

その敵艦は、傍に艤装『16inch三連装砲』を従わせて、薄気味悪い笑顔で艤装の大顎を優しく撫でる。 艤装の巨大な口からは喉の奥より煙を燻(くゆ)らせたままだ。 

 

敵艦は二隻。

 

一隻は今回初見の深海棲艦。 二体の蛇のような艤装を操る艦。

 

もう一隻は、昨晩戦闘を起こし、轟沈したと報告されていた深海棲艦。

 

その名を────『戦艦棲姫』という。 

 

★☆☆

 

そこには、驚愕の表情を顔に張り付けた艦娘達が水面に佇み、口々に自分達の情報を持ち出し、現状把握に努めた。

 

ーー 

 

北上「えぇっと………戦艦棲姫って、確か轟沈してんだよね?」

 

大井「北上さんの言う通りです! きっと、どこぞの軽巡洋艦が、油断してキチンと止めを刺していなかったからですよ! …………本当に迷惑だわ」

 

ーー

 

那珂「…………う、嘘っ! 那珂ちゃん、轟沈するのを見たんだよぉ!?」

 

山城「私も、あの戦場で火柱が昇り立つのを見たわ! 戦艦棲姫の絶叫や苦しむ16inch三連装砲の姿も!!」

 

ーー

 

天津風「じゃあ………アレはどうなっているのよっ!? あんな訳わかんない深海棲艦も出て来ているのに、戦艦棲姫も出てくれば、あたし達に勝ち目なんかない! ほんと、逆風もいいとこだわ!」

 

ーー

 

少し離れた先に居る戦艦棲姫の轟沈は、前夜、川内より報告されている。 しかも、僚艦である山城や那珂達の目撃証言もある。 これにより、戦艦棲姫の撃沈は殆んど確実になった。

 

だが、その戦艦棲姫は………現に健在し、艦隊へ明確な意思を持ち、砲撃を撃ってきたばかりなのだ。 

 

では、この状況はどういう事なのか? 

 

今の今まで、過去に復活した深海棲艦の話など………聞いた事が無い。

 

『何故、轟沈した筈の戦艦棲姫が目の前に居るのか?』 

 

この疑問は、艦娘達に言い知れぬ恐怖や臆測を植え付け、その身体を少なからずの自由を奪う。 第一、集中力を削がれたまま攻撃を起こせば、艦隊に致命的な隙を作り出し、決定的敗北に繋がる可能性も存在する。

  

だが、そんな艦隊に声を掛け、気勢を取り戻す艦娘が居た。

 

ーー

 

扶桑「…………私も、戦艦棲姫が轟沈した絶叫を聞いたわ、山城と共に……」 

 

山城「───姉様っ!」

 

扶桑「だけど……皆、聞いて欲しいの! 今の私達の役割は、何をするべきか判っているの!? 私達の役目は、此処に現れる敵艦の拿捕、もしくは轟沈させる事! それが提督より言い渡された──任務の筈よ!!」

 

「「「「「「 ───────! 」」」」」」

 

扶桑「…………大事な事を忘れてはいけないわ。 今、目の前に居る敵艦は、先の攻撃からして正真正銘の戦艦棲姫。 原因に囚われ、侮りや迷いを持ったままで戦端を開けば、作戦を失敗に終わらせ轟沈されるのは、私達なのよ?」

 

愛宕「そうね! 皆、気を引き締めましょう! もしかしたら、動揺を誘う戦艦棲姫達の罠かも知れないわよ~?」

 

 

大井「私は別に………怯えてもいませんし、怖がってなんかいません」

 

北上「大井っち、知ってるぅ? 再生怪人ってさぁ、普通甦ると弱くなるのがパターンだって聞いたよ。 あぁ……と、どこで聞いたのかなぁー?」

 

大井「北上さんが、私を心配してくれて慰めてくれるっ!! 大丈夫です、私が北上さんを───あの戦艦棲姫から守りますからね!」

 

ーー

 

天津風「ふん………『逆風は振り返れば、追い風になる』って事? 良いわよ、あたしだって、あの二水戦に所属してたんだもの! この無茶をチャンスに変えてみせるなんて、簡単よ!!」

 

ーー

 

扶桑の言葉により、艦隊に気勢が上がる。 先程まで重かった身体が嘘のように軽くなった。 愛宕は艦隊に命じ、単横陣に陣形を直し、戦艦棲姫達と対峙する。

 

敵艦である戦艦棲姫達も、先程とは違い……律儀にも攻撃を待っていたらしい。 だが、猛禽類を思わせる獰猛な目は、艦隊に攻撃したいと明確な意思表示を現している。 

 

『これからが、死力を尽くした戦いになるだろう』と……更に気合いを込める艦娘達であった。

 

★★☆

 

 

戦艦棲姫と愛宕が対峙中に、会話をし出す。

 

ーー

 

戦艦棲姫「別レノ挨拶ハ………終ワッタノカ………? 次ノ世マデ………当分会エナク………ナルカラナ………ククククッ………」

 

愛宕「………やけに余裕な対応よねぇ? さっきは、有無も言わさず砲弾を撃ち込んだのに、どういう風の吹き回しなのかしらぁ?」

 

戦艦棲姫「…………タダノ挨拶代リ。 気ニ入ッテ……貰エタカ………?」

 

愛宕「まあまあ、御丁寧に。 それなら、私達も手厚い歓迎をしなければ失礼よねぇ? 其処に大人しく居てくれば、艦隊を挙げて盛大に持て成すわぁ♪」

 

戦艦棲姫「………フフン………私ヲ……持テ成ス………カ。 ナカナカ面白イ冗談ダナ。 ダガ…………ソレモ……持テ成シノ一部カ? マア……イイ。 私達ニ異存ハ無イ……存分ニ……受ケテヤロウ。 ダガ……ダガナ…………クックックッ」

 

ーー

 

砲弾を挨拶として放ってきた戦艦棲姫も大概だが、にこやかに戦艦棲姫へ敵意を向け、『持て成し』という艦隊一斉斉射を用意させる愛宕も凄まじい。

 

だが、愛宕達の少し先で戦艦棲姫が口角を上げる。 足首まである己の黒き髪の毛を、優雅な動作にて五指で梳き、静まり返る艦隊を眺めて、高らかに嗤う。 さも可笑しな事を言ったと、端正な顔を歪めて。

 

ーー

 

戦艦棲姫「クックックッ………アーッハッハッハッ! ソノ貧弱ナ艦隊デ……コノ私ニ………攻撃ヲ届カセル………ツモリナノカァ?」

 

愛宕「でもねぇ……あえて言わせて貰うわ。 『艦種の違いが、戦力の決定的差ではないということ──教えてあげる』わよ」

 

戦艦棲姫「……………………ホウ? アノ『少佐』ノ言葉………………カ?」

 

愛宕「うふっ、好きで見てるアニメなのよ。 でも………深海棲艦が何で知ってるのかしらねぇ?」

 

戦艦棲姫「…………当然………興味ガアル……カラダ!」

 

愛宕「あらあら……………意外な一面………」

 

戦艦棲姫「クックッ………貴様ト好ミガ合ウナド……虫唾ガ走ル………」 

 

ーー

 

実際、戦艦棲姫の戦力は、愛宕率いる艦隊に比べれば………艦数的不利は否めない。 しかも、愛宕達には支援艦隊も近付いている。 幾ら戦艦棲姫の力が卓越した物でも、劣勢は免れないだろう。

 

だが、戦艦棲姫の顔は───最初の不敵な顔から変わらない。 この劣勢な態勢でも………高飛車な態度、覇気の強さも同じである。

 

ーー

 

愛宕「───大人しく降参するのなら認めるわ。 でもねぇ? 抵抗するのなら……容赦なんて生易しい事できないわよ?」

 

戦艦棲姫「クククッ……カカカッ………!!」

 

高雄「またぁ! 今度は何が可笑しいのですかっ!?」

 

戦艦棲姫「…………敢エテ言オウ……『カス』デアル……ト……!」

 

「「「「「 ──────!? 」」」」」

 

ーー

 

戦艦棲姫の言葉に殺気立つ艦娘達! 

 

それに呼応して、もう一隻の深海棲艦『重巡棲姫』が砲塔を艦娘に向ける!

 

ーー

 

高雄「如何に戦艦棲姫と言えど、私達の艦隊舐めないで貰いたいわ! それに私達にも切札は、幾つもある! 今の私達に敗ける言葉なんて無いわよ!?」

 

戦艦棲姫「ナラバ………見セテヤロウ。 貴様達ニ……コレヲ……無視スルコトガ……出来ルカ………?」

 

ーー

 

戦艦棲姫は、傍らの16inch三連装砲に何らかの指示を与える。 すると、艤装は一声吠えると、大顎を下に引き再び口を開く。

 

再度の砲撃が来ると身構える艦娘達!

 

しかし、16inch三連装砲は、丸太のような両手で器用に身体を回し、砲撃目標を変えた。 それを見た艦娘達は、一斉に顔を青ざめさせざる得ない!

 

それは─────

 

ーー

 

戦艦棲姫「………戦イトハ………常ニ……二手三手先ヲ……読ンデ行ウモノダ………ダッタナ………? クックックッ………ハッハッハッハッ!!」

 

愛宕「────────!!」

 

ーー

 

16inch三連装砲が狙いに定めた先には───高い城壁に囲まれた『洛陽都城』の姿。 

 

砲撃されれば………間違いなく大多数の民衆への被害を生じる。 そして、最悪な事態を予想すれば、内城に撃ち込まれ──残っている恋姫や皇帝、そして一刀へ被害が及ぶ可能性が出てくる事に!

 

こうして、戦況は一気に戦艦棲姫有利へと、急激に傾くのであった!!

 

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

 

百話で区切って、黄巾の戦いに全面移行するつもりが、相変わらず続いてしまい申し訳なく思っています。 しかし、その分……話を煮詰めて面白くさせて行く予定ですので、よろしくお願いします。

 

 


 
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