No.836901

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百四十九話 エリオとサウザー

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2016-03-12 14:52:12 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:11057   閲覧ユーザー数:10066

 新年が明け、風芽丘も3学期が始まったのだが……

 

 「「「「「「「「「「はぁ……」」」」」」」」」」

 

 クラスの女子達は一斉に溜め息を吐いていた。

 

 「……何か女子が一斉に溜め息吐いてるんだけど」

 

 「何でだ?」

 

 謙介と直博が会話をしてるのが耳に届く。

 確かにそれは俺も思った。何かあったんだろうけど、それが何なのかは分からない。

 

 「なら聞けば良いんじゃないか?」

 

 泰三がもっともな意見を述べる。

 

 「そうだな……じゃあ勇紀、任せたぞ」

 

 「…って俺が聞くんかい!?」

 

 俺に振ってくるとは思わなかったよ!

 

 「こういうのは勇紀の出番だろ。適材適所ってやつだ」

 

 「……俺、あんま興味は無いんだが……」

 

 「「「良いから行って聞いて来い」」」

 

 コイツ等……。

 謙介、泰三、宮本の3人を睨んでやったが、3人共どこ吹く風。むしろ目で『早く行け』とだけ訴えてきやがる。

 いや…3人だけじゃなかった。クラスの男子達の大半が俺に視線を向けてきていた。

 ……聞けば良いんだろ聞けば。

 とりあえず一番近くにいた女子に話し掛けてみる。

 

 「あのさ…何で皆溜め息吐いてんの?」

 

 「だって……転校しちゃったんだよ伊東君」

 

 うん?

 女子達が暗い雰囲気なのは誠悟が原因だったのか?

 

 「誠悟だとぉ?」

 

 「何でアイツの事なんか…」

 

 「まさかあの野郎、実は女子に人気があったんじゃ…」

 

 「だとしたら転校する前にシメときゃ良かったぜ」

 

 ここにいない誠悟に対して嫉妬を隠そうともしない男子達だった。

 けど誠悟の奴、女子に人気あったのか。

 

 「「「「「「「「「「伊東君の作るドーナツは絶品だったのに」」」」」」」」」」

 

 あ、そういう意味で転校した事が残念だったのか。

 確かに誠悟も俺同様に家事が出来るタイプの男だったしな。料理も然り。

 女子達が声を揃えて言った様に誠悟の作るドーナツは絶品の美味さである。俺も何度か食った事あるし桃子さんが認めたという折り紙つきなのだ。

 偶に作っては学校に持ってきてクラスメイトに振舞ってた事もあったから、これからはもう誠悟お手製のドーナツが食えない現状に嘆いていたのが女子達の雰囲気が暗い理由だったのだ。

 

 「何だ、そういう理由だったのか」

 

 「良かったぜ。惚れてたからって訳じゃないんだな」

 

 「けど、下らねえ理由だな。たかがドーナツぐら…………」

 

 そこで3人目の男子生徒は言い終える前に宙を舞っていた。

 背後から女子の1人が思いきり蹴り上げたのだ。

 

 「「「「「「「「「「伊東君のドーナツを馬鹿にするなぁ!!!!」」」」」」」」」」

 

 激怒した女子達の声が教室中を満たし

 

 「たあっ!!」

 

 「せいっ!!」

 

 「やっ!!」

 

 宙を舞っている男子が落下してくると別の女子によって蹴り上げられるという光景が繰り広げられる。

 教室の机や椅子の上には落ちない様、蹴り上げられる際に計算もされている。後、俺、優人、直博の3人が集まっている俺の机周辺にも来ない様に。

 まさに人間トス、もしくは人間リフティング。

 クラスメイトの女子達は肉体言語で話すのがお好きな様で。てかここまで逞しくなったのは間違い無く飛鈴ちゃん時々アリサのせいだな、うん。

 誠悟のドーナツを馬鹿にした者はああゆう末路を迎えるという事か、恐ろしや恐ろしや。

 

 「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 

 男子達は会話を止め、教室の隅に移動してガクガクブルブルと震えているではないか。

 

 「てかさぁ…」

 

 そんな光景を無視して直博が口を開く。

 

 「誠悟って何処に引っ越したんだっけ?」

 

 「…………おい」

 

 小学生の時から付き合いのある親友なのにそれはちょっと酷くないか?

 

 「や、あん時の送別会で食べた料理のせいでちょっと記憶が……」

 

 成る程。

 直博に罪は無かった。悪かったのはMO☆MO☆KOスパイスだ。

 

 「誠悟が引っ越した先は『神那島』だよ」

 

 「神那島ってーと、この前テレビで見たような…」

 

 うむうむ。その神那島で間違い無いぞ。

 元々は東京本土から離れた離島で人々からあまり知られていなかったが、近年完成した『神那島大橋』のおかげで交通がし易くなり、観光地として栄え始めた。

 活きの良い魚介類を用いた海鮮料理やみかんが観光客に受けが良いらしい。

 俺もテレビで見ただけだが、何とも質の良さそうな魚が映っていた時は画面に見入っていたものだ。

 

 「他にも何かなかったっけ?エネルギーがどうやらってのもあった筈だけど…」

 

 直博に続いて優人も何かを思い出したかの様に言うと、俺は頷き言葉を返す。

 

 「優人が言ってるのは神那島の『神那海洋資源研究所』で研究されてる海底の資源『メタンハイドレート』の事だ。次世代を担うクリーンエネルギーの1つとして注目されてるな」

 

 もし実用化されれば地球温暖化対策にもなり得る。国からの支援や税金の一部が研究資金に回されている以上、是非ともこの研究を頑張って貰いたいものだ。

 

 「けど何で誠悟、そんなトコに引っ越したんだ?離島より本土の何処かの方が色々便利だろうに」

 

 …そうか、優人は知らないんだな。

 

 「誠悟のお母さんがその研究所の所員なんだよ」

 

 毎朝早くから家を出て研究所に向かい、帰宅は深夜。

 というよりも徹夜の研究で家に帰って来ず、研究所に寝泊まりするのも頻繁にあると誠悟は言ってたし、俺が誠悟の家に泊まりで遊びに行った時も帰ってこない事なんてあった。

 何より海鳴市から神那島海洋資源研究所まで掛かる時間と交通費が結構なもんらしい。

 だから研究所のある神那島に引っ越せば、その辺の問題は一気に解消されるのでメリットが生まれる訳だ。

 

 「付き合いの長い奴がいなくなるのは寂しいな」

 

 「その付き合いの長い奴の引っ越し先を忘れてるのは如何なものかと」

 

 「…言うな。さっきも言ったけど」

 

 「分かってるって。お前に罪は無い」

 

 もう一度言っておこう。悪いのはMO☆MO☆KOスパイスだ。

 今後は桃子さんに使用をしない様、俺からも改めて進言しておく。

 

 「チェストオオォォォォォ!!!!!」

 

 女子生徒の1人が宙を舞うクラスメイトに一際強い蹴りを見舞い、ようやく地面に落ちたクラスメイトの男子。

 制裁はこれで終了みたいだ。

 同時にチャイムが鳴り、席に着く女子達と

 

 「お、おい…大丈夫か?」

 

 「生きてるか?」

 

 おずおずと近寄り、声を掛ける男子達。

 普通に考えたらクラス間でのイジメと言われても否定できないのだが

 

 「うぐぐ………ちゅ、宙を舞ってる間に……何度かイッちまったぜ////」

 

 どうやら彼は真性のドMだったみたいでボロボロであるにも関わらずご満悦の様子。

 アレをご褒美と受け止められるあたり……猛者だなぁ。

 

 「お前達、席に着けー。授業始めるぞー」

 

 教室の扉を開けて入ってきた数学担当の先生。 

 ボロボロになったクラスメイトを心配していた他の男子達もちゃっかり席に着いていた。……ボロボロの彼を放置して。

 先生も彼を無視して授業を始める。……良いのかそれで。

 

 「(まあ、こういうのが我がクラスらしいと言えばらしいのだが…)」

 

 教科書とノートを開き、黒板に書かれていく公式や数字を写しながら、ふと思う。

 

 「(そういや、年が明けてから一度も地上本部に顔出してないや)」

 

 折角だ。今日の夕食担当はメガーヌさんだし、放課後の予定も特にない。

 授業終わったら新年の挨拶をしにミッドに向かうとしますかね………。

 

 

 

 ~~エリオ視点~~

 

 僕は今、大型バスの中で窓際の席に座っている。

 今日は僕が過ごしている本局保護施設の仲間達と僕達の面倒を見てくれている2人の保育士さんと、第1管理世界(ミッドチルダ)南部の山へピクニックに行き、現在は本局行きの次元航行船がある次元空港に向かう帰りのバスが高速道路のサービスエリアに停留していた。

 ここでトイレ休憩という事なのだが、僕は別にトイレに行きたいとは思わないのでトイレに向かった他の仲間…というか僕以外の子供全員と保育士さんの1人が戻って来るのを待っている。

 バスに残っているのは僕と、席で寝ているもう1人の保育士さん、そしてバスの運転手さんの3人だけ。

 

 「……早く帰りたい」

 

 そう、僕は早く帰りたいのだ。

 正直ピクニックなんかに行くより、少しでも自己鍛錬に時間を費やした方が僕にとっては有意義なのだ。

 今の僕は弱い。弱すぎる。

 だから少しでも早く、もっともっと強くなって……

 

 「聖帝軍の幹部になって偉大なるお師さんをお傍で護れる存在にならなきゃいけないんだ!」

 

 それが僕の歩むべき道にして目標!

 だから早く帰って鍛錬したいのに…

 

 「(もう僕1人で先に帰らせてくれないかなぁ)」

 

 内心にイライラが募り始めた時

 

 「ふっ、丁度良い所にバスが停まっておるわ」

 

 その人は現れた。

 貸切の筈の僕達のバスに無理矢理乗り込んできたのだ。

 けど僕はあの乗り込んできた人を知っている。

 以前保護責任者のフェイトさんに連れて行ってもらった第97管理外世界『地球』の現地住人にして『海鳴聖帝軍幹部』の1人である小日向雄真(呼び捨てで良いと言われた)に見せて貰った写真に写っていた人。

『海鳴聖帝軍』を束ねる最強の人。

 

 「聖帝サウザー様」

 

 僕はバスに乗り込んできた人の名を呟いていた。

 

 「運転手(ネズミ)よ。ミッドの地上本部へ向かえ」

 

 「え?いや、このバスは次元空港に向かうバスですし、そもそも貸切なので他のお客様は乗車出来ないのですが」

 

 「知らぬな。貴様は黙って俺の言う事に従えば良いのだ」

 

 「そ、そういう訳にはいきませんよ」

 

 運転手さんは困惑しながらもサウザー様の言葉を拒否する。

 

 「二度は言わんぞ運転手(ネズミ)。俺の命に従えぬのであればその首が胴体から離れることになるぞ」

 

 「ひいっ!(こ、これは!!?こ、このいかにも悪そうな人が管理局員なのかよ!?)」

 

 「それに助けなどくるとは思わぬ事だ。偉大なるお師さんに仕える俺も管理局員なのだからな、フハハハハ」

 

 サウザー様は運転手さんに見える様、自分の身分証明を表示する。そこにはちゃんと局員としての証明がなされていた。

 小さく悲鳴を上げた運転手さんは竦み上がり、管理局員を呼んでも意味が無いと理解した以上、サウザー様の命令に従う他無かったんだと思う。

 首を何度も縦に振り、サウザー様の命令に従うと態度で示したのだから。

 流石サウザー様だ。凄く…凄く…

 

 「カッコイイ」

 

 僕はサウザー様の一連の行動に憧れと尊敬の念を抱かずにはいられなかった。

 サウザー様はバスの最後尾の席に腰を下ろし、腕を組む。

 

 「(そうだ、挨拶しておかないと)」

 

 僕は席を立って最後尾の席前まで移動すると、ジロリと睨まれる。

 

 「何だ小僧?この俺に何か用か?」

 

 言葉から感じる重圧に気圧される。

 けど退いちゃ駄目だ。ちゃんと自己紹介しないと。

 

 「あ、あの!僕、エリオ・モンディアルって言います!!以前地球に行った時に聖帝軍に入隊した者です!!」

 

 「……ほぅ」

 

 緊張した面持ちを浮かべ、敬礼のポーズを取りながら自分の名を言うと、ただ睨んでいただけのサウザー様の視線が僕を値踏みするかのようなものに変わる。

 

 「さ、サウザー様のお話は雄真から聞かされていました。こうして直にお会いできた事、光栄に存じます!!」

 

 「……………………(あの(ネズミ)が俺に与えた原作知識の中にある小僧(キャラ)の容姿とほぼ一致するな)」

 

 「僕も将来はお師さんのお役に立てる戦士になれるよう、日々鍛錬に励んでいます!」

 

 「……………………」

 

 サウザー様は無言で僕の言葉を聞いている。

 一体何を思われているんだろう?

 

 「……確かに雄真からは有望そうなヤツを勧誘し、入隊させたと聞いてはいたが……」

 

 「……………………」

 

 「俺自身はまだ貴様を聖帝軍へ入隊する事を認めてはおらぬ」

 

 「っ!!」

 

 そ、そんな……。

 僕は入隊を認めて貰えていなかったという事実を受け、心の中で絶望に染まっていくのを感じる。

 

 

 「……が、貴様の意思を汲み取り、入隊を許可してやらんでもない」

 

 「ほ、本当ですか!?」

 

 「ふっ、この聖帝に二言は無い」

 

 けどサウザー様から飛び出たこの言葉を聞いて僕の心は完全に折れずに済んだ

 まだチャンスはある!なら何としてもサウザー様に認めて貰わなくちゃ!!

 

 「ぼ、僕はどうすれば認めて貰えるんでしょうか?」

 

 どんな条件でもやり遂げてみせるぞ!

 

 「そうだな…」

 

 サウザー様が目を閉じ、考え始めた時…

 

 「運転手ぅ!!死にたくなければ降りやがれ!!」

 

 突如、新たな人達が3人バスに乗り込み、1人が大声を上げながら運転手さんに銃を突き付けた。

 ドカドカと強引に乗り込んできたこの人達は何者だろうか?

 あの銃はデバイスかな?それとも質量兵器かな?

 

 「うーん……何ですかぁ?」

 

 騒ぎ声が大きいせいか寝ていた保育士さんも目を覚ました。

 

 「オラ!さっさと降りろ!!」

 

 無理矢理運転席から立ち上がらせ、そのまま蹴飛ばしてバスから弾き出す。

 

 「おい、バスを早く出すんだ!!」

 

 「おう!!」

 

 1人がすぐさまバスのドアを閉じて、エンジンをかけ、バスを動かし始める。

 

 「な、何!?何なんですか!?」

 

 完全に目覚めたっぽい保育士さんは突然の出来事で戸惑いと動揺を隠せないでいる。

 

 「……ガキに男に女の3人か」

 

 「どうする?3人も人質はいらんと思うが…捨てるか?」

 

 「いや、念のため、コイツ等全員は人質だ」

 

 「そうだな。3人いるなら管理局員共が来た時、見せしめに1人殺して俺達の要求を通しやすくする事が出来る」

 

 乗り込んできた人達の会話が耳に届く。

 

 「だ、誰なんですか貴方達は!?」

 

 保育士さんが震えながら尋ねると、1人の男が銃口を向けて言う。

 

 「俺達か?管理局…いや、とある管理局員に恨みを持つ者だよ」

 

 へー。

 まあバスジャックなんてする人達が良い人なんて思わないけど。

 

 「とりあえず今すぐブッ殺されたくなかったら大人しくしとくんだな。ガキ、テメエもだ。そこの男みたいに静かにしとけよ」

 

 「……………………」

 

 先程からサウザー様は微動だにせず、目を瞑って考え事をしている。

 目の前でこんな出来事が起きているのにも動じないとは流石サウザー様だ。

 バスは少しずつ走る速度を速め、数台の車を追い抜く。

 そのままバスが走る中、保育士さんは怯えながら、サウザー様は相変わらず考え中、僕も特に何かする訳でも無くボーッとしていた。

 今更だけどこんな状況でも怯えて泣いたりしない僕って自分で言うのもなんだが勇敢なんじゃないだろうか?

 サウザー様はこんな僕の勇敢さを評価してくれないかなぁ。

 

 「……おい、アレ何だ?」

 

 「あん?」

 

 窓の外にある何かを発見したのか1人の男が声を出すと、もう1人もカーテンを少しだけどけ、隙間から社外の様子を見る。

 僕も窓の外側に視線を映すとそこには1台のヘリコプターが飛んでおり、僕達のバスが走っているのと同じ方向に進んでいる。

 

 「あのヘリに描かれてるロゴ、テレビ局のヤツじゃねえか?」

 

 「そう言やぁ……」

 

 ヘリコプターに描かれてる文字とイラストが合わさった絵を見て、目を細める。

 あ、僕も見た事あるぞあのロゴ。確かにミッドで有名なテレビ局のロゴだ。

 

 「……成る程、俺達を撮ってるってか」

 

 バスジャック犯の1人が車内のテレビを点け、チャンネルを変えると『緊急生放送!』と書かれたテロップが右上に表示され、1台のバスが映し出されていた。

 …僕達が乗ってるバスじゃん。

 成る程。あのヘリコプターはバスと並走しながらこの状況を中継してるのか。

 

 『ご覧下さい。現在バスジャックされたバスが高速道路を走っています。あの車内には数人の民間人が人質として乗せられているという情報も入って来ております』

 

 リポーターが現状を視聴者の人達に説明してる。

 うーん……少し違うかな。人質の1人であるサウザー様は管理局員だから正確には『民間人と管理局員』だ。

 

 『現在バスを追跡中の陸士隊によれば犯人達については既に調べがついているとの事です。先日、首都防衛隊の管理局員によって摘発、逮捕された犯罪組織『ディアブロ』の残党による犯行との事です』

 

 あ、それ知ってる。この前ニュースでやってた。

 希少動物の密売や、誘拐した子供達を人体実験で無理矢理に強化した後に洗脳を施し、争いの起きている次元世界に傭兵として売り飛ばしたりしてた巨大な犯罪組織だ。

 組織の幹部メンバーは高ランクの魔導師で構成されてたって事らしいけど、首都防衛隊のエースの1人によって構成員のほとんどが逮捕され、組織は壊滅したんだっけ。

 その組織の残党がこの人達か。

 

 「おーおー、よく調べてくれちゃってんじゃねえか」

 

 「そうそう、壊滅させられたんだよなぁ。あのクソ忌々しい『滝島椿姫』によってよぉ!」

 

 組織が潰された時の事を思いだしているのか、バスジャック犯達の表情が憤怒に染まっている。

 

 『バスジャック犯……いや、ディアブロの残党に告ぐ!!今すぐにバスを止め、武装を解除して人質を解放し、投降しなさい!!』

 

 ん?

 バスの後方から呼びかけが届く。

 どうやら陸士隊の管理局員を乗せた車がバスに追い付き、バスとほぼ同速度で付かず離れずの距離を保っているみたいだ。

 

 「か、管理局の方の言う通りにお、大人しく投降して下さい!」

 

 「うるせえぞ!」

 

 「あぐっ!」

 

 保育士さんは自首を勧めたが、激昂してるバスジャック犯の1人が手にしてる銃で殴りつける。

 殴られ、椅子の背もたれに頭を強く打ちつけたせいか保育士さんはそのまま意識を失ってしまった。

 

 「おい、アイツ等に俺達の要求を告げてやれ」

 

 「そうだな」

 

 バスジャック犯が服の胸ポケットから端末を取り出す。

 どうやらデバイスじゃなくただの通信端末みたいだ。

 

 「御機嫌よう、管理局のクソ共。アンタ等の調べ通り、俺達はディアブロの残党さ。テメエ等にはある事を要求するから黙って従いやがれ」

 

 『何を勝手な!良いから早く投降し、自首しなさい!!』

 

 「おいおい状況分かってんのか?こっちにゃ人質がいるんだぜ。複数人いるから1人ぐらい殺したってコッチは良いんだ」

 

 その視線が僕や気絶してる保育士さん、そしてサウザー様に向く。

 

 『これ以上罪を重ねる気か!!』

 

 「ああ?罪が怖くて犯罪者やってられるかってんだ」

 

 「全くだ。ギャハハハハ」

 

 「ま、人質の命がどうなるかはソッチの対応次第って事だ」

 

 『ぐっ……要求とは何だ?』

 

 対話してる管理局員さんが悔しさを堪えてるのが声色から想像出来るなぁ。

 

 「要求は全部で3つだ。『ディアブロの幹部及び構成員全員の即時釈放』『逃走用の次元航行船1隻』『ミッド通貨の現金で50億』ってトコか」

 

 『なっ!?ふざけるな!!そんな要求が……』

 

 「嫌なら断っても良いんだぜぇ~。人質の儚い命が散る事になるけどなぁ~」

 

 『くっ…………』

 

 僕達民間人の命を護るのが仕事の一環である以上、管理局員さんとしては要求を呑まなければならないんだろうけど、かと言って犯罪者に簡単に屈する事が出来ないのも事実。

 

 「ま、1時間程は考える時間をくれてやるからよ。良い返事を期待し・て・る・ぜ♪」

 

 状況が優勢なせいかニヤニヤと余裕の笑みをバスジャック犯達は浮かべている。

 けどこの笑みは一変して消える事になる。

 

 「ふっ、決めたぞ小僧」

 

 目を瞑り、考え事をしていたサウザー様が遂に目を開き、口を開いたからだ。

 

 「今すぐこの俺を愉しませる何かを披露してみせよ。それで俺が愉しめたら貴様を正式に海鳴聖帝軍の一員として迎え入れてやる」

 

 「ほ、本当ですか!?分かりました、頑張ります!!」

 

 ようやく課題が出された。

 よし!!ここで見せるんだエリオ・モンディアル!

 

 「おいコラ。何勝手にくっちゃべってんだ?」

 

 バスジャック犯の1人が僕に近付いて来て言うけど、今この人達の事なんかどうでも良い。

 サウザー様を愉しませ、合格しないともうチャンスは無いだろうから。

 僕は並列思考(マルチタスク)を総動員して考える。

 愉しませる何か……何か……

 そして閃いた。

 

 「(よし!これなら!!)」

 

 いける気がする……と、そう思った僕は早速行動に出る。

 その場で立ち上がり、窓の方に身体を向けた。

 

 「とりゃあっ!!!」

 

 そして勢いよくおでこを窓ガラスに叩きつけた。

 頭突きをかましたのだ。

 

 「「「なっ!!!?」」」

 

 バスジャック犯達は運転してる奴(←ちゃんと前を見て運転中)も含めて、声を出した。

 窓ガラスはガシャアン、と音を立てて砕け散り、砕けた破片が僕のおでこにいくつか突き刺さっている。

 当然そこからは血が溢れ出して顔を伝ってポタポタとこぼれ出す。

 そのまま僕は割れた場所から顔を出し

 

 「た、助けてくれぇ~…」

 

 と、ワザとらしい演技で助けを求めてみた。

 すぐに顔を引っ込めておでこに刺さってるガラスの破片を取り除く。

 

 「ふぅ…」

 

 これで一息。

 この僕の行動はテレビで中継されてるため、リポーターさんが伝える。

 

 『何と!少年です!少年が助けを求めています!おそらく人質になっている民間人なのでしょう!!どうやら車内で犯人達の暴行を受けているものと思われます!!』

 

 「「「はあっ!!?」」」

 

 『見て下さい、悲痛に満ちた少年の表情を!額から血を流し、必死に助けを求めている少年の姿を!!』

 

 つい先程の僕の行動が繰り返し、放映された。

 カメラ映りは……まあまあかな。

 

 「フハハハハハハハ!!!」

 

 サウザー様は大声を受けて笑い出す。

 笑った!サウザー様が笑ったぞ!!

 

 『聞こえましたでしょうか?暴行を受けている少年の姿を見て犯人達の1人と思われる者があげた笑い声を!何故このような酷い仕打ちをしておきながら笑えるのか!!中継してる私としては憤りしか感じません!!』

 

 「「「ちょ!!?」」」

 

 「フフフ……あまりにもワザとらしい道化っぷりだったが逆に笑えたぞ」

 

 「頑張りました」

 

 「良いだろう小僧……否、エリオよ。本日この時を以て貴様を海鳴聖帝軍の一員になる事を認めよう」

 

 「あ、ありがとうございます!!」

 

 歓喜。僕の内心を一気に染め上げたのはこの一言に限る。

 これで僕も正式に海鳴聖帝軍に入れたんだ!!

 

 「それとエリオよ。貴様はこの俺が直々に鍛えてやろう。勿論時間のある時に限るがな」

 

 「ほ、本当ですか!?」

 

 「貴様は才能がある。その才能は将来存分に俺に、そして俺以上に偉大なるお師さんのために振るいぬいてもらうぞ!」

 

 「はい!!」

 

 これは身に余る光栄だよ。サウザー様に鍛えて貰えるなんて願っても無い事だ!!

 しかも才能があるって断言してくれた。つまり僕は強くなれる。強くなれるんだ!

 

 「何訳分からん話しながら好き勝手やってんだコラァ!!」

 

 1人は僕に、もう1人はサウザー様に銃口を向けて怒鳴るバスジャック犯だが

 

 「所で貴様等は何処のネズミだ?」

 

 今その存在を認識したかのようにサウザー様は尋ねていた。

 考え事をしてる最中はバスジャック犯の事なんか眼中にも無かったって事だ。

 

 「この人達、犯罪組織の残党です」

 

 「成る程、負け犬ならぬ負けネズミという訳か」

 

 席から立ち上がってツカツカと銃程度には臆せず犯人達に近寄っていく。

 

 「おい止まれ!!ブッ殺すぞ!!」

 

 「フハハ!俺を殺すだと?面白い、やってみろ」

 

 「あ?テメエ、(コイツ)が目に入ってねえのか?それともデバイスとでも思ってんのか?だったら教えてやるぜ。コイツは質量兵器(ほんもの)の銃だ。俺達は魔導師じゃねえが質量兵器の扱いに関しちゃ組織の中でもエリート組だったんだぜぇ」

 

 「能書きは要らん。早く撃って俺を殺してみろ」

 

 「何だコイツ、自殺志願者か?なら望み通りに殺してやるぜ」

 

 躊躇なく引き金を引き、パンッと乾いた音が鳴った。

 銃弾はサウザー様に眉間を正確に捉え命中したが

 

 「どうした?俺を殺すのではなかったのかぁ?」

 

 結果は……無傷。

 まあ、当然だよね。サウザー様は最強の御方だ。銃程度で倒せる訳がないよ。

 

 「んなっ!?」

 

 「フハハ!質量兵器ごときで傷を負っていたらお師さんの護衛は務まらんわ」

 

 「ちいっ!!ならコイツはどうよ!!」

 

 今度は別のバスジャック犯がバズーカ砲を取り出した。

 サウザー様に向かって砲口から砲弾が放たれるが

 

 「ふん」

 

 サウザー様はつまらなさそうに鼻を鳴らして難なく砲弾をキャッチする。そしてそのまま真横に放り投げると窓ガラスを割って砲弾はバスが走ってる高速道路の対向車線に落ち

 

 ドオオォォォォォンンンンン!!!!!

 

 爆発した。

 道路には大きな穴が出来、とても車が走れるような状態ではなくなった。

 

 『今度は車内から爆弾のような物が対向車線に投げられました!爆発に巻き込まれた車こそ無いものの、先頭の車が急ブレーキで停止したのを皮切りに次々と玉突き事故が発生しています!』

 

 上空から撮られている映像には次々と車がぶつかっていく様子が映っている。

 

 『貴様等ぁ!!また罪を重ねたな!!』

 

 バスを追跡中の管理局員から怒声が飛んでくる。

 

 「ふ、ふざけんな!!また俺達のせいになってんじゃねえか!!」

 

 「黙れ、耳障りだ」

 

 サウザー様を睨み付けるバスジャック犯だけど、サウザー様は不愉快そうに眉を顰めた。

 

 「お、思い出したぞ!!コイツアレだ!!地上本部のイカレた局員サウザーだ!!」

 

 すると1人のバスジャック犯が思い出したように叫ぶと、運転してる男とバズーカを持っていた男も目を見開き、顔を青褪めていく。

 

 「サウザーってあのサウザーか!?最悪外道鬼畜局員の長谷川勇紀がもっとも信頼するという…」

 

 「ああ!『地上本部の真の黒幕』長谷川勇紀の懐刀とも言われてる暴君だ!!」

 

 「フハハハハ!!貴様等の様なネズミでも俺やお師さんの偉大さを理解出来る程度の脳味噌は存在していたか」

 

 名前や異名だけで相手を戦慄させるサウザー様やお師さんはやっぱり凄い!

 いつかは僕も名前だけで相手を震え上がらせる程の男になるんだ!!

 

 「さて、次はどんな武器を………む?」

 

 余裕の笑みをもって対峙していたサウザー様が突然表情を変える。

 どうしたんだろうか?

 

 「………何だと!!?」

 

 と、突然驚いたサウザー様の大声が車内にいる僕達全員の耳に届く。

 

 「おい運転手(ネズミ)!!バスを全速力にして一刻も早く地上本部へ向かえ!!!」

 

 運転をしているバスジャック犯を急かすサウザー様。そんなに慌てて一体どうしたんだろう?

 疑問に思った僕は尋ねてみる事にした。

 

 「サウザー様。一体どうされたんですか?」

 

 「今し方小娘(レスティア)から連絡が入った。今日、地球からお師さんが地上本部へいらっしゃるのだ!!」

 

 「ええ!?お師さんが!?」

 

 それは一大事だよ!!

 

 「早く地上本部へ戻り、お師さんを丁重に出迎えなければ聖帝として、偉大なるお師さんの忠臣としての顔が立たん」

 

 僕も聖帝軍の一員である以上、お師さんを出迎えなくちゃいけない義務がある。

 けど運転してるバスジャック犯は聞く耳持たず、そもそもバスの進行方向は地上本部とは逆の方向に走っている。

 

 「何をしている運転手(ネズミ)!!早く地上本部に向かってバスを走らせろ!!」

 

 「し、知らねえな。お、お、お前の都合なんざ俺達には関係無い話なんだよ」

 

 声を震わせながら運転中のバスジャック犯が答えると

 

 「ならばもう良い」

 

 と言ってサウザー様は神速とでも言えるスピードで運転中のバスジャック犯の真横に移動していた。

 

 ズブッ

 

 「ぎっ!?」

 

 サウザー様の指先が男の首筋に刺され、すぐさま引き抜く。

 

 「これで貴様はもう自らの意思で身体を操る事は出来ぬ。俺の命に忠実にならざるを得ないのだ」

 

 「な、何だと!?あ……足が!?足が勝手に!!」

 

 バスジャック犯の片足がアクセルを深く踏み込んでいき、バスの速度がどんどん上がっていく。

 バスを追跡している管理局員の乗った車との距離が開いていくのがその証拠だ。

 引き離し引き離し……やがて管理局員の乗ってる車を振り切った所で

 

 「高速を下りて一般道を走れ」

 

 前方に見えてきた高速の出口を見るとサウザー様が命令を出す。

 

 「あ……ああ……手も勝手に、勝手に動いちまうよぉ」

 

 運転中のバスジャック犯は当然その言葉に逆らえず、本人の意思とは裏腹にハンドルを回してバスを出口の方向に向かわせる。

 それに合わせてバスの速度も下がり、通常の速度に戻る。

 

 「お、おい!!仲間に何をしやがった!?」

 

 「ふっ、コイツには地上本部まで運転する様、身体の自由を奪っただけだ。こういう時、南斗よりも北斗の拳の方が便利であるな」

 

 「ふざけんな!!今すぐ仲間を解放しぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!」

 

 いい加減サウザー様に偉そうな物言いをするバスジャック犯達にイライラしてきたので僕はバスジャック犯の1人に近付いて電撃を浴びせる。

 デバイスが無くても魔法位使えるし。ただ制御が上手く出来ないから手加減は出来ない。

 ドサリと音を立ててその場に崩れ落ちたバスジャック犯の1人。

 

 「な、何してやがるこのクソガキィ!!!」

 

 吼えた所で全然怖くない。

 

 「フハハ!やるではないか」

 

 「まだまだです。無駄に多くの魔力消費してますから。もっと魔力の制御が上手くならないと」

 

 それにデバイスが無ければ非殺傷に出来ないけど

 

 「こんな奴(バスジャック犯)が死んだところでどうでもいいですからね」

 

 「良く分かっているではないか」

 

 僕の答えにサウザー様も満足気だ。

 

 ビリビリビリ!!

 

 突然サウザー様は意識の無い保育士さんの服の一部を破いた。

 破いた場所からは保育士さんの肌の一部とブラジャーが露出する。

 

 「エリオよ。これで血を拭うが良い」

 

 「あ、ありがとうございます」

 

 破いた服の一部で額を拭き、そのままバンダナを撒く様に頭に着ける。

 

 「い、イカれてやがるぜ。テメエもそこのガキも」

 

 むっ、失礼な。僕もサウザー様も正常だ。

 コイツも電撃でビリビリしてやろうかと思ったけど、先にサウザー様が動いて男を蹴り飛ばす。

 物凄い勢いでバスの最後尾まで吹き飛び、座席の後ろの窓を突き破ってバスジャック犯の身体は外に放り出される。

 

 『ああっと!バスの後方から人が飛び出てきました!アレはバスの中にいた民間人でしょうか?』

 

 リポーターさんが叫びカメラのズームがアップされる。

 地に伏し、うつぶせの男からはドクドクと赤い液体が出始める。

 地面に強く打ちつけられて血が出たんだろう。

 

 「あの程度で流血とは軟弱な証拠よ」

 

 今の僕も多分同じ目に遭ったら血を流すだろうけど、それは自分の鍛錬不足のせいだ。

 あれぐらいでも平然としていられるようにならなきゃ聖帝軍の一員として恥だよね。

 あ、追跡してる管理局員の乗ってる車に轢かれた……と思ったら今度は爆発。

 

 「どうやらネズミの手持ちの爆弾が爆発したのだろうな」

 

 画面にはその様子がハッキリと映し出された。今頃轢かれたバスジャック犯はバラバラになってるんじゃないだろうか?

 

 「爆弾なんかで弾け飛ぶなんて情けないですね」

 

 「所詮は雑魚のネズミだからな」

 

 テレビに映る軟弱者のバスジャック犯を見ながら僕とサウザー様はしばし会話を続けるのだった………。

 

 

 

 ~~エリオ視点終了~~

 

 やっと着いたよ地上本部……っと。

 

 「「地球でのお勤めご苦労様でしたお師さん!!!」」

 

 「……サウザーはともかく、何故にエリオ君もいるのかね?」

 

 真っ先に浮かんだ疑問だった。

 君、本局の保護施設にいる筈じゃないの?

 

 「今日は山へピクニックに行くなんていうクソつまらないイベントがあったものですからミッドに来てました」

 

 クソつまらないとか…。

 イベント考案の人が聞いたら泣くよきっと。

 

 「で、その後はちょっとした事件に巻き込まれまして」

 

 「事件に巻き込まれた?」

 

 「はい。あ、でももう事件は解決しましたし、僕も額からの流血以外は特に心配される様な事はありませんでしたから」

 

 そうか…額に怪我を。

 道理でエリオ君の頭には布切れが巻かれ、若干布が赤く染まっている訳だ。

 てかその布きれ、包帯ではないよね?何か模様っぽいのが見えるし。

 

 「お師さん喜んで下さい。此度このエリオも正式に海鳴聖帝軍の一員となりました」

 

 「へ?まだなってなかったの?」

 

 雄真君に勧誘されたって聞いた時からもう聖帝軍だったんじゃあ…

 

 「雄真から聞いてはいましたがまだ俺自身の目で確認しておりませんでしたので」

 

 「…で、今回直に確認して結果合格だった、と?」

 

 「その通りです」

 

 「僕、精一杯頑張ります!!」

 

 …出来れば不合格にしてあげてほしかった。

 フェイトが苦労する未来しか見えないぞ。

 

 「それではお師さん、我々はこれで」

 

 「あれ?何か予定入ってんのか?」

 

 「我々は先程エリオが言った事件の当事者ですから。これから事情聴取なんです」

 

 事件……後で俺も確認しておくか。

 深く一礼し、去って行くサウザーとエリオ君。

 俺もすぐに踵を返し、レジアス中将のいる執務室へと向かうのだった………。

 

 ~~オマケ~~

 

 ※これは管理局員によるバスジャック犯達の取り調べ中の会話です。

 

 

 

 「…いい加減罪を認めたらどうなんだ?」

 

 「だから何度も言ってるだろうが!!俺達がしたのはバスジャックだけだっつってんだろ!!」

 

 「ふざけるな!!人質となった民間人の少年への暴行を始めとした数々の凶行をカメラが捉えてるんだ!言い逃れは出来ないぞ!!」

 

 「ふざけてなんかいねえよ!あのガキが勝手にやった事だっつーの!!」

 

 「馬鹿か貴様は!!どこの世界に自分からあんな事をする人質がいるというんだ!!しかもその様子を見て大声で笑っていたではないか!!」

 

 「笑ったのは俺達じゃねえ!!あのサウザーっつう男だ!!むしろ俺としてはあの奇行の何が面白かったのか今でも疑問だわ!!」

 

 「またそうやって罪を擦り付ける。もう良い!!この件は後日追及するとして次だ!!爆発物を高速道路の対向車線に投げた件だ!!これは往来妨害罪だぞ!!」

 

 「それもサウザーって奴がやったんだよ!バズーカの砲弾を受け止めた後、道路に投げやがったんだ!!」

 

 「馬鹿を言うな!!サウザー一尉は市民と街の平和を守る管理局員だぞ!そんな人が街を破壊する様な真似をする訳無いだろうが!!」

 

 「実際にしたんだよあの男が!!」

 

 「何処までも最低な奴だな。他人に罪を被せようとする事しか考えていないのか!!」

 

 「コッチの言い分を信じようとしねえテメエも最低だなオイ!!」

 

 「それに人質の女性に対する強姦未遂と貴様の仲間による自爆テロ!!あの爆発で管理局員が1人命を落としたんだぞ!!」

 

 「女の服を破いたのも俺の仲間をバスから蹴飛ばしたのもサウザーの仕業なんだよ!!」

 

 「貴様ぁ!!一体どんな恨みがあってサウザー一尉を乏しめるんだ!!!」

 

 「今こうやって罪を擦り付けられてんだ!!恨まねえ訳無えだろうが!!」

 

 ……この様なやり取りが取調室で行われていたそうな………。

 

 ~~オマケのオマケ~~

 

 ※これはバスジャック事件の生中継を観た時の人々の様子である。

 

 

 

 『た、助けてくれぇ~…』

 

 エリオが額から血を流し、助けを求める姿(←演技です)を見て

 

 「「うぅ…可哀相に…」」

 

 地上本部トップの父親の秘書を務めている実の娘と、某博士に生み出された戦闘機人No2は涙で頬を濡らし……

 

 

 

 『フハハハハハハハ!!!』

 

 車内から外にまで聞こえる様な笑い声が聞こえた時

 

 「……ヒデえ奴等だ」

 

 「何で…何でこんな小さい子を相手にこんな事して笑っていられるの!?」

 

 陸士108部隊の部隊長と同部隊所属の部隊長の娘は憤りを感じずにはいられず……

 

 

 

 「うあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 「ちょ!?フェイト落ち着いて!!」

 

 「放して!放してよアリシア!!!エリオが、エリオがあんなひどい目に遭わされてるんだよ!!!!」

 

 「うんうん!!私の事呼び捨てにするぐらい怒っているのは充分伝わってるから!!けど今フェイトが向かったら間違い無く犯人が惨殺される未来しか見えないから行かせる訳にはいかないんだよ!!!きっとシュテル達が何とかしてるから!!!」

 

 「え、エリオ!!エリオオオォォォォォォ!!!!!」

 

 本局のとある休憩スペースでは過保護な保護者が修羅と化しており、彼女の姉は修羅を羽交い絞めにして取り押さえているのに必死であった………。

 

 ~~オマケのオマケのオマケ~~

 

 ※事情聴取に向かう最中の聖帝様と電気少年の会話です。

 

 

 

 「所でサウザー様は何でサービスエリアなんかにいたんですか?」

 

 「…偉大なるお師さんは俺とは違い人間だ。いずれ生まれ故郷の地球か、このミッドチルダで天寿を全うし生涯を終えるだろう。その後が問題だ」

 

 「その後ですか?」

 

 「どこぞのネズミが偉大なるお師さんのDNAを奪い、下らぬ技術を用いる事になるやもしれぬ」

 

 「……『プロジェクトF』の事ですね」

 

 「うむ。それはお師さんの死を冒涜する許されざる行為だ。故にお師さんの亡骸を誰にも荒らされず、安らかに眠っていられる様、俺が主導で墓を建てると決めたのでな。墓を建てる場所を探していたのだ」

 

 「成る程」

 

 「後は帰りの車を捕まえ、地上本部に戻る途中でサービスエリアにいたという訳だ。俺を乗せた車は俺がサービスエリアで食事を摂っている最中に勝手に去っていきおってな」

 

 「無礼な奴だったんですね」

 

 「うむ。次に会ったら俺自らの手で粛清してやろうと思っていたが、結果的には貴様と出会う事になったので許してやることにした」

 

 「流石サウザー様、心がお広いですね」

 

 電気少年は聖帝様の寛大さにますます憧れを感じずにはいられなかったとかなんとか………。

 

 ~~あとがき~~

 

 エリオが聖帝様に認められ、正式に海鳴聖帝軍入りしました。

 将来は幹部確定です。後、この小説のエリオは槍を使いません。これは確定事項です。

 バスジャック犯はご愁傷様です。他人の罪を擦り付けられ、どれだけ訴えても聞き入れて貰えません。

 勇紀も後日、事件の詳細を知りますがその内容のほとんどがエリオの供述によるものなのですんなりと信じてしまうという…。

 サウザーが供述のほとんどを語っていたかエリオがもっと聖帝軍に染まっていたなら逆に疑いまくってたんですけどね。

 

 


 
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