No.836534

本編補足

根曲さん

・必要事項のみ記載。

2016-03-10 00:46:39 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:409   閲覧ユーザー数:409

人型機構

C1 帰郷

C2 実家

C3 レディ

C4 陳情

C5 調査

C6 復元

C7 試合

C8 売上

C9 新世界

C1 帰郷

 

千年大陸連邦。アングロ港に停泊する帆走船。タラップから降りて来る千年大陸連邦のマジックアイテムの行商人のアルフォンソ。彼は土を踏みしめて、立ち止まりアングロ港町と行き交う人々を見回す。

 

アルフォンソ『さて…。』

 

アルフォンソは親子連れがベンチに座る馬車停に向かって行く。

 

アルフォンソ『こんにちは。』

母親『こんにちは。』

子ども『こんにちは。』

母親『だいぶ遅れている様ですね。』

 

母親を見るアルフォンソ。

 

アルフォンソ『そうですね。でもこんなことは日常茶飯事ですよ。』

母親『そうなんですか。田舎から出てきたもので。』

アルフォンソ『まあ、都会もダイヤは意外としっかりしていないですね。』

母親『まあ。』

 

蹄鉄の音と車輪の音。懐中時計を取り出す見るアルフォンソ

 

アルフォンソ『…30分遅れですね。まあまあ、いいほうですよ。』

 

馬車停に止まる乗合馬車。乗合馬車に乗る母親と子供とアルフォンソ。手綱を引く乗合馬車の御者、動き出す乗合馬車。座席に座るアルフォンソと母親に子供。

 

アルフォンソ『だいぶ揺れますよ。』

母親『でも、都会なのでそこは田舎よりひどくは無いでしょう。』

 

笑うアルフォンソ。

 

アルフォンソ『まあ、そうですね。ところでこれからどちらへ?』

母親『アークシャーの方へ参ります。』

 

頷くアルフォンソ。

 

子ども『僕、魔法使いになるんだよ。』

 

子どもを見つめた後、母親の方を見て頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ああ、アークシャーのイデン・カレッジに。』

 

頷く母親。

 

母親『ええ。イデンに。』

アルフォンソ『そうですか。いいですね。』

 

 

千年大陸連邦。首都グレートクロス。止まる乗合馬車。御者にお金を払うアルフォンソ。

 

アルフォンソ『では、良き親と未来の魔法使い君にさようなら。良い旅を。』

 

一礼するアルフォンソ。会釈する母親と子供。馬車から降りるアルフォンソ。去って行く乗合馬車。

 

C1 帰郷

C2 実家

 

千年大陸連邦首都。グレートクロスのバライティン通りにあるアルフォンソの実家。玄関の前に立ち、扉をノックするアルフォンソ。暫し、沈黙。時計をみるアルフォンソ。

 

アルフォンソ『こんな時間まで熱心だな。』

 

アルフォンソは顔を上げ、後ろを向く。

 

アルフォンソ『先に姉さん家でも行くか。』

 

歩き出すアルフォンソ。アルフォンソの実家の玄関の扉が開き、現れるアルフォンソの父親のクックと母親のウェル。

彼らの方を向くアルフォンソ。

 

ウェル『アルフォンソ?アルフォンソなの?』

クック『おお、アルフォンソ。戻ったのか。』

 

彼らを見つめ微笑むアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ただいま戻ったよ。』

クック『たくましくなって。』

ウェル『ちょっとまっててね。』

クック『まあ、上がりなさい。』

 

頷くアルフォンソ。アルフォンソの実家に入って行く一同。

 

 

アルフォンソの実家の応接間。ソファに座るアルフォンソ。

 

クック『ちょっと待っていろ。今、紅茶を入れるからな。』

アルフォンソ『ああ、ありがとう。』

 

机の上にお菓子を置くウェル。

 

ウェル『どうぞ。』

アルフォンソ『うん。ありがとう。』

 

ソファに座るウェル。

 

ウェル『それにしてもいつつくか手紙をくれれば迎えに行ったのに。』

 

苦笑いするアルフォンソ。

 

アルフォンソ『いや~手紙を出したところでその日には絶対につかないよ。今日だって2ヶ月遅れだしね。』

ウェル『そうね。後でポーラーやティリー、ザックにも連絡しておくわ。』

アルフォンソ『うん。まあ、そうしてくれると助かるよ。』

 

紅茶を入れるクック。

 

クック『そうか。それで商売の方はどうだ?』

アルフォンソ『まあまあかな。まあ、元々この国のマジックアイテムは優秀だし、王族や貴族の人が良く買ってくれるよ。特に占いとかの

マジックアイテムの類は淑女の方々に飛ぶように売れるよ。』

クック『なるほどね。お前がマジックアイテムの商人になりたいって言ったときは、心底どうしようかと思ったが。』

 

アルフォンソの方を向くクック。

 

クック『立派になってな。』

アルフォンソ『まあ、土産はないけど土産話ならたくさんあるよ。』

 

眼を見合わせ、アルフォンソを見つめるウェルとクック。

 

ウェル『そう。それはいいわね。』

クック『文献や風聞には研究の為のヒントが隠されているからね。』

ウェル『後でじっくりきかせて頂戴。』

 

笑うアルフォンソ。

 

アルフォンソ『はは。こんな時だけ目の輝きが違う。やっぱり研究者だよな~。いや、でも普通ならこの時間は研究に明け暮れてると思っていたけど…。』

 

机に紅茶を置き、ソファに座るウェル。

 

アルフォンソ『そういえば、ユランシアのコーカサス山脈で巨人の骨が大量に出土したという噂を聞いたけど。まあ、そうなら父さんも母さんもここにはいないか。』

 

肩を落とすウェルとクック。

 

クック『いや、それがね。今年、行われた予算配分で優先順位が低くなってしまってね。』

ウェル『確かに出土はしたけど、後回しね。』

クック『まあ、研究に進展が無かったといえばそうなんだが…。』

ウェル『それで私達も違う研究を回されたの。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『記憶情報室のサイコメトラーを使えばいいじゃない。』

クック『記憶情報室?』

 

顔を見合わせるウェルとクック。

 

ウェル『記憶情報室はまた別の部署だからな。』

 

顎に手を当て、頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『そっか。』

クック『ただね。』

 

顔を見合わせた後、アルフォンソの方を向くウェルとクック。

 

ウェル『私達は…あれが生物ではなくてアーティファクトではないかもしれないと思っているの。』

 

眼を見開くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ほう。』

ウェル『他の研究者達は生物だと思っているようだけど。』

クック『まあ、遺物がサイコメトリーできない程、保存状態が悪すぎる腕の骨だし、長年かけても他遺跡では発見できなかったしな。』

 

頷くウェル。

 

ウェル『残念だわ。大量に見つかった途端に、研究規模が縮小されるなんて皮肉ね。』

クック『まあ、与えられた研究で成果を出せばいいさ。』

ウェル『生きているうちに解明できるのかしら?』

 

頷き、立ち上がるアルフォンソ。彼を見上げるウェルとクック。

 

アルフォンソ『…ビジネスチャンスだ。』

 

アルフォンソはウェルとクックを見つめる。

 

アルフォンソ『明日か、明後日にでも賢者様に逢う為に少し出かけるよ。。』

 

駆けていくアルフォンソ。アルフォンソの背を見つめるウェルとクック。

 

C2 実家 END

C3 レディ

 

千年大陸連邦首都。グレートクロス。郊外のリューシカ地区。アルフォンソの姉のポーラーの嫁ぎ先のレーティゲレンの家。ソファに座るアルフォンソ。向かい側に座るレーティゲンとポーラーにレーティゲンとポーラーの息子のジョンとジョック。

 

アルフォンソ『お義兄さん。お久しぶりです。』

レーティゲン『いや、君が来ると知ってね。今日を振替でお休みにしてもらったんだよ。』

 

頭を掻くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『すみません。気を遣わしてしまって。』

レーティゲン『いいんだよ。』

ポーラー『それで、大陸はどうだった。』

アルフォンソ『まあまあ平和だと思う。ただ、商人の中には山賊に会ったりスリに会ったりした人の話も聞いたかな。』

 

眉を顰めるポーラー。

 

ポーラー『まあ。』

 

ポーラーはアルフォンソの顔を見つめる。

 

ポーラー『無事でよかったわ。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『まあね。』

レーティゲン『旅には危険がつきものだからな。』

アルフォンソ『危険な所には近寄りませんよ。移動もだいたい騎士達の横についていったからね。』

 

アルフォンソを見つめるジョンとジョック。

 

ジョン『騎士!』

ジョック『叔父さん。騎士と一緒だったの?』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ああ。』

ジョン『すごいすご~い。』

ジョック『どうやって騎士と知り合ったの?』

アルフォンソ『マジックアイテムを売ってると色々と繋がりができてね。まあ、王侯貴族、一般人もマジックアイテムには興味を持ってもらえるよ。

ユランシアで魔術指南に当たっていたお義兄さんのような魔術師の皆さんに感謝しないとね。』

 

顔を赤らめるレーティゲン。

 

アルフォンソ『それで仲良くなった騎士の試合についていくわけ。今年は何回あったかな…。結構よく開催されてるよ。』

 

飛び上がるジョンとジョック。

 

ジョン『試合!

ジョック『試合!ねえねえ叔父さんでたの?』

 

首を横に振るアルフォンソ。

 

アルフォンソ『いや、無理無理。あんな人達に勝てるわけないよ。』

ジョン『えー。そうなの。』

アルフォンソ『秋だったか冬だったかの大会は凄かったな。ゼウステス17世が一人で相手の騎士達を倒したからね。それはすごい試合だった。流石、貴族連合盟主というか貫禄が違ったね。』

 

壁にかかった時計を見つめるアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ああ、もうこんな時間か。』

 

アルフォンソを見つめるポーラー。

 

ポーラー『あら、どこかに出かけるの?』

アルフォンソ『ちょっとレディを待たせていまして。』

ポーラー『レディ!ああ、アルフォンソにもとうとう彼女ができたのね。』

 

ポーラーの方を向くレーティゲン。

 

レーティゲン『なんとまあ、おめでたい事だ。』

 

首を横に振るアルフォンソ。

 

アルフォンソ『いえいえ。』

 

アルフォンソの方を向く一同。

 

アルフォンソ『ちょっとアルビオン宮殿に行くだけです。』

ポーラー『賢者様に何か用事?』

アルフォンソ『まあ、そんなところだよ。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『今日は時間をとらせてしまってすみません。』

 

立ち上がるアルフォンソ。

 

レーティゲン『なあに。まあ、久々にユランシアの話が聞けて楽しかったよ。懐かしいね。魔術指南にいっていた時代が。』

 

立ち上がりレーティゲンと握手するアルフォンソ。

 

ポーラー『またいつでも立ち寄ってちょうだい。』

アルフォンソ『ありがとう。』

 

ジョンとジョックの方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『試合の話が途切れてしまって申し訳ない。次の機会にするとしよう。』

 

頷くジョンとジョック。

 

ジョン『うん。』

ジョック『絶対だよ。』

 

頷き、去って行くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『それでは。また。』

 

C3 レディ END

C4 陳情

 

千年大陸連邦首都。グレートクロス。中央に位置するアルビオン宮殿。観光受付に並ぶ人だかり。アルフォンソは陳情受付の方へ歩いていく。陳情受付に座る陳情受付の係員とその前に立つ親子ずれ。

 

陳情受付の係員『ああ、ここはアルビオン宮殿観光の受付じゃないよ。陳情受付。観光はあっち。』

父親『やっぱりそうですか。』

 

去って行く親子連れ。陳情受付に立つアルフォンソ。

 

陳情受付の係員『空いてるからって、ここは違うのにね。それで、あなたは?』

アルフォンソ『アルフォンソです。先日予約した。』

 

頷く陳情受付の係員。

 

陳情受付の係員『はいはい。アルフォンソさん。』

 

陳情受付の係員はアルフォンソの方を向く。

 

陳情受付の係員『では、身分証を。』

 

アルフォンソはポケットから身分証を取り出して陳情受付の係員に見せる。

 

陳情受付の係員『はい。本人確認完了と。では…。』

 

立ち上がり、アルフォンソのボディチェックする陳情受付の係員。

 

陳情受付の係員『…大丈夫ですね。では、どうぞ。』

 

陳情受付の係員から魔方陣の描かれたチケットを渡されるアルフォンソ。

 

陳情受付の係員『奥へお進みください。』

 

頷き、歩いていくアルフォンソ。

 

 

千年大陸連邦。グレートクロス。アルビオン宮殿内部。虹の橋を渡り、雲の上を歩くアルフォンソ。雲の上に現れる庭園と小さな小屋。転生を繰り返す女賢者で幼女の容姿した千年大陸元首のコルヴィデール・サンリバン。

 

アルフォンソ『こんにちわ。』

コルヴィデール・サンリバン『ごきげんよう。それで、アルフォンソ。どの様な要件ですか?』

 

コルヴィデール・サンリバンを暫し、見つめるアルフォンソ。

 

コルヴィデール・サンリバン『ん?どうしました?』

アルフォンソ『いえ、以前お会いした…いえ、まあちらっと見ただけですがその時よりお若いと。』

 

アルフォンソを見て、笑うコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『少し前に転生をしました。魔力と体力は若干弱ってしまいましたがね。』

アルフォンソ『そうですか。それにしてもお美しい。』

コルヴィデール・サンリバン『お世辞はいいのよ。それで?』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『巨人の研究についてです。』

 

眉を顰めるコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『あなたがお父様やお母様思いなのは分かりますが、予算と再編はもう決まったことなのですよ。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『それは存じております。単刀直入に申し上げますと、数十年前に発見された巨人の骨はアーティファクトの可能性があるということです。』

 

顔を上げ、空を見つめるコルヴィデール・サンリバン。

 

アルフォンソ『今回発見されたコーカサスと腕が発見されたロードガーは近く、もしかしたら同種のものかもしれません。そこでそれを確かめるために記憶情報室のサイコメトラーが一人必要かと…。んっ、賢者様?』

 

首を左右に振るコルヴィデール・サンリバン。彼女はアルフォンソの方を向く。

 

コルヴィデール・サンリバン『いえ、何でもありません。それで…すみません。もう一度言ってください。』

 

コルヴィデール・サンリバンを見つめるアルフォンソ。

 

アルフォンソ『はい。今回発見されたコーカサスと腕が発見されたロードガーは近く、もしかしたら同種の巨人かと。もし、そうであればアーティファクトの可能性が高い。私はそれを確かめたいので記憶情報室のサイコメトラーを一人貸していただきたのです。もちろん費用はこちらが出します。まあ、アーティファクトでなくても、マジックアイテム行商をまた始めるだけなので、リスクはあまりないかと…。』

 

アルフォンソを見つめるコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『…なるほど。随分と巨人に拘るのですね。御両親に似て。』

 

苦笑いするアルフォンソ。

 

コルヴィデール・サンリバン『それで、巨人がアーティファクトだった時はどうしますか?』

アルフォンソ『…その時はご報告します。』

 

眼を見開くコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『それだけ。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ええ。まあ、僕としては長年両親が追いかけていた巨人が生物かアーティファクトか知りたいだけなので。でも、賢者様。もし、アーティファクトだとしても解析するのに何年かかることやら。』

 

アルフォンソを見つめるコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『…では、あなたならどうするのですか?』

アルフォンソ『はい。各部署を連携させて遺物を復元させます。各部署が知識や技術を独占してる部署だけの研究にしか使わないってのは効率が悪くありませんか?』

 

眼を見開くコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『しかし、遺物は必ずしも安全とは限りませんよ。』

アルフォンソ『そうですよ。しかし、その安全か危険かどうかを判断する為には記憶情報室のサイコメトラー達を使えばいい。つまり各部署を全て連携させれば研究の速度は早まるのです。』

 

頷くコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『あなたの言いたいことは分かりました。早速、手配することにしましょう。』

 

一礼するアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ありがとうございます。』

コルヴィデール・サンリバン『暫く待っていなさい。』

 

呪文を唱えるコルヴィデール・サンリバン。左右に現れる扉。左の扉から現れ、跪く魔術少佐のアードガー。

 

アードガー『魔術少佐アードガー。賢者様の直々の御命令に寄り、この千の間にはせ参じることができたことを光栄に思い…。』

コルヴィデール・サンリバン『とりあえず、入ってください。』

 

一礼して部屋の中に入るアードガー。

 

コルヴィデール・サンリバン『この方、マジックアイテムの行商人のアルフォンソとサイコメトラーの護衛をお願いします。』

 

跪くアードガー。

 

アードガー『はは。必ずや成し遂げて見せます。』

 

立ち上がり、アルフォンソに手を差し伸べるアードガー。

 

アードガー『私は魔術少佐のアードガー。よろしくな。』

 

アードガーと握手をするアルフォンソ。

 

アルフォンソ『こちらこそ宜しくお願いします…。』

 

コルヴィデール・サンリバンの方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『わざわざ護衛の方まで呼んでいただけるとは。』

 

ウィンクするコルヴィデール・サンリバン。左の扉から現れる記憶情報室のサイコメトラーのエーデー。

 

エーデー『…記憶情報室の命により来ました。サイコメトラーのエーデーです。』

 

エーデーの方を向くコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『エーデー。貴方にはコーカサスの巨人の調査を命じます。』

 

眉を顰め、眼を見開くエーデー。

 

エーデー『えっ、い、いえそれは巨人研究の者達がやる仕事では?』

コルヴィデール・サンリバン『…私が頼んでも無理ですか?』

 

首を傾け額に手を当てるエーデー。

 

エーデー『…う…む~、ああ分かりました。賢者様の命令とあらば、何でも調べますよ…はぁ。』

 

エーデーの方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『宜しくお願いします。』

 

舌打ちするエーデー。

 

エーデー『ああ。』

 

顔を合わせるアルフォンソとアードガー。

 

C4 陳情 END

C5 調査

 

ユランシア大陸ロードガー。揺れる馬車。アルフォンソとアードガーに背を向けて寝転がるエーデー。

 

アルフォンソ『エーデーさん。大陸に来てからもずっとあんな感じですが、大丈夫ですかね。』

 

首を傾げるアードガー。

 

アードガー『さあな。』

 

起き上がるエーデー。

 

エーデー『お前らな。』

 

エーデーを見つめるアルフォンソとアードガー。

 

エーデー『お前らは分からんかもしれないが、遺物から得られるものは楽しいものだけだと思うか?生物系なんて最悪だ。グロ画像のオンパレードが見えるんだぜ。本当に賢者様の気まぐれとはいえ勘弁してほしいぜ。』

アルフォンソ『まあまあ。』

エーデー『もとと言えば、お前のせいじゃねえか。いったい賢者様に何を吹き込んだんだ?』

アルフォンソ『まあ、少なくとも恋心ではありませんよ。』

 

笑い出す三人。

 

アルフォンソ『しかし、グロ画像ですか。そこまでは気が回りませんでした。』

エーデー『サイコメトリーできる奴にしか分からん悩みだよ。はぁ。』

アルフォンソ『いえ、僕は、サイコメトリーは遺物や遺跡の調査には優れているという利点しか考えていませんでしたからね。

それで、その能力を使って各部署と連携しながら解析して行くと…。』

エーデー『ふん、確かにそれはいい方法だな。部署間で意思疎通が全くないからな。ある部署とある部署が別々に研究しているものが実は同じだったなんてことはザラだしな。

…まあ、俺達は見慣れているからいいが、新人は、厳しいし、きついだろう。』

アルフォンソ『そうですね。』

エーデー『しかし、連携によって遺跡や遺物の解析が進むのは大賛成だよ。我々は賢者様の様に長くは生きれないからな。グロ画像ぐらいは我慢するよ。』

アードガー『そうですね。消える前に色んなものを見ておきたい。知っておきたいですからね。』

 

エーデーとアードガーを見つめて頷くアルフォンソ。

 

 

 

ユランシア大陸、コーカサス山脈。千年大陸連邦の調査班のキャンプに辿り着く馬車。馬車から降りるアルフォンソ、アードガーにエーデー。彼らに駆け寄る千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『身分証を。』

 

三人の出す身分証を確認する千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『アードガー様にエーデー様、アルフォンソ様ですね。ではこちらへ。』

 

千年大陸連邦の調査班隊員Aの後ろに続くアードガーにエーデーにアルフォンソ。

 

 

ユランシア大陸、コーカサス山脈。中腹。深い亀裂が走る。立ち止まる千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『こちらになります。』

 

亀裂に近寄る一同。笑う千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『はは、大丈夫ですよ。罠などはありませんでした。全て我々が確認しています。』

 

千年大陸連邦の調査班隊員Aの方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『そうですか。』

千年大陸連邦の調査班隊員A『ではこちらへ。』

 

亀裂の中へ入って行く一同。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『まあ、いつの間にかこのコーカサス山脈に亀裂が入ってしまっていた訳ですが。』

アードガー『なるほど。』

千年大陸連邦の調査班隊員A『おかげで、巨人の骨を大量に見つけることができましたよ。まあ、詮索するつもりは

ないですし、研究は研究者の方々に任せておけばいいと思っているのですが、石の部屋に

巨人の骨は規則正しく並べられており、もしかしたらここは巨人の墓地だったのではないかと…。』

 

頷く一同。

 

立ち止まる千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『ここです。』

 

腐食したコンクリートの壁沿いに並ぶ無数の人型ロボット。周りを見回す一同。

 

アードガー『おお。』

エーデー『凄いな。』

アルフォンソ『これは…。』

千年大陸連邦の調査班隊員A『人間の骨や既存する巨人の骨とは全く違っています。いったいどんな外観をしていたんでしょうかね。』

 

一歩前に出るアルフォンソ。

 

アルフォンソ『いや、このままだったのかもしれない。』

 

眼を見開く千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『えっ、ああ。そういえば、あなた方はこれをアーティファクトだと。発想は面白いんですがね。』

 

千年大陸連邦の調査班隊員Aを見つめるアルフォンソ。

 

アルフォンソ『まあ、これからすぐに分かりますよ。その為に情報管理室のエーデーさんに来てもらったので。触っても大丈夫ですか?』

 

頷く千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『ええ。どうぞ。』

 

人型ロボットのつま先に近づくエーデー。彼はしゃがんで人型ロボットのつま先に手を当てる。見つめる一同。眼を閉じるエーデー。暫し沈黙。

 

立ち上がるエーデー。眉を顰め、腕組みをする。

 

エーデー『…参ったな。これはガキにはサイコメトリーさせられない代物だ。』

 

エーデーを見つめる一同。肩を落とすアルフォンソ。彼の方を向くエーデー。

 

エーデー『安心しろ。こいつは乗り物だ。古代人のアーティファクトだよ。やったな。』

 

眼を見開き、エーデーを見つめるアルフォンソ。彼の肩を叩くアードガー、眼を見開く千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

エーデー『ただ…。こいつには、言いにくい事だが殺戮の歴史がしみついてやがる…。』

 

顔を見合わせる一同。

 

エーデー『ま、後は賢者様次第だろうな。』

 

C5 調査 END

C6 復元

 

ユランシア大陸、コーカサス山脈。千年大陸連邦の調査班のキャンプ。遠くを見つめるアードガーにアルフォンソにエーデー。彼らの傍らに立つ千年大陸連邦の調査班隊員A。

 

千年大陸連邦の調査班隊員A『しかし、さぞや壮観だろうな。賢者様に引き連れられた各部署の研究者達…。』

 

頷くエーデー。

 

エーデー『…千年大陸連邦が始まって以来はじめての試みじゃねえか。』

アードガー『そういえばそうですね。賢者様はあなたがたの研究には一切口を出していませんでしたから。』

 

砂煙が巻き起こり、大量の馬車が現れる。先頭の馬車の御者の隣に座るコルヴィデール・サンリバン。

 

アルフォンソ『…凄いな。』

 

千年大陸連邦の調査班のキャンプの前で止まる大量の馬車。馬車から降りるコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『調査ご苦労様です。』

 

一礼する一同。馬車から降りて、アルフォンソの方へ駆けていくウェルとクック、巨人研究部署の研究員達。

 

クック『賢者様に呼ばれた時は何事かと思ったぞ。』

 

周りを見回すウェル。

 

ウェル『記憶情報室も、材料技術研究科も、魔法技研も…千年大陸連邦のありとあらゆる部署の人材が集まっているわ。凄いわね。』

 

アルフォンソの方を向くコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『これより、巨人の復元を行いますが…。』

アルフォンソ『そうですか。でも、私は巨人がアーティファクトと分かっただけで満足ですので、これにて。』

 

アルフォンソを見つめるコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『そうですか。見届けなくてよろしいのですか?』

 

コーカサス山脈の方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『まあ、興味はありますが、商人ですから専門の事は信頼できる専門家に任せますよ。』

ウェル『まあ。』

クック『それで、これからどうするんだ?』

 

クックの方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『仕入れたマジックアイテムを売りにゼウステス王国へ向かいますよ。なんか皆の足を引っ張りそうなので。』

クック『そうか。』

ウェル『残念ねえ。』

 

アルフォンソの傍らに寄るエーデーとアードガー。彼らはアルフォンソと抱き合う。

 

エーデー『頑張れよ。』

アードガー『またお会いしましょう。』

アルフォンソ『まあ、そんなに遠くは無いし、帰るときはみんなと一緒がいいかな。』

 

 

ユランシア大陸。ゼウステス王国。首都ウラヌス。人通りの多い街角を歩くアルフォンソ。失踪するゼウステス王国宰相ボードレル・クライガン。

 

ボードレル・クライガン『おお。いたいた。』

 

振り返るアルフォンソ。馬を止めて、降りアルフォンソの傍らに寄るボードレル・クライガン。

 

アルフォンソ『おお、これはクライガン様!』

ボードレル・クライガン『久しぶりだな。』

アルフォンソ『いえいえ、こちらこそお久しぶりで。』

ボードレル・クライガン『あのマジックアイテムは中々良かったぞ。孫娘が気に入ってな。』

アルフォンソ『そうですか。それは良かった。』

ボードレル・クライガン『それよりも君に要件がある。』

 

眼を見開くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『は、はあ。どのような。』

ボードレル・クライガン『王に会った方が、話が早い。』

アルフォンソ『王!!』

ボードレル・クライガン『まあ、とりあえず乗ってくれ。』

 

頷き、ボードレル・クライガンについていくアルフォンソ。

 

 

ユランシア大陸。ゼウステス王国。首都ウラヌス。オリンティア宮殿。玉座の間。玉座に座るゼウステス17世。扉が開き、現れるボードレル・クライガンとアルフォンソ。

 

ボードレル・クライガン『お連れしました!』

 

一礼して中に入るボードレル・クライガンとアルフォンソ。彼らは玉座の前で跪く。

 

ゼウステス17世『そうかしこまらなくてもいい。』

 

顔を上げるボードレル・クライガンとアルフォンソ。ボードレル・クライガンは立ち上がり、王の隣に立つ。

 

ゼウステス17世『君の事はボードレルから聞いている。』

アルフォンソ『は、はあ。』

ゼウステス17世『コーカサスから来たそうじゃないか。』

アルフォンソ『そうですね。遺跡絡みで少々。』

ゼウステス17世『そうかそうか。良かった。それで…。』

 

上体を前に出すゼウステス17世。

 

ゼウステス17世『賢者様が来ているという噂を聞いたが本当か?』

 

ゼウステス17世を見つめるアルフォンソ。

 

アルフォンソ『はい。ですが、ゼウステスに辿り着くまで一ヶ月弱かかっていますし、もうお戻りになられたかも…。』

 

肘あてを叩くゼウステス17世。

 

ゼウステス17世『馬を!』

アルフォンソ『は、はい?』

ゼウステス17世『今なら間に合うかもしれん。』

 

玉座の間に現れる白馬を連れたゼウステス王国の兵士A。ゼウステス17世はアルフォンソを片手で持ち上げて、馬に飛び乗る。

 

ゼウステス17世『コーカサスの何処だ。』

 

一歩前に出るボードレル・クライガン。

 

ボードレル・クライガン『王!お待ちを!』

 

ボードレル・クライガンの方を向くゼウステス17世。

 

ゼウステス17世『先を急ぐ。』

 

手綱を引くゼウステス17世。駆けていくゼウステス17世とアルフォンソを乗せた白馬。頭に手を当てるボードレル・クライガン。駆け出していくゼウステス王の親衛隊達。

 

ボードレル・クライガン『王がご出立!』

 

 

草原を駆け抜けるゼウステス17世の乗る白馬とそれに続く、騎乗するゼウステス王の親衛隊。白馬にしがみつくアルフォンソ。

 

ゼウステス17世『駅馬車より揺れるだろう。その代わり速いぞ。』

アルフォンソ『わわわわわ…。』

ゼウステス17世『道案内を頼むぞ。』

 

スピードを上げるゼウステス17世の白馬。

 

 

ユランシア大陸、コーカサス山脈。千年大陸連邦の研究者のキャンプを尾根から見つめるゼウステス17世にアルフォンソ、ゼウステス王の親衛隊達。白馬にしがみつき、青い顔のアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ふぅ…駅馬車で一ヶ月かかる道のりが…わずか数日で突破…。』

ゼウステス17世『それはそうだ。安全と乗り心地の為に速さを押さえているからな。

それに、夜間は運営されてない。』

 

息を荒げるゼウステス王の親衛隊達の方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『しかし、三日三晩寝ずに飛ばさなくても良かったのでは…。』

ゼウステス17世『いやいや、近くに恩師が来ているのに挨拶もしないのはな。』

アルフォンソ『恩師。』

ゼウステス17世『賢者様は私の魔法の師範だよ。』

 

頷くアルフォンソ。

 

ゼウステス17世は千年大陸連邦の調査班のキャンプを見つめて、頷く。

 

ゼウステス17世『よし、行くぞ!』

 

駆けていくゼウステス17世の乗る白馬とそれに続く、騎乗するゼウステス王の親衛隊。千年大陸連邦の研究者のキャンプから出て来る千年大陸連邦の研究者達。馬を止めるゼウステス17世。

 

ゼウステス17世『ゼウステス王国国王!ゼウステス17世である!』

 

耳を抑えるアルフォンソ。

 

ゼウステス17世『賢者様はおられるか!』

 

一歩前に出る千年大陸連邦の魔術師A。

 

千年大陸連邦の魔術師A『賢者様なら中腹の亀裂のある場所におられます。』

ゼウステス17世『おお、助かる。行くぞ、はいや!』

 

手綱を引くゼウステス17世。続く、騎乗するゼウステス王の親衛隊。

 

 

ユランシア大陸、コーカサス山脈。中腹。深い亀裂が見える。地響きと砂塵、立ち止まる一同。ゼウステス王の親衛隊員Aが馬から降り、前へ進む。馬から降りる一同。彼らの前方に見える動く人型ロボット。

 

ゼウステス17世『これは!』

 

ゼウステス17世にアルフォンソ、ゼウステス王の親衛隊の方を向く、コルヴィデール・サンリバンと魔術技術科の魔術師達。

 

コルヴィデール・サンリバン『おお、これはゼウステス国王陛下。』

 

コルヴィデール・サンリバンの方を向くゼウステス17世。

 

ゼウステス17世『お久しぶりです。』

 

人型ロボットの方を向くゼウステス17世。

 

ゼウステス17世『しかし、なんとまあ。これは…。』

 

微笑むコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『巨人を復元しました。』

 

眼を見開くゼウステス17世。

 

ゼウステス17世『巨人の復元!これはまた凄い事を。しかし、あれが巨人とは口は、眼は、鼻は…我々の知っている巨人とは別種の…。』

コルヴィデール・サンリバン『巨人機構と言った方が正しいかもしれません。』

 

眼を見開くゼウステス17世。

 

コルヴィデール・サンリバン『古代文明の乗り物です。』

ゼウステス17世『乗り物!それは実に面白い。』

 

動く人型ロボットを見つめるゼウステス17世。ゼウステス17世を見つめるアルフォンソ。

 

C6 復元 END

C7 試合

 

千年大陸連邦首都。グレートクロスのバライティン通りにあるアルフォンソの実家。朝食を食べるクックにウェルにアルフォンソ。

 

ウェル『そう言えば聞いた?巨人一体をゼウステス王にさしあげたこと。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ああ、聞いてるよ。貴族連合で自慢しているらしいとか。』

クック『巨人ではなく人型機構と学会では通称で決まったよ。』

 

クックの方を向くウェル。

 

ウェル『ああ、そうね。』

クック『もう一つ話があってな。役立つかどうかわからんが、人型機構を使った試合が行われる。』

アルフォンソ『人型機構を使った試合!!?』

 

頷くクックにウェル。

 

クック『ああ、メルミン王国とルソタソ王国の間でな。貴族連合立会いのもと…。』

ウェル『馬を入れる為に色々と改良していたからね。』

アルフォンソ『そうか。ありがとう。』

 

立ち上がるアルフォンソ。アルフォンソを見つめるウェルとクック。

 

アルフォンソ『行ってくるよ。』

ウェル『行くの?』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ああ。貴族連合の会場に人型機構を開発した商人が居合わせれば、きっといい商談ができる。』

ウェル『まあ…。』

クック『そうか。気を付けて行って来いよ。』

アルフォンソ『まあ、色々と準備してからだけど…。すぐにでも出発しないと間に合わないよ。』

 

顔を見合わせるウェルとクック。

 

 

千年大陸連邦首都。グレートクロスのバライティン通りにあるアルフォンソの実家。玄関の扉を開けるアルフォンソ。

 

アルフォンソ『では、行ってくるよ。』

 

アルフォンソを見つめるウェルとクック。

 

ウェル『気を付けてね。』

 

頷くアルフォンソ。彼は暫し歩いた後、アルビオン宮殿の方を向く。

 

アルフォンソ『人型機構は絶対に売れる。』

 

歩いていくアルフォンソ。

 

 

メルミン王国とルソタソ王国の国境。グライゼル峡谷。馬車から降りるアルフォンソ。テントや屋台が並び、人々が集う。彼は露店に入る。

 

店主『御一人さん。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『すごい賑わいですね。』

店主『そりゃね。もう一年も前から人が集まってきているよ。人型なんちゃらを使った試合を目玉にね。』

アルフォンソ『そうですか。』

店主『最初来たときはそりゃさびれに寂れていたけどね。メルミン王とルソタソ王の兵士が準備に入ってきて、まあ、それから王侯貴族様方が来てな…。おかげさまで儲かっているよ。それで何にする?』

アルフォンソ『それではスープを。』

店主『あいよ。』

 

談笑しあう旅人たち。アルフォンソは彼らの方を向く。

 

アルフォンソ『こんにちわ。』

 

アルフォンソの方を向く旅人たち。

 

旅人A『よお。ま、誰かは知らんが。』

アルフォンソ『アルフォンソと申します。』

旅人A『アルフォンソか。そうかそうか。お前も賭けるかい?』

アルフォンソ『賭け?賭けとは何を?』

旅人B『そりゃ決まってるじゃねえか。一週間後の目玉の試合だよ。』

旅人C『メルミン王が勝つか、ルソタソ王が勝つか?』

 

アルフォンソを見つめる旅人A。

 

旅人A『どっちに賭ける?』

 

腕組みをするアルフォンソ。

 

アルフォンソ『どちらとも甲乙つけがたいですからね。』

 

頷く旅人A。

 

旅人A『まあな。』

旅人B『俺はメルミン王だな。』

旅人C『俺はルソタソ王か…。』

旅人A『まあ、訓練中のメルミン王とルソタソ王を見に行って来てから決めるのもありだ。』

アルフォンソ『訓練中…。』

旅人A『ああ、峡谷を挟んで左右に分かれて訓練中だぜ。』

 

旅人Aの方を向く旅人B。

 

旅人B『しかし、千年大陸連邦は幼い子供。しかも女の子を連れて来ていたが、大丈夫なのかい?』

旅人C『さあな…。』

 

アルフォンソの前にスープを置く店主。

 

店主『どうぞ。』

アルフォンソ『ありがとう。』

 

スープを飲むアルフォンソ。

 

アルフォンソ『それで、千年大陸連邦の方々はどこに?』

 

頷く旅人C。

 

旅人C『ああ、彼らなら峡谷の真ん中だぜ。』

アルフォンソ『ありがとう。』

 

スープを飲み干すアルフォンソ。

 

 

メルミン王国とルソタソ王国の国境。グライゼル峡谷。千年大陸連邦のテント。周りにはたくさんの千年大陸連邦の魔術師達。そこへ向かうアルフォンソ。千年大陸連邦の魔術師Aがアルフォンソの前に立つ。

 

千年大陸連邦の魔術師A『止まれ。』

 

止まるアルフォンソ。

 

千年大陸連邦の魔術師A『何者だ?』

 

アルフォンソは身分証を取り出す。

 

アルフォンソ『千年大陸連邦の行商人のアルフォンソです。』

 

千年大陸連邦の魔術師Aは身分証に目を通した後、アルフォンソに渡す。

 

千年大陸連邦の魔術師A『ああ、同胞か。しかし、ここに何用か?詩人はかなり来ていたが、行商人が来るとは珍しい。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ええ。ちょっといいアイデアが浮かびましてね。賢者様はおられますか?』

 

頷く千年大陸連邦の魔術師A。

 

千年大陸連邦の魔術師A『ああ、あちらに。』

 

コルヴィデール・サンリバンのテントを指さす千年大陸連邦の魔術師A。アルフォンソは頷いてそこへ向かって行く。テントの前に立つアルフォンソ。

 

コルヴィデール・サンリバンの声『アルフォンソではないですか?』

 

テントを見つめるアルフォンソ。

 

コルヴィデール・サンリバン『入りなさい。』

 

頷いて、テントの中に入るアルフォンソ。

 

アルフォンソ『失礼します。』

 

アルフォンソの方を向くコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『どうしました?わざわざこのようなところまで。』

アルフォンソ『ビジネスチャンスがあれば何処にでも行きますよ。』

 

笑うコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『そう。』

アルフォンソ『実は…人型機構の製造工場を作ってはと思いまして…。』

 

眼を見開くコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『製造工場?』

アルフォンソ『ええ、人型機構は国営産業にすべきです。』

コルヴィデール・サンリバン『国営産業に。またこれは随分と大きく出ますね。』

アルフォンソ『今回の試合の勝敗はどうであれ、人型機構は世に大きく宣伝されます。そうすれば、まず、王侯貴族の方々からオファーが来るでしょう。』

 

アルフォンソを見つめて頷くコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『分かりました。考えておきます。ただ…。』

 

コルヴィデール・サンリバンはアルフォンソを見つめる。

 

アルフォンソ『ただ?』

 

微笑むコルヴィデール・サンリバン。

 

コルヴィデール・サンリバン『その時は、協力してくださいね。前々の時の様に行商に向かうとか、自分は専門家ではないという方便で逃げないでください。』

 

苦笑いして、一礼するアルフォンソ。

 

アルフォンソ『はは。それはもちろん。』

 

 

メルミン王国とルソタソ王国の国境。グライゼル峡谷。特等席に座る各国の王侯貴族達。凄まじい数の人々の中でグライゼル峡谷を見つめるアルフォンソ。

 

木々が揺れ、鳥が空へ飛んで行く。初期型のヴェルクーク級人型機構が左右から登場する。それぞれのコックピットのハッチが開き、現れる黒い馬に乗り、操縦冠を被ったメルミン王と栗毛の馬に乗った操縦冠を被ったルソタソ王。歓声が上がる。白馬に乗ったゼウステス17世がメルミン王機とルソタソ王機の真ん中に立つ。

 

ゼウステス17世『これより、グライゼル峡谷においての国境を明確にするため、メルミン王とルソタソ王の試合を始める。』

見物客A『よっ、待ってました!』

メルミン王『俺がメルミン王だ!グライゼルは渡さん!』

ルソタソ王『何を!このルソタソ王がグライゼルは守り切る!』

 

大歓声が上がる。

 

ゼウステス17世『それでは、はじめ!』

 

去って行くゼウステス17世。

 

動き出すメルミン王機とルソタソ王機。間合いを詰める。呪文を唱え、ハッチから飛び上がり、火の玉を2、3個放つメルミン王。ルソタソ王機は左に飛び上がり避け、剣を振る。後ろに飛んで避けるルソタソ王機。

 

メルミン王はメルミン王機の首部の横に立つ。剣を抜くメルミン王機。間合いを詰めるルソタソ王機。

振られた剣が、刃に当たり火花を散らす。

 

感嘆の声。拳を握るアルフォンソ。

 

装甲を蹴って飛び上がり、空ちゅうできる結ぶ両者。両者の人型機構が切り結んで火花を散らし、互いに、人型機構の装甲を馬に蹴らせ、切り結びあうメルミン王とルソタソ王。

 

拳を上げる人々。

 

見物客B『凄い。凄い戦いだ!』

 

見物客Bの方を向く見物客女A。

 

見物客女A『私もこんな試合見たことが無いわ。』

 

切り結び続ける彼らを見つめる王侯貴族や見物客達。アルフォンソの手から汗が流れる。突進するメルミン王機。受け止めるルソタソ王機。つばぜり合いする両機。メルミン王は自機の頭部の横に飛び乗り、呪文を唱える。ルソタソ王機の脚部にはルソタソ王。

 

眼を見開く人々。

 

コックピットのハッチを開き、メルミン王機当てるルソタソ王機。バランスを崩すメルミン王機。前方に跳躍するメルミン王。

光の閃光がグライゼル峡谷のかなたに消えていく。脛部の装甲を蹴り、剣を振り上げて上昇するルソタソ王。

メルミン王はルソタソ王を見、剣を振り上げて下降する。両者の剣が衝突し火花散る。

 

感嘆の声。

 

互いにバランスを崩して地面に

転がる。

 

喉を鳴らすアルフォンソ。

 

互いに地面に転がるメルミン王とルソタソ王。暫くして、起き上がる二人。切り結んだまま停止する両者の人型機構。互いを見つめ有るメルミン王とルソタソ王。夕日が息を切らす泥だらけの彼らをさす。剣を振りかざす両者。振り下ろされた刃と刃が火花を散らす。地面に転がる両者。

 

メルミン王『はあはあ。中々の腕前だな。』

ルソタソ王『貴様こそな。』

 

両者は立ち上がり、剣を構えた後、剣を捨て、抱き合う。

 

歓声。拍手が起こる。立ち上がるゼウステス17世。

 

ゼウステス17世『勝負あり。両者引き分け!』

 

大歓声が上がる。民衆を見つめるメルミン王とルソタソ王。

 

メルミン王とルソタソ王『我々はこの機に両国を共同統治することにしよう!!』

 

互いに拳を上げるメルミン王とルソタソ王。大歓声が上がり、互いに抱き合うグライゼル峡谷の村人達。

 

C7 試合 END

C8 売上

 

千年大陸連邦首都。グレートクロスのバライティン通り。アルフォンソの実家。紅茶を飲むアルフォンソ。

アルフォンソを見つめるウェルとクック。

 

クック『…しかし、お前が今度新設された生産科の責任者に抜擢されるとはな。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『まあ、賢者様に逃げては駄目っていわれたからね。』

ウェル『それで、景気はどうなの?』

アルフォンソ『まあ、いいほうだと思うよ。

人型機構だけでなく色々なものを作るように厳命されてる。今まで研究した遺物を全てね。

僕はだいたい、営業に回っているけど、それでも、商品説明の為に色々と勉強しなくちゃならないからね。』

 

紅茶を啜るクック。

 

クック『そうか。この国も色々とやりだすなあ。所で人型機構の売り上げはどうだ?』

ウェル『長年巨人を研究していたものとして知りたいわね。』

 

2、3回頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『…まあ、悪くは無いよ。ただ、最近はあまり伸びないね。』

 

肩を落とすクックとウェル。

 

クック『そうか。』

ウェル『まあ、しょうがないわね。』

 

頷くクック。

 

クック『そうだなぁ。』

 

腕組みをするクック。彼らを見つめるアルフォンソ。

 

 

千年大陸連邦首都グレートクロス中央。アルビオン宮殿。マジックアイテム製造工場。技術主任たちと共に工房を見学するアルフォンソ。

 

技術主任A『この工場に各職人や魔術師達を集めております。』

アルフォンソ『なるほど。』

 

周りを見回すアルフォンソ。

 

アルフォンソ『ところで人型機構は?』

技術主任C『人型機構は、今月は三機、ロズマール王国とシュヴィナ王国、アレス王国に納品することになっています。』

アルフォンソ『三機か…。』

技術主任A『初回に比べれば、あの時の忙しさは嘘のような数値ですな。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『そうだな。人型機構は見れる?』

 

頷く技術主任B。

 

技術主任B『ええ、こことは別の試験会場で。魔術大尉のサグナー様が調整運転を行っています。』

アルフォンソ『そうか。見に行っていいかい。』

技術主任B『無論ですとも。』

 

 

千年大陸連邦首都グレートクロス中央。アルビオン宮殿。マジックアイテム製造工場地下。大規模試験会場に入る技術主任たちとアルフォンソ。動き回る1体の人型機構と壁沿いに立つ2体の人型機構。動き回る人型機構の頭部が技術主任とアルフォンソの方を向く。コックピットのハッチから現れる騎乗した千年大陸連邦魔術大尉のサグナー。

 

サグナー『これはこれは皆さんお揃いで。』

 

手を振るアルフォンソ。会釈するサグナー。しゃがむ人型機構。サグナーはアルフォンソ達の前に立つ。

 

サグナー『こんな所に何の用です?』

 

一歩前に出るアルフォンソ。

 

アルフォンソ『昔はもっと面子がいたような気がするけどね。』

サグナー『ええ、しかし、三機程度となれば、そんなに必要ありませんよ。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『そっか。乗っていい?』

 

顔を見合わせる技術主任達。頷くサグナー。

 

アルフォンソは技術主任たちの方を向く。

 

アルフォンソ『君達も乗って。』

 

顔を見合わせ、アルフォンソの方を向いて頷く技術主任たち。彼らはサグナーを先頭に人型機構の内部に入って行く。コックピットのハッチが閉まり、立ち上がる人型機構。コックピットの中で周りを見回す一同。

 

技術主任A『こうやってみるととても広いですね。』

サグナー『馬が入りますからね。』

 

歩き出す人型機構。アルフォンソはサグナーの方を向く。

 

アルフォンソ『変わってもらってもいいかい。』

 

頷き、操縦冠をアルフォンソに渡すサグナー。操縦冠を被り、サグナーの方を向くアルフォンソ。

 

サグナー『歩けと念じてください。』

 

頷き、眼を閉じるアルフォンソ。暫し、沈黙。眼を開くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『…歩かないね。』

サグナー『いえ、神経を集中させて下さい。歩けと。人型機構を想像し、動きを命じるんです。』

 

一歩踏み出す人型機構。操縦冠を取るアルフォンソ。彼は首を横に振る。

 

アルフォンソ『なるほど。たぶん伸び悩むのはこれが原因だ。』

 

顔を見合わせる技術主任達。

 

アルフォンソは操縦冠を技術主任Cに被せる、眼を見開く技術主任C。

 

アルフォンソ『やってみなよ。』

技術主任C『い、いえ。自分は…。』

 

前を見つめる技術主任C。

 

技術主任C『よーし。動け!あれ…えい!それ…。』

 

眼を閉じる技術主任C。一歩踏み出す人型機構。

 

技術主任C『確かに…これは…。』

アルフォンソ『だろ。サグナー魔術大尉は精神鍛錬や軍事訓練も積んできた方だが、僕らは違う。』

 

苦笑いする技術主任C。

 

技術主任C『こんなことしながら切り結んでいた王侯貴族様方は超人ですね。』

アルフォンソ『まさしく。しかし、これでは一般には向かないよ。もしかしたら王国貴族様方にも操作できない人は大勢いるかもしれないしね。しかし、このままでは後数年もすればせいぜい城を飾るだけの骨とう品に成り下がる。』

 

腕を組む技術主任A。

 

技術主任A『う~む。』

技術主任B『つまり、操縦冠以外に新しい操作方法を考えなければならないと。』

 

頷くアルフォンソ。

 

眉を顰める技術主任たち。

 

技術主任A『しかし、いったいどうすればいいことやら。』

アルフォンソ『どうすれば…。』

 

サグナーの方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『サグナー魔術大尉はどう思う?』

 

眉を顰め、首を傾げるサグナー。

 

サグナー『…うむ。突然私に振られても。』

アルフォンソ『そうだね。すまない。これから考えるとしよう。』

 

アルフォンソを見つめ、頷く一同。

 

 

千年大陸連邦首都グレートクロス中央。アルビオン宮殿。マジックアイテム製造工場。歩く技術主任たちとアルフォンソ。彼らの前に駆けて来る技術者V。

 

技術者V『すみません。アルフォンソさんですね。少しお話が…。』

技術主任A『君、いきなり失礼じゃないかね。』

 

アルフォンソは技術主任Aの方を向く。

 

アルフォンソ『まあいいじゃないか。』

 

技術者Vの方を向くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『それで話というのは。』

 

頷く技術者V。

 

技術者V『アーミドーの遺物を復元させました。』

技術主任B『遺物の復元は違う部署が…。』

 

頷く技術者A。

 

技術者V『ええ、しかし、アーミドーなどの小規模な遺物まで手が回りませんよ。』

アルフォンソ『自腹でやったのかい。』

技術者V『私の故郷ですからね。自腹で。』

 

頷くアルフォンソ。

 

アルフォンソ『そうかそうか。では、拝見するとしよう。』

 

技術者Vについていく技術主任たちとアルフォンソ。

 

技術者V『少し大きいので持って来るのに苦労しましたよ。まあ、運搬用魔方陣で運んだんですが。』

 

技術者Vと共に彼の工房に入る技術主任たちとアルフォンソ。彼らの目の前に現れるアーケードゲーム機。それを取り囲む一同。

 

技術者V『これです。これをあの人型機構の動力源のこれに繋げて…。』

 

画面に映るキャラクターアイコン。操作する技術者V。

 

技術者V『このレバーを動かして画面に映っている人物を選択します。』

 

切り替わる画面。対峙する二人のキャラクター。

 

ゲーム機の音声『Round 1 fight!』

 

間合いを取る二人のキャラクター。

 

技術者V『それで、このボタンで殴ったり、蹴ったりできます。それでレバーとボタンを組み合わせれば、技が発動します。中々面白いと思いませんか?』

技術主任A『うむ。確かに面白い発見だが、実用性は…果たして?』

技術主任B『しかし、すぐに政府に申請はしておいた方がいいだろう。』

技術主任C『なんにせよ。自腹で良くやってくれた。』

 

眼を見開いてアーケードゲーム機を見つめるアルフォンソ。

 

アルフォンソ『…これだ!これだよ!このコマンド操作を主体にすればいいんだ!君!大金星だよ!これなら、一般の人達にも普及できる複雑な部分だけを操縦冠に任せよう。特に指とか。貴族用の人型機構の他にも一般人用の、まあ、馬が入らなくてもいいサイズの人型機構も作ろう。カスタマイズができるようにもしよう!』

 

アルフォンソを見つめる一同。

 

ゲーム機の音声『K.O.』

 

暫し、沈黙。

 

アルフォンソ『…君、かなりやりこんでないか?』

 

アルフォンソの方を向く技術者V。

 

技術者V『ええ。まあ。』

 

C8 売上 END

C9 新世界

 

千年大陸連邦首都グレートクロス。グレートクロス中央診療所。219病室。ベットに横になるクック。隣に座るウェル。病室内に集まるアルフォンソにレーティゲン、ポーラーにジョン、ジョックにティリーとザック。クックは彼らを見回す。

 

クック『ありがとう。』

アルフォンソ『倒れたって聞いたから急いで駆け付けたけど…。』

ザック『見た所、大丈夫そうで何よりだよ。』

ティリー『心配したんだからね。』

ポーラー『本当に、無理は禁物よ。』

 

頷くクック。

 

クック『いや、ありがとう。』

 

額に手を当てて泣くクック。

 

ウェル『まあまあ。』

 

顔を上げるクック。

 

クック『本当にこんないい子供達に囲まれて幸せ者だよ。』

 

頷くウェル。

 

クック『少し外に出たい。』

 

クックを見つめる一同。アルフォンソがクックに肩を貸す。

 

クック『いや、ありがとう。お前も大きくなったな』

 

頷くアルフォンソ。外へ出ていく一同。

 

 

千年大陸連邦首都グレートクロス。グレートクロス中央診療所の玄関から出て、中庭に移動するクックにウェル、アルフォンソにレーティゲン、ポーラーにジョン、ジョックにティリーとザック。顔を上げるクック。

 

クック『…巨人の腕を見つけてからこんな時代がやってくるとはな。』

 

クックはウェルの方を向く。

 

クック『信じられるかい。生きている間にこれをみることができたんだ。奇跡だよ。』

 

頷くウェル。

 

ウェル『そうね。まさしく新世界よ。』

 

街を闊歩する無数の人型機構が彼らの眼に映える。

 

C9 新世界 END

 

END

 


 
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