No.831672

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク 改訂版

soranoさん

第52話

2016-02-18 21:21:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:763   閲覧ユーザー数:721

~廃坑・露天掘り場所~

 

「―――ちょ、ちょっと待ってよ!手を引けってどういうこと!?将軍ってば、また遊撃士(あたし)たちを目のカタキにしているわけ!?」

モルガン将軍から伝えられた話を聞いたエステルは怒りの表情で声を上げ

「そうは言っておらん。だが、警備艇の導力砲ですら傷付けることが困難な魔獣だ。おぬしらにいったい何ができる?」

(”超振動”ならいけるかもしれないけど……そんな事、話せねえしな……)

エステルの怒りに対してモルガン将軍は冷静な様子で答え、ルークは考え込んでいた。

「そ、それは……」

「まあ、正論ね。手配魔獣を倒すとは訳が違いすぎるわ。それに飛行艇を持たないレン達では空を飛ぶ竜を捜索できない。」

モルガン将軍の正論にエステルは返す言葉がなく、レンは納得した様子で頷いた。

「餅は餅屋とも言う。戦争ならば我々プロに任せておくがいい。お前たちは、そうだな……『身喰らう蛇』の拠点捜索に集中してもらうと助かる。」

「で、でも……!」

「……ざけんな………」

モルガンの指示にエステルが反論しようとしたその時、怪我の手当てをされていたアガットが足を引きずりながらモルガンに近づいて来た。

 

「アガット……!?」

「ア、アガットさん!手当てしたばかりだから無理しちゃダメですよ~!」

「相変わらず体力だけは無駄にあるわねえ。」

近づいてきたアガットを見たエステルは驚き、手当てをしていたティータは慌ててアガットに駆け寄り、レンは呆れ半分の様子で感心していた。

「………………………………」

「……おぬしは……『重剣』のアガットと言ったか。威勢のいい若手遊撃士だとカシウスから聞いたことがある。」

アガットの睨みに対してモルガン将軍は一切怯まずアガットの目を見つめて口を開いた。

「オッサンの事はどうでもいい……。なあ……将軍閣下よ……。餅は餅屋……戦争はプロに任せろだと……?そりゃ……本気で言ってんのか?」

「……無論、本気だが。人を守るだけの遊撃士と違って我々は国を守らねばならん。この場合、国とは民と国土の両方を指している。それができるのは軍だけだ。」

「クク……民と国土を守るか……」

モルガンの話を聞いたアガットは低い声で笑った後、そして―――

 

「笑わせるんじゃねええッ!!!」

「ぐっ……」

突如、モルガンの襟首を掴み、怒鳴った!

「ちょ、ちょっと!?」

「ア、アガットさん!?」

「おい、アガット!何をしてるんだよ!?」

アガットの行動にエステルやティータ、ルークは焦り、アガットは周りの声を一切気にせず自分の気持ちをモルガン将軍に声を出して怒鳴り始めた。

「いつもいつも!てめえらは間に合わねえ!でかい図体を素早く動かせず!足並みを揃えることばかり考えて!命令なしじゃあ何もできず!守れるはずのものを守れねえ!今回も!10年前の戦争でもなあッ!!」

「!!もしやおぬし、あの時の……」

アガットの怒鳴りを聞いて何かを思い出したモルガン将軍は驚きの表情でアガットを見たその時

「ケッ……誰がてめえらだけに任せておけるかってんだ……。今度は……今度こそは……。俺は……この手で……ミーシャを守らなくちゃ……」

アガットは地面に崩れ落ちた!

 

「アガットさんっ!?」

「ちょ、ちょっと!?」

「……ふむ、傷口が開いたということはなさそうだ。気力と体力が尽きて気絶しただけのようだな。」

「……アガットさん……」

「ま、まったくもう、人騒がせなんだから……」

「ホント、どれだけレン達に迷惑をかければ、気がすむのかしら?」

アガットの状態を調べて言ったモルガンの答えを聞いたティータは心配そうな表情で倒れているアガットを見つめ続け、エステルは安堵の溜息を吐き、レンは呆れた表情で溜息を吐いた。

 

「とりあえず、きちんとしたベッドに寝かせた方がよかろう。こやつの家もあることだし、ラヴェンヌ村まで送るとするか。」

「あ、うん、お願いします。………………………………。って、どうしてラヴェンヌ村にアガットの家があることを知ってるの?」

「……こやつに一度だけ会っていたのを思い出してな。あの時の少年が……ずいぶんと大きくなったものだ。」

「あの時?」

「『百日戦役』が終わった直後……。こやつの妹と村人たちの墓碑が建てられた時のことだ。」

「!!!」

その後ルーク達はモルガンと付き添いの兵士と共にアガットをラヴェンヌ村にあるアガットの家に運んだ後、アガットの看病はティータに任せ、村長の家に向かって村長に事情を説明した。

 

~ラヴェンヌ村・村長宅・夕方~

 

「なるほど……。そんな事があったのか。エステル殿、将軍閣下。色々と面倒をかけたのう。」

「ううん……。結局、竜の暴走を食い止められなかったし……。あんまりお役に立てなくて申しわけないんだけど……」

エステル達の説明を聞いた村長はエステル達に謝罪し、謝罪されたエステルは申し訳なさそうな表情をした。

「まあ、そう気落ちするな。結果はどうあれ、おぬしらが早めに動いてくれたのは助かった。ボース市のマーケットでの人命救助といい、果樹園での消火活動といい、な。」

「ああ、誰よりも早く瞬時にやるべき事を判断して指示していたものな。」

「うふふ、さすがはレンの”おねえちゃん”ね♪エステルのようなおねえちゃんを持って、レン、幸せだわ♪」

「あ、あはは……。将軍さん所か、ルーク兄やレンにまで誉められると何だかこそばゆいわね。」

モルガン将軍やルーク達に感心されたエステルは恥ずかしそうな表情で笑った後気を取り直してすぐに話を戻した。

 

「それはともかく…………アガットのことなんだけど。妹のミーシャさんって本当に10年前の戦争で……?」

「うむ……。帝国軍と王国軍の戦闘が村の近郊であってな……。その時、帝国軍の焼夷弾(しょういだん)がいくつか村に届いたのじゃ。」

エステルに尋ねられた村長は重苦しい表情で当時の様子を語り始めた。

「その結果、民家が焼かれ犠牲者を出すこととなった。ミーシャもその1人じゃ。」

「………………………………」

「王国軍は一体何をしていたのかしら?流れ弾を守るべき民達の所に届かせるなんて。」

「お、おい、レン。」

村長の話を聞いて悲しそうな表情でエステルが黙っている中、レンは責めるような視線でモルガン将軍を見つめ、レンの指摘を聞いたルークは焦った。

 

「いや……その娘の言う通り、その件は我々王国軍の失態だ。村を守るための防衛線が帝国軍の苛烈な攻撃を招き……結果的に甚大な被害をもたらしたのだからな。」

「あ……」

「そして、その防衛線の構築はわしの指示によるものだった。全てはわしの責任と言えるのだ。」

「……将軍閣下。あまりご自分を責めなさるな。あの時、王国軍はあくまで使命を果たしただけじゃった。結局、幾つかの偶然が重なって起きた被害でしかないんじゃよ。」

「いや、どうか庇ってくれるな。肉親を亡くした者にそのような理屈は通用しない。あの赤毛の若者のようにな。」

「……それは……」

モルガン将軍に慰めの言葉をかけようとした村長だったが、アガットの事を出され、黙り込んだ。

 

「村の犠牲者の葬儀が行われた時、わしは軍の代表として出席したが……。その時会った、赤毛の少年の目を今でもはっきりと覚えておる。底知れぬ哀しみを、怒りでねじ伏せるような……そんな痛々しい眼差しをな。そんな目をさせたのは……やはり、わしなのだろう。」

(どの世界でも戦争によって真っ先に犠牲になるのは民なんだよな……)

モルガン将軍の話を聞いていたルークは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「……いや。そうではないのじゃ。アガットが本当に責めていたのは帝国軍でも、ましてや閣下でもない。他ならぬ自分自身だったのじゃ。」

「……?」

「ど、どういうこと?」

「詳しいことは話せぬが……。アガットは、ミーシャの死を自分の責任のように感じていた。決してそんな事はないんじゃが、そう思い込んでしまったんじゃな。そして激しく自分を責めた挙句、村から飛び出してしまった。どうすればミーシャに償えるか、その答えを探すために。おそらくルーアンで荒れた日々を過ごしていたのも、その答えが見つからなかったからじゃろう。」

「………………………………」

「その後、良い導きがあって遊撃士の道を志したようじゃが……。どうやら未だ、あやつは答えを見つけてはおらぬらしい。10年前と同じように深い哀しみと、自分への怒りに囚われてしまっておるようじゃ。」

「……やり切れぬ話だ。」

村長の説明を聞き終えたモルガンは目を伏せた。

 

「……ねえ、将軍さん……。やっぱりあたしたちも、竜対策に協力させてくれない?」

「なに……?」

「遊撃士(あたしたち)には軍にはない強みが確実にある。フットワークの軽さとか、市民との距離の近さとか……。軍人さんが普段入らないような奥地にも出かけたりするしね。きっとお役に立ってみせるから。」

「だが……」

「アガットが遊撃士になったのはそうした所に可能性を感じたからじゃないかと思うの。どうしたら妹さんに償えるか、その答えを見つける可能性を……。……その意味では、アガットが父さんに誘われて遊撃士になったのはすごく納得できると思う。父さんは、お母さんやあたしを守れなかった事がきっかけで遊撃士になったから……」

「………………………………」

エステルの提案と説明をモルガン将軍は何も言わず黙って聞き続け

「遊撃士の可能性をもう一度、確かめるためにも……。何よりも、目の前で困っている人たちの力になるためにも……。あたしは、今の自分にできる精一杯のことはしておきたい。だから……どうか協力させてください。」

「エステル……」

「うふふ、さすがエステルね。」

真剣な表情でモルガン将軍を見つめて真摯に頭を下げるエステルの様子をルークは驚き、レンは感心していた。

 

「………………………………。10年前、ボース地方にも遊撃士がいればあるいは……」

「へ?」

「いや……何でもない。多忙なカシウスに代わって今回の竜対策の指揮はわしが行うことになった。そろそろハーケン門に戻って軍議を始めなくてはならん。おぬしの提案はその時に検討させてもらおう。」

「そ、それじゃあ……!」

「早とちりするでない。あくまで検討するだけだ。今夜中に、軍議の結果をボース支部に連絡しよう。約束できるのはそのくらいだ。」

「……うん、わかりました。」

「連絡、待っているぜ。」

エステルとルークの返事を聞いたモルガン将軍は立ち上がり

「それではわしはこれで失礼させてもらおう。村長殿、お邪魔したな。」

「いやいや。また来てくだされよ。」

そして後ろに控えていた兵士と共に退席した。

 

その後アガットの状態を見るためにエステル達は一端アガットの家に行き、アガットの介抱をしているティータに今後の事を説明し、その際のティータの希望により、ティータは引き続きアガットの看病に残る事になったので、アガットを看病するティータを残して、報告の為にルーク達はギルドに戻った…………

 

 

 

 


 
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