No.831311

島津一刀と猫耳軍師 2周目 第38話

黒天さん

今回は天梁、天泣のお話がメインな感じです。

2016-02-17 01:24:19 投稿 / 全13ページ    総閲覧数:8494   閲覧ユーザー数:6278

 

「桂花か。どうした?」

 

自室で月から上がってくる報告を読んでいると、扉が叩かれた。

 

入ってきたのは桂花。珍しい、滅多にこちらには来ないというのに。

 

「天華に内密に相談したいことがあるのよ」

 

「一刀にもか?」

 

「そう、一刀にも」

 

これこそ珍しい、普段イの一番に一刀に相談するだろうに。

 

何故私の方に相談をしてくるのか……。軽く首を傾げるが、

 

桂花が持ってきた書類を読み、話しを聞いてみると、なるほど、これは一刀には相談できないだろう。

 

「しかし、ここまでする必要があるか?」

 

「おそらく……、対策をしなければ遠くないうちに事構える事になる。

 

そもそも、相手とこちらで勝利条件が違う事にもっと早く気づくべきだったわ……」

 

「勝利条件、か」

 

目的、とも読み替える事ができるか。

 

確かに相手とこちらの目的が異なる事もまま有ることだが、

 

桂花の話した通りであれば、こちらが不利であるのは間違い無いだろう。

「しかし、よくこんな策を思いつくな?」

 

「相手の目的を考えれば、動きを限定させるなら。恐らくこれが一番だと思うわ」

 

「それだけではなくてな、一刀をよほど信頼しているのだと思ってな。

 

心配ではないのか?」

 

「嫉妬はしても心配はしないわ。

 

それに、忍者隊及び、馬騰軍との戦い以後、編制を行っていた、椿花傘下のくノ一隊についても、

 

一人でも多く動員出来る方が確実性が上がる。椿花本人にも動いてもらう予定だし。

 

この手を使えば、手空きになるものが出るからそちらを動員できる」

 

「そうか。ふむ……、実行するまでしばらくあるな?」

 

「そうね、もうしばらく待つほうが有効かもしれないわ」

 

「それなら、一刀と連れて二人で近隣の町の視察でも行って来ないか?」

 

私の言葉に、桂花が目を丸くする。

 

が、すぐに困ったような笑みになる。

 

「確かに独占したい気持ちはあるけど、みんなに申し訳ないわよ。

 

私が何か根回ししたと思われても困るし」

 

「それもそうか。が、まぁその程度の余裕はあるだろうし、そうだな。

 

孔明、仲達、それと、孟徳も連れて行けば問題ないだろう。

 

この辺りは桂花についで一刀と関係が深いようだし、たまにはいいのではないか?」

 

「良く見てるわね」

 

「当然だろう。最近は下級文官に混ざって皆を観察している事もあるしな」

 

「え、嘘!?」

 

今度こそ目を丸くして驚いている。どうやら桂花も気づいていなかったらしい。

 

「一刀は私だと一目で見ぬいたから、皆見て見ぬふりをしていると思っていたが」

 

「気づかなかったわ……」

───────────────────────

 

「いい勝負だなぁ」

 

「そうですねー」

 

模擬戦をやってるのは霞と春蘭。見物してるのは天泣と俺。

 

最近昼はあたたかくなって過ごしやすいからなのか、天泣ののんびり具合が凄い。

 

マンガだったら、デフォルメされて白目になってて、頭の上にちょうちょか何かのエフェクトでもついてそうな……。

 

そんな感じだ。今日は天泣は午後からお休みらしいし。

 

「うらああぁぁぁ!!」

 

「ハァ──ッ!!」

 

霞と春蘭は実力が近いみたいでいつ見てもなりいい勝負なんだよなぁ。

 

この2人はことさらこういう勝負事というか戦うのが好きみたいだし、よく勝負してるのを見るし。

 

「こういう戦うのが好きな人ってなんていうんだっけ」

 

「んー、修羅です?」

 

今回の勝負は霞の勝ちらしい、116合か、長丁場になったなぁ……。

 

「ウチからしたら天泣のがよっぽど修羅みたいやけどなぁ、な? 血染めのセンキちゃん?」

「そ、その二つ名で呼ばないでくださいいぃ……」

 

両手で顔を覆ってイヤイヤと首をふる天泣。

 

ドレスを返り血で血染めにして戦場を駆ける、というのはインパクト強いし、

 

そろそろ二つ名でもつくんじゃないかと思ってたら、敵兵の間でついてたのが『血染めのセンキ』当てる漢字は戦鬼か戦姫か……。

 

どちらにしてもなんか中二病臭いというか、痛い感じが……。冥府の使いとかもたいがい痛いけど。

 

痛いのを自覚してかこの呼び方するとすんごい恥ずかしがる。

 

ちなみに天泣は春蘭と本気で再戦して、結局また天泣が勝った。禁じ手を使ってだけど。

 

春蘭はものすごい悔しそうな顔してた。天泣が狙いをハズしていなかったら、恐らく首を貫かれて死んでるだろうしなぁ……。

 

勝負する前に、勝負するかわりにもう絶対本気で戦えなんて言わない、って約束させてたから多分これっきりなんだろうけど。

 

そして俺は霞に勝負しろーって言われて、一瞬で負けた。

 

本気出せ!って言われたけど、俺本気でいったんだけどなぁ……。

 

ほんと、なんであの時は霞に勝てたんだろう。

 

何だかわからないけど、霞の動きが遅く見えたんだよなぁ、あの時は。

 

「ははは、まぁいいじゃない、それだけ名が知られてるってのは誇らしいでしょ」

 

「一刀、あんたもやで? 二万人殺しの鬼島津っちゅーたら多分もう大陸中がしっとるで?」

 

「……、冥府の使いで覚えられるよりマシだよ」

 

鬼島津のほうがいい。覚えのある通り名だし。

 

まさか自分がそう呼ばれるなんて思っても見なかったけど。

「そういうたら天泣は、なんで自分から返り血かぶりにいくんや?

 

戦場で見た感じ、あれわざとやろ?」

 

「え? ええと、心理的に相手を威圧するためですねー。

 

ふふ、最初はイヤだったんですけど、続けるうちにだんだんクセになっちゃいましてー……」

 

ぞっとするような笑みを浮かべ、何やらねちっこい視線を春蘭と霞の首に這わせる。

 

自分の膝の上においていた大剣を、ネコか何かでも撫でるように撫でながら言葉を続ける。

 

「春蘭さんと勝負した時も、霞さんと勝負したときも、本当は首を深くえぐりたくてしょうがなかったんですよー……。

 

あぁ、この人の首を切り裂いて返り血を浴びたらどんなに快感だろうってー……。

 

きっと、自分と同格以上の人の返り血を浴びるのは得難い快感なんでしょうねー。

 

本気で戦うということは殺しあうということですからー。

 

だから模擬戦で本気というのはやりたくないんですよー、手元が狂っちゃいそうでー、ふふふ……」

 

天泣が自分の大剣を撫でながらそういうと、春蘭と霞は思わず天泣の剣がかすった首を片手で抑え、一歩後ずさり、顔を見合わせる。

 

いや、怖いよ天泣……。ていうかそんな表情出来たのか。

 

こー、ヤンデレさんがレイプ目でヤバイこと言いながら笑ってるようなそういう威圧感がある。

 

「……、ほんまもんの修羅やな」

 

「全くだ」

「なんて、冗談ですよー。本気で戦うのが嫌いなのは事実ですけどー」

 

あはー、なんて言いつつふにゃりと表情をゆるめ、いつものほわほわした感じに戻る。

 

それを見て苦笑を浮かべる2人。

 

「まぁ、そういうことにしておこう、私と霞は警邏に出てくる。それではな」

 

なんだかんだで結構仲いいんだよなぁ、この2人。

 

警邏前にガッツリ模擬戦って元気だ。腹ごなしとか言ってたけど……。

 

「さて、俺もそろそろ休憩終わりだし、仕事に戻るとするかな」

 

「何のお仕事ですー?」

 

「天梁と事務仕事だよ」

 

「姉さんとですかー。お手伝いにいっても邪魔になっちゃいそうです」

 

「まぁ、してもらう雑用は無くはないけど、大丈夫だよ」

 

せっかく時間があるんだし、手伝ってもらうのも申し訳ない気がするし。

 

「わかりましたー。あ、そういえば」

 

「ん?」

 

「一刀さんはこの服と、本気で戦う時の服とどちらの私がお好きですー?」

 

「どっちでも天泣は天泣だけど、そうだなぁ……。こっちは見慣れてるからたまにはあっちの服の天泣もいいかも?

 

あっちの服で居るのって、じっくり見たこと無いし」

 

「わかりましたー。ではお仕事頑張ってくださいねー」

 

そういってどこかへ走って行く天泣。

 

なんだったんだろう? 疑問におもいつつ、仕事もあるので天梁の部屋へ。

トントンとドアを叩くと、天梁が顔を出し、部屋に入れてくれる。

 

部屋に入ると前に見たのと同じ、ピンクとか鮮やかな色を使ったいかにも女の子な部屋。

 

まぁ、机の上に置かれた山のような書簡にげんなりするわけだけど……。

 

「さて、頑張ってやっつけてしまいましょう」

 

「やるか……」

 

といっても、この手の仕事はもうなれた物で、特に難しい案件という物は無く、

 

適切な部署へ送るように仕分けるだけのものもちらほらあった。

 

まぁそれでも、一通り目を通す必要があるから時間はかかるわけだけど。

 

やっぱり天梁にも作業スピードでは勝てないなぁ……。

 

ただチョイチョイ相談を受ける事があるけど、案件をどの部署へ送るべきかとか。

 

その仕事を終えたのは夕食後。本当は夕食前に仕事を終わらせるんだけど、

 

もうちょっとだからっていうので残業して終わらせる事にした。

 

作業のスピードはかなり上がってきたと思う。

 

「一刀様のおかげでずいぶん早く仕事が終わりました。

 

本当は明日までかかる予定の仕事だったのですけれど……」

 

やっと終わった、というようにため息なんてつきながら、髪を解く。

天梁曰く、自室に居る時で仕事モードじゃない時は髪を解いているらしい。

 

編み物習いに来てた時も、大抵解いてたなぁ、そういえば。

 

「お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいなぁ」

 

ちなみに天梁にはちゃんと冬の間にマフラーを作って渡している。

 

ある程度やり方を覚えてからは天梁の部屋じゃなく自室で作ってた。

 

渡した時に、見たことも無いような笑顔でその渡したマフラー抱きしめながら

 

「ありがとうございます! ふふ、私の宝物にしちゃいます」

 

なんて言われたのは記憶に新しい。実際冬の間はいっつも巻いてたし。

 

服が赤系だから髪の色と合わせた色で作ってみたんだけど良く似あっていた。

 

あんまり嬉しそうだったから、不格好な出来だったのが申し訳なくなってしまった。

 

「お疲れ様ってことで、お茶でも入れようかね」

 

「あ、それぐらいなら私が……」

 

「いいから座ってて」

 

立ち上がろうとする天梁の頭にポンと手を置いて撫で撫でと。

 

少しうれしそうな顔をしてほんのり頬を染めるのが可愛い。

 

お湯をとってきてお茶を入れて……。最近お茶入れるのも随分慣れてきた。

「それにしても、天梁と天泣とももう随分長い付き合いになったなぁ……」

 

「そうですね、こちらでは私と天泣が一番長いですから。

 

前から一緒の皆さんにはかないませんけど。でもですね……」

 

少し言葉を止めて、天梁が何か言おうとしたところで、ガチャリとドアが開いて誰かが入ってくる。

 

「天泣、どうしたの!?」

 

天梁の驚いた声を聞いて思わず俺も振り返り、身構えてしまう。

 

いつものドレス姿じゃなく、本気服の天泣がそこに居たから。

 

だって天泣がこの格好で居るってただ事じゃないよ?

 

「姉さんが抜け駆けしようとした気配がしたのでー」

 

すたすたと歩いて来て天梁の隣に立つ。

 

「え? や、そんなこと無いわよ?」

 

「ふふ、姉さんの考える事は大体分かるからー」

 

髪をほどいた天梁と天泣が並ぶと、ほんとに見分けが付かないなぁ……。

 

本気服だと服の色合いも似てるし。

 

「というか何でその服?」

 

「たまにはこちらの服も、とおっしゃっていたのでー。それだけですよー?」

 

まぁ確かに殺気立っていたりはしないし、実際そうなんだろうけど。

 

ミニスカートに黒いニーソ。愛紗の服と似ているけど、暗い赤を主にしてるから雰囲気が全然違う。

「それでーですね。姉さんが言いかけてた事ですけどー」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

天梁が慌てて天泣の口を塞ごうとするが、天泣はそれを阻止して笑顔のまま言葉を続ける。

 

「私も姉さんも、一刀さんが大好きですーって事ですー。

 

お気づきだったと思いますけどー」

 

「あああ、天泣の馬鹿ー!?」

 

恥ずかしさからか顔を赤くして、涙目になりながら天泣の胸倉を掴んで揺さぶるが、天泣は笑顔のまま動じた様子も無し。

 

うん、気づいてたけどね。

 

「何で天泣が言っちゃうの!? 私が言うって事にしてたじゃない!」

 

「やっぱり二人一緒でないとー」

 

「喧嘩しないように」

 

見ててなんだか微笑ましいレベルなので積極的には止めないけどさ。

 

精々頬を引っ張ったりするぐらいだし。

 

「俺はあんまり2人に喧嘩してほしく無いんだけど……」

 

「愛情表現みたいなものなのでー」

 

「はぁ……」

 

いつもどおりの天泣と、諦めたようにため息をつく天梁。なんだか天梁が気の毒になってきた。

 

「確かにお慕いしてますとは伝えるつもりでしたけど、大好きなんてそんな恥ずかしい……」

 

「違うの?」

 

「ち、違わないですけど……」

 

「姉さんも素直になればいいのにー」

 

「天泣、あなたは恥ずかしいとか無いの?」

 

「無いー。外でならあるけど、ここには姉さんと一刀さんしかいないから、なんだってできちゃうよー?」

 

「ちょ、な、何するの!?」

天梁の手を掴んで立ち上がらせると、えーい、なんて掛け声と共に天梁の背を思い切り押して、ってちょっと!?

 

俺の胸に天梁が突っ込んできたからとっさに立ち上がって受け止めたけど……。

 

「あ、わ、わ、……」

 

俺に抱きつく形になった天梁が、真っ赤になってまともに言葉がでなくなってる。

 

で、天泣が俺の背後に回って、腕を回して天梁ごと抱きつくもんだから、天梁が逃げられなくなってもっと大変な事に……。

 

何これサンドイッチ? 両側から柔らかい物が押し付けられてすっごい悩ましいけど。

 

「一刀さんー? 双子姉妹の姉妹丼って食べてみたくないですかー?」

 

この状況で何をとんでもない事を言いますかこの子は……。霞か! 霞あたりの入れ知恵なのか!?

 

「て、天泣!? な、なんてこと言い出すのー!?」

 

「ちなみに一刀さんがうんって言うまで離しませんー」

 

「……マジ?」

 

「はい♪」

 

結局そのまま天泣に押し切られた。

 

本当に離してくれなかったし……。

天泣は良いにしても、天梁が気の毒だったので、後から話しを聞いてみることにした。

 

「本当はあんなドタバタした感じで伝えたくは無かったんですけどね。

 

私達らしいといえば、らしいですけど。天泣の事も私が伝えるって話しはしてたんですけど、

 

やっぱり自分で言いたくなって乱入してきたらしいです」

 

「天梁がそれで納得してるならいいけどね。後々喧嘩のタネになったらヤだし」

 

「私も抜け駆けして、こっそり口付けぐらいしてもらえないかと思ってたので、天泣に文句ばかりも言えないです。

 

ただ、もう少し雰囲気があっても良かったかとは思いますけど」

 

「雰囲気も何も合ったもんじゃない勢いだったからなぁ」

 

「でもまぁ……。3人で、というのはイヤではなかったですし……。これが理由で天泣と大きい喧嘩にはならないですよ。

 

ふふ、双子で同じ顔二人というのは、他の方には無いアドバンテージ、でしたっけ? 私達の強みですしね。

 

お望みでしたら、いつでも二人でお相手いたしますよ?」

 

そう言って、艶っぽい笑みを浮かべるのだった。

あとがき

 

どうも黒天です。

 

2周目のメイン枠の天泣、天梁のお話でした。

 

もうそろそろ拠点も終わりにして話しを先に進めようかと思っていたり。 

 

璃々ちゃんとか麗ちゃんとか華琳とか紫青とかもやらなきゃなー、とは思ってるんですが、

 

拠点が長過ぎるかなぁ、などとも……。悩み中です。

 

さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

また次回にお会いしましょう。

 

 
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