No.831183

恋姫英雄譚 鎮魂の修羅 22の3

Seigouさん

冀州拠点(パート3)

2016-02-16 17:12:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1895   閲覧ユーザー数:1170

拠点・悠

 

 

 

 

猪々子「おりゃああああああああ!!!」

 

華雄「ふんっ!!!」

 

ガキイイイイイイイイイン!!!

 

闘技場に激しい剣戟の音が鳴り響く

 

山斬刀と金剛爆斧がぶつかり合い、火花が散る

 

梨晏「おお~~、二人ともやるね~~」

 

悠「まぁな、猪々子は袁紹軍の二枚看板を張っているからな♪」

 

麗羽「その通りですわ、栄えある袁紹軍の将軍がどこぞの田舎将軍に遅れを取るなどあってはなりませんわ♪」

 

華雄「おい袁紹、今何と言った!!!?」

 

麗羽「え!!?聞こえていたのですか!!?」

 

試合とはいえ、使っているのは紛れもない真剣、それでも周りの状況に気を配れるのは流石は将軍といった所か

 

華雄「そこを動くな!!今・・・・・」

 

猪々子「隙あり!!!」

 

華雄「ぬうっ!!!?」

 

カアアアアアアン!!!

 

猪々子「あたいを相手に余所見が出来ると思ったか♪」

 

華雄「くうっ!!袁紹よ、後で心行くまで説教をしてやる、覚悟しろ!!!」

 

麗羽「・・・・・・・・・・」

 

余計な事を言ってしまい後悔する麗羽

 

口は災いの元である

 

斗詩「あ、やってますね♪」

 

真直「ふむ、感心感心♪」

 

一刀「よくあんな事で熱くなれるよな・・・・・」

 

その時、闘技場に冀州の良心と天の遣いが入ってくる

 

悠「おおおお、待ってたぞ一刀~♪♪」

 

一刀「うおっ、速っ!!?」

 

いきなり悠が物凄い俊足で一刀に突貫してくる

 

本人は、普通に抱き付きに行くだけのつもりなのだが、一刀からすればそれは只のタックルである

 

スカッ

 

それを、横っ飛びの縮地で紙一重で躱す一刀

 

悠「ああもう、なんで避けるんだよ!」

 

一刀「そんな勢いで向かってくるな、怪我するだろうが!」

 

悠「な~~に言ってんだ、天の御遣いのくせに肝っ玉小さいな~♪」

 

そんな最速ゴーイングマイウェイの悠と口論する一刀だったが

 

真直「・・・・・それにしても」

 

斗詩「うん、悠さんの突進をあんな簡単に躱す一刀様って・・・・・」

 

この二人は、一刀を感嘆の目で見ていた

 

ガキイイイイイイン!!!!

 

猪々子「うわっと!!・・・・・ちっきしょ~~、負けちまった・・・・・」

 

華雄「ふん、不意を突いたくらいで勝てると思っているなら私も甘く見られたものだ♪」

 

悠「お、終わったか・・・・・よ~~し一刀~~♪今度はあたし達の番だぞ~~♪」

 

一刀「な、ええ!!?」

 

梨晏「おお~~、悠の独学格闘術と一刀の北郷流無刀術か~♪面白そうかも♪」

 

麗羽「私もぜひ見たいですわ♪」

 

華雄「・・・・・袁紹にはぐらかされた気もするが、私も張郃の武は見てみたいぞ♪」

 

猪々子「あたいもアニキと悠姉の試合は見てみたかったぞ♪」

 

斗詩「・・・・・正直、私も興味あるかも♪」

 

真直「はい、肩慣らしにやってみてはどうですか♪」

 

一刀「・・・・・分かったよ、ちょっと待っててくれ」

 

完全に空気が悠と一刀が試合をする流れになってしまっているので、否応なしに了解するしかなかった

 

今の一刀は、フランチェスカの制服のままなのでこのまま試合をする訳にはいかない為、一度客室に戻り戦闘装束に着替えて再び闘技場に戻ってくる

 

悠「おお来たか♪早く、早く、早く始めるぞ♪」

 

既に悠は舞台の上にスタンバっており、両手には鉤爪、風月が装備されていた

 

満面の笑顔で風月通しを擦り合わせ、チュインチュインと金属通しがぶつかる嫌な音を響かせる悠はとても楽しそうである

 

一刀「おいおい止めろよ、なんでそんなに嬉しそうなんだよ・・・・・」

 

悠「だってあたしは初めて会った時から一刀とず~~~~~~~~っと試合ってみたかったんだよ♪今日この日に夢が一つ叶ったんだぜ♪嬉しくない方がどうかしてるぜ♪」

 

一刀「もっとまともな夢を見てくれよ・・・・・まったく」

 

そして、嫌々ながらも一刀は舞台に上がる

 

斗詩「それでは、審判は私が勤めますね」

 

そして、武闘大会で審判を務めていることもあり、慣れている斗詩も舞台に上がる

 

悠は堂々と正面を向き両脇をがっちりと締め、がに股気味に腰を落とす

 

一刀は、やや右で力を抜きつつ両腕を胸の位置で構える

 

猪々子「なあ、梨晏、この勝負どうなると思う?」

 

梨晏「う~~~ん、ちょっと分からないな、二人とも速さは互角だと思うけど」

 

真直「という事は、装備の差で北郷殿の方が不利という事ですか?」

 

華雄「どうかな、北郷には北郷流無刀術という我々の知らない多くの技があるからな」

 

麗羽「一刀さんにとって、そんなものは関係が無いでしょうに、これまでずっと武器を相手に素手で戦ってきたのでしょう?」

 

斗詩「では・・・・・始め!!!」

 

そうこうしているうちに試合は始まる

 

悠「しゃあああああああ!!!!」

 

シュバババババ!!!

 

一刀「ぐっ!!やっぱり速い!!」

 

本気で一刀を切り刻むが如く向かってくる悠の目は血走り、いきなり脳内エンドルフィン全開である事を物語る

 

俊足の鋭さもそうであるが、風月を連続で振るう速さも半端ない

 

それは例えるなら、現代で言うところの截拳道の達人が振るう拳の速さと大差ない

 

某カンフー映画スターばりの速さを武器に一刀に攻めかかる

 

一刀「くっ!!ちっ!!」

 

縮地を使い、素手でそれらの攻撃をなんとか受流し捌く一刀

 

同じ素手通しならともかく、鉤爪が迫ってくるのであれば否応なく神経が擂り削れる

 

一刀「(長期戦は拙い!!)」

 

このままではジリ貧になってしまうと判断し、一刀は勝負をかける

 

シュバッ!!

 

悠「お!」

 

一瞬ではあるが、悠は一刀を見失いかけた

 

後ろを振り向くと、そこには全身から青白い氣を解放した一刀が立っていた

 

悠「おお~~~、ようやくその気になってくれたか♪」

 

本調子を入れ始めた一刀の姿が嬉しくなり、悠は再び風月を擦り合わせる

 

一刀「ふぅ~~~・・・・・しっ!!」

 

そして、攻防が入れ替わり、一刀が攻める

 

悠「うっしゃあ~~~~!!!!」

 

それを迎撃する為に風月を袈裟切りに振るう

 

一刀「ふっ!!」

 

左上から迫る風月を左手で受流し、右の拳を悠の鳩尾に突き入れる

 

ガシッ!!

 

一刀「っ!!?」

 

しかし、それは悠の左腕に阻まれる

 

悠「しゃっ!!!」

 

ドカッ!!!

 

一刀「ぐっ!!」

 

悠の左足の蹴りで間合いを空けられてしまう

 

俊足を武器としているだけあって、蹴りの速さも申し分なかった

 

悠「おらおら、そんなものか!!?」

 

そして、更に速度を上げる悠

 

一刀「おい!!?まだ上があるのかよ!!?」

 

まさかこの世界で自分と同じくらい速く走れる人間が華佗以外に居るとは思っていなかった一刀は、度肝を抜かされる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨晏「うわ~~、速い速い!」

 

猪々子「おいおい、あたい悠姉があそこまで走ってるの見るの始めてだぜ!」

 

華雄「それでもまだお互いに一撃も入れさせていないとは、恐れ入る」

 

真直「悠にあそこまでさせる北郷殿って、本当に天の御遣いなのですね・・・・・」

 

麗羽「私もう、お二人が何をしているのか解りませんわ・・・・・」

 

外からこの試合を見ている者達は異次元の速さを目の当たりにし、感嘆の念を拭えなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠「せあっ!!!」

 

一刀「くっ!!!」

 

なんとか風月をギリギリで躱すも装束の胸元が二枚おろしに切られる

 

一刀「おいこら!!殺す気か!!?」

 

悠「これは試合だぞ、油断してる方が悪いんだよ!!!」

 

斗詩「ちょ、ちょっと悠さん!!いくら何でもやり過ぎです!!」

 

悠「ぜってー止めんじゃねーぞ斗詩!!あたしは今楽しんでんだ!!止めたら殺すぞ!!!」

 

斗詩「・・・・・・・・・・」

 

これは本気である、ここで止めれば後でどんな目に合わされるか分かったものではない

 

斗詩には、両者が大した怪我を負うこと無くこの試合が終わってくれることを祈る事しか出来なかった

 

審判の威厳も何もあったものではない

 

一刀「ったく!!あまりおいたが過ぎると、俺は黙っていない奴だって事は分かっているだろ!!」

 

これまで不逞な事をやらかしてきた奴らには、お説教という罰をくれてやってきた一刀

 

いくらなんでも試合の範疇を超えている悠の所業に我慢の限界が近くなる

 

一刀「はああああああああ!」

 

ブオオオオオオオオオオオ

 

悠「おおおおお♪まだ氣が上がるのか、凄えぜ凄えぜ♪」

 

更に一刀の波動が濃くなり、悠は逆に目を輝かせる

 

悠「んじゃ、あたしもそろそろ本気を出すとしますか♪」

 

一刀「っ!!?まだ本気じゃなかったのかよ!!?」

 

悠「な~~に言ってんだ♪こちとらようやく体が温まって来たんだ♪それとも、そっちはもう限界なのか♪」

 

一刀「・・・・・分かったよ、もうこうなったら最後まで付き合ってやるよ!」

 

悠「それでこそ、あたしが見込んだ男だぜ♪」

 

ただ単に怒りを通り越して呆れる領域まで来てしまっただけであるが

 

一刀「しいぃっ!!!!」

 

悠「しゃあっっ!!!!」

 

シュバババババババ!!!!

 

そして、高速の領域に達した二人

 

斗詩「え、あ!!?二人共何処に!!?」

 

審判をしている斗詩は最早二人の姿を捉えることが出来なかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猪々子「うおおお!!?どうなってんだ、これ!!?」

 

華雄「ここまで速く動ける人間がこの世に居るのか!!?」

 

梨晏「二人とも本当に人間なの!!?」

 

真直「信じられません・・・・・」

 

麗羽「・・・・・・・・・・」

 

外野はもはや開いた口が塞がらない状態だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠「まさかあたしの本気とタメ張れる奴がいるとはな、嬉しいぜ♪」

 

高速移動を止め、一旦両者は止まりお互いの間合いを測るが

 

一刀「それが本気なのか?こっちはもう少しとばせるんだけどな」

 

悠「おおう、なんと!!?まだ余裕があるってか♪♪」

 

驚きと嬉しさの表情を隠せず、感極まって悠は大はしゃぎしながら舞台の上を走り出す

 

悠「あれは忘れもしない15年前、偶然に目にした書物に書かれていた武人を見て心引かれてからあたしの人生は変わった!!いつかきっとその武人と同じ領域に立ってみせると夜空のお星様に誓った幼きあの日、あたしは強さを求めて幾星霜、いろんな所を旅し、いろいろな武術を習得し、日夜研鑚を重ねてきたのだけれど、やはりその本の武人と同じ速さを追い求める事になった訳だ!!よく考えれば一刀はあの本に書かれていた武人と瓜二つなのだ、これが!!だから一刀にはあたしに本気を見せて欲しいんだ!!これが、ホント♪・・・・・あれ、一刀!?どこいったんだ!?一刀~~~!」

 

滅茶苦茶な早口と共に舞台の上を走り回り、寸分違わぬ元の所で止まった悠は一刀を見据えるが、そこに一刀の姿は無かった

 

悠「・・・・・あ」

 

下を向いてみると、そこには一刀がうつ伏せの状態で倒れていた

 

悠「おいおい、何があったんだ、一刀!!?」

 

一刀「何があったかじゃない!!何を言ってるのかまるで分らん!!」

 

悠「なんだよ、今のを聞き取れないなんて、一刀は体じゃなくて耳を鍛えた方がいいんじゃないのか♪」

 

一刀「そんな早口で喋るのは悠くらいだ!!!」

 

悠「あたしは何に対しても速さを追い求める女なんだよ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨晏「あははははははは♪一刀と悠ってばおっかし~~~~♪」

 

猪々子「無理もないぜ、あたいも未だに悠姉の早口は聞き取れない部分があるからな・・・・・」

 

華雄「むぅ、どうやったらあんな風に舌が回るんだ?」

 

真直「気にしないで下さい、悠のあれは只の病気ですから」

 

麗羽「私はもう何を言っているか分かりますけど♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠「なら一刀、あたしに一刀の本気って奴を見せてくれ♪」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

悠「?・・・・・どうした?」

 

いきなり悲壮な顔をする一刀に悠は若干戸惑う

 

一刀「・・・・・いや、どうして悠はそういう事をこんな事にしか使わないんだと思ってさ」

 

悠「こんな事だって?」

 

一刀「つまり、将軍やらなにやらになって多くの人々を殺す様な事に・・・・・」

 

悠「おいおいおいおい、武人になったからには将軍を目指すのはこの大陸の常識だぜ」

 

一刀「その常識とやらのせいで多くの人々の人生を奪い、壊し、狂わせることになったとしてもか?」

 

悠「それは結果に過ぎないぞ、そんな事をいちいち言っていたら何も始まらねぇぞ、それに誤解しないで欲しいな、あたしは殺戮が好きで武人になった訳じゃない」

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨晏「う~~~ん、一刀らしいね」

 

華雄「北郷が暮らしていた天の国とは、一体どんな所なのだろうな」

 

真直「北郷殿のあの性格を考えると・・・・・きっと、私達が想像も付かないくらい争いが起こらず、平和で過ごし易い所なのでしょうね」

 

麗羽「そのような住み易い所なら、ぜひ行ってみたいですわね♪」

 

猪々子「そうですか~?あたいはそんな退屈な所には行きたくないっすよ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・なるほど、悠の考えは分かった、ならこっちも少しは付き合ってやるよ」

 

悠「おお、とうとう本気を見せてくれるのか♪」

 

一刀「まあな・・・・・」

 

そして、裸足のまま爪先で舞台の石畳をトントンと数回叩く

 

一刀「俺が使っている歩法は縮地法と言ってさ、普段賊退治の時にも使っているんだけど、その時に使うのはざっと三から四割くらいの速さなんだ」

 

悠「ほうほう♪」

 

一刀「見れれば見るんだな、これが俺の本気の縮地法だ」

 

シュバッ!!

 

悠「なっ!!?」

 

いきなり一刀の姿を見失ったと思った矢先

 

ドフッ!!!

 

悠「ごふあっっ!!!」

 

腹から激痛が襲ってきて、悠の体がくの字に折れ曲がる

 

悠の反応を上回る速さで一気の間合いを詰めた一刀の右回し蹴りがクリーンヒットした

 

蹴りの勢いを殺しきれずに吹っ飛ばされた悠は舞台の外枠ギリギリの所で踏み止まる

 

悠「ぐふう!・・・・・くそっ!!!」

 

そして、負けじと風月で応戦するが

 

シュババババババババ!!!

 

悠「くっ!当たらん!」

 

さっきまで紙一重で躱すので精一杯だった一刀は、悠の連撃を余裕を持って躱す事が出来るようになっていた

 

悠「(おいおい、本当に一刀の姿が見えねぇ!!)」

 

更に全身の氣を高め、鋭さを増した縮地法は、いちいち一刀の姿を悠の視界から消し一方的に悠を押していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨晏「嘘!!?これほとんど見えないんですけど!!」

 

猪々子「すっげ~~~!!悠姉よりも早く動ける人間を見るの初めてだぜ!!」

 

華雄「これが、天の武というものか・・・・・」

 

真直「・・・・・・・・・・」

 

麗羽「・・・・・・・・・・」

 

真直と麗羽は、一刀の動きを目で追う事も出来ずあんぐりと口を開きっ放しにしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカッバキッズガッ!!!

 

悠「ぐうううぅぅ・・・・・」

 

一刀「おい、それくらいにしとかないと怪我するだけじゃ済まなくなるぞ」

 

全身に一刀の当身を食らい、フラフラな悠

 

これはどう見ても戦闘継続は不可能であろう

 

一刀「もういいだろう?斗詩、ここまでだ」

 

斗詩「あ、はい・・・・・勝者「ちょっと待った~~~~~!!!」・・・・・」

 

この勝者宣言は、悠の大声に止められる

 

一刀「おいおい、本当にそれくらいにしとけよ、このまま続けたら大怪我を・・・・・」

 

見てみると、悠は全身をフルフルと震わせ、子供のように輝く笑顔で自分を見つめていた

 

悠「し、信じられん、それはあたしがずっと探し求めて来た動きそのものだ♪」

 

そして、またもや悠ははしゃぎながら舞台の上をグルグルと疾走する

 

悠「あたしはその動きを追い求めていく千里、長きに渡りこの大陸を旅し続けてきたが、ついに会得する事は叶わなかった!!思い起こせば3年前西の五胡や、北の烏丸族を訪ねたものの見つけられなかった!!それならばやはり自分で開発してしまおうと研鑚を重ねてきたのだが、理想の動きを作り出す事は無理であった!!しか~し、あの本の武人の武を体得する為にはその武人に激しく酷似している一刀の動きを真似するのは、必要この上ないのは当たり前!!だから、やはりあたしは一刀の使っている縮地法を教えて欲しいのであったりするのだ!!これが、ホント♪・・・・・あれ、また一刀の奴どっかに行っちまって・・・・・あれま」

 

また下を向いてみると、再び一刀はうつ伏せで倒れていた

 

悠「一刀もしつけーな」

 

一刀「何かさっきよりも早くなってないか?・・・・・」

 

悠「な~~に言ってんだ♪世界は縮めれば縮めるほどいいんだぜ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗羽「出ましたわ、悠さん節が♪」

 

真直「速いのは良いとしても、普段はこっちが付いていける速度に抑えて欲しいものです」

 

猪々子「でもそれしちゃったら、悠姉じゃないっしょ♪」

 

華雄「信じられん、北郷もそうであろうが、張郃も相当に常人離れしているな」

 

梨晏「縮地法か、私の時も一刀ってば全然本気を出していなかったのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斗詩「悠さん、本当に大丈夫なんですか!?」

 

悠「あったりめ~よ♪こんな楽しい時間を潰されてたまるかってんだ♪」

 

一刀「まぁ、それくらい元気ならまだいけるんだろうけどな・・・・・」

 

その言葉に呆れを含ませ、一刀は立ち上がる

 

悠「なあ一刀、本気であたしにその縮地法って奴を教えてくれないか♪」

 

一刀「は?」

 

悠「さっきも言った様に、一刀のその動きはあたしが長年追い求めてきたそれそのものなんだよ、だからぜひ教えて欲しいんだよ♪」

 

一刀「・・・・・教えるのはやぶさかではないけど、氣を扱えないとかなり難しいぞ、全ての推進力を脚力だけで捻り出さないといけないからな」

 

悠「安心しろ、あたしは脚力だけは、大陸一という自負があるからな♪」

 

一刀「・・・・・まぁ、悠の内功はかなり鍛えられているみたいだし、いけない事も無いだろうけど」

 

一言に氣の使い手と言ってもいろいろある

 

そもそも氣というものは誰にでも備わっているものであるが、一刀や凪の様に目に見える形として外に放出できる誰もが認めるタイプや、真桜のように道具を通して発揮するタイプなどがある

 

氣は、たとえ外に放出することが出来なくとも内功という概念によって鍛える事が可能で内側に集束し練る事によって、ある程度、身体能力を強化する事は出来る

 

ただし、あくまである程度の為、北郷流からすれば悠は氣の使い手と呼ぶには値しないのである

 

一刀「それじゃあ、最初は靴を履いたままじゃやり難いから、裸足になってくれ」

 

悠「おう♪」

 

そして、瞬時に悠はスポポーンと両足の靴及び靴下を場外に放り投げる

 

ここでも最速の力が発揮される

 

一刀「最初は全身の力を抜いて、足に気血を送る準備をする」

 

悠「ほうほう♪」

 

そして、一刀の動作、一挙手一投足を真似していく悠

 

一刀「腰を落し、足の指で地面を掴む様にして、指に力を込める」

 

悠「ふむふむ♪」

 

一刀「溜めた全身の力を爆発させる感じで、初速から一気に最大の速度にまで持っていく!!」

 

シュバッ!!

 

そして、悠の目の前から消えるイメージで、一刀は悠の後ろを取ったつもりだったが

 

一刀「っと、大体こんな感じ・・・・・え!?」

 

しかし、そこに悠の姿は無かった

 

自分の目がいかれたのかと、一刀は辺りをきょろきょろと見渡すが

 

悠「こっちだぜ、一刀♪」

 

一刀「なっ!!?」

 

後ろを振り向くと、そこには満面の笑みを見せる悠が居た

 

悠「わ・・・・・わんだほ~~ぉお!!すばらし~い!!」

 

どう考えても横文字としか思えない言語を発し、悠はこれまでの速度とは比較にならない速さで走り出す

 

悠「ついに私の長年の夢が今、ここに実現した!!今のこの気持ちを何か例えるならば、それはあたかも当たらないと思っていたおみくじで1等が当たったような、いや違うな、そんな有り触れたものではなくて、もっと高尚な喜びである事は当然だけど、ああ悲しいかな、私の乏しい基礎知識ではこの感動を言い表わす事はできないのではないかという事実に今気付いた次第であったりするのは事実なのだが、あたしは何を言っているのか自分でも分からなくなってきてしまって、も~、この溢れ出す感情を押し止どめる事はなんぴとたりともできないであろうことはもはや事実と限りなく確信に近かったりするのだよ、これが!!一刀に出会った時にはよもや、この動きが出来る男だとは露とも思わなかったのだが今こうして自分の目でこの武を見るにつけ、ああ何と武術とは素晴らしいものなのだろうかという思いを新たにするこの私は武術家でよかった!!つまり、とっても嬉しい、そういうこと♪」

 

バタンッ

 

そして三度、一刀はダウンする

 

悠「そこまでやると、チト大袈裟じゃないか?」

 

一刀「大袈裟はどっちだよ・・・・・でも、まさか俺も習得するのにけっこー掛かった縮地法をこんなにも簡単に真似されるとはな」

 

悠「はっはー♪見直したか♪」

 

一刀「正直な、大したものだよ・・・・・俺も悠の事が大分好きになって来たかもな♪」

 

悠「おおう♥それはつまり、愛の告白という事か♥////////」

 

一刀「んな訳ねえだろうが・・・・・にしても、氣の使い手でもないのにいきなり縮地をそこまで扱えるなんてな」

 

悠「まぁ、あたしもかつて本の中で見た知識があったからな、それと一刀の動きが重なったから真似できたんだろうけどな」

 

一刀「(北郷流の縮地法と同じ動きだって?それと同じ概念が書いてある本だと?)」

 

北郷流は、一刀の時代から四百年前の戦国時代から北郷家が代々磨いてきたものである

 

千八百年前の三国志の時代にそんな兵法書が存在するはずがないと思いたいが、パラレルワールドなんだから、そういった本も存在すると言われればそれまでである

 

違和感を拭えない一刀だったが、内心無理矢理納得し立ち上がる

 

一刀「・・・・・まぁ、俺の縮地法も一段階目だから、真似されてもおかしくないか」

 

悠「は?一段階目だって?」

 

一刀「詳しく言うときりがないから大まかに言うと、縮地法には段階が存在してさ、俺がやっているのは基礎の段階で、更にその上が存在するんだ」

 

それは、干支を模った十二の型に分かれる歩法であり、それを扱うことが出来て第二段階、最後の第三段階はそれらの歩法を混ぜ合わせる混同技でこれを扱えるようになれば、半無限にバリエーションが増えていく

 

それら全てを極めてようやく北郷流の縮地法は完成すると言っていい

 

一刀「俺は、今の一段階目で満足しているけどな」

 

悠「なんでだよ!?何段階あるか知らんが、全てを極めてこそだろうが!」

 

一刀「俺は、乱世を未然に防ぐ為に行動しているんだ、そこまで極めても何も意味は無い、それに二段階以降は殺傷力が異常に高いものばかりだし、外から見たら妖術かと思われてしまうくらい不気味なものだ、そんな野蛮なものは俺には必要ない」

 

悠「・・・・・はぁ、ぜひそれを拝んでみたかったが、ま、一刀らしいか」

 

一刀の性格は以前から知っていたため、悠は諦めていた

 

一刀「で、どうする?まだやるか?」

 

悠「もちろんだ、せっかく長年夢見た動きを会得することが出来たんだ、試さないと勿体ないぜ♪」

 

そして、再び両者は構えるが

 

斗詩「あ、あの~、盛り上がっている所すみません・・・・・」

 

悠「あん?今良いところなんだ、邪魔を・・・・・」

 

斗詩「この勝負は、悠さんの勝ちなんですけど・・・・・」

 

悠「・・・・・なに?」

 

一刀「なんだって?」

 

斗詩「一刀様、三回倒れましたよね」

 

一刀「ん?ああ、それはそうだけど・・・・」

 

悠「あ!!?」

 

この言葉に、悠は忘れていた事に気が付く

 

斗詩「はい、決まりでは、降参、場外、舞台に三回転倒した方が負けなんすけど・・・・・」

 

悠「おいおい!一刀はあたしに攻撃されて倒れた訳じゃないんだぞ!」

 

斗詩「ですけど、決まりでは・・・・・」

 

悠「斗詩は、時と場合って言葉を知らないのか!!?そんな決まりは大会とかの催しで行使しろ!!」

 

斗詩「いや、しかし・・・・・」

 

悠「しかしもカカシもねえ!!!あたしは今すぐこの縮地法を試したいんだよ!!!」

 

横から変なちゃちゃを入れられ、不機嫌になる悠だったが

 

一刀「分かった、俺の負けだな」

 

悠「んな!!?一刀!!?」

 

その変なちゃちゃを真に受けて舞台を降りようとする一刀を、悠は止める

 

悠「おい一刀、お前いくらなんでも潔過ぎるぞ!!!こんな下らない事で、天の御遣いの名に土が付いてもいいのかよ!!!?」

 

一刀「そんなもの、いくらでも土を付けて汚してくれて構わないよ、俺は勝ち負けに拘って悠の申し出を受けた訳じゃないしな」

 

悠「むぅ~~~~~・・・・・」

 

一刀「そんな拗ねたような顔をするな、何もこれが最後って訳じゃない、次に冀州に来た時にでもまた付き合ってやるよ」

 

悠「分かったよ・・・・・言っておくけどこの勝負、あたしが勝ったなんて思ってないからな!むしろ負けたと思っているくらいだ、一刀の縮地法を教えてもらってるんだし!」

 

一刀「分かってるよ、次に試合をする時は長時間使えるようにしておけよ、最初は連発するとすぐに息が上がってしまうからな」

 

悠「おう♪楽しみにしているぜ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猪々子「う~~~ん、なんか釈然としないな~~・・・・・」

 

梨晏「うん、不完全燃焼だよ・・・・・」

 

華雄「うむ、私も北郷と張郃の本気の戦いを見てみたがかったが、残念だ・・・・・」

 

真直「もういいです、速さ比べは・・・・・」

 

麗羽「そうですわよ、これ以上は付いていけませんわ・・・・・」

 

こうして、勝負に勝って試合に負けたという言葉をそのまま表し、一刀と悠の試合は終わったのだった


 
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