No.829920

デイライトガン&ムーンライトガン 第23章、第24章

enarinさん

☆戦闘の区切りのため、第23章、第24章をまとめて投稿します。

☆サイバーパンクで神話の入ったガンアクション小説です。

☆ラストまでのプロットをちゃんと書いてあるので、形式は、少しずつ続きを書いていく、章区切りの長編となります。

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2016-02-10 21:45:01 投稿 / 全16ページ    総閲覧数:540   閲覧ユーザー数:540

第23章 軌道エレベーター

 

(某月某日 午前4:00 月光タワー・12F 軌道エレベーター入り口)

 

 医務室から長い階段を上った先にあったのは、厳重なドアだった。無論、ココを通ってきた蛭子のメンバーカードで難なく開いたので、一行はその先に躍り出た。

 そこは、円形の広い部屋で右横に操作パネル、そして中央に周囲が透明の強化プラスティック製の壁に包まれた、円柱のエレベーターが、ドアを閉めた状態で止まっていた。

 

蛭子「これが、1F~12F迄のムーンライトフロアと、101F~120F、つまりここから見るならてっぺんとなる、デイライトフロア側のエントランス迄、その間である12Fと101Fを繋ぐ、軌道エレベーターよ。私も一番に、てっぺんのエントランスに到着して、これでここに来たの」

黒崎「順番から言うなら、蛭子の次の便で与一が来て、これまで刺客に逢ってなく、ここにエレベーターが来ているなら、次の刺客がいるのは、101F以上のフロアとなるな」

スイート「いずれにせよ、次の刺客が乗る前に、こちらが乗り込んで101Fに到着するべきだな」

 

 そういうと蛭子が、メンバーカードで操作パネルを起動して操作し、エレベーターのドアを開けた。

希「ぬこみん・・・・ステロイド・・・・ここまで来たかっただろうな・・・・」

黒崎「希、いくぞ、今は前を見るんだ」

希「あ、ああ、すまん」

 

 一行が全員エレベーターに乗り込むと、軌道エレベーター内部の操作パネルを蛭子が操作しドアを締めた。その瞬間、体がふわっと浮く感触があり、その後、エレベーターは周りの外周エリアが残像になるほどのスピードで上昇していった。

 

蛭子「この12F~101Fの間はね、ムーンライトエリアとデイライトエリアの境界エリアなの。外周エリアのフロア内は、世界を制御する集積装置で埋め尽くされていて、基本的に立ち入り禁止で、外周の壁は超硬質の金属で覆われていてこちら側からの侵入は不可」

黒崎「だから、俺たちも中がどうなっているのか、詳しくは知らないし、このエレベーター空間内での戦闘など不可能だから、ここまで来れば、ある意味、101Fまでは安全のはずだ」

 

 だが、世の中そうは巧く行かないものなのだ。このような“前例の無い場所で攻撃を仕掛けてくる”事に長けているガンナーは居たのである。

 ちょうど、操作パネルが50Fを指したときに、事は起こった。エレベーターがゆっくりと停止していき、止まった瞬間、操作パネルに、

 

 “予期せぬ異常により緊急停止”

 

 と表示されたのだった。

 

蛭子「なに!? こんな所で攻撃を仕掛けて来られるガンナーがいるはずg」

黒崎「・・・・・・・・すまん、盲点だった。一人いた」

 

???「ぎゃーーーーーーはっはっはっ!!!! ちゃんとガンナー名簿くらい、調べておくべきだと思うぞ!」

 

 その声の主は止まったエレベーターを白いワイヤーで包んでいる6機の“小さい蜘蛛型ワイヤー銃(デイライトガン「子蜘蛛」)”の中央、軌道エレベーターのドアの向こうの正面に、外周エリアにやはり白いワイヤーを張り巡らせて、“大型の蜘蛛形ワイヤー銃(デイライトガン「土蜘蛛」)“を構えて待ち構えている、ニヤニヤ笑っている男だった。

八握「蛭子と黒崎以外には、お初だな。俺は特殊戦術部門チーフの、八握 脛(やつか はぎ)だ。お見知りおきを。とりあえず、与一の情報通り、ここでワイヤー張って待っていたら、しっかり捕まえられて、何よりだ」

蛭子「忘れていた・・・・。だが、まさかこんな特殊環境で攻撃を仕掛けてきた前例は流石に無かったから、油断していた」

八握「だから、ある意味、GF十字勲章扱いの攻撃なんじゃねーの。それにこういうのがおれの部門の管轄仕事なんでな。悪く思うな」

希「思うよ。おめー、このエレベーターはお前達にも大切なものなんじゃねーの!?」

 

 だが、八握は意外なほど自信満々で、希の方をちゃんと向いて答えた。

八握「旧式だったっけか? 安心しな。俺のワイヤーは傷1つ付けずに対象物を固定出来る。所謂、蜘蛛の糸だ。軽い粘着性のワイヤーで先も真空吸着式の吸盤だ。だから俺もこの土蜘蛛と、俺が操る子蜘蛛のワイヤーで安全にここに体を固定出来るって事だ。って、ここまで聞くと、どうやっておめーらを片付けるのか、不思議だろ? あ?」

希「だから、知りたい。今後の事も含めて」

 

 八握は更に自信満々になって、はなたーかだかになって、更に言葉を走らせた。

 

八握「ぎゃぁーーーはっはっ! 蜘蛛の糸ってのはな、最強の糸なんだよ。相手を固定する時は傷をつけねーけどな、“締め付ける”となると、切れない糸に変貌するんだよ。な!? こえーだろ?」

 

 希はとにかく、この自信過剰の輩から、聞ける情報を全て聞きだそうとした。当然、パンドリオンも聞いているからだ。

希「ああ、こえーな。だが、エレベーターは壊さない、だが、俺たちは始末する。どうやるんだよ?」

 

 八握は最上級の高笑いと共に、最高にハイな状態で、最後の言葉を発した。

 

八握「こうやるんだよ!」

 シュルシュル!

 

 なんと、八握の操っている6機の子蜘蛛の銃口から白いワイヤーが伸び、エレベーターの小さい換気口の外から侵入し、内部に入ってきた!

 

八握「俺のメインは特殊環境下での仕事だ。こういうのはお手の物だ」

希「ああ、凄いな。情報感謝する。で、パンドリオン、なんか言い知恵あるか?」

パンドリオン「そうだな、ちょっと考えるか。ここから向こうへ撃てる侵入口は奴の情報通り、換気口だけ。エレベーターの破損は不可。ふーむ…」

 

 さて、希とパンドリオンは、どうするのだろうか?

第24章 吸引吸着式ワイヤーの弱点

 

 パンドリオンと希が策を練っている間にも、八握のデイライトガン“土蜘蛛と子蜘蛛”のワイヤーが換気口を通過し、シュルシュルと仲間達に近づいてきた。

 

 軌道エレベーターは、大型のエレベーターとはいえ、あくまで閉鎖空間、大きく回避できるスペースは、それほど無い。しかも、エレベーター内部での派手な攻撃も出来ないのだ。なので、火気攻撃であるリキュールの炎龍銃“ムスペルヘイマー”、激しい衝撃の弾丸を放つテンニャンの極衝撃銃“ハイパーソニックパルサー”、黒崎の電撃系の“サタメント”も撃てなかった。

 

黒崎「ちっ。こう狭くて閉鎖している空間では、銃ではどうにもならん!」

リキュール「ルシフェリオンに戻しても、弾丸では威力が強すぎてだめなの」

テンニャン「あうぅぅ、これでは攻撃できないアル…」

 

 だが、“弾丸をアレンジ”する事で、唯一撃てる弾丸を持つ仲間の銃があった。

 

 スイートの極冷気銃“コキューター”だ。

スイート「火気厳禁、電撃禁止、衝撃なんてもってのほか。なら、撃てる弾丸は1つだけ。冷気だ。少し寒い程度でエレベーターが故障するなど、聞いたことが無いからね。ターゲットはこのワイヤーの先。俺たちを締め付けるかぎ爪となるこの部分を凍らせて機能させなければ、とりあえず凌げるだろう。ということで、全員換気口から一番遠い所に固まって!」

 

 その声に全員反応して、スイートを中央にして、全員が換気口の反対側の壁に集まり、スイートのコキューターの冷気弾丸に任せることにした。

 

パンドリオン「冷気弾丸でワイヤーの口を凍らせる・・・・ワイヤーの先は真空吸引型の吸盤・・・・か・・・・」

スイート「おらおらおらおら!」

 

 パキーーーン! パキーーーーン!

 

 スイートのコキューターから放たれる弾丸“冷気の塊”がワイヤーにヒットするたびに、ワイヤーの先に厚めの氷が纏わり付き、換気口の外に引っ込んでいった。とりあえずこの対処は正解だった。

 だが、八握も馬鹿では無い。デイライトガン“土蜘蛛と子蜘蛛”の銃口まで戻ったワイヤーは、八握の手元の土蜘蛛なら八握自身が纏わり付いた氷を、八握の仕事道具のハンマーでガンガンと叩くことで、周りの氷はぱらぱらと落ちていき、元の吸盤に戻っていた。子蜘蛛の場合、1回エレベーターエリアの内壁まで移動させ、こんこんとぶつける事で、同じようにワイヤーの先は復活してしまったのだった。

 

 当然、ワイヤー攻撃は、また復活し、換気口から再侵入し、これが数分繰り返されているだけとなった。

 

八握「こんな子供だましの小細工、無駄無駄無駄! このワイヤーの素材は表面加工された柔らかくて強い強化プラスティック製の中空糸。完全凍結することなく、どんな場合でも柔らかく弾性に富む。テメーらの疲労がピークになって、弾丸が外れてきたら、巻き付いて骨ごとバキバキにしてやるぜ! へっへっへっ!」

 

パンドリオン「吸引機能のため、中空糸で素材は弾性に富むプラスティック製、所謂ゴム素材・・・・よし! それなら、これだ」

 

 その声と同時に希のパンドリオンを持つ腕は換気口の方へ向けられ、銃口はワイヤーの先に向いた。

パンドリオン「スイートさん、八握の土蜘蛛に繋がっているワイヤーがどれか、わかりますか?」

スイート「え!? あ、ああ。あの一番大きな吸盤が付いているワイヤーだが…」

パンドリオン「では、その吸盤を凍らせてください。後は他の奴の応戦をしていてください」

スイート「あ、ああ。わかった。では、撃つぞ!」

 

 パキーーーーン!

 

 言葉の通り、土蜘蛛に繋がっているワイヤーの先は凍り付き、同じく換気口まで引っ込みはじめた。

 

パンドリオン「逃がさん! 希、撃つぞ!」

希「わかった! で、どこに!?」

パンドリオン「吸盤の口の中だ!」

 バシュン!

 

 パンドリオンに言われたとおり、希は引き金を引いた。すると、黄金だが今度は何というか、ゴム弾のような感触の弾丸が発射され、土蜘蛛のワイヤーの凍り付いた吸盤の口に侵入した!

 

 ボヨンボヨンボヨンボヨン!!!!!!

 

パンドリオン「これで終わりだ。おめーの糸は構造的に、欠点だらけだ。それを利用させて貰ったよ」

 八握の握っている土蜘蛛がぶるぶる振動していた。糸の“中”を弾丸が通っているのである!

 

八握「なっ!!!!!! 中空糸の内壁に跳ね返り続けて・・・・こっちに弾丸が来るだとぉ!!!!!!」

 

パンドリオン「ワイヤー銃も欠点だったな。銃を手放せば、おめーは真っ逆さまに落ちていく、握っていれば、確実に弾丸はヒット。さて、おめーさん、どうする?」

 

 八握は汗だくで迷っていた。どっちを選んでも、結果が同じだからだ。

 

八握「ひ・・・・ひ・・・・ひ・・・・い・・・・」

 

 ガンッ!!!

 

 パンドリオンの弾丸は遂に土蜘蛛の銃口まで到達し、そして本体の“吸引器”を破壊して、そして本体の“アクチュエーター”を破壊し、そして・・・。

 

八握「いやだぁぁぁ!!!!!! 死にたくねぇぇぇ!!!」

 

 バガン!!!!

 

 銃は暴発した。八握の銃を握った手から、土蜘蛛が消えていき、そして本体が破壊されたことで、子蜘蛛6機全てのワイヤーが消滅して、真っ暗の真下に落下していった。

 

八握「うわぁあぁあぁぁ!!!!!!!」

 

 八握の土蜘蛛も同様だった。銃とワイヤーが消滅した事で、八握を支えていたモノが無くなったので、八握も、当然、真っ暗の真下に落下していた。

 

八握「うわぁぁあぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 そして、見えなくなった…。

制御パネルの声「障害物消滅、状態オールグリーン、緊急停止解除、これより上昇を再開します」

 

 ブーーーーーーーン

 

 軌道エレベーターは再び上昇を開始し、今度こそ、101Fに登っていってくれそうだった。

 

パンドリオン「ま、ざっとこんなもんだ。相手の利点なんて、考え方を転換すれば、利用出来るって事だ。希、覚えておけよ?」

希「あ、ああ…」

 

 パンドリオン、どこまでその力は“パンドラの箱”なのだろうか?


 
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