No.829775

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク 改訂版

soranoさん

第28話

2016-02-10 00:24:31 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:814   閲覧ユーザー数:771

2ヶ月後―――ゼムリア大陸中西部・レマン自治州峡谷地帯―――

 

~遊撃士協会・ル=ロックル訓練場~

 

遊撃士達の訓練所であるル=ロックル。そこでレンはクルツと互いに練習用の武器で特訓していた。

「――魔神剣・双牙!!」

「!」

クルツは自分に向かって放たれた衝撃波を側面へと跳躍して回避し

「方術―――儚きこと夢幻の如し!!」

精神統一し、自然に呼びかけた。するとクルツの呼びかけに応えるかのようにレンの頭上から自然のエネルギーでできた刃が落下して来た。

 

「空破――――」

頭上から落下して来た脅威に気付いたレンは地面を蹴ってクルツに詰め寄り

「絶掌撃!!」

「はあっ!」

一瞬でクルツの背後に回って強烈な突きを放ったが、クルツはすぐに振り向いて槍で防御した。

「―――八葉滅華。ヤァァァァァァ……!」

「―――夕風。オォォォォォォ…………!」

二人は同時に訓練用に刃を潰した互いの武器で怒涛の連続攻撃を繰り出して互いの攻撃を相殺し

「そこだっ!」

「!?」

レンが剣を繰り出した瞬間槍で剣を受け流し

「はあっ!!」

槍を突き出したがレンは突き出された槍をギリギリかする程度に横にそれて回避し、双剣を持つそれぞれの拳に闘気を溜め込んでクルツの懐に飛び込んで両手の拳を繰り出した。

「剛烈破掌!!」

「ぐっ!?」

腹に受けた強烈な衝撃に呻いたクルツは吹っ飛ばされ、その隙を逃さないかのようにレンが電光石火に詰め寄って空中で受け身を取って着地したクルツに剣の切っ先を向けた!

「!?」

「うふふ、レンの勝ちでいいかしら?」

「ああ。やれやれ……この年齢で……いや、この強さでE級だなんて、詐欺としか思えないな。さすがは”小剣聖”と言った所か。」

自分の敗北を悟ったクルツは苦笑いをしながら訓練用の武器を地面に落として降参の意志を示する為に両手を挙げ、クルツの降参を確認したレンは剣を退いた。

 

「ふふっ、リターンマッチはいつでも受けるわよ?」

「ハハ、先輩として面目を回復したい所だが……この後控えている特訓に双方差支えるから申し出は遠慮しておくよ。」

悪びれも無く自分を挑発するレンの度胸の強さにクルツは苦笑しながら答え

「あら、その様子だともしかして今日の特訓はクルツお兄さんと本格的な腕試しかしら?」

クルツの答えを聞き、ある事に察したレンは口元に笑みを浮かべて尋ねた。

「さてね……どうなるかは後のお楽しみだ。そろそろ朝食もできている頃だろうから、今日の朝練はここまで。お疲れ様。」

「はーい。クルツお兄さんもお疲れ様。」

そしてレンはその場から去って行き

(……………まさかかの”D∴G教団”による被害者が”儀式”で得た力―――”グノーシス”を存分に活用して市民を守る為に使う事になり、今では遊撃士協会にとっては未来を期待されている存在になるとは………これも女神(エイドス)が決めた運命の悪戯か?)

去って行くレンの後ろ姿をクルツは重々しい様子を纏って見つめていた。その後他の場所で訓練していたエステルやアネラスと合流したレンは宿舎で朝食を取り始めた。

 

~ル=ロックル・宿舎~

 

「はあ……。けっこうお腹いっぱい。訓練前にこんなに食べたらまずいような気がするけど……」

「相変わらずエステルは後先考えてないわねえ。それで訓練の時に戻したりしたら、レディとして失格よ?」

満腹になり、後の事を考えたエステルは苦笑し、レンは呆れた表情で溜息を吐いた。

「うっさいわね!というか、食後にそんな話をする方がマナー違反と思うんだけど!?」

「まあまあ、管理人さんの料理ってホントおいしいからお腹いっぱいに食べるのも仕方ないよ。でも、訓練と違って途中でバテるわけにもいかないし、ちょうどいいんじゃないかな?」

「うん、確かに。やっぱりスタミナは基本よね。それにしても……。ここに来てからもう3週間か。正直、あっという間だったな。」

「ふふ、エステルちゃんとレンちゃん、ものすごく頑張ってたもんね。私も一緒に訓練しててホント、いい刺激になったよ。」

「えへへ……。そう言ってもらえると嬉しいな。」

「うふふ、レンは結構楽しませてもらえたわよ?」

アネラスに褒められたエステルは照れ、レンは微笑んでいた。

 

「でも、クルツさんが訓練教官として来てくれたのも驚いたけど……。まさかアネラスさんがあたしと同じ訓練を受けるとは思ってもみなかったわ。」

「んー、私も正遊撃士になってから半年くらいの新米だからねぇ。シェラ先輩からエステルちゃんとレンちゃんの話を聞いて渡りに船だと思ったんだ。前々からこの訓練場のことは先輩たちに聞いて興味があったし。」

「そっか……。でも、こんな場所があるなんてギルドも結構大きな組織なのね。最初、父さんたちから話を聞いたときはあまりピンとこなかったんだけど………」

アネラスの話に頷いたエステルは自分とレンがル=ロックルに来た経緯を思い出した。

 

~2ヶ月前・ブライト家~

 

「―――言ったように、もう俺はお前を止めるつもりはない。だが正直、今のお前の実力では結社の相手はあまりにも危険すぎる。そこでエステル……『ル=ロックル』に行ってみないか?」

「『ル=ロックル』?」

カシウスの口から出た知らない地名にエステルは首を傾げた。

「レマン自治州にある遊撃士協会が所有している訓練場だ。宿舎の周りには、様々な種類の本格的な訓練施設が用意されている。遺跡探索技術、レンジャー技術、サバイバル技術、対テロ技術……。実戦レベルの訓練を行うのにもっとも適した場所と言えるな。」

「まあ……遊撃士協会にそんな凄い施設があるのね……」

「お兄様やシェラお姉さんもそこで訓練した事があるのかしら?」

カシウスの説明を聞いたレナは目を丸くし、興味を持ったレンはルーク達に視線を向け

「ええ、数年前にだけどね。」

「結構キツイ訓練だったし、最後なんかマジで驚かされたぜ。」

シェラザードは頷き、ルークは苦笑していた。

「そんな場所があるんだ……。でも、自治州ってことはその訓練場、外国にあるのよね?あたし……今、リベールを離れるわけには……」

「外国とはいっても国際定期船を使えば1日よ。訓練期間は、そうね……。1ヶ月もあれば一通り終わるわ。その間、何か情報が入ったらすぐに連絡できるように手配する。それならどう?」

リベールから離れる事やヨシュアを探せない事によって表情を不安そうにしているエステルを安心させるかのようにシェラザードは条件を出した。

 

「………………………………」

「まあ、勧めはするが決めるのはあくまでお前だ。よく考えてみるといい。」

話を聞き、考え込んでいるエステルにカシウスが助言したその時

「……ううん、もう決めた。あたし、訓練を受けてみる。」

「あら。」

エステルは僅か数秒で決意し、エステルの決意を聞いたレンは目を丸くした。

「あらま………」

「お、おい、エステル。少しは考えたんだよな?」

「ふむ、思い切りがいい。どうやら自分でも思うところがあるらしいな?」

エステルが出した答えの早さにシェラザードは驚き、ルークは不安そうな表情をし、カシウスは理由を尋ねた。

 

「うん……まあね。考えてみれば、あたしってヨシュアに頼りきりだった。何か事件が起こったときはいつもヨシュアが導いてくれた。でも、これからは自分の判断が頼りなんだよね。だからあたし……その訓練場で自分を鍛えてみる。」

「フフ、頑張ってね、エステル。」

エステルの答えを聞いたレナは微笑み

「うふふ、やっぱり肝心な所はヨシュア任せだったのね。まあ、どうせそうだろうと思ったわ。正遊撃士になって、ようやく自覚してなによりね。」

「うっさいわね!」

余計な言葉を口にしたレンをエステルはジト目で睨んだが

「ま、そう言う事ならレンも付き合ってあげるわ。」

「へ……」

「レン?」

「あら。」

「あらま。」

「ふむ、確かにレンも経験すべきだと俺は思うが………理由を聞いてもいいか?」

レンの口から出た意外な答えを聞いて呆け、ルークとシェラザード、レナも意外そうにレンを見つめ、カシウスは尋ねた。

 

「エステルやお兄様と一緒にヨシュアを探すんだから、いずれ”身喰らう蛇(ウロボロス)”に所属している人達と戦う時もあるかもしれないでしょう?その時に備えて自分自身を鍛えるべきだし。」

「へ~、いつも自分の事を”天才”って言ってる割には意外と殊勝ね~。」

レンの説明を聞いたエステルはからかいの表情でレンを見つめたが

「うふふ、真の”天才”は自分の優れた才能に奢るという弱点を作らずに、自分の優れた才能を伸ばし続ける努力家なのよ?」

「あ、相変わらず小生意気な妹ね~。」

笑顔で答えを返したレンの言葉を聞き、ジト目でレンを睨んだ。

「それに………………………」

エステルに睨まれたレンは女王宮でロランス少尉が自分に向けた言葉を思い出し

 

いや………さすがは”あいつ”と双子だけあって、成長しても随分似ていると驚いただけだ。髪の色が同じであったら、”あいつ”と顔見知りの俺でも見分けが難しいだろう。

 

「………………………」

自分と全く同じ容姿で唯一違うのは橙色の髪を持つ少女の姿を思い出した後真剣な表情で黙り込み

「??どうしたの、レン?」

レンの様子に気付いたエステルは首を傾げた。

「ふむ、その様子だとレンにも思う所があるようだな。まあ、二人とも参加するなら明日にでも訓練場の利用を申請するといい。ロレント支部から出来るはずだ。」

「うん、わかった。」

「ええ。」

カシウスの言葉に二人はそれぞれの決意を胸に秘めて力強く頷いた。

 

「ね、エステル……出発が決まったら王都の百貨店に寄ろうか?」

「え、どうして?」

「正遊撃士になったお祝いよ。せっかくだから新しい仕事用の服を買ってあげるわ。」

「あ、それにはレンも手伝うわ!いつまでもスパッツをはいているなんてレディとしてどうかといつも思っていたし。」

シェラザードの提案を聞いたレンは笑顔で頷き

「うっさいわね!そっちの方が動きやすいんだからいいじゃない!レンこそ、そんなフリフリでヒラヒラな服を着てるけど、そっちの方が動きにくくて仕事に支障がでるんじゃないの!?」

エステルはレンを睨んで反論した。

 

「うふふ、レンは”天才”だから平気なのよ。それにこの服、こう見えても結構動きやすいのよ?」

「どーいう理屈よ!?それにとてもそんな動きやすい服には見えないんですけど!?」

「はいはい、喧嘩しないの。それにレンの言う通り、あんた、いっつもスパッツばっかりはいているんだから、これを機に少しは女の子らしくスカートをはきなさい。」

「そうね。エステルったら私が買ったスカートを全然はかないから、貴女の為に買ったのにレンが貴女の代わりにほとんどはいていたのよ?」

「どれも素敵なスカートだったのに、エステルったら本当に勿体ない事をしているって、レン、エステルのお古だけど新品同様のスカートをはいていていつも思っていたわよ?」

「う”っ………ス、スカートか~。」

他の女性達に指摘されたエステルは自分が苦手としている服装を自分が身につけている姿を思い浮かべて嫌そうな表情になり

「どうやら話が長くなりそうだから、男の俺達は退散するか。」

「ああ。女って服の話になるとスゲー長くなるもんな……」

その様子を見たカシウスとルークは席から立ち上がった。

 

~ル=ロックル・宿舎~

 

「なるほど……。その服って、シェラ先輩のお祝いプレゼントだったんだね。いいな~。可愛い服を買ってもらえて。」

「うふふ、以前と比べると大違いね。」

事情を聞き終えたアネラスの感想にレンは口元に笑みを浮かべて頷き

「う、うーん……。丈夫な生地を使っているし、動きやすくっていいんだけど……。こういう女の子っぽい服ってあたしには似合わないかも……」

普段着なれていない服装―――上には肩当てが付いた白いジャケットを身に纏い、下には太腿が僅かに見えるくらいまで覆っている橙色のスカートを身に纏うにエステルは戸惑っていた。

「とっても良く似合ってるってば。それに遊撃士でも女の子にオシャレは必要だよ。否、遊撃士だからこそオシャレには気を使わなくちゃ!そう、例えばそこのレンちゃんのように!」

「うふふ、遊撃士である前に一人のレディなのだから、オシャレをするのは当然ね。」

真剣な表情で自分を見つめて称えるアネラスに気を良くしたレンは笑顔で答えた。

 

「ア、アネラスさん?」

「そうだ、エステルちゃん。リボンとか付けてみる気ない?すごく似合うと思うんだけどなぁ。」

「そうね。元々顔はママ似だから、もっとオシャレをすれば別人のように素敵なレディになると思うわよ?後はそのそそっかしい所がなくなれば完璧だけど……まあ、世の中にはエステルみたいなドジッ娘がいいって人もいるから、あえて治す必要はないかもしれないわね。」

「うんうん、レンちゃん、わかっているね!」

小悪魔な笑みを浮かべるレンの意見にアネラスは嬉しそうに頷き

「誰がドジッ娘よ!?それより……前々から思っていたんだけど、アネラスさんって可愛い物が凄く好きでしょ?」

エステルはレンを睨んで叫んだ後苦笑しながらアネラスを見つめた。

 

「もちろん!可愛い事は正義だもん!シェラ先輩やアーシア先輩みたいな格好いいお姉様にも憧れるけど……やっぱりレンちゃんみたいな可愛く着飾った年下の女の子に勝るものなし!ぬいぐるみなんか抱いてたらぎゅっと抱き締めたくなるよ~。」

「あら、それは残念だったわね。レン、プライベートの時ならぬいぐるみを抱きながら本を読んでいる時もあるし、寝る時はいつもお気に入りのぬいぐるみを抱いて寝ているわよ?昨夜だってお家から持ってきたぬいぐるみを抱いて寝ていたし。ちなみにパジャマは勿論お気に入りのフリフリのパジャマよ♪」

「何ですとっ!?レンちゃん、今夜是非一緒に寝ていいかな!?」

普段から可愛く着飾っているレンがフリフリの可愛いらしいパジャマ姿でぬいぐるみを抱いて天使のような可愛いらしい寝顔で眠っている瞬間を思い浮かべたアネラスは血相を変えてレンを見つめ

「うふふ、どうしよかっな♪」

アネラスの表情を見たレンはアネラスの反応を遊ぶかのように笑顔で答えを誤魔化し

「あ、あはは……(レンでこの状態なんだからこりゃ、ティータに会ったら卒倒するかもしれないわね……)」

エステルはアネラスが可愛い妹分と出会った時の反応を思い浮かべ、苦笑いをしていた。

 

「フゥ、それにしても……。初めて会った時と比べるとエステルちゃん、変わったよね。」

「えっ?」

「最初はいかにも新人君で初々しい印象しかなかったけど……。今は、初々しさを残しながらぐっと頼もしくなった気がする。それって結構スゴイことだよ?」

「うふふ、ようやくレンの”おねえちゃん”らしくなって、レンも嬉しいわ♪」

「や、やだなぁ……。アネラスさん、おだてないでよ。それにレンまで一緒になって……」

アネラスとレンから褒められたエステルは恥ずかしそうな表情をしていた。

「そういえば、アネラスさん、レン。そろそろ演習の時間じゃない?」

「あ、そうだね。いったん部屋に戻ろうか。それじゃあ、また後でね~!」

「エステルは遅刻して、妹のレンに恥をかかせないように注意してよね?」

「うっさいわね!余計なお世話よ!」

そしてエステル達はそれぞれが泊まっている部屋に向かって、準備を始めた……………

 


 
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